週末期の保険医療

人はいつか死にます。

今日、朝「いってきます」と出発した大切な家族が、帰らぬ人になるかもしれません。

そんな時、「いってらっしゃい」が言えなかったとしたら、一生後悔するかもしれません。

あなたの大切な人がそばにいることは、あたりまえではありません。

こんな急な別れがある一方で、高齢や病気で死期が近いことが分かれば、自分の意思を残しておくことができます。

そんな自分の意思を遺す仕組みについて見ていきましょう。

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週末期の意思決定支援

リビングウィル

リビング・ウィルとは「元気なうちに自分の意思を記しておくこと」で、終末期の医療やケアについての意思表明のようなものです。
リビング(living=生きている)、ウィル(will=意思)で、「生きているうちの(元気なうちの)意思」ということです。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning :ACP)は「人生会議」という愛称で呼ばれます。
本人と家族が医療者や介護者と一緒に、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定が出来なくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人を決めておくプロセスを意味しています。

カリスマくん
カリスマくん

厚生労働省は2018年にACPに関するガイドラインを示しているよ。

リビング・ウィルとアドバンス・ケア・プランニングの違い

リビング・ウィルは本人の意思を本人が表明する「意思表明書」、ACPは家族や医療者、介護者を交えて作成する「周囲へ向けた指示書」のようなものです。

安楽死と尊厳死

安楽死には「積極的安楽死」と「消極的安楽死(尊厳死)」の2種類あります。
一般的に「安楽死」とは「積極的安楽死」のことを指し、「消極的安楽死」のことを「尊厳死」といいます。

安楽死(積極的安楽死):回復の見込みがない病気などの場合、本人の意思に基づいて、その苦痛を和らげるために、薬物などで人為的に死を迎えさせること。
尊厳死(消極的安楽死):回復の見込みがない病気などの場合、本人の意思に基づいて、その人の尊厳のために人工呼吸器などの生命維持装置を外して延命治療を行わず、寿命が尽きたときに自然な死を迎えさせること。
カリスマくん
カリスマくん

日本では消極的安楽死(尊厳死)は日常行われているけど、積極的安楽死は違法だから、合法とされているスイスなどへ渡って安楽死を望む人も・・・

看取り後のケア

グリーフケア

グリーフとは悲嘆のことで、グリーフケアとは身近な人を亡くす等の「喪失」を体験した人の悲しみに寄り添い、立ち直り自立できるよう支援することです。

デスカンファレンス

デスカンファレンスは、患者を看取った後に行われるカンファレンスです。
終末期のケアを振り返って、今後のケアの質の向上に活かします。

過去問

第33回 問題72

日本のがん対策に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 都道府県は、がん対策基本法に基づき、がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられている。
2 地域がん診療連携拠点病院では、患者や家族に対して、必要に応じて、アドバンス・ケア・プランニング( ACP )を含めた意思決定支援を提供できる体制の整備が行われている。
3 がん診療連携拠点病院では、相談支援を行う部門としてがん相談支援センターが設置されている。
4 地域がん診療連携拠点病院では、社会福祉士がキャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている。
5 都道府県は、健康増進法に基づき、がん検診を実施することが義務づけられている。

1 都道府県は、がん対策基本法に基づき、がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられている。
誤りです。これは都道府県ではなく政府の役割です。

2 地域がん診療連携拠点病院では、患者や家族に対して、必要に応じて、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めた意思決定支援を提供できる体制の整備が行われている。
正しいです。

3 がん診療連携拠点病院では、相談支援を行う部門としてがん相談支援センターが設置されている。
正しいです。

4 地域がん診療連携拠点病院では、社会福祉士がキャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている。
誤りです。社会福祉士の義務としてこのような規定はありません。

5 都道府県は、健康増進法に基づき、がん検診を実施することが義務づけられている。
誤りです。これは都道府県ではなく市町村の役割です。

第34回 問題130

終末期ケアに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ホスピスでは、看取り後の家族らが抱える悲嘆を緩和することを終末期ケアにおける支援の中心とする。
2 デーケン(Deeken, A.)が提唱した死への準備教育(デス・エデュケーション)とは、症状の緩和、特に痛みの緩和、安楽をもたらすチームケアを行うための介護スタッフ教育のことである。
3 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)では、本人が医療・ケアチームと十分な話合いを行い、本人による意思決定を尊重する。
4 グリーフケアは、終末期を迎えた人に対して、積極的な延命治療を行わず、できる限り自然な死を迎えられるようにすることである。
5 緩和ケアとは、可能な限りの延命治療を行った上で人生の最期を迎えられるようにするケアである。

1 ホスピスでは、看取り後の家族らが抱える悲嘆を緩和することを終末期ケアにおける支援の中心とする。
誤りです。ホスピスでは患者本人の苦痛を緩和し安らかな最後を迎えられるようにするのが支援の中心です。

2 デーケン(Deeken, A.)が提唱した死への準備教育(デス・エデュケーション)とは、症状の緩和、特に痛みの緩和、安楽をもたらすチームケアを行うための介護スタッフ教育のことである。
誤りです。デーケンの死への準備教育(デス・エデュケーション)は、死と向き合い死生観を育むことを目的としており、介護スタッフが看取り後にケア内容を振り返るのはデス・カンファレンスです。

3 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)では、本人が医療・ケアチームと十分な話合いを行い、本人による意思決定を尊重する。
これが正解です。

4 グリーフケアは、終末期を迎えた人に対して、積極的な延命治療を行わず、できる限り自然な死を迎えられるようにすることである。
誤りです。グリーフケアとは、遺族が悲しみを乗り越えられるように支援することです。

5 緩和ケアとは、可能な限りの延命治療を行った上で人生の最期を迎えられるようにするケアである。
誤りです。緩和ケアでは積極的な延命治療は行いません。

介護福祉士 第32回 問題107 

終末期に自分が望むケアをあらかじめ書面に示しておくことを表す用語として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ターミナルケア(terminal care)
2 インフォームドコンセント(informed consent)
3 リビングウィル(living will)
4 デスカンファレンス(death conference)
5 グリーフケア(grief care)

選択肢3のリビングウィルが正解です。

介護福祉士 第33回 問題58 

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年(平成30年)改訂(厚生労働省))において、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)が重要視されている。
このアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を踏まえた、人生の最終段階を迎えようとする人への介護福祉職の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「生活上の悩みごとは、近くの地域包括支援センターに相談できます」
2 「今後の医療とケアについては、家族が代わりに決めるので安心です」
3 「今後の生活について、家族や医療・介護職員と一緒に、その都度話し合っていきましょう」
4 「口から食べることができなくなったら、介護職員に相談してください」
5 「意思を伝えられなくなったら、成年後見制度を利用しましょう」

どう考えても選択肢3しかありませんね。
それ以外の言葉がけは相手への配慮を欠いています。

介護福祉士 第29回 問題108

終末期に関する用語の説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1 尊厳死とは、薬物などを用いて意図的に死期を早めて死に至ることである。
2 積極的安楽死とは、自然な状態で死に至ることである。
3 脳死とは、自発呼吸は保たれているが意識がなく昏睡状態(こんすいじょうたい)にあることである。
4 グリーフケア(grief care)とは、判断能力が失われたときに本人に代わって決定を行う代理人を指定することである。
5 事前指示書とは、意思疎通が困難になったときのために、希望する医療ケアを記載した書類のことである。

1 尊厳死とは、薬物などを用いて意図的に死期を早めて死に至ることである。
誤りです。尊厳死とは、延命治療などをせずに尊厳を保ちながら自然な死を迎えることです。

2 積極的安楽死とは、自然な状態で死に至ることである。
誤りです。積極的安楽死とは、医師が薬物などを投与して積極的に安楽死させることで、日本では認められていません。

3 脳死とは、自発呼吸は保たれているが意識がなく昏睡状態(こんすいじょうたい)にあることである。
誤りです。脳死とは、生命維持にかかわる脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止した状態です。

4 グリーフケア(grief care)とは、判断能力が失われたときに本人に代わって決定を行う代理人を指定することである。
誤りです。グリーフケアとは、遺族が悲しみを乗り越えられるように支援することです。

5 事前指示書とは、意思疎通が困難になったときのために、希望する医療ケアを記載した書類のことである。
これが正解です。これはリビングウィル(事前指示書)のことです。

次の記事

ここからはまとめ記事です。

まずは心理的支援まとめから。

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