【精神障害福祉の歴史&入院形態】任意入院、医療保護入院、応急入院、措置入院、そして医療観察法の鑑定入院

身体障害者や知的障害者は戦後早くから福祉の対象になってきましたが、精神障害者は1993年の障害者基本法まで法的に規定されていませんでした。

精神障害者の虐げられてきた歴史を見ていきましょう。

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精神障害福祉の変遷

精神障害者は1993年の障害者基本法で法的に規定され、2005年の障害者自立支援法でやっと3障害が一元化されました。

精神障害者の福祉は、1950年「精神衛生法」→1987年「精神保健法」→1995年「精神保健福祉法」と流れていきます。

1950年「精神衛生法」

精神病者監護法と精神病院法が廃止になり私宅監護が禁止に。

精神衛生法の制定によって、精神障害者の「措置入院」と保護義務者の同意による「同意入院」の制度ができます。

措置入院は強制的な入院、同意入院は本人の同意ではなく家族の同意です。

1964年 ライシャワー事件

アメリカ駐日大使のライシャワー氏が統合失調症の少年に刺されるという事件が起こりました。この事件を機に精神障害者の隔離政策などが強化されていきます。

1965年 精神衛生法改正

ライシャワー事件を受けて、精神障害者の通院医療費公費負担や措置入院制度強化され、精神障害者の隔離政策が進んでいきます。

障害者総合支援法で規定される自立支援医療の「精神通院医療」は、精神障害者の通院医療費の公費負担制度です。障害福祉サービスの支給決定は市町村が行いますが、この「精神通院医療」だけは未だに都道府県が行っているのは、ライシャワー事件などの過去の経緯の名残だと思われます。

1984年 宇都宮病院事件

宇都宮病院で入院中の患者が看護師の暴行を受け死亡するという事件が起こりました。ライシャワー事件以降、精神障害者への虐待が全国の病院などで増えたと思われます。

1987年「精神衛生法」→「精神保健法」

精神衛生法から精神保健法となり、精神障害者の社会復帰、「任意入院」制度が創設されました。さらに「同意入院」という名称が「医療保護入院」と改称されています。

同意入院と聞くと、本人の同意と勘違いしてしまいますからね。

宇都宮事件で精神障害者への虐待が全国的に問題になり、やっと「任意入院」制度ができました。これは精神障害者本人の意思で入院できる制度です。それまでは「措置入院」と家族の同意による「同意入院」しかありませんでしたから、本人の意思では入院できなかったのです。驚くべきことです。

1993年 障害者基本法

障害者基本法で、初めて精神障害者が法的に位置づけられました。

1995年「精神保健法」→「精神保健福祉法」

精神保健法が精神保健福祉法となり、自立と社会経済活動への参加、精神保健福祉手帳制度が創設されました。

2005年 障害者自立支援法

障害者自立支援法の制定によって、身体・知的・精神の3障害が一元化されました。

精神障害者の入院5形態

上で見てきた精神障害者の入院形態をまとめます。

以下の内容は、精神保健福祉士と公認心理師受験生には必須です。社会福祉士国家試験にはあまり出題されません。

まとめ

入院形態本人の同意家族等の同意精神保健指定医の診察その他の条件備考入院権限
任意入院書面による本人意思の確認本人の申し出で退院可能だが精神保健指定医の判断で72時間の退院制限可能精神科病院管理者
医療保護入院不可1人 入退院後10日以内に知事に届け出
応急入院不可1人保護の依頼があるが家族等の同意が得られない72時間以内の入院、知事に届け出、知事指定の病院のみ
措置入院不可2人以上自傷・他害のおそれがある国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る都道府県知事
緊急措置入院不可1人自傷・他害のおそれが著しく緊急を要する72時間以内、指定医が1人しか確保できない場合の暫定措置

入院条件

任意入院は本人の同意による入院なので精神保健指定医の診察は不要です。

医療保護入院は家族等の同意による入院なので、精神保健指定医人以上の診察が必要です。

医療保護入院は、もともと同意入院と呼ばれていたのでしたね。家族等による同意という意味で。「家族等」とは配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人、該当者がいない場合は市町村長となります。

応急入院は、家族等からの同意が得られない場合に応急的に入院させる形態で、精神保健指定医1人以上の診察が必要です。

措置入院は、自傷・他害のおそれがある場合の強制的な入院で、精神保健指定医2人以上の診察が必要です。

緊急措置入院は、自傷・他害のおそれがあるが精神保健指定医2人の確保が難しい場合に、緊急的に精神保健指定医1人の診察で入院させる暫定措置です。

このように、応急入院と緊急措置入院はどちらも緊急時の一次的な対応ですので72時間以内の入院で、応急入院は知事指定の病院に限ります。

措置入院は、国立・都道府県立精神科病院又は指定病院に限ります。

入院権限

任意入院、医療保護入院、応急入院は入院する精神科病院管理者に権限がありますが、措置入院、緊急措置入院は都道府県知事に権限があります。

なので、措置入院と緊急措置入院は知事への届出は不要ですが、医療保護入院では入院及び退院後10日以内に都道府県知事へ届出、応急入院では入院後ただちに都道府県知事へ届け出なければなりません。

精神保健福祉士受験生の方は、より詳しく以下の内容を追加で覚えてください。

入院期間

任意入院は本人の意思で入院していますので、本人の申出で退院できます。ただし、精神保健指定医が認めれば72時間以内の退院制限が可能(特定医師の場合は12時間制限)です。

医療保護入院は、精神保健指定医の診察の場合は期限がありませんが、特定医師の診察では12時間以内となっています。

応急入院は、応急的な入院のため精神保健指定医の診察の場合は72時間以内で、特定医師の診察では12時間以内となっています。

緊急措置入院においても72時間以内となっています。

定期病状報告

応急入院と緊急措置入院は、72時間以内と短期なので定期病状報告は必要ありませんが、任意入院、医療保護入院、措置入院は、定期病状報告が必要です。

都道府県知事に対して報告します。

精神障害者の入院形態

上図の一番下に小さく書いてある内容が重要です。改めて、医療保護入院の同意対象となる「家族等」とは、 配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人、該当者がいない場合は市町村長です。

医療観察法による鑑定入院

精神障害者の入院5形態のほかに、犯罪を犯した精神障害者の入院形態があります。

詳しくは「医療観察法」で取り上げますが、殺人などの重大犯罪を犯した犯罪者が心神喪失等で無罪になったり不起訴になったりすると、検察官が地方裁判所に申し立て、地方裁判所で入院又は通院が決められますが、その決定が降りるまでの間(原則2か月、最長3カ月)、「鑑定入院」として鑑定入院医療機関に入院します。

入院の決定が降りると、厚生労働省指定の指定通院医療機関に入院します。

鑑定入院

まとめ

精神障害者の入院形態について、まず本人の意思による「任意入院」、次に本人の同意が得られず家族等の同意による「医療保護入院」、そして本人も家族等からも同意が得られない場合の「応急入院」、さらに自傷・他害のおそれありの強制的な「措置入院」、この4形態が基礎です。

措置入院で2人の精神保健指定医が確保できない時に1人の診断で強制的に入院させる「緊急措置入院」を加えて5形態になります。

「応急入院」と「緊急措置入院」は緊急的な対応なので72時間以内という制限があります。

過去問

第27回 問題60

事例を読んで、Gさんの入院に対する対応として、適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕Gさん(28歳)は精神障害があり家族はいない。過去に放火をしたため「医療観察法」による通院処遇を3年間受けて、2年前に裁判所から処遇終了の決定を受けている。現在は地域活動支援センターを利用している。最近、Gさんの状態が悪化したため、通院している精神科病院で精神保健指定医の診察を受けたところ、「自傷他害のおそれはないが入院が必要」と診断された。Gさんは入院に同意できる状態ではないが、後見人は入院に同意している。
1 「医療観察法」による鑑定入院の命令
2 「医療観察法」による入院処遇の決定
3 「精神保健福祉法」による措置入院
4 「精神保健福祉法」による医療保護入院
5 「精神保健福祉法」による応急入院

1 「医療観察法」による鑑定入院の命令
間違いです。医療観察法の処遇は終了しています。

2 「医療観察法」による入院処遇の決定
間違いです。医療観察法の処遇は終了しています。

3 「精神保健福祉法」による措置入院
間違いです。Gさんに自傷・他害のおそれはありません。

4 「精神保健福祉法」による医療保護入院
これが正解です。本人の同意が得られない場合に、「家族等」の同意による入院が医療保護入院です。
家族等とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人、該当者がいない場合は市町村長です。

5 「精神保健福祉法」による応急入院
間違いです。急を要するケースではありません。

ここからは精神保健福祉士の過去問です。精神保健福祉士国家試験には頻出であることがわかるでしょう。

精神保健福祉士 第23回 問題9

次のうち、精神保健指定医の診察の結果、応急入院が妥当と考えられる患者として、適切なものを 1 つ選びなさい。
1 自ら治療を求めて来院した不安障害の患者
2 妻が付き添って来院した振戦せん妄の患者
3 身元の全く分からない不穏で独語のある患者
4 家族に対して易怒的で、長男に連れてこられた前頭側頭型認知症の患者
5 幻覚・妄想が強く自傷他害のおそれのある統合失調症の患者

1 自ら治療を求めて来院した不安障害の患者
これは自らですので「任意入院」です。

2 妻が付き添って来院した振戦せん妄の患者
これは家族が付き添っているので「医療保護入院」です。

3 身元の全く分からない不穏で独語のある患者
これが正解、「応急入院」です。

4 家族に対して易怒的で、長男に連れてこられた前頭側頭型認知症の患者
これは家族が付き添っているので「医療保護入院」です。

5 幻覚・妄想が強く自傷他害のおそれのある統合失調症の患者
これは自傷他害のおそれがあるので「措置入院」です。

精神保健福祉士 第23回 問題10

次の記述のうち、精神障害者の入院形態として、正しいものを1つ選びなさい。
1 任意入院では、48時間に限り退院制限を行うことができる。
2 医療保護入院では、家族等の同意により本人を入院させることができる。
3 措置入院は、家庭裁判所の権限による入院形態である。
4 緊急措置入院は、夜間に限って行われる。
5 「医療観察法」による鑑定入院は、都道府県知事の権限による入院である。

1 任意入院では、48時間に限り退院制限を行うことができる。
間違いです。72時間です。

2 医療保護入院では、家族等の同意により本人を入院させることができる。
これが正解です。

3 措置入院は、家庭裁判所の権限による入院形態である。
間違いです。都道府県知事の権限です。

4 緊急措置入院は、夜間に限って行われる。
間違いです。夜間に限りません。緊急なのに夜間に限ってしまうと意味がありません。

5 「医療観察法」による鑑定入院は、都道府県知事の権限による入院である。
間違いです。鑑定入院は地方裁判所の裁判官が命じます。

精神保健福祉士 第23回 問題61

措置入院に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 精神保健指定医の権限で入院を決定する。
2 「精神保健福祉法」により、国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。
3 病院の管理者は、本人へ入院に関する告知を行う義務がある。
4 定期病状報告は市町村長に対して行う。
5 病院の管理者が措置の解除を行う。

1 精神保健指定医の権限で入院を決定する。
間違いです。都道府県知事の権限です。

2 「精神保健福祉法」により、国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。
これが正解です。

3 病院の管理者は、本人へ入院に関する告知を行う義務がある。
義務はありません。

4 定期病状報告は市町村長に対して行う。
都道府県知事の権限で入院するので、定期病状報告も都道府県知事に対して行います。

5 病院の管理者が措置の解除を行う。
都道府県知事の権限で入院するので、措置の解除も都道府県知事が行います。

精神保健福祉士 第21回 問題62

次のうち、医療保護入院に関する記述として、正しいものを 1 つ選びなさい。
1 都道府県知事の権限による強制入院のことである。
2 入院には、 2名以上の精神保健指定医の診察が必要である。
3 72時間に限り、指定病院に入院させることである。
4 入院に同意する「家族等」には、後見人と保佐人が含まれる。
5 精神科病院への入院時に最優先に選択されるよう法律に定められている。

1 都道府県知事の権限による強制入院のことである。
これは「措置入院」です。

2 入院には、 2名以上の精神保健指定医の診察が必要である。
これは「措置入院」です。

3 72時間に限り、指定病院に入院させることである。
これは「応急入院」です。

4 入院に同意する「家族等」には、後見人と保佐人が含まれる。
これが正解です。

5 精神科病院への入院時に最優先に選択されるよう法律に定められている。
「任意入院」への努力義務が規定されています。

精神保健福祉士 第22回 問題10

次の記述のうち、医療保護入院を検討すべき要件として、適切なものを1つ選びなさい。
1 本人が入院に同意する場合
2 本人が身体的虐待を受けている場合
3 本人に精神疾患に対する病識がなく、入院治療の必要性を理解できない場合
4 医療や保護に急速を要し、家族等の同意を得ることができない場合
5 自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある場合

1 本人が入院に同意する場合
これは「任意入院」です。

2 本人が身体的虐待を受けている場合
これは安全確保が第一で、医療保護入院とはズレています。

3 本人に精神疾患に対する病識がなく、入院治療の必要性を理解できない場合
これが正解です。本人の意思による任意入院が難しい場合に検討されます。

4 医療や保護に急速を要し、家族等の同意を得ることができない場合
これは「応急入院」です。

5 自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある場合
これは「措置入院」です。

精神保健福祉士 第19回 問題61

「精神保健福祉法」に規定されている入院に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。
2 任意入院は、精神保健指定医の診察により、24時間以内に限り退院を制限することができる。
3 医療保護入院は、本人の同意がなくても、家族等のうちいずれかの者の同意に基づき行われる。
4 医療保護入院は、患者に家族等がいない場合、都道府県知事の同意により入院させることができる。
5 措置入院は、自傷他害のおそれがあると認めた場合、警察署長の権限により入院させることができる。
(注)「精神保健福祉法」とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。

1 精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。
正しいです。「任意入院」の努力義務です。

2 任意入院は、精神保健指定医の診察により、24時間以内に限り退院を制限することができる。
間違いです。72時間です。

3 医療保護入院は、本人の同意がなくても、家族等のうちいずれかの者の同意に基づき行われる。
正しいです。

4 医療保護入院は、患者に家族等がいない場合、都道府県知事の同意により入院させることができる。
間違いです。都道府県知事ではなく市町村長です。

5 措置入院は、自傷他害のおそれがあると認めた場合、警察署長の権限により入院させることができる。
間違いです。警察署長ではなく都道府県知事の権限です。

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障害者福祉の歴史を学ぶと、「障害者基本法」が土台であることがわかるでしょう。

次は、障害者基本法を取り上げます。

精神障害者も、この法律ではじめて規定されました。

【障害者基本法】障害福祉の理念法(ノーマライゼーション、ソーシャルインクルージョン、合理的配慮、社会的障壁の除去、意思決定支援)
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