医学モデルと治療モデルは違います。見てみましょう。
ソーシャルワークの実践モデル
医学モデル
医学モデルは、医師が病理を特定し、診断、治療する過程をモデルとしています。問題の原因を個人の病理現象から見出し、それを取り除くことで解決しようとするモデルです。
治療モデル
治療モデルは、データによる客観的証拠(エビデンス)を元に問題を特定、診断し、その原因を取り除くことで解決しようとするモデルです。
生活モデル
生活モデルは、人と環境との相互作用に焦点を当てて、その中のクライエントを生活者として捉えるモデルです。エコロジカルアプローチを提唱したジャーメイン(Germain, C.)、ギッターマン(Gitterman, A.)が、生態学の視点をソーシャルワークに導入したものです。
システム理論に基づいて、人と環境を1つのシステムとして捉えます。システム理論とは、個人や集団、地域など、社会を構成する要素を相互に作用するシステムとして捉える考え方です。
ナラティブモデル
ナラティブモデルは、クライエントが語る物語(ストーリー)に着目し、その物語を通して問題解決方法を見出していきます。
詳しくはナラティブアプローチを参照してください。
ストレングスモデル
ストレングスモデルは、クライエントの肯定的態度や能力、強み(ストレングス)に着目し、主観性を尊重します。代表者はサリービー(Saleebey, D.)、ラップ(Rapp, C.)、ゴスチャ(Goscha, R.)です。
その他のモデル
障害の社会モデル
社会モデルは、障害は社会と個人の障害が相まって作り出されているものであり、その障壁を取り除くのは社会の責務であり社会全体の問題として捉える考え方です。
2006 年に国際連合で採択された障害者権利条約において考え方が示されており、2011 年に改正された障害者基本法では「社会的障壁の除去」など社会モデルの理念が取り入れられています。
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障害の概念は医学モデルから社会モデルへ、だね。
バイオサイコソーシャルモデル
バイオサイコソーシャルモデル(BPSモデル)は、1977年に精神科医のジョージ・エンゲル(Engel,G.L.)が提唱しました。
バイオ(生物)、サイコ(心理)、ソーシャル(社会)の3つの側面から患者を包括的に捉えるモデルです。
もともとは精神疾患を持つ患者を捉えるモデルでしたが、今ではその他の疾患にも適用されています。

まとめ
診断主義に代表される「医学モデル」は、課題を抱える人個人に原因があると捉えるモデルです。対して、ジャーメインやギッターマンが提唱した「生活モデル」は、人とその人を取り巻く環境を一体的なシステムとして捉えるシステム理論に基づいて、システム全体にアプローチすることで課題の解決を図ります。
1960年代以降のアメリカでは、複雑で多様な生活問題に対する援助の社会的要請が高まり、従来の個人のパーソナリティに治療の焦点をおいた伝統的なアプローチに対する批判が高まりました。
そのソーシャルワークの限界を打開するために生態学や一般システム理論などの新たな理論的枠組を背景に登場したのが「生活モデル」です。
1970年代以降、ポストモダンの思想がソーシャルワークにも影響し、「生活モデル」から「ストレングスモデル」へと移り変わり、エンパワメントアプローチやナラティブアプローチが発展していきます。
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医学モデル→生活モデル→ストレングスモデル、と移り変わってきたけど、現在でも3つ全て重要なモデルなので、医学モデルは古いから使われていないということはないよ。
過去問
第33回 問題106
次のうち、生活モデルにおけるクライエントの捉え方として、最も適切なものを1 つ選びなさい。
1 環境から一方的に影響を受ける人
2 成長のための力を有する人
3 治療を必要とする人
4 パーソナリティの変容が必要な人
5 問題の原因を有する人
1 環境から一方的に影響を受ける人
誤りです。生活モデルでは人と環境の相互作用で捉えます。
2 成長のための力を有する人
これが正解です。生活モデルでは、人間には成長する力が潜在的にあると捉えます。
3 治療を必要とする人
誤りです。これは治療モデルです。
4 パーソナリティの変容が必要な人
誤りです。これは治療モデルです。
5 問題の原因を有する人
誤りです。これは治療モデルです。
第36回 問題99
ソーシャルワークの実践モデルに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。1 生活モデルは、問題を抱えるクライエントの人格に焦点を絞り、問題の原因究明を重視する。
2 生活モデルは、人と環境の交互作用に焦点を当て、人の生活を全体的視点から捉える。
3 治療モデルは、人が疎外される背景にある社会の抑圧構造に注目する。
4 治療モデルは、問題を抱えるクライエントのもつ強さ、資源に焦点を当てる。
5 ストレングスモデルは、クライエントの病理を正確に捉えることを重視する。
1 生活モデルは、問題を抱えるクライエントの人格に焦点を絞り、問題の原因究明を重視する。
誤りです。これは治療モデルです。
2 生活モデルは、人と環境の交互作用に焦点を当て、人の生活を全体的視点から捉える。
これが正解です。
3 治療モデルは、人が疎外される背景にある社会の抑圧構造に注目する。
誤りです。これはエンパワメントアプローチです。
4 治療モデルは、問題を抱えるクライエントのもつ強さ、資源に焦点を当てる。
誤りです。これはストレングスモデルです。
5 ストレングスモデルは、クライエントの病理を正確に捉えることを重視する。
誤りです。これは治療モデルです。
第30回 問題100
ソーシャルワーク実践理論に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 グループワークを体系化したのは、リッチモンド(Richimond,M)である。
2 治療モデルを確立したのは、タフト(Taft,J.)とロビンソン(Robinson,V.)である。
3 生活モデルを提唱したのは、ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)である。
4 ジェネラリスト・ソーシャルワークは、ソーシャルワーク理論の統合化により発展した。
5 ナラティブ・アプローチは、専門性に基づく支援者の知識に着目した。
1 グループワークを体系化したのは、リッチモンド(Richimond,M)である。
グループワークを体系化したのは、コノプカ、コイル、トレッカーなどです。
リッチモンドとくればケースワークですので間違いです。
2 治療モデルを確立したのは、タフト(Taft,J.)とロビンソン(Robinson,V.)である。
タフトやロビンソンとくれば治療モデルではなく機能的アプローチです。
3 生活モデルを提唱したのは、ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)である。
生活モデルを提唱したのはジャーメインです。
ピンカスとミナハンは4つのサブシステムを提唱した人でしたね。その他にも社会資源の供給主体として①インフォーマルあるいは自然資源システム、②フォーマルな資源システム、③社会制度的資源システム、の3つを提唱しています。
4 ジェネラリスト・ソーシャルワークは、ソーシャルワーク理論の統合化により発展した。
正しいです。
ジェネラリスト・ソーシャルワークは1990年代のエコロジカル・ソーシャルワークの流れを受けて体系化が進み、ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークの3つの統合化によって発展しました。
5 ナラティブ・アプローチは、専門性に基づく支援者の知識に着目した。
間違いです。ナラティブ・アプローチは支援者の知識ではなく、クライエントの語りに焦点を当てます。
精神保健福祉士 第24回 問題23
- 次の記述のうち、ソーシャルワークの実践モデルとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 環境との交互作用に焦点を当て、適応状態を捉えるモデルを治療モデルという。
2 クライエントが語る物語に着目し、問題を定義するモデルを医学モデルという。
3 問題の原因を個人の病理現象から見いだし、それを取り除くことにより解決するモデルを生活モデルという。
4 クライエントの肯定的態度や能力に着目し、主観性を尊重するモデルをストレングスモデルという。
5 蓄積された統計データを用いて、問題の原因を特定するモデルをナラティブモデルという。
1 環境との交互作用に焦点を当て、適応状態を捉えるモデルを治療モデルという。
誤りです。これは生活モデルの内容です。
2 クライエントが語る物語に着目し、問題を定義するモデルを医学モデルという。
誤りです。これはナラティブモデルの説明です。
3 問題の原因を個人の病理現象から見いだし、それを取り除くことにより解決するモデルを生活モデルという。
誤りです。これは医学モデルの説明です。
4 クライエントの肯定的態度や能力に着目し、主観性を尊重するモデルをストレングスモデルという。
これが正解、ストレングスモデルです。
5 蓄積された統計データを用いて、問題の原因を特定するモデルをナラティブモデルという。
誤りです。これは治療モデルの説明です。
精神保健福祉士 第24回 問題27
- 就労移行支援事業を利用していたFさんは、運送会社の配送準備業務に従事し3週間が経過した。ある日、仕事帰りに事業所に立ち寄り、担当であるG精神保健福祉士に、「ミスしないようにと考えすぎなのか緊張が続き、疲れが取れません。これからも頑張っていきますが、紙に書いて丁寧に指示するという就職前の約束が実行されないので、困っています」と話した。G精神保健福祉士は話を整理し、「私の方から人事担当者に改めて話します」と答えた。
次のうち、G精神保健福祉士の対応の基となる考え方として、適切なものを1つ選びなさい。
1 社会モデル
2 クラブハウスモデル
3 社会的目標モデル
4 医療モデル
5 相互作用モデル
選択肢1が正解です。他の選択肢はグループワークのモデルを参照してください。
社会モデルは、障害は社会や環境によって作られていると捉えるモデルですので、事例では「紙に書いて丁寧に指示するという約束が実行されていない」という就職先の環境によって、Fさんの緊張が続くという障害が作り出されていると捉えられます。
精神保健福祉士 第26回 問題33
〔事 例〕 精神科クリニックで働くB精神保健福祉士は、中学の養護教諭からの紹介で、嫌なことがあるとリストカットするというCさん(15歳、女性)のインテーク面接を行った。当日母親が付き添っていたが、はじめにCさんから話を聞いた。B精神保健福祉士がバイオサイコソーシャルモデルにのっとって、話しを聞く中で、Cさんはクラスの誰とも付き合いがなく、休み時間も机に伏していることや、摂食障害の傾向もあることが分かってきた。親については、「父親はいつも酔っている。母親は怒ってばかりなので何も話していない。今日も理由が何か分からずに来ている」という。B精神保健福祉士はCさんが話してくれたことをねぎらい、医師の診察につなげた。
次のうち、バイオサイコソーシャルモデルの視点でB精神保健福祉士が着目したこととして、適切なものを1つ選びなさい。
1 問題を親には言わずに抱えてきたCさんの強さ
2 自傷行為や摂食障害に見られるCさんの病理
3 学校でも家でも孤立し無力化しているCさんの状態
4 母親が怒ってばかりの家庭に育ってきたというCさんの物語
5 Cさんの心身の状態と学校や家庭での状態との相互関連性
選択肢5が正解です。Cさんの心身の状態(バイオ、サイコ)、学校や家庭での状態(ソーシャル)の3つの側面からアプローチします。
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次は、ちょっと難しいソーシャルワークの価値について。


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