なぜ社会福祉士国家試験で社会調査を学ぶのか。
福祉事業所で働いていると、各方面からアンケートが来ますよね。
例えば私の働いている知的障害福祉の事業所であれば、日本知的障害者福祉協会や日本自閉症協会などからアンケートが来ます。
このようなアンケートは、その結果を行政に提示して、法律や仕組みを改善するために働きかける材料になります。
面倒なアンケートが多いのですが、結果的に福祉サービスや職員の待遇などの面でもよりよい仕組みにするための方法ですので、社会福祉士はその手法を知って実施できるようにならなければならないのです。
量的調査と質的調査
社会調査は、量的調査と質的調査に分けられます。
量的調査とは、アンケート等の質問紙を用いて量的データを取り、統計的処理を行う「統計調査」です。
質的調査は、個人に対するインタビューや面接法、観察法などを用いる「事例調査」です。
量的調査と質的調査を組み合わせる方法をミックス法といいます。
ミックス法とかミックスメソッドとか混合研究法とか、いろいろ呼び方はあるけど、実は量的調査と質的調査を混ぜて実施するのは容易なことではないんだ。
量的調査(統計調査)
量的調査には行政調査、市場調査、世論調査などがありますが、ここでは行政調査(基幹統計調査と一般統計調査)を見ていきます。
基幹統計調査
国内の状況を把握するための重要な基幹データをとるために、基幹統計調査が行われています。
総務省HPを見ると、実に多くの基幹統計が実施されていることがわかるでしょう。
特に以下の2種類の基幹統計調査は、全数調査(悉皆調査)で5年毎に実施されている重要な調査です。
・経済センサス
センサスというのは公的機関によって行われる大規模な全数調査のことだよ。基幹統計の中でも全数調査をしているのは、国勢調査と経済センサスのみ。つまり国勢調査は全世帯、経済センサスは全企業に対して実施されるんだ。
一般統計調査
一般統計調査には、国民健康栄養調査や伝染病統計などがあります。
統計委員会
統計法では、総務省に統計委員会を設置することが規定されています。
幹事:23人、総務省及び関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命(統計法第49条)
・統計に関する基本的事項、基本計画の案、基幹統計調査の変更など統計法に定める事項に関する調査審議
・基本計画の実施状況に関し総務大臣等に勧告
・関係大臣に必要な意見を述べる
まとめ
社会調査は、量的調査と質的調査に分けられます。
量的調査は統計調査とも呼ばれ、特に行政では基幹統計調査と一般統計調査が行われています。
行政以外が実施する量的調査としては、企業や生産者等が商品やサービスについての調査を行う「市場調査」や、世間一般の人の意見や生活実態などについての社会意識を量的データとして統計的に扱う「世論調査」などがあります。
過去問
第31回 問題84
社会調査に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 統計調査とは、社会事象を質的に捉えることを目的とした社会調査である。
2 市場調査とは、行政の意思決定に役立てることを目的として市場の客観的基礎資料を得るための社会調査である。
3 世論調査とは、自治体の首長の意見を集約するための社会調査である。
4 アクションリサーチとは、特定の状況における問題解決に向けて調査者が現場に関与する社会調査である。
5 センサスとは、企業の社会貢献活動を把握することを目的とした社会調査である。
1 統計調査とは、社会事象を質的に捉えることを目的とした社会調査である。
間違いです。
「質的」ではなく「量的」です。
2 市場調査とは、行政の意思決定に役立てることを目的として市場の客観的基礎資料を得るための社会調査である。
間違いです。
市場調査はマーケティングリサーチとも呼ばれ、主に企業や生産者等が商品やサービスについての調査を行います。行政の意思決定に役立てることを目的にはしていません。
3 世論調査とは、自治体の首長の意見を集約するための社会調査である。
間違いです。
世論調査は世間一般の人の意見や生活実態などについての社会意識を量的データとして統計的に扱う調査です。
4 アクションリサーチとは、特定の状況における問題解決に向けて調査者が現場に関与する社会調査である。
これが正解です。
アクションリサーチは、現実の社会問題の解決へ向けて、研究者と当事者とが協働して調査や実践を進める研究法です。アクションリサーチは別記事で詳しく取り上げています。
5 センサスとは、企業の社会貢献活動を把握することを目的とした社会調査である。
間違いです。
センサスとは、行政上、政治上の目的をもって行われる統計調査です。
第30回 問題84
現行の統計法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 一般統計調査は、行政機関が行う統計調査のうち基幹統計調査以外の調査のことをいう。
2 基幹統計調査である国勢調査は、10年ごとに無作為抽出による調査が行われる。
3 調査を実施する行政機関は、その機関内に統計委員会を置かなければならない。
4 基幹統計の公表の場合には、インターネットを利用した公表が禁じられている。
5 成年被後見人には、基幹統計調査の報告を求められることはない。
1 一般統計調査は、行政機関が行う統計調査のうち基幹統計調査以外の調査のことをいう。
これが正解です。
国の行政機関が行う統計調査は、公的統計の中核となる基幹統計調査と、それ以外の一般統計調査に分けられます。
2 基幹統計調査である国勢調査は、10年ごとに無作為抽出による調査が行われる。
国勢調査は5年毎に実施されますので間違いです。
3 調査を実施する行政機関は、その機関内に統計委員会を置かなければならない。
間違いです。
統計委員会は総務省に設置された第三者機関です。
4 基幹統計の公表の場合には、インターネットを利用した公表が禁じられている。
基幹統計調査でも一般統計調査でも、インターネットを利用した公表ができます。
5 成年被後見人には、基幹統計調査の報告を求められることはない。
間違いです。
本人に代わって成年後見人などの法定代理人が報告の義務を負います。
第30回 問題85
社会調査における個人情報保護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会調査は公益性が高いため、調査で得られた個々の調査対象者の氏名、性別、年齢などの属性は、公表すべきである。
2 社会調査で得られたデータを共同研究者と検討する際には、調査対象者の意向にかかわらず、個人情報を秘匿しなくてよい。
3 社会調査の標本抽出が目的であれば、選挙人名簿あるいは住民基本台帳から自由に個人情報を得ることができる。
4 社会調査は、調査の目的、収集データの利用方法、そして結果の公表の方法をあらかじめ文書あるいは口頭で調査対象者に知らせ、了解を取った上で実施する。
5 量的な調査では、調査対象者の氏名や回答者番号が書かれた対象者リストと調査票を、一緒にまとめて管理しなければならない。
これは易しい問題です。
選択肢4が正解です。
次の記事
次は、量的調査について詳しく見ていきましょう。
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