今回の内容は常識的に解ける問題が多いので、サラッと流しましょう。
公益社団法人日本社会福祉士会「社会福祉士の倫理綱領」
社会福祉士の倫理綱領には、調査・研究に関する倫理の規定があります。
Ⅳ 専門職としての倫理責任
7.(調査・研究)
社会福祉士は、すべての調査・研究過程で、クライエントを含む研究対象の権
利を尊重し、研究対象との関係に十分に注意を払い、倫理性を確保する。
公益社団法人日本社会福祉士会「社会福祉士の行動規範」
Ⅳ 専門職としての倫理責任
社会福祉士は、調査・研究を行うにあたっては、その目的、内容、方法などを明らかにし、クライエントを含む研究対象の不利益にならないように、最大限の倫理的配慮を行わなければならない。
7-1 社会福祉士は、調査・研究を行うにあたっては、日本社会福祉士会が定める研究倫理に関す
る規程などに示された内容を遵守しなければならない。
7-2 社会福祉士は、調査・研究の対象者とその関係者の人権に最大限の配慮をしなければならな
い。
7-3 社会福祉士は、事例研究などにケースを提供するにあたっては、ケースを特定できないよう
に配慮し、その関係者に対して事前に了解を得なければならない。
一般社団法人社会調査協会「倫理規定」
一般社団法人社会調査協会は、社会調査に関するさまざまな活動や情報発信、社会調査士という資格を認定しており、社会調査における倫理規定を定めています。
倫理規定は全10条から成り、特に第3条、第7条、第8条には以下のような規定があります。社会調査における倫理として参考になりますので見ておきましょう。
第3条
調査対象者の協力は、法令が定める場合を除き、自由意志によるものでなければならない。会員は、調査対象者に協力を求める際、この点について誤解を招くようなことがあってはならない。
調査協力はあくまでも自由意志ということ。国勢調査なんかは義務だけどね。
第7条
調査対象者が年少者である場合には、会員は特にその人権について配慮しなければならない。調査対象者が満15歳以下である場合には、まず保護者もしくは学校長などの責任ある成人の承諾を得なければならない。
つまり、小学生などの子どもが調査対象になる時は、保護者等の承諾を得なければならないということだね。
第8条
会員は、記録機材を用いる場合には、原則として調査対象者に調査の前または後に、調査の目的および記録機材を使用することを知らせなければならない。調査対象者から要請があった場合には、当該部分の記録を破棄または削除しなければならない。
あたりまえのことだけど、録音するときは相手に伝えなければならないね。
過去問
第33回 問題85
社会調査の倫理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。1 社会福祉施設利用者に聞き取り調査をする際、聞き漏らしを防ぐための録音は、不安感を抱かせるので、調査対象者に告げずに行った。2 介護施設で職員へのマネジメントに関する調査をする際、施設長に対する職員の評価を正確に把握するために、全員に記名式の質問紙の提出を義務づけた。3 社会福祉学部の学生からの依頼で質問紙調査をする際、いつも出入りしている学生だったため、施設利用者に特に説明することなく質問紙を配布した。4 社会福祉施設利用者の家族の実情を聴く際、第三者が出入りしない個室で聞き取り調査を行った。5 施設にボランティア活動に来る小学生に質問紙調査をする際、本人たちの了承を得るだけでよい。
1 社会福祉施設利用者に聞き取り調査をする際、聞き漏らしを防ぐための録音は、不安感を抱かせるので、調査対象者に告げずに行った。
誤りです。録音する場合は、調査対象者に告げなければなりません。
2 介護施設で職員へのマネジメントに関する調査をする際、施設長に対する職員の評価を正確に把握するために、全員に記名式の質問紙の提出を義務づけた。
誤りです。本音を聞き出したい場合は、無記名式が適しています。また、回答内容によって不利益を被らないことなどを説明しなければなりません。
3 社会福祉学部の学生からの依頼で質問紙調査をする際、いつも出入りしている学生だったため、施設利用者に特に説明することなく質問紙を配布した。
誤りです。調査実施者、調査目的、実施方法、秘密保持等については事前に説明して調査対象者から了解を得なければなりません。
4 社会福祉施設利用者の家族の実情を聴く際、第三者が出入りしない個室で聞き取り調査を行った。
これが正解です。調査対象者のプライバシーの保護を最大限尊重しなければなりません。
5 施設にボランティア活動に来る小学生に質問紙調査をする際、本人たちの了承を得るだけでよい。
誤りです。調査対象者が小学生の場合、保護者や学校長など成人の承諾を得なければなりません。
第34回 問題84
社会調査の倫理や個人情報保護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。1 施設職員を調査対象者にして、福祉サービスの一般的な苦情対応に関する調査を実施する際に、施設職員は調査に協力する義務があると依頼状に明記した。2 調査者が、研究目的で住民基本台帳から作成した調査対象者の住所リストを、調査終了後に自分の主催する介護予防啓発イベントの案内状の郵送に利用した。3 質問紙調査の回答の仕方で分からない箇所があるので教えて欲しいという調査対象者からの問合せに、調査対象者全体への公平性に欠けるため説明を控えた。4 面接調査の音声データから記録を作成する際、調査対象者の名前や面接の中で出てきた人名を、アルファベット順に記号化した。5 面接調査終了後、調査対象者1名から協力辞退の申出があったため、その調査対象者のデータについて年齢を所属を書き換えてから分析に利用した。
1 施設職員を調査対象者にして、福祉サービスの一般的な苦情対応に関する調査を実施する際に、施設職員は調査に協力する義務があると依頼状に明記した。
誤りです。調査対象者の協力は自由意志でなければなりません。
2 調査者が、研究目的で住民基本台帳から作成した調査対象者の住所リストを、調査終了後に自分の主催する介護予防啓発イベントの案内状の郵送に利用した。
誤りです。このように本来の利用目的以外の目的のために利用してはいけません。
3 質問紙調査の回答の仕方で分からない箇所があるので教えて欲しいという調査対象者からの問合せに、調査対象者全体への公平性に欠けるため説明を控えた。
誤りです。このような問合せには誠実に対応しなければなりません。
4 面接調査の音声データから記録を作成する際、調査対象者の名前や面接の中で出てきた人名を、アルファベット順に記号化した。
これが正解です。個人を特定できる情報は、このように記号化する等により匿名化し、プライバシーの保護に努めなければなりません。
5 面接調査終了後、調査対象者1名から協力辞退の申出があったため、その調査対象者のデータについて年齢を所属を書き換えてから分析に利用した。
誤りです。年齢や所属を書き換えるとデータを改竄したことになり、行ってはなりません。辞退の申出があった場合は、その対象者のデータを削除する必要があります。
第36回 問題85
社会調査における倫理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会調査の対象者の抽出では、住民基本台帳から制約なく個人情報を閲覧できる。
2 調査の協力は自由意志であるので、対象者への調査に関する説明は不要である。
3 社会調査では、対象者に調査協力の謝礼を渡すことが不可欠である。
4 調査前に対象者の協力同意書があっても、調査の途中又は調査後の対象者からのデータ削除要請に応じることが求められる。
5 仮説に反した調査結果が出た場合、調査結果の公表を差し控える必要がある。
1 社会調査の対象者の抽出では、住民基本台帳から制約なく個人情報を閲覧できる。
誤りです。個人情報の抽出は住民基本台帳などから一定の手続きで得ることは可能ですが、制約なくということはありません。
2 調査の協力は自由意志であるので、対象者への調査に関する説明は不要である。
誤りです。調査の協力は自由意志ですが、対象者への調査に関する説明は十分に行う必要があります。
3 社会調査では、対象者に調査協力の謝礼を渡すことが不可欠である。
誤りです。調査協力の謝礼を渡すこともありますが、不可欠ではありません。
4 調査前に対象者の協力同意書があっても、調査の途中又は調査後の対象者からのデータ削除要請に応じることが求められる。
これが正解です。
5 仮説に反した調査結果が出た場合、調査結果の公表を差し控える必要がある。
誤りです。仮説に反した結果であっても、公表を差し控える必要はありません。
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よくぞここまでたどり着きました。
次からは、いよいよ最後の科目「医学概論」に入っていきます。
まずは、国際生活機能分類ICFから。
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