人はいつか死にます。
今日、朝「いってきます」と出発した大切な家族が、帰らぬ人になるかもしれません。
そんな時、「いってらっしゃい」が言えなかったとしたら、一生後悔するかもしれません。
あなたの大切な人がそばにいることは、あたりまえではありません。
こんな急な別れがある一方で、高齢や病気で死期が近いことが分かれば、自分の意思を残しておくことができます。
そんな自分の意思を遺す仕組みについて見ていきましょう。
終末期の意思決定支援
リビングウィル
リビングウィルとは「元気なうちに自分の意思を記しておくこと」で、終末期の医療やケアについての意思表明のようなものです。
リビング(living=生きている)、ウィル(will=意思)で、「生きているうちの(元気なうちの)意思」ということです。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)
アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning :ACP)は「人生会議」という愛称で呼ばれます。
本人と家族が医療者や介護者と一緒に、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定が出来なくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人を決めておくプロセスを意味しています。

厚生労働省は2018年にACPに関するガイドラインを示しているよ。
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインでは、人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続が示されています。
(1)本人の意思の確認ができる場合
① 方針の決定は、本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされることが必要である。そのうえで、本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえた本人による意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして方針の決定を行う。
② 時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて本人の意思が変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるような支援が行われることが必要である。この際、本人が自らの意思を伝えられな
い状態になる可能性があることから、家族等も含めて話し合いが繰り返し行われることも必要である。
③ このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとする。
(2)本人の意思の確認ができない場合
本人の意思確認ができない場合には、次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。
① 家族等が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
② 家族等が本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最善であるかについて、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。
③ 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
④ このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとする。
リビングウィルとアドバンス・ケア・プランニングの違い
リビングウィルは本人の意思を本人が表明する「意思表明書」、ACPは家族や医療者、介護者を交えて作成する「周囲へ向けた指示書」のようなものです。
安楽死と尊厳死
安楽死には「積極的安楽死」と「消極的安楽死(尊厳死)」の2種類あります。
一般的に「安楽死」とは「積極的安楽死」のことを指し、「消極的安楽死」のことを「尊厳死」といいます。
尊厳死(消極的安楽死):回復の見込みがない病気などの場合、本人の意思に基づいて、その人の尊厳のために人工呼吸器などの生命維持装置を外して延命治療を行わず、寿命が尽きたときに自然な死を迎えさせること。

日本では消極的安楽死(尊厳死)は日常行われているけど、積極的安楽死は違法だから、合法とされているスイスなどへ渡って安楽死を望む人も・・・
看取り後のケア
グリーフケア
グリーフとは悲嘆のことで、グリーフケアとは身近な人を亡くす等の「喪失」を体験した人の悲しみに寄り添い、立ち直り自立できるよう支援することです。
デスカンファレンス
デスカンファレンスは、患者を看取った後に行われるカンファレンス(会議)です。
終末期のケアを振り返って、今後のケアの質の向上に活かします。
臓器移植
臓器移植では、臓器を提供する人を「ドナー」、臓器提供を受ける人を「レシピエント」といいます。
臓器移植では、死亡(脳死、心停止)したドナーによる死体移植と、生体ドナーによる生体移植があり、日本では圧倒的に生体移植が多いです。

生きてる人の肝臓を切り取っても再生するから生体肝移植ができるんだね。
1997年、臓器移植法(臓器の移植に関する法律)が施行され、脳死下の臓器提供が可能になりました。
当時は、脳死下の臓器提供に本人の書面による意思表示と家族の承諾が必要でした。また、この意思表示は民法上の遺言可能年齢に準じて15歳以上を有効としていたため、15歳未満の脳死後の臓器提供はできませんでした。
2010年に臓器移植法が改正され、本人の意思が不明な場合にも家族の承諾があれば脳死下の臓器提供ができるようになり、15歳未満であっても脳死下の臓器提供が可能となりました。
また、親族に優先的に臓器を提供できる意思を書面で表示できる親族優先提供も可能となりました。

昔は小さなこどもの臓器移植は海外に行って莫大な費用を払っていたけど、今では国内でできるんだね。
過去問
第33回 問題72
日本のがん対策に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 都道府県は、がん対策基本法に基づき、がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられている。
2 地域がん診療連携拠点病院では、患者や家族に対して、必要に応じて、アドバンス・ケア・プランニング( ACP )を含めた意思決定支援を提供できる体制の整備が行われている。
3 がん診療連携拠点病院では、相談支援を行う部門としてがん相談支援センターが設置されている。
4 地域がん診療連携拠点病院では、社会福祉士がキャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている。
5 都道府県は、健康増進法に基づき、がん検診を実施することが義務づけられている。
1 都道府県は、がん対策基本法に基づき、がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられている。
誤りです。これは都道府県ではなく政府の役割です。
2 地域がん診療連携拠点病院では、患者や家族に対して、必要に応じて、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めた意思決定支援を提供できる体制の整備が行われている。
正しいです。
3 がん診療連携拠点病院では、相談支援を行う部門としてがん相談支援センターが設置されている。
正しいです。
4 地域がん診療連携拠点病院では、社会福祉士がキャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている。
誤りです。社会福祉士の義務としてこのような規定はありません。
5 都道府県は、健康増進法に基づき、がん検診を実施することが義務づけられている。
誤りです。これは都道府県ではなく市町村の役割です。
第34回 問題130
終末期ケアに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ホスピスでは、看取り後の家族らが抱える悲嘆を緩和することを終末期ケアにおける支援の中心とする。
2 デーケン(Deeken, A.)が提唱した死への準備教育(デス・エデュケーション)とは、症状の緩和、特に痛みの緩和、安楽をもたらすチームケアを行うための介護スタッフ教育のことである。
3 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)では、本人が医療・ケアチームと十分な話合いを行い、本人による意思決定を尊重する。
4 グリーフケアは、終末期を迎えた人に対して、積極的な延命治療を行わず、できる限り自然な死を迎えられるようにすることである。
5 緩和ケアとは、可能な限りの延命治療を行った上で人生の最期を迎えられるようにするケアである。
1 ホスピスでは、看取り後の家族らが抱える悲嘆を緩和することを終末期ケアにおける支援の中心とする。
誤りです。ホスピスでは患者本人の苦痛を緩和し安らかな最後を迎えられるようにするのが支援の中心です。
2 デーケン(Deeken, A.)が提唱した死への準備教育(デス・エデュケーション)とは、症状の緩和、特に痛みの緩和、安楽をもたらすチームケアを行うための介護スタッフ教育のことである。
誤りです。デーケンの死への準備教育(デス・エデュケーション)は、死と向き合い死生観を育むことを目的としており、介護スタッフが看取り後にケア内容を振り返るのはデス・カンファレンスです。
3 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)では、本人が医療・ケアチームと十分な話合いを行い、本人による意思決定を尊重する。
これが正解です。
4 グリーフケアは、終末期を迎えた人に対して、積極的な延命治療を行わず、できる限り自然な死を迎えられるようにすることである。
誤りです。グリーフケアとは、遺族が悲しみを乗り越えられるように支援することです。
5 緩和ケアとは、可能な限りの延命治療を行った上で人生の最期を迎えられるようにするケアである。
誤りです。緩和ケアでは積極的な延命治療は行いません。
第38回 問題90
事例を読んで、特定施設入居者生活介護の指定を受けたA養護老人ホームにおけるBさんへの対応として、次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Bさん(74歳、男性)はA養護老人ホームに7年前から入所している。数回の入院加療を経て、5日前に末期の肝臓がんで余命が6か月以内と主治医に診断された。現在のBさんは意思表示・意思決定が十分に可能であり、病状や余命に関する告知を受け、それを理解したうえで「ここで最期まで暮らしたい」と希望している。なお、Bさんと家族・親族とのつながりは50年以上の間、途絶えている。A養護老人ホームではACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方を重視し、Bさんの同意のもと、Bさんに関する今後の介護や医療の方針を「ガイドライン」に則って、「医療・ケアチーム」を組織して協議・決定することとした。
1 医療・ケアチームは、Bさんの病状に詳しい複数の看護職員で構成する組織で代替できる。
2 Bさんの意思決定を尊重し、方針に関する話し合いは繰り返さないようにする。
3 Bさんと医療・ケアチームが話し合った内容は、その都度文書にまとめておく。
4 Bさんと医療・ケアチームで方針の合意が得られない場合、施設長が判断する。
5 Bさんの意思が確認できなくなった場合は、家族の「推定意思」を尊重する。
(注) 「ガイドライン」とは、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂、厚生労働省)のことである。
選択肢3が正解です。
介護福祉士 第32回 問題107
終末期に自分が望むケアをあらかじめ書面に示しておくことを表す用語として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ターミナルケア(terminal care)
2 インフォームドコンセント(informed consent)
3 リビングウィル(living will)
4 デスカンファレンス(death conference)
5 グリーフケア(grief care)
選択肢3のリビングウィルが正解です。
介護福祉士 第33回 問題58
「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年(平成30年)改訂(厚生労働省))において、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)が重要視されている。
このアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を踏まえた、人生の最終段階を迎えようとする人への介護福祉職の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「生活上の悩みごとは、近くの地域包括支援センターに相談できます」
2 「今後の医療とケアについては、家族が代わりに決めるので安心です」
3 「今後の生活について、家族や医療・介護職員と一緒に、その都度話し合っていきましょう」
4 「口から食べることができなくなったら、介護職員に相談してください」
5 「意思を伝えられなくなったら、成年後見制度を利用しましょう」
どう考えても選択肢3しかありませんね。
それ以外の言葉がけは相手への配慮を欠いています。
介護福祉士 第29回 問題108
終末期に関する用語の説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1 尊厳死とは、薬物などを用いて意図的に死期を早めて死に至ることである。
2 積極的安楽死とは、自然な状態で死に至ることである。
3 脳死とは、自発呼吸は保たれているが意識がなく昏睡状態(こんすいじょうたい)にあることである。
4 グリーフケア(grief care)とは、判断能力が失われたときに本人に代わって決定を行う代理人を指定することである。
5 事前指示書とは、意思疎通が困難になったときのために、希望する医療ケアを記載した書類のことである。
1 尊厳死とは、薬物などを用いて意図的に死期を早めて死に至ることである。
誤りです。尊厳死とは、延命治療などをせずに尊厳を保ちながら自然な死を迎えることです。
2 積極的安楽死とは、自然な状態で死に至ることである。
誤りです。積極的安楽死とは、医師が薬物などを投与して積極的に安楽死させることで、日本では認められていません。
3 脳死とは、自発呼吸は保たれているが意識がなく昏睡状態(こんすいじょうたい)にあることである。
誤りです。脳死とは、生命維持にかかわる脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止した状態です。
4 グリーフケア(grief care)とは、判断能力が失われたときに本人に代わって決定を行う代理人を指定することである。
誤りです。グリーフケアとは、遺族が悲しみを乗り越えられるように支援することです。
5 事前指示書とは、意思疎通が困難になったときのために、希望する医療ケアを記載した書類のことである。
これが正解です。これはリビングウィル(事前指示書)のことです。
第38回 問題106
我が国の「臓器の移植に関する法律」に基づいた臓器提供に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 臓器提供者の書面による意思表示及び家族の承諾が必要である。
2 脳死状態での臓器提供は認められていない。
3 死体移植件数より生体移植件数の方が多い。
4 臓器売買は、日本人が海外で行った場合は処罰対象とならない。
5 臓器提供者と移植患者に関する情報は相互に共有される。
1 臓器提供者の書面による意思表示及び家族の承諾が必要である。
誤りです。臓器提供者の意思表示が無い場合でも家族の承諾があれば可能です。
2 脳死状態での臓器提供は認められていない。
誤りです。認められています。
3 死体移植件数より生体移植件数の方が多い。
これが正解です。日本国内では圧倒的に生体移植の方が多く、特に肝臓移植では大半が生体肝移植です。
4 臓器売買は、日本人が海外で行った場合は処罰対象とならない。
誤りです。処罰対象になります。
5 臓器提供者と移植患者に関する情報は相互に共有される。
誤りです。臓器提供者と移植患者には互いの情報は知らされません。
次の記事
ここからはまとめ記事です。
まずは心理的支援まとめから。



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