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【刑事司法】刑法&犯罪被害者等基本法

ソーシャルワーカーには、刑事司法の知識も求められます。犯罪に関する基本的な内容を抑えていきましょう。

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刑法

犯罪の基本は1907年に制定された刑法に規定されています。ポイントとなる内容を挙げておきます。

正当行為&正当防衛

正当行為や正当防衛は無罪になりますが、緊急避難の場合は「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」という条件つきで無罪になります。

第35条 法令又は正当な業務による行為(正当行為)は、罰しない。
第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為(正当防衛)は、罰しない。
第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為(緊急避難)は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

心神喪失&心神耗弱

精神の障害によって自己の行為の是非善悪を弁別する能力を欠くか、又はその能力はあるがこれに従って行動する能力がない者は、心神喪失者として無罪になります。また、このような弁別能力又は弁別に従って行動する能力の著しく低い者は、心神耗弱者として刑が減軽されます。

カリスマくん
カリスマくん

心神喪失や心神耗弱の定義は刑法にはないんだけど、法務省の犯罪白書には上のように書いてるよ。

第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

犯罪の手続き

犯罪者に対する手続きの流れ

警察等が検挙した事件は微罪処分や反則金の納付があった道路交通法違反等を除き、すべて検察官送致

②検察官は調査をして事件の起訴・不起訴(起訴猶予)を決定

③起訴された事件の裁判は「公判手続」と「略式手続」の2種類
公判手続:公判廷で裁判が行われ有罪と認定されたときは、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留又は科料の判決。3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金については執行猶予の場合があり、執行猶予では保護観察に付されることがある
略式手続:簡易迅速な書面審理によって100万円以下の罰金又は科料の裁判

④有罪の裁判が確定すると執行猶予が言い渡された場合を除き、刑が執行
受刑者は満期釈放または、刑期の満了前であっても地方更生保護委員会の決定によって仮釈放が許されることがあり、この場合は保護観察に付される
執行猶予:その刑の一部または全部の執行を猶予することができる
仮釈放:懲役や禁錮刑で改悛の状があれば、刑期の3分の1(無期刑は10年)を経過後

犯罪被害者等基本法

犯罪被害者の権利利益を保護するための法律である犯罪被害者等基本法を見てみましょう。

目的

第1条 この法律は、犯罪被害者等のための施策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等のための施策の基本となる事項を定めること等により、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする。

定義

犯罪被害者等には、家族や遺族も含まれます。

第2条 「犯罪被害者等」とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう

犯罪被害者等基本計画

犯罪被害者等基本計画の策定は政府に義務づけられています。

第8条 政府は、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計画(犯罪被害者等基本計画)を定めなければならない。

損害賠償請求の援助

損害賠償請求の援助は、国及び地方公共団体の責務です。

第12条 国及び地方公共団体は、犯罪等による被害に係る損害賠償の請求の適切かつ円滑な実現を図るため、犯罪被害者等の行う損害賠償の請求についての援助、当該損害賠償の請求についてその被害に係る刑事に関する手続との有機的な連携を図るための制度の拡充等必要な施策を講ずるものとする。

調査研究

調査研究は、国及び地方公共団体の責務です。

第21条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等に対し専門的知識に基づく適切な支援を行うことができるようにするため、心理的外傷その他犯罪被害者等が犯罪等により心身に受ける影響及び犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための方法等に関する調査研究の推進並びに国の内外の情報の収集、整理及び活用、犯罪被害者等の支援に係る人材の養成及び資質の向上等必要な施策を講ずるものとする。

犯罪被害者等施策推進会議

犯罪被害者等施策推進会議は内閣府に設置されることを覚えておきましょう。

第二十四条 内閣府に、特別の機関として、犯罪被害者等施策推進会議を置く。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 犯罪被害者等基本計画の案を作成すること。
二 前号に掲げるもののほか、犯罪被害者等のための施策に関する重要事項について審議するとともに、犯罪被害者等のための施策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視し、並びに当該施策の在り方に関し関係行政機関に意見を述べること。

過去問

第37回 問題58

犯罪の成立要件と責任能力に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 正当行為、正当防衛、あるいは緊急避難が認められた場合には、有責性がないものとして、無罪になる。
2 正当防衛とは、正当な侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為のことをいう。
3 弁識能力及び制御能力の両方またはいずれかが欠けていれば、心神喪失となり、またどちらかでも能力が著しく減退していれば心神耗弱となる。
4 心神喪失の場合には、刑法上の犯罪が成立せずに無罪となり、心神耗弱の場合には、刑の言渡しが猶予される。
5 16歳未満の者の行為については、一律に責任能力に欠けるものとされており、犯罪は成立しない。

1 正当行為、正当防衛、あるいは緊急避難が認められた場合には、有責性がないものとして、無罪になる。
誤りです。正当行為や正当防衛は無罪になりますが、緊急避難の場合は「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合」という条件つきで無罪になります。

2 正当防衛とは、正当な侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為のことをいう。
誤りです。正当防衛とは、正当な侵害に対してではなく「急迫不正の侵害」に対して自己または他人の権利を防衛するためやむを得ずにした行為のことです。

3 弁識能力及び制御能力の両方またはいずれかが欠けていれば、心神喪失となり、またどちらかでも能力が著しく減退していれば心神耗弱となる。
正しいです。刑法には心神喪失や心神耗弱の定義は規定されていませんが、過去の最高裁判決などではこのように判断されています。

4 心神喪失の場合には、刑法上の犯罪が成立せずに無罪となり、心神耗弱の場合には、刑の言渡しが猶予される。
誤りです。心神喪失では無罪になり、心神耗弱では刑が減軽されます。

5 16歳未満の者の行為については、一律に責任能力に欠けるものとされており、犯罪は成立しない。
誤りです。16歳未満ではなく14歳未満です。14歳以上は犯罪少年、14歳未満は触法少年として罪には問われません。

第36回 問題147

事例を読んで、この場合の仮釈放の手続きに関する次の記述のうち、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
〔事 例〕裁判所の判決で 3 年の懲役刑を言い渡されて、刑事施設に収容されていたJさんは、仮釈放の審理の対象となった。
1 仮釈放の要件として、刑の執行から最短でも 2 年を経過している必要がある。
2 仮釈放の要件として、改悛の状があることがある。
3 仮釈放を許す処分を決定するのは、地方裁判所の裁判官である。
4 仮釈放の対象となるのは、初めて刑事施設に入った者に限られる。
5 仮釈放の期間中、Jさんの希望により、保護観察が付される。

1 仮釈放の要件として、刑の執行から最短でも 2 年を経過している必要がある。
誤りです。仮釈放の要件は、有期刑の場合は刑期の3分の1なので、1年を経過している必要があります。

2 仮釈放の要件として、改悛の状があることがある。
これが正解です。①悔悟の情、②改善更生の意欲、③再犯の恐れが無い、④社会の感情が仮釈放を是認、の4点が認められることで改悛の状があると判断されます。

3 仮釈放を許す処分を決定するのは、地方裁判所の裁判官である。
誤りです。これは地方更生保護委員会の権限です。

4 仮釈放の対象となるのは、初めて刑事施設に入った者に限られる。
誤りです。仮釈放の対象は「懲役又は禁固に処せられた者」ですので初めて刑事施設に入った者に限られません。

5 仮釈放の期間中、Jさんの希望により、保護観察が付される。
誤りです。仮釈放者には必ず保護観察が付されます。

第36回 問題150

刑の一部の執行猶予制度に関する次の記述のうち、正しいものを 1 つ選びなさい。
1 本制度の導入により、検察官による起訴猶予の処分は廃止された。
2 本制度の導入により、執行する刑の全てを猶予する制度は廃止された。
3 本制度の導入により、釈放後の生活環境の調整をする制度は廃止された。
4 本制度の刑の一部の執行猶予期間は、刑期とともに判決時に言い渡される。
5 本制度において、保護観察が付されることはない。

1 本制度の導入により、検察官による起訴猶予の処分は廃止された。
誤りです。起訴猶予もあります。

2 本制度の導入により、執行する刑の全てを猶予する制度は廃止された。
誤りです。執行猶予は刑の一部または全部の刑の執行を猶予します。

3 本制度の導入により、釈放後の生活環境の調整をする制度は廃止された。
誤りです。廃止されていません。

4 本制度の刑の一部の執行猶予期間は、刑期とともに判決時に言い渡される。
これが正解です。

5 本制度において、保護観察が付されることはない。
誤りです。執行猶予者には保護観察または更生緊急保護がありえます。

第37回 問題59

事例を読んで、次のうち、この手続きを表す名称として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(30歳)は、自動車の大幅な速度超過により、道路交通法違反の罪で検挙された。Aさんの事件は、簡易裁判所が、検察官の請求に基づき、命令により 100万円以下の罰金または科料を科することができる手続きで処理されることになった。
この手続きがとられるに当たって、Aさんは、被疑者として異議がないことを示していた。
1 起訴猶予
2 微罪処分
3 簡易送致手続
4 交通反則通告制度
5 略式手続

選択肢5が正解です。「略式手続」とは、通常の公開裁判によらず、書面の審理のみで罰金・過料を言い渡す特別な裁判手続です。選択肢2の微罪処分は検察官送致しない場合の処分ですが、事例では検察官送致で起訴されており、公判手続ではなく略式手続になっています。

第37回 問題63

2004年(平成16年)に制定された犯罪被害者等基本法に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 同法における犯罪被害者等とは、犯罪等により害を被った者及び遺族を除いた家族をいう。
2 同法の目的の一つに、再犯の防止と犯罪による被害を受けることの防止がある。
3 同法に基づき、ストーカー行為を規制するための処罰が整備された。
4 同法の基本的施策の一つに、損害賠償の請求についての援助がある。
5 同法に基づき、政府は犯罪被害者等基本計画を定めなければならない。

1 同法における犯罪被害者等とは、犯罪等により害を被った者及び遺族を除いた家族をいう。
誤りです。犯罪被害者等には遺族も含まれます。

2 同法の目的の一つに、再犯の防止と犯罪による被害を受けることの防止がある。
誤りです。再犯防止や犯罪被害防止が目的ではなく、犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることが目的です。

3 同法に基づき、ストーカー行為を規制するための処罰が整備された。
誤りです。犯罪被害者等基本法にはこのような規定はなく、ストーカー規制法に規定されています。

4 同法の基本的施策の一つに、損害賠償の請求についての援助がある。
正しいです。

5 同法に基づき、政府は犯罪被害者等基本計画を定めなければならない。
正しいです。

精神保健福祉士 第26回 問題18

犯罪被害者等基本法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1  国及び地方公共団体は、保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講ずるものとされている。
2  都道府県警察本部には、犯罪被害者等施策推進会議を設置することが定められている。
3  犯罪被害者の心理的外傷等に関する調査研究は、裁判所の責務とされている。
4  地方公共団体には、犯罪被害者等基本計画の策定が義務づけられている。
5  法務省内に犯罪被害者支援ネットワークを設置することが定められている。

1  国及び地方公共団体は、保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講ずるものとされている。
正しいです。

2  都道府県警察本部には、犯罪被害者等施策推進会議を設置することが定められている。
誤りです。都道府県警察本部ではなく、内閣府に置くことが定められています。

3  犯罪被害者の心理的外傷等に関する調査研究は、裁判所の責務とされている。
誤りです。裁判所ではなく、国及び地方公共団体の責務です。

4  地方公共団体には、犯罪被害者等基本計画の策定が義務づけられている。
誤りです。地方公共団体ではなく政府の義務です。

5  法務省内に犯罪被害者支援ネットワークを設置することが定められている。
誤りです。このような規定はありません。

次の記事

次は、心神喪失や心神耗弱等の状態で重大犯罪をした人への医療観察制度について。

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