高齢化対策は国の喫緊の課題です。
それらは高齢化特有の疾患対策でもあります。
特に認知症対策は国が重点的に対策を講じています。
まずは高齢者に多い疾患の現状を知って、その対策などを学びましょう。

認知症
・アルツハイマー型認知症
・(脳)血管性認知症
・レビー小体型認知症
1位:アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、脳の中にアミロイドβなどの不要なタンパク質が溜まることが原因で、全体の6割以上を占める最も多い認知症です。
2位:血管性認知症
血管性認知症は、脳梗塞やくも膜下出血などが原因で、全体の2割程度を占めます。
特徴的な症状は、「まだら認知症」です。脳の血管の状態が改善すると症状がなくなるので、症状が出たり出なかったり「まだら」であるということで、そのように呼ばれます。
さらに特徴的な症状としては、原因感情がコントロールできず、抑うつや怒り、投げやりな態度になりやすいということが挙げられます。
3位:レビー小体型認知症
脳の神経細胞の中に、「レビー小体」と呼ばれる異常なタンパク質が溜まると発症します。
特徴的な症状は、幻視やパーキンソン症状が現れ、その後認知機能障害が起こります。
パーキンソン症状による姿勢の傾きや嚥下機能の低下から、誤嚥性肺炎になりやすいことも特徴です。
4位:前頭側頭型認知症
前頭葉や側頭葉前方の萎縮が原因で起こる認知症で、その8割程がピック病(前頭側頭葉変性症)です。
ピック病は、脳の神経細胞に「ピック球」というタンパク質が変性した塊が現れ、特有の人格変化、行動異常、言語機能障害を示す初老期の神経変性疾患で怒りっぽくなったりします。
40~60代に多い若年性認知症の一種であることは、他の認知症にはない特徴です。
認知症の種類 | 割合 | 原因 | 特徴 |
---|---|---|---|
アルツハイマー型認知症 | 6割以上 | 脳細胞の萎縮 | |
血管性認知症 | 2割以上 | 脳梗塞、くも膜下出血など | まだら認知症 |
レビー小体型認知症 | 1割以上 | 大脳質の神経細胞レビー小体が蓄積 | 幻視、パーキンソン症状 |
前頭側頭型認知症 | 1割程度 | 前頭葉や側頭葉前方の萎縮 | ピック病など |
高血圧
血液は、心臓が収縮したり拡張したりして全身に運ばれるため、血圧には収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)があります。
拡張期血圧:心臓が拡張したときの血圧
高齢になると血管の弾力性が失われることで血液の流れが悪くなるので高血圧になりやすいのですが、特に心臓が収縮した時に動脈にかかる圧力が高くなるため、収縮期血圧が上昇します。それによって収縮期血圧と拡張期血圧の差は増大します。
高血圧は、原因のはっきりしない本態性高血圧と他の疾患が原因で二次的に起こる続発性高血圧に分かれます。
本態性高血圧(一次性高血圧)
原因のはっきりしない高血圧のことを本態性高血圧と呼び、9割の高血圧がこれです。
生活習慣や遺伝的な要因と考えられています。
続発性高血圧(二次性高血圧)
腎疾患や内分泌疾患など血圧上昇の原因が特定できる高血圧のことで、1割程度がこれです。
この中でも腎実質性高血圧が最も多く、その原因は糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎といった腎障害です。
高血圧の種類 | 割合 | 原因 |
---|---|---|
本態性(一次性)高血圧 | 9割程度 | はっきりしない |
続発性(二次性)高血圧 | 1割程度 | ホルモン分泌異常、腎臓疾患、薬の副作用など |
糖尿病
糖尿病のほとんどは食べすぎなどの生活習慣が原因の2型糖尿病ですが、昔は糖尿病といえば自己免疫疾患として膵臓からインスリンが分泌されなくなる1型糖尿病した。
1型と2型がどちらだったかなーと考えるんですが、昔からあるのが1型ですから、不摂生によって最近出てきた方が2型です。
1型糖尿病
膵臓のランゲルハンス島β細胞が破壊される事によりインスリン分泌が著しく障害される自己免疫疾患です。
2型糖尿病
食べすぎなどの生活習慣や遺伝要因があり、糖尿病の95%は2型糖尿病です。
糖尿病の種類 | 割合 | 原因 |
---|---|---|
二型糖尿病 | 9割程度 | 食生活や遺伝 |
一型糖尿病 | 1割程度 | 膵臓でインスリンを作れない |
廃用症候群
廃用症候群とは、体の不活動状態が続くことによる二次的障害です。
身体機能が長期に使われない寝たきりなどによって、筋力低下や関節拘縮などの症状が引き起こされる病態です。
人間の体は、使われないとどんどん衰えていきます。

僕も入院して1週間寝たきりだったとき、歩けなくなって驚いたことを覚えてるよ。
寝たきりなどで体の同じ箇所が圧迫されると血流が滞り、皮膚が赤くなったりただれたりする「褥瘡(じょくそう)」と呼ばれる病態になります。

寝たきりの人が汗や失禁などで皮膚が湿潤していると褥瘡になりやすいことを覚えておいてね。
感音難聴
高齢になると高音から聞こえにくくなってきます。モスキート音(蚊の音)という高い周波数の音は高齢者が聞こえないと言われています。
難聴には、外耳から中耳までの音を伝える経路の障害(伝音難聴)と、内耳から聴覚中枢に至るまでの障害(感音難聴)がありますが、加齢による難聴の多くは有毛細胞の減少による感音難聴になります。
知能
2種類の知能について覚えましょう。
結晶性知能
長年の経験による知識技術などを結晶性知能といいます。
専門職の道具の使い方とか、料理の手順などもそうですね。
この結晶性知能は高齢になっても衰えにくいものです。

手に職をつけた人は、高齢でもその技術はあまり衰えないよね。
流動性知能
新しい環境に適応したり正確な情報処理を行ったりする能力のことです。
こちらは高齢になると衰えやすいです。
記憶
長期記憶より短期記憶が難しくなります。
いわゆる物忘れは加齢によって増えますよね。
詳細は「記憶」の記事で取り上げています。
加齢による影響 まとめ

高齢者関連用語
サルコペニア
加齢による筋力低下のことです。
フレイル
筋力低下に加えて認知機能も低下した状態です。
サルコペニアからフレイルに進行し、最終的に認知症などになります。
つまり健康と病気との中間の状態がフレイルです。
エイジズム
老いに対する誤解や偏見による高齢者差別のことです。

「高齢者は頑固だ」とか、エイジズムだね。
プロダクティブエイジング
高齢者は依存的だとか非生産的だとか見做されているところがあると思いますが、このようなステレオタイプな高齢者像を否定して、生産的、創造的活動ができる存在として高齢者を捉える考え方です。
過去問
第28回 問題5
高齢者にみられる病態の特徴に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 皮膚の湿潤は、褥瘡の発症リスクとなる。
2 フレイル(虚弱)は、慢性疾患の終末期の状態である。
3 感音難聴では、低い音から聞こえにくくなる。
4 変形性膝関節症は、廃用症候群に属する。
5 記憶障害では、短期記憶よりも長期記憶が低下する。
1 皮膚の湿潤は、褥瘡の発症リスクとなる。
これが正解です。多汗や失禁などで皮膚が長時間湿っていると、褥瘡になりやすいです。
2 フレイル(虚弱)は、慢性疾患の終末期の状態である。
フレイルは終末期状態ではなく、健康な状態と病気の中間くらいの病態のことです。
3 感音難聴では、低い音から聞こえにくくなる。
高齢者は低い音ではなく高い音から聞こえにくくなります。
4 変形性膝関節症は、廃用症候群に属する。
変形性膝関節症は膝関節のクッションである軟骨のすり減りや筋力の低下によって膝の関節に炎症が起きたり関節が変形して痛みが生じるもので、高齢の女性に多い疾患です。
廃用症候群は身体機能を使わないことで起こる様々な病態ですので、変形性膝関節症とは関係がありません。
5 記憶障害では、短期記憶よりも長期記憶が低下する。
加齢により短期記憶が顕著に低下するので、間違いです。
第32回 問題129
介護予防に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 指標としての健康寿命とは、健康状態で生活することが期待される平均期間である。
2 サルコペニアとは、加齢によって予備力が低下し、ストレスへの回復力が低下した状態で、要介護状態の前段階といえる。
3 2016年(平成28年)における平均寿命と健康寿命の差は、女性より男性の方が大きい。
4 フレイルとは、高齢期の筋量や筋力の低下、それに伴う身体機能低下で、サルコペニアの要因の一つである。
5 予防・健康づくりの推進のための介護予防と生活習慣病対策・フレイル対策は、一体的に介護保険で行われている。
1 指標としての健康寿命とは、健康状態で生活することが期待される平均期間である。
これが正解です。
2 サルコペニアとは、加齢によって予備力が低下し、ストレスへの回復力が低下した状態で、要介護状態の前段階といえる。
サルコペニアは筋力が低下した状態なので、要介護状態の前段階のような深刻な状態ではありません。
3 2016年(平成28年)における平均寿命と健康寿命の差は、女性より男性の方が大きい。
間違いです。男性:8.84年、女性:12.35年となっていて、男性は平均寿命が女性より短いのですが、女性より不健康である期間は短いので幸せかもしれません。
4 フレイルとは、高齢期の筋量や筋力の低下、それに伴う身体機能低下で、サルコペニアの要因の一つである。
フレイルはサルコペニアの要因の1つではなく、サルコペニアが進行することでフレイル(筋力+認知機能低下)になります。
5 予防・健康づくりの推進のための介護予防と生活習慣病対策・フレイル対策は、一体的に介護保険で行われている。
介護保険だけではなく、医療保険もですね。
第29回 問題2
加齢に伴う生理機能の変化に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 体重に占める水分の割合は増加する。
2 収縮期血圧と拡張期血圧の差は縮小する。
3 聴力は高周波音域から低下する。
4 肺活量は維持される。
5 流動性知能は維持される。
1 体重に占める水分の割合は増加する。
体水分率は高齢になると低下しますので間違いです。
2 収縮期血圧と拡張期血圧の差は縮小する。
縮小せず拡大します。
加齢によって特に収縮期血圧が上昇し、収縮期血圧と拡張期血圧の差が増大します。
3 聴力は高周波音域から低下する。
これが正解です。
モスキート音が聞き取りにくくなるアレです。
4 肺活量は維持される。
肺活量が維持されるわけありません。
低下します。
5 流動性知能は維持される。
流動性知能は新しい環境に適応したり正確な情報処理を行ったりする能力のことですから、高齢になると低下します。
逆に結晶性知能は維持されます。
第29回 問題6
レビー小体型認知症に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 米国人によって提唱された疾患である。
2 レビー小体は主に脊髄に蓄積する。
3 臨床診断に用いる中核的特徴にパーキンソン症状がある。
4 幻覚症状の中では幻聴が最も多い。
5 前頭側頭型認知症とも呼ばれる。
1 米国人によって提唱された疾患である。
米国人ではなく、日本人の小阪憲司らによって発見され提唱されました。
2 レビー小体は主に脊髄に蓄積する。
レビー小体は大脳皮質や脳幹に蓄積します。
3 臨床診断に用いる中核的特徴にパーキンソン症状がある。
これが正解です。
4 幻覚症状の中では幻聴が最も多い。
幻聴ではなく「幻視」が最も多いです。
5 前頭側頭型認知症とも呼ばれる。
前頭側頭型認知症とは別物です。
第32回 問題6
次のうち、脳血管性認知症の特徴的な症状として、適切なものを2つ選びなさい。
1 パーキンソン症状
2 まだら認知症
3 幻視
4 感情失禁
5 常同行動
1 パーキンソン症状
パーキンソン症状はレビー小体型認知症の特徴です。
2 まだら認知症
これは脳血管性認知症の特徴なので正しいです。
3 幻視
幻視はレビー小体型認知症の特徴です。
4 感情失禁
消去法でこれも正しいとの結論に達します。
5 常同行動
これは前頭側頭型認知症の症状の1つです。
第31回 問題5
高血圧に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 高血圧の診断基準は、収縮期(最高)血圧160mmHg以上あるいは拡張期(最低)血圧90mmHg以上である。
2 本態性高血圧(一次性高血圧)は、高血圧全体の約50%を占める。
3 続発性高血圧(二次性高血圧)の原因の第1位は、内分泌性高血圧である。
4 高血圧の合併症に脳血管障害がある。
5 血液透析の導入の原因の第1位は、高血圧性腎硬化症である。
1 高血圧の診断基準は、収縮期(最高)血圧160mmHg以上あるいは拡張期(最低)血圧90mmHg以上である。
160mmHgではなく140mmHgが高血圧の基準になっています。
2 本態性高血圧(一次性高血圧)は、高血圧全体の約50%を占める。
本態性高血圧は高血圧全体の90%を占めます。
本態性高血圧は原因の特定できない高血圧です。
3 続発性高血圧(二次性高血圧)の原因の第1位は、内分泌性高血圧である。
続発性高血圧の原因第一位は腎実質性高血圧です。
4 高血圧の合併症に脳血管障害がある。
これが正解です。
5 血液透析の導入の原因の第1位は、高血圧性腎硬化症である。
血液透析の導入の原因の第1位は糖尿病性腎症です。
第30回 問題4
高齢者に多くみられる病態に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 脱水になると、脈拍が少なくなる。
2 老人性難聴では、低音領域から聴力が低下する。
3 甲状腺機能低下症は、浮腫の原因となる。
4 栄養過多は、褥瘡の発生要因になる。
5 葉酸が不足すると、味覚障害が生じる。
1 脱水になると、脈拍が少なくなる。
脱水になると頻脈になるので間違いです。
2 老人性難聴では、低音領域から聴力が低下する。
老人性難聴では、高音領域から聴力が低下するので間違いです。
3 甲状腺機能低下症は、浮腫の原因となる。
これが正解です。
4 栄養過多は、褥瘡の発生要因になる。
褥瘡の発生要因になるのは低栄養状態です。
5 葉酸が不足すると、味覚障害が生じる。
味覚障害が生じるのは亜鉛不足です。
葉酸はDNAを合成する栄養素です。
第29回 問題5
生活習慣病に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 発症に生活習慣の関与が強いのは、2型糖尿病よりも1型糖尿病である。
2 アルコール摂取量は、メタボリックシンドロームの診断基準に含まれる。
3 生活習慣病の発症に、遺伝要因は関与しない。
4 喫煙は、膀胱がんの危険因子の一つである。
5 身体活動レベルの増大は、生活習慣病の発症リスクを上げる。
1 発症に生活習慣の関与が強いのは、2型糖尿病よりも1型糖尿病である。
生活習慣病は2型糖尿病ですので間違いです。
2 アルコール摂取量は、メタボリックシンドロームの診断基準に含まれる。
含まれません。
3 生活習慣病の発症に、遺伝要因は関与しない。
生活習慣病の発症に遺伝要因が関与していることがあります。
4 喫煙は、膀胱がんの危険因子の一つである。
これが正解です。
タバコは恐ろしい。
5 身体活動レベルの増大は、生活習慣病の発症リスクを上げる。
運動すれば生活習慣病の発症リスクを下げますので間違いです。
第30回 問題7
廃用症候群に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 関節拘縮は起こりにくい。
2 筋の萎縮は起こりにくい。
3 高齢者では起こりにくい。
4 起立性低血圧が起こりやすい。
5 急性期リハビリテーションで離床を早期から行うことで起こりやすい。
1 関節拘縮は起こりにくい。
関節拘縮が起こりやすいです。
2 筋の萎縮は起こりにくい。
筋の萎縮が起こりやすいです。
3 高齢者では起こりにくい。
高齢者で起こりやすいです。
4 起立性低血圧が起こりやすい。
これが正解です。
廃用症候群では筋肉を長期間使わないために萎縮しているので、突然立つと脳への血流が低下するので起立性低血圧が起こりやすいです。
5 急性期リハビリテーションで離床を早期から行うことで起こりやすい。
離床を早期から行えば廃用症候群を防げますよね。
次の記事
次は、認知症について詳しく取り上げます。

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