人間は、目や耳などの感覚器官で外部からの刺激を感じ、それを脳で知覚します。
実際に入ってきた外部からの刺激を脳というフィルターを通して知覚するので、人間に都合よく認識されたり補完されたりする例があります。
そのような例を見ていきましょう。
知覚の体制化
客観的にはランダムに配置されている図形などが、あるまとまりとして並んでいるように認識されることを知覚の体制化といいます。
下の図を見れば、自然に白と黒のまとまりが認識されてしまいますよね。
体制化=群化という語感で覚えてください。
知覚の体制化は以下のような種類があります
近接
近接は近いものがまとまって見える体制化です。
類同
類同というのは、最初に紹介した白と黒の例などですね。
同じ色同士がまとまって見えます。
閉合
閉合は、閉じているとまとまりとして見えやすいという体制化です。
下の図のような感じですね。
経験
経験は、夜の空に輝く星座などでしょうか。
一度星座を知ってしまうと、北斗七星とかオリオン座とか、まとまりとして自然に認識されてしまいますね。
知覚の恒常性
知覚の恒常性とは、周囲の環境などによって入ってくる刺激が異なっても、それを修正して正しい情報に認識される恒常性のことです。
知覚の恒常性には3種類あります。
・形の恒常性
・大きさの恒常性
例を知れば理解が深まりますので見ていきましょう。
下の図は、表面上は違う図形ですが、人間には見る角度を変えただけの同じ図形と認識できます。
つまり網膜に映る画像は違うものなのに、同じものとして認識できるということです。
これは「形の恒常性」です。
同じように、「色の恒常性」とは、例えば暗いところと明るいところで同じものを見ると違う色なのに、同じ色であることを脳が認識できます。
「大きさの恒常性」は、遠くにある物は小さく網膜には移りますが、その大きさは脳で補正して認識されますよね。
つまり遠くにあるから小さく見えているだけで実際の大きさはもっと大きい、とかですね。
このような恒常性3種類をしっかり理解しておきましょう。
錯視
視覚的な錯覚を「錯視」いいます。
代表的な例は下の図です。
どう見ても上の方が長く見えますが、実際は同じ長さです。
このように、確かに同じ長さですね。
他には、鉛筆をつまんで上下に振るとフニャフニャに見えるのも「錯視」です。
これは「ラバーペンシル錯視」と呼ばれます。
仮現運動
静止画が連続的に流れることで動いているように認識される、このような運動を仮現運動といいます。
静止画と静止画の間を脳が勝手に補完しているのですね。
知覚的補完というよ。
パラパラ漫画や電光掲示板などで、この仕組みが利用されています。
CDで再生される音は、実は飛び飛びなんだよね。
でも人間の脳は知覚的補完を行うので、自然なメロディーに聞こえるよね。
適刺激
適切な刺激ということで、光という刺激は目で、音という刺激は耳で、というような、それぞれの感覚器官に合った刺激のことを適刺激といいます。
例えば圧刺激は皮膚で感じるもので、目では感じられませんので適刺激ではありません。
図と地
ゲシュタルト心理学で用いられる図と地の概念を覚えましょう。
下の絵のように、人の意識の焦点に浮かび上 がる対象を「図」、その背景にあって意識下に沈む領域 を「地」と呼びます。
アフォーダンス
アフォーダンスというのは、知覚心理学者のギブソンが作った造語で、「afford(与える)」からきています。
アフォーダンスというのは、環境が人間を含む動物に対して与える価値や意味のことです。
環境が動物に様々な影響を与えて、それに適合するように動物が行動をとるってことだよ。
過去問
第31回 問題9
感覚・知覚に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 体制化における閉合の要因は,錯視の一つである。
2 形として知覚される部分を地,背景となる部分を図という。
3 仮現運動は,知覚的補完の一つである。
4 大きさの恒常性とは,網膜に映し出されたとおりに大きさを知覚することである。
5 圧刺激によって光を感じ取る場合,この刺激を適刺激という。
1 体制化における閉合の要因は,錯視の一つである。
間違いです。
体制化はまとまりとして捉えられて知覚することなので、錯視とは別物です。
2 形として知覚される部分を地,背景となる部分を図という。
図と地の説明が逆です。
3 仮現運動は,知覚的補完の一つである。
これが正解です。
実際には連続していないものを知覚的に補完して流れる映像として見えるのです。
4 大きさの恒常性とは,網膜に映し出されたとおりに大きさを知覚することである。
大きさの恒常性は網膜に映し出された大きさと異なる大きさに知覚することです。
5 圧刺激によって光を感じ取る場合,この刺激を適刺激という。
適刺激は「適した刺激」なので、目で光を感じる、耳で音を感じるなどです。
圧刺激は圧力なので、圧力で光を感じることはできないので適刺激ではありません。
第29回 問題10
感覚・知覚に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 明るい場所から暗い場所に移動すると、目が慣れるのに時間がかかる。これを明順応という。
2 中空にある月より地平線に近い月の方が大きく見える。これは錯視による。
3 コップの飲み口を斜め上から見ても丸く見える。これを大きさの恒常性という。
4 電光掲示板の文字が動いているように見える。これは近接の要因による。
5 風景を眺めていると奥行きを感じる。これは知覚的体制化による。
1 明るい場所から暗い場所に移動すると、目が慣れるのに時間がかかる。これを明順応という。
これは明順応ではなく暗順応です。
2 中空にある月より地平線に近い月の方が大きく見える。これは錯視による。
正解です。
ポンゾ錯視と呼ばれます。
地平線の近くにある月は大きく見えますね。
3 コップの飲み口を斜め上から見ても丸く見える。これを大きさの恒常性という。
これは大きさの恒常性ではなく形の恒常性です。
4 電光掲示板の文字が動いているように見える。これは近接の要因による。
これは仮現運動の説明です。
5 風景を眺めていると奥行きを感じる。これは知覚的体制化による。
間違いです。
この説明はバークリーが唱えた奥行き知覚の説明です。
網膜には平面に映っているのに立体で知覚することです。
写真やテレビは平面ですが立体に見えますよね。
第33回 問題9
知覚に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 外界の刺激を時間的・空間的に意味のあるまとまりとして知覚する働きを、知覚の体制化という。
2 明るい場所から暗い場所に移動した際、徐々に見えるようになる現象を、視覚の明順応という。
3 個人の欲求や意図とは関係なく、ある特定の刺激だけを自動的に抽出して知覚することを、選択的注意という。
4 水平線に近い月の方が中空にある月より大きく見える現象を、大きさの恒常性という。
5 二つの異なる刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小の差異を、刺激閾という。
1 外界の刺激を時間的・空間的に意味のあるまとまりとして知覚する働きを、知覚の体制化という。
これが正解です。
2 明るい場所から暗い場所に移動した際、徐々に見えるようになる現象を、視覚の明順応という。
これは暗順応の説明です。
3 個人の欲求や意図とは関係なく、ある特定の刺激だけを自動的に抽出して知覚することを、選択的注意という。
選択的注意というのは、情報の中からその人にとって重要な情報のみを選択して注意を向けることなので、個人の欲求や意図とは関係ないということはありません。
4 水平線に近い月の方が中空にある月より大きく見える現象を、大きさの恒常性という。
この月の例は何度も出てきていますが、「錯視」の例です。
5 二つの異なる刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小の差異を、刺激閾という。
刺激閾というのは、知覚できる最小の刺激量のことです。
次の記事
次は、様々な〇〇効果について、その意味を覚えていきます。
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