人間の欲望には際限がありません。
あれが食べたい、これが欲しい、ああなりたい、こうなりたい・・・。
このような欲求は階層的に順位づけられるというのがマズローの欲求階層説です。
5段階の階層
マズローの欲求階層説は5段階で設定され、低次の欲求(下の層)から満たされて高次の欲求(上の層)につながっていくと考えます。
第四層:自尊と承認の欲求
第三層:所属と愛の欲求
第二層:安全と安定の欲求
第一層:生理的欲求
最下層:生理的欲求
最下層は最も根源的な欲求として、食欲、性欲、睡眠欲などの「生理的欲求」が位置づけられています。
お腹がすいていたら、それ以外の欲求はなかなか出てこないよね。
第二層:安全と安定の欲求(安全欲求)
生理的欲求がある程度満たされたら、次は「安全と安定の欲求」が生まれてきます。
安全な環境にいたい、健康でいたい、モノを所有したい、財産を築きたいなどの欲求です。
第三層:所属と愛の欲求(社会的欲求)
生理的欲求、安全欲求がある程度満たされると、次は「所属と愛の欲求」です。
これは「社会的欲求」とも呼ばれ、集団に属したい、他者から愛されたいという欲求です。
第四層:自尊と承認の欲求(承認欲求)
社会的欲求が満たされると、次は「自尊と承認の欲求」です
認められたい、尊重されたいという欲求です。
アドラー心理学ではこの「承認欲求」を否定しているよ。人から認められたいという欲求を持っている限り、幸せにはなれないよ。
第五層:自己実現の欲求
最上位の欲求は「自己実現の欲求」です。
自分の持つ能力を発揮したい、達成感を味わいたい、などの欲求です。
マズローの欲求階層説まとめ
5つの欲求を見てきましたが、実は必ずしも下層の欲求が満たされないと上層の欲求が生まれないということではありません。
僕は三度の飯より絵を描くことが好き。つまり最下層の「生理的欲求」が満たされていなくても最上位の「自己実現の欲求」が生まれてくるってこと。
ピラミッドで表すと、どうしても下の階層から順番にと思ってしまいがちですが、必ずしもそうではありません。ただ、一応順位付けとして下の階層から満たされていくというのが一般論です。
また、欲求を「動機づけ」と捉えると、5種類の欲求は「欠乏動機」と「成長動機」に分けられます。
結局、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求はすべて「欠乏動機」です。
つまりそれが欠乏しているから欲するという性質の欲求です。
一方で、自己実現の欲求は「成長動機」です。
これは無いものを欲するのではなく、「成長」を求める欲求です。
そしてこの成長動機の越えたところに「無償の愛」という境地があるよ。これは国家試験には出題されませんのでスルーで。
過去問
第33回 問題8
マズロー(Maslow, A.)による人間の欲求階層又は動機づけに関する理論
について、次の記述のうち、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 階層の最下位の欲求は、人間関係を求める欲求である。
2 階層の最上位の欲求は、自尊や承認を求める欲求である。
3 階層の下から3番目の欲求は、多くのものを得たいという所有の欲求である。
4 自己実現の欲求は、成長欲求(成長動機)といわれる。
5 各階層の欲求は、より上位の階層の欲求が充足すると生じる。
1 階層の最下位の欲求は、人間関係を求める欲求である。
間違いです。最下位の欲求は「生理的欲求」です。
2 階層の最上位の欲求は、自尊や承認を求める欲求である。
間違いです。最上位の欲求は「自己実現の欲求」です。「自尊や承認の欲求」は「自己実現の欲求」の下です。
3 階層の下から3番目の欲求は、多くのものを得たいという所有の欲求である。
間違いです。下から3番目の欲求は「所属と愛の欲求」です。「所有の欲求」は下から2番目です。
4 自己実現の欲求は、成長欲求(成長動機)といわれる。
これが正解です。自己実現の欲求は「成長動機」、それ以外は「欠乏動機」です。
5 各階層の欲求は、より上位の階層の欲求が充足すると生じる。
間違いです。上位の欲求から満たされるのではなく、下層から満たされていきます。
第26回 問題8
マズローの人間の動機又は欲求理論に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 生理的欲求と承認欲求がかなり満足されたものになったら、さらに上位にある愛情を求めたくなると同時に、所属への渇望が生じるようになる。
2 幼児の場合、恐怖又は危険に対する反応が直接的かつ明瞭に出現するのは、幼児はこの反応を抑制しないからだと考えられている。
3 自己実現の欲求には、資格保持や社会に示す自信といった自尊心にかかわるものと、他者から受ける尊敬とか尊重と定義できる評判や名声、他者からの理解などがある。
4 承認又は自尊心の欲求が満たされれば人は安堵感を覚え、その後に不安や不満、又は新たな欲求が生じることはない。
5 音楽家は音楽を作り、画家は絵を描くように、人間は自分のなり得るものになりたいという欲求をもつ。これを承認の欲求と呼んでいる。
1 生理的欲求と承認欲求がかなり満足されたものになったら、さらに上位にある愛情を求めたくなると同時に、所属への渇望が生じるようになる。
誤りです。生理的欲求と「承認欲求」ではなく「安全欲求」です。
2 幼児の場合、恐怖又は危険に対する反応が直接的かつ明瞭に出現するのは、幼児はこの反応を抑制しないからだと考えられている。
これが正解です。
3 自己実現の欲求には、資格保持や社会に示す自信といった自尊心にかかわるものと、他者から受ける尊敬とか尊重と定義できる評判や名声、他者からの理解などがある。
誤りです。これは自己実現の欲求ではなく「承認欲求」です。
4 承認又は自尊心の欲求が満たされれば人は安堵感を覚え、その後に不安や不満、又は新たな欲求が生じることはない。
誤りです。承認欲求は上から二番目なので、これが満たされると「自己実現の欲求」が出てきます。
5 音楽家は音楽を作り、画家は絵を描くように、人間は自分のなり得るものになりたいという欲求をもつ。これを承認の欲求と呼んでいる。
誤りです。これが「自己実現の欲求」です。
介護福祉士 第32回 問題97
マズロー(Maslow, A.)の欲求階層説の所属・愛情欲求に相当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 生命を脅かされないこと
2 他者からの賞賛
3 自分の遺伝子の継続
4 好意がある他者との良好な関係
5 自分自身の向上
1 生命を脅かされないこと
これは安全欲求です。
2 他者からの賞賛
これは承認欲求です。
3 自分の遺伝子の継続
これは生理的欲求です。
4 好意がある他者との良好な関係
これが正解、所属・愛情欲求です。
5 自分自身の向上
これは自己実現の欲求です。
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マズローの欲求階層説やオペラント条件づけは、動機づけ理論の大元です。
次は様々な「動機づけ理論」を見ていきます。
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