ここでは、介護保険法の変遷の中で出てきた「地域包括ケアシステム」について見ていきましょう。
介護保険法の変遷
2000年 介護保険法施行
2005年 地域包括支援センター創設
2006年 地域支援事業スタート
2008年 介護サービス運営適正化
2011年 地域包括ケアシステム
2014年 地域ケア会議が努力義務
2015年 介護保険事業計画を「地域包括ケア計画」と位置づけ
2017年 介護保険事業(支援)計画と医療計画との整合性確保の重要性が明記、介護医療院の創設
2020年 利用者の自己負担増
介護保険法ができるまでは、老人福祉法による市町村の措置でサービスを利用していたため、利用者が自分でサービスを選択することはできませんでした。
しかも所得調査がされるため利用者の心理的抵抗感もありました。
そこで1997年、利用者がサービスを選択して契約できる介護保険法が成立し、2000年に施行されてから3年毎に改正されています。
介護保険法施行後の2005年の法改正で地域包括支援センターが規定されています。
翌年の2006年には市町村による地域支援事業が始まります。
そして、2011年改正で「地域包括ケア」の概念が法律に規定されました。
2015年には介護保険事業計画を「地域包括ケア計画」と位置づけ、第6期介護保険事業計画以降は地域包括ケア計画という扱いになりました。
2017年には介護保険事業(支援)計画と医療計画の整合性確保の重要性が明記されています。
地域包括ケアシステムとは
地域包括ケアシステムとは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムです。
重度の要介護状態などが想定されていますが、高齢者だけが対象ではなく障害者や児童も含めた包括的なシステムです。
地域包括ケアシステムの仕組み
地域包括ケアシステムが効果的に機能するためには、次の「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の仕組みが重要です。
自助
自分で自分を助けること、自分のことは自分でできるということです。
市場サービスの購入も自助に含まれます。
互助
家族や近隣住民、友人などの個人的な人間関係の中での助け合いのことです。
ボランティアやNPO、地域の自治会などの活動です。
共助
社会保険制度に代表される、制度化された相互扶助のことです。
年金、医療、介護などの制度です。
互助は制度化されていない相互扶助のことなので、互助と共助の違いを押さえておきましょう。
公助
社会福祉制度や生活保護制度など、公費(税金)で運営される制度のことです。
まとめ
互助と共助の違いをしっかり押さえてください。互助は個人的な人間関係の中での助け合い、共助は社会保険のような制度の裏付けのある助け合いです。
地域包括ケアシステムでは、公助ではなく自助や互助の果たす役割が大きくなることを意識した取組が必要とされています。
過去問
第32回 問題48
第7期介護保険事業計画(2018年度(平成30年度)開始)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
(注)「基本指針」とは、「介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(平成30年3月13日厚生労働省告示第57号)のことを指す。
1 地域包括支援センターが、創設されることになった。
2 市町村が実施主体となる地域支援事業が開始された。
3 介護保険事業計画が、初めて地域包括ケア計画と位置づけられた。
4 「基本指針」において、医療法に規定される医療計画との整合性を確保することの重要性が明記された。
5 第7期の第一号被保険者の保険料が全市町村で引き上げられた。
1 地域包括支援センターが、創設されることになった。
間違いです。これは2005年の介護保険法改正時です。
2 市町村が実施主体となる地域支援事業が開始された。
間違いです。地域支援事業が始まったのは2006年です。
3 介護保険事業計画が、初めて地域包括ケア計画と位置づけられた。
間違いです。これは2015年の第6期介護保険事業計画からです。
4 「基本指針」において、医療法に規定される医療計画との整合性を確保することの重要性が明記された。
これが正解です。
5 第7期の第一号被保険者の保険料が全市町村で引き上げられた。
間違いです。全市町村で引き上げられたわけではありません。
第27回 問題32
地域包括ケアシステムに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 高齢者を対象としているため、障害者や子どもについては対象として想定されていない。
2 団塊の世代が75歳となる2025年を目途に、専ら認知症高齢者に対する在宅医療システムの充実を目指している。
3 地域包括ケアの概念は, 「医療介護総合確保推進法」における介護保険法改正 (平成27年4月施行) において、初めて法的根拠が与えられた。
4 自助、互助、共助、公助から構成されるが、公助を中心としたシステム構築が必要であるとされている。
5 住まい・医療・介護・予防・生活支援が地域の特性に応じて、一体的に提供されるシステムの構築を目指している。
1 高齢者を対象としているため、障害者や子どもについては対象として想定されていない。
間違いです。障害者や子どもも対象として想定しています。
2 団塊の世代が75歳となる2025年を目途に、専ら認知症高齢者に対する在宅医療システムの充実を目指している。
間違いです。専ら認知症高齢者ではありません。
3 地域包括ケアの概念は、「医療介護総合確保推進法」における介護保険法改正 (平成27年4月施行) において、初めて法的根拠が与えられた。
間違いです。2011年の介護保険法改正の時です。
4 自助、互助、共助、公助から構成されるが、公助を中心としたシステム構築が必要であるとされている。
間違いです。公助ではなく「自助」「互助」の果たす役割が大きくなることを意識した取組が必要とされています。
5 住まい・医療・介護・予防・生活支援が地域の特性に応じて、一体的に提供されるシステムの構築を目指している。
これが正解です。
介護福祉士 第32回 問題5
地域包括ケアシステムでの自助・互助・共助・公助に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 自助は、公的扶助を利用して、自ら生活を維持することをいう。
2 互助は、社会保険のように制度化された相互扶助をいう。
3 共助は、社会保障制度に含まれない。
4 共助は、近隣住民同士の支え合いをいう。
5 公助は、自助・互助・共助では対応できない生活困窮等に対応する。
1 自助は、公的扶助を利用して、自ら生活を維持することをいう。
これは公助です。
2 互助は、社会保険のように制度化された相互扶助をいう。
これは共助です。
3 共助は、社会保障制度に含まれない。
共助は社会保障制度に含まれます。
4 共助は、近隣住民同士の支え合いをいう。
これは互助です。
5 公助は、自助・互助・共助では対応できない生活困窮等に対応する。
これが正解です。
公認心理士 第5回 問126
地域包括ケアシステムについて、正しいものを2つ選べ。
① 医療と介護の連携強化を図っている。
② 地域包括支援センターには、医師が常駐している。
③ 利用者のケアが中心であり、権利擁護については取り扱わない。
④ 地域ケア会議では、多職種が協働して個別事例の課題解決を図っている。
⑤ 要介護者が介護施設に入所して、集団的ケアを受けることを目的としている。
① 医療と介護の連携強化を図っている。
正しいです。
② 地域包括支援センターには、医師が常駐している。
誤りです。地域包括支援センターに必置の職員は、主任ケアマネ、社会福祉士、保健師(看護師)です。
③ 利用者のケアが中心であり、権利擁護については取り扱わない。
誤りです。介護保険法には地域包括支援センターが実施する業務として「権利擁護業務」があります。
④ 地域ケア会議では、多職種が協働して個別事例の課題解決を図っている。
正しいです。
⑤ 要介護者が介護施設に入所して、集団的ケアを受けることを目的としている。
誤りです。
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次は、日本の高齢者福祉の歴史です。
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