高齢社会白書は、毎年出題されています。旧カリキュラムでは126番が定位置で、共通科目と専門科目で2問出題された年もあります。ですが範囲が広く、全て学習しても点数に結びつきにくいのが難点です。
高齢社会白書
高齢化
日本の高齢化率の推移
高齢化率とは、全人口に対して 65 歳以上の人口が占める割合で、日本やアジア諸国では急速に高齢化が進んでいます。
日本は1970 年に高齢化率が7% を超え、高齢化社会となりました(「7」つながりで覚えてください)。
そのわずか24 年後の1994 年に高齢化率が倍の14% を超え、高齢社会になります(「4」つながりで覚えてください)。2007 年には高齢化率が21% を超え、超高齢社会に突入しています(高齢化社会の「7」つながりで覚えてください)。


超高齢社会の次ってなんて言うんだろう。もうすでに次の段階なんだけどな。
日本の総人口は、2008 年にピークを迎えて以降、少子化の影響で減少に転じています。超高齢社会を迎えた2007 年の翌年に総人口のピークを迎え、それ以降は人口減少社会に突入しました。今後は、このまま人口が減っていき、高齢化率はまだまだ上昇し続けるといわれています。2025 年には高齢化率30%(団塊の世代が後期高齢者になり社会保障費などがふくれ上がる2025 年問題の年)、2040 年ごろには高齢者数が最大になることが予想されています。その後、高齢者数は減少していく予測ですが、総人口の減少のほうが大きいため、その後も高齢化率は上昇し続け、2070 年には約40% になることが予想されています。
年 | 日本の社会構造 | 高齢化率 |
---|---|---|
1970年 | 高齢化社会 | 7% |
1994年 | 高齢社会 | 14% |
2007年 | 超高齢社会 | 21% |
2008年 | 総人口MAX | – |
2025年 | 2025年問題 | 約30% |
2043年 | 高齢者数MAX | 約35% |
2070年 | – | 約40% |

直近の高齢化率は30% 弱、今後は40% まで上昇するけど、50% まではいかないってことを覚えておいてね。高齢化率が50%を超える集落を限界集落と呼んだりするね。
出生数と死亡数の推移
2006 年ごろに出生数と死亡数がほぼ同数となり総人口がピークを迎え、その後は出生数より死亡数が上回り続け、人口が減少の一途をたどっていること
がわかります。2040年頃に高齢者人口がピークを迎えるころまで死亡数は増加し続け、その後減少に転じます。

諸外国の高齢化率の推移
諸外国の高齢化率を見てみると、欧米諸国と比較して日本の高さは際立っています(左下の図)。しかし、アジア諸国を見てみると、中国、韓国、シンガポール、タイなどの国が今後急激に高齢化し、日本を抜く可能性もあるようです

高齢化率が 7% から 14%になるまでの所要年数(倍加年数)は、日本は 1970 年から 1994 年までの 124 年という短期間でした。
欧米諸国ではドイツが40 年、イギリスが46 年、アメリカが72 年、スウェーデンが85 年、フランスが115 年もかかっているのに対し、アジア諸国では韓国が18 年、中国が22 年、シンガポールはわずか15 年と、日本よりも短い期間で高齢化社会から高齢社会に突入しています。

都道府県別の高齢化率
2023年現在の高齢化率は、最も高い秋田県で39.0%、最も低い東京都で22.8%となっています。今後、高齢化率は、全ての都道府県で上昇すると見込まれています。
高齢者の暮らし
高齢者世帯
65 歳以上の高齢者のいる世帯は全世帯の半数を占め、その中でも夫婦のみの世帯と単独世帯がそれぞれ約3割を占めています。

一人暮らしの高齢者
一人暮らしの高齢者は増加傾向にあり、2020 年時点で男性15%、女性22.1% となっています。増加傾向は、少なくとも 2050年までは継続すると見込まれている。

高齢者の住まい
高齢者の8割以上が持ち家で、7割以上が一戸建てです。

暮らし向き
高齢者の暮らし向きについて、「家計にゆとりがない」と考える高齢者の割合は9 割近いですが、そのうち6割以上は「心配していない」と答えています。

高齢者の就労と経済状況
高齢者の労働力人口比率
労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたもの)に占める65 歳以上の割合は増加傾向にあり、10% を超えています。

高齢者の就業率
高齢者の就業率の推移を見ると、各年齢層とも増加傾向にあります。65 ~ 69 歳の半数が就業しているのが現状で75 歳以上でも約1 割が就業しています。

高齢者の雇用形態
65歳以上で働く人は非正規雇用が多くなっています。女性の場合は65歳未満でも非正規雇用の割合は多いですが、男性の場合は65 歳未満で過半数を占めていた正規雇用が、65 歳以上で急激に減少しています。

65歳で定年を迎えても働き続ける人が増えてるんだね。

高齢者の所得
所得階層別分布を見てみると、高齢者世帯では150 ~ 200 万円が最も多くなっています。全世帯の分布は、比較的なだらかに高所得まで分布しているのに対し、高齢者世帯では低所得層に分布が集中しています。


高齢者世帯の分布はピークがはっきりしていて平均値と中央値の差が小さいけど、全体のグラフでは所得の高い層に尾を引いているので、平均値と中央値の解離が大きいね。
高齢者の貯蓄
高齢者は所得は全体より少なかったですが、貯蓄が多いということがわかります。

高齢者の貯蓄と負債
高齢になるほど、貯蓄が増え、負債が減っています。

高齢者の収入
収入に関しては、公的年金・恩給が家計収入のすべてとなっている高齢者世帯が44%となっています。


高齢になるほど貯蓄の割合が多くなるから、年金だけでもやっていけるのかな。
高齢者の健康
平均寿命&健康寿命
平均寿命とは「0 歳における平均余命」のことで、つまり、生まれたばかりの赤ちゃんが平均しておよそ何歳まで生きるかということです。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。
2022 年現在、平均寿命は男性81.05 年、女性87.09 年となり、今後はさらに上昇していくことが予想され、2070 年には男性85 年、女性90 年を超えることが見込まれています。

2019 年時点での健康寿命は、男性が72.68 年、女性が75.38 年となっており、上昇傾向にあります。また、平均寿命と健康寿命の差は、男性は10 年未満であるのに対し、女性は10 年を超えています。

要介護認定
第1号被保険者のうち、要介護認定・要支援認定を受けた者は18.9%で、要介護1の認定が最も多くなっています。

介護者
介護者は「配偶者」が最も多くなっています。

ただし、男性は配偶者に介護をしてもらいたいけど、女性はヘルパーさんなどの事業者に介護を頼みたい人が多いという結果が、以前の高齢社会白書には出ていたよ。

死因
2021 年の 高齢者の死因で最も多いのは「悪性新生物」、次いで「心疾患」、この順位は不動ですが、近年「老衰」が第3 位に上がってきました。

高齢者虐待
2022 年度の虐待判断件数は、要介護施設従事者などによるものが856 件、養護者によるものが1 万6669 件となっています。
養護者による虐待の種別は、「身体的虐待」が65.3%で最も多く、次いで、「心理的虐待」が 39.0%、「介護等放棄」が19.7%、「経済的虐待」が 14.9%となっています。 養護者による虐待を受けている高齢者の属性では、女性が75.8%を占めており、年齢階級別では「80 ~ 84 歳」が25.3%と最も多く、虐待を受けている高齢者のうち69.2%が要介護認定を受けています。虐待の加害者は、「息子」が39.0%と最も多く、次いで「夫」が22.7%、「娘」が19.3%となっています。

過去問
第32回 問題126
「平成30年版高齢社会白書」(内閣府)にみる日本の人口の高齢化の動向及び将来設計に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 2025年に後期高齢者数と前期高齢者数が逆転し、後期高齢者数が上回ると予測されている。
2 高齢化率の「倍加年数」は24年であり、1970年から1994年にかけてであった。
3 2017年時点で、都道府県の中で高齢化率が最も低いのは東京都であった。
4 65歳以上人口に占める一人暮らしの者の割合は、2040年には男女共に40%を超えると予測されている。
5 2060年に高齢化率は50%を超えると予測されている。
1 2025年に後期高齢者数と前期高齢者数が逆転し、後期高齢者数が上回ると予測されている。
2020年時点で後期高齢者のほうが前期高齢者より多くなっています。
2 高齢化率の「倍加年数」は24年であり、1970年から1994年にかけてであった。
これが正解です。
この選択肢を見て、正解と思えればしっかり勉強している証です。
歴史の問題では基本的に年を覚える必要はないのですが、このような問題を見ると覚えておいた方がよい内容もあることがわかります。
3 2017年時点で、都道府県の中で高齢化率が最も低いのは東京都であった。
東京都の高齢化率は低いですが、沖縄の方が低いです。
4 65歳以上人口に占める一人暮らしの者の割合は、2040年には男女共に40%を超えると予測されている。
これも間違いです。
そこまで高くありません。
5 2060年に高齢化率は50%を超えると予測されている。
2060年で40%程度だと予測されていますので間違いです。
第36回 問題126
「令和5年版高齢社会白書」(内閣府)に示された日本の高齢者を取り巻く社会情勢に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。1 人口の高齢化率は、2022年(令和4年)10月1日現在で、約16%となっている。2 高齢化率の「倍加年数」をアジア諸国で比較すると、韓国は日本よりも短い年数となっている。
3 総人口に占める75歳以上の人口の割合は、2070年(令和52年)に約40%に達すると推計されている。4 2022年(令和4年)の労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は、2013年(平成25年)以降の10年間でみると、漸減傾向にある。5 2021年(令和3年)の65歳以上の者の死因別の死亡率をみると、悪性新生物よりも肺炎の方が高くなっている。
(注)「倍加年数」とは、人口の高齢化率が7%から14%に達するまでに要した年数のことである。
1 人口の高齢化率は、2022年(令和4年)10月1日現在で、約16%となっている。
誤りです。2007年に既に超高齢社会(高齢化率21%)を迎えています。実際は29%でした。
2 高齢化率の「倍加年数」をアジア諸国で比較すると、韓国は日本よりも短い年数となっている。
正しいです。高齢化社会から高齢社会になるのに要した期間(倍加年数)は、日本は24年でした(1970年から1994年)が、特にアジアの韓国、中国、シンガポールは日本より短い期間で高齢化が急速に進んでいます。
3 総人口に占める75歳以上の人口の割合は、2070年(令和52年)に約40%に達すると推計されている。
誤りです。65歳以上の人口は2070年には約40%に達すると推計されていますが、75歳以上の人口は25%程度です。
4 2022年(令和4年)の労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は、2013年(平成25年)以降の10年間でみると、漸減傾向にある。
誤りです。労働力人口に占める高齢者の割合は、長期的には上昇傾向にあります。2022年時点で10%を超えています。
5 2021年(令和3年)の65歳以上の者の死因別の死亡率をみると、悪性新生物よりも肺炎の方が高くなっている。
誤りです。死亡率は悪性新生物が不動の1位です。
第33回 問題126
「令和元年版高齢社会白書」(内閣府)における高齢者の介護に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。1 65歳以上の者の死因別の死亡率で最も高いのは、「老衰」となっている。2 要介護者等からみた主な介護者の続柄で最も多いのは、「子の配偶者」となっている。3 55歳以上の男性では、介護を頼みたい人として最も多いのは、「子」となっている。4 要介護者等において、介護が必要になった主な原因で最も多いのは、「認知症」となっている。5 55歳以上の男女では、介護が必要になった場合の費用をまかなう手段として最も多いのは、「貯蓄」となっている。
1 65歳以上の者の死因別の死亡率で最も高いのは、「老衰」となっている。
誤りです。高齢者の死亡率では、悪性新生物が不動の1位です。2位が心疾患、3位が老衰となっています。
2 要介護者等からみた主な介護者の続柄で最も多いのは、「子の配偶者」となっている。
誤りです。介護者の続柄としては「配偶者」が最多です。
3 55歳以上の男性では、介護を頼みたい人として最も多いのは、「子」となっている。
誤りです。介護を頼みたい人は、男性の場合「配偶者」が最多、女性の場合「ヘルパーなど介護サービスの人」が最多です。

なんかわかる気がする・・・。
4 要介護者等において、介護が必要になった主な原因で最も多いのは、「認知症」となっている。
正しいです。認知症が最多で2割弱を占めています。
5 55歳以上の男女では、介護が必要になった場合の費用をまかなう手段として最も多いのは、「貯蓄」となっている。
誤りです。「年金等の収入でまかなう」が最多です。
第37回 問題85
「令和6年版高齢社会白書」(内閣府)に示された日本の高齢者を取り巻く社会情勢に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 65 歳以上人口増大により、死亡数は 2006 年(平成18年)から 2022年(令和4年)まで増加傾向にあるが、2030年(令和12年)以降は減少に転じると見込まれている。
2 65 歳以上人口に占める一人暮らしの者の割合は増加傾向にあり、その傾向は、
少なくとも 2050年(令和32年)までは継続すると見込まれている。
3 2023年(令和5年)現在の高齢化率を都道府県別にみると、最も高いのは島根県であり、最も低いのは埼玉県である。
4 介護保険制度における要介護認定·要支援認定を受けた者は、2021年度(令和3
年度)には第一号被保険者の3割を超えている。
5 65 歳以上の者について、2023年度(令和5年度)における住宅所有の状況をみると、持家(一戸建て・分譲マンションなどの集合住宅)が5割程度となっている。
1 65 歳以上人口増大により、死亡数は 2006 年(平成18年)から 2022年(令和4年)まで増加傾向にあるが、2030年(令和12年)以降は減少に転じると見込まれている。
誤りです。2040年頃に高齢者人口がピークを迎えるころまで死亡数は増加し続け、その後減少に転じると見込まれています。
2 65 歳以上人口に占める一人暮らしの者の割合は増加傾向にあり、その傾向は、少なくとも 2050年(令和32年)までは継続すると見込まれている。
正しいです。
3 2023年(令和5年)現在の高齢化率を都道府県別にみると、最も高いのは島根県であり、最も低いのは埼玉県である。
誤りです。2023年現在の高齢化率は、最も高い秋田県で39.0%、最も低い東京都で22.8%となっています。
4 介護保険制度における要介護認定・要支援認定を受けた者は、2021年度(令和3年度)には第一号被保険者の3割を超えている。
誤りです。要介護認定・要支援認定を受けた者は、第1号被保険者の18.9%です。
5 65 歳以上の者について、2023年度(令和5年度)における住宅所有の状況をみると、持家(一戸建て・分譲マンションなどの集合住宅)が5割程度となっている。
誤りです。持家は7割を超えています。
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次は、この超高齢社会を支える地域包括ケアシステムを見てみましょう。
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