【社会福祉六法&児童福祉六法】母子福祉法と母子保健法

戦後の福祉三法体制から1960年代には福祉六法体制が整いました。

児童福祉分野でも児童福祉六法と呼ばれる法律が同じころに整ってきます。

児童福祉六法

社会福祉六法

社会福祉六法は以下の6つの法律です。

1946年 生活保護法
1947年 児童福祉法
1949年 身体障害者福祉法
1960年 精神薄弱者福祉法
1963年 老人福祉法
1964年 母子福祉法
戦後すぐに福祉三法である生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法が制定され、1960年代に入って福祉六法が整いました。

戦後の福祉三法は、生活困窮者のための生活保護法、戦災孤児のための児童福祉法、傷痍軍人のための身体障害者福祉法でしたね。

児童福祉六法

児童福祉六法は以下の6つの法律です。

1947年 児童福祉法 
1961年 児童扶養手当法
1964年 母子福祉法 
1964年 特別児童扶養手当法 
1965年 母子保健法 
1971年 児童手当法 

児童福祉は、「児童福祉法」が柱です。

児童福祉法の制定によって、それまで民間の社会事業家たちの寄付金やわずかな交付金で運営していた児童保護事業が、国庫補助に基づく事業としての法的根拠になりました。

しかし、制度的には軽度障害者たちの保護収容を助長し、重度障害者は置き去りにされることになってしまいます。特に、重症心身障害児(重度の肢体不自由と精神薄弱を併発)は、肢体不自由児施設にも精神薄弱児施設にも入れないという状況でした。

重症心身障害児施設といえば、草野熊吉さんの「秋津療育園」、小林提樹さんの「島田療育園」、そして糸賀一雄「びわこ学園」だね。

児童の3大手当である児童手当法、児童扶養手当法、特別児童扶養手当法は、障害児者の所得補償制度で詳しく取り上げています。

以下の表に福祉六法と児童福祉六法を比較してみます。

共通しているのは、児童福祉法と母子福祉法です。

福祉六法に遅れること数年で児童福祉六法が整っています。

法律福祉六法児童福祉六法
1946年生活保護法 
1947年児童福祉法
1949年身体障害者福祉法 
1960年精神薄弱者福祉法 
1961年児童扶養手当法 
1963年老人福祉法 
1964年母子福祉法
1964年特別児童扶養手当法 
1965年母子保健法 
1971年児童手当法 

児童の年齢は18歳未満でしたが、例外的に「児童扶養手当法」「特別児童扶養手当法」「母子福祉法」は20歳未満で定義されていました。この3つの例外的法律は児童福祉六法の仲間です。

母子福祉法

1964年に福祉六法の一角として制定された母子福祉法は、1981年に「母子及び寡婦福祉法」と名称を変えて寡婦が対象となり、2002年には父子家庭が対象となり、2014年には「母子及び父子並びに寡婦福祉法」と名称を変えています。

下の図にあるように、児童扶養手当法でも現在では父子家庭が対象になっています。

母子福祉法の変遷

母子福祉法に規定されている内容を見ていきましょう。

第6条(定義)
児童の定義:20歳未満
寡婦の定義:配偶者のない女子であって、かつて配偶者のない女子として児童を扶養していたことのある者

この定義はしっかり覚えておきましょう。児童が20歳未満で定義されている例外的な法律であること、そして寡婦の定義も。

配偶者のない女子というのは、離婚や死別で配偶者がいないということですね。配偶者として児童を扶養したことのある者というのは、母子家庭の経験があるということですね。

第8条(母子・父子自立支援員
母子・父子自立支援員:都道府県知事、市長及び福祉事務所を管理する町村長は、社会的信望があり、かつ、次項に規定する職務を行うに必要な熱意と識見を持つている者のうちから委嘱。
配偶者のない者で現に児童を扶養しているもの及び寡婦に対し、相談に応じ、その自立に必要な情報提供及び指導、職業能力の向上及び求職活動に関する支援を行う。

母子・父子自立相談員は、母子家庭や父子家庭の相談に乗る仕事ですね。特に必要な資格はありません。

第12条(自立促進計画)
自立促進計画:都道府県の努力義務
一 当該都道府県等の区域における母子家庭等及び寡婦の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項
二 当該都道府県等の区域において母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のため講じようとする施策の基本となるべき事項
三 福祉サービスの提供、職業能力の向上の支援その他母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のために講ずべき具体的な措置に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する重要事項

自立促進計画は都道府県が策定するものということだけ押さえておきましょう。

第13条(母子福祉資金の貸付け
都道府県は、配偶者のない女子で現に児童を扶養しているもの又はその扶養している児童に対し、配偶者のない女子の経済的自立の助成と生活意欲の助長を図り、あわせてその扶養している児童の福祉を増進するため、次に掲げる資金を貸し付けることができる。
一 事業を開始し、又は継続するのに必要な資金
二 配偶者のない女子が扶養している児童の修学に必要な資金
三 配偶者のない女子又はその者が扶養している児童が事業を開始し、又は就職するために必要な知識技能を習得するのに必要な資金
四 前三号に掲げるもののほか、配偶者のない女子及びその者が扶養している児童の福祉のために必要な資金であつて政令で定めるもの

母子福祉法といえばこの「母子福祉資金の貸付制度」です。覚えておきましょう。

第27条(公営住宅の供給に関する特別の配慮
地方公共団体は、公営住宅法による公営住宅の供給を行う場合には、母子家庭の福祉が増進されるように特別の配慮をしなければならない。

母子福祉法といえば、「母子福祉資金の貸付制度」と並んで、この「公営住宅の供給に関する特別の配慮」も重要です。この2点は覚えておいてください。

母子保健法

「児童福祉法」には児童福祉の理念から児童福祉施設や障害児福祉サービスまで、幅広く規定されています。その中でも母子保健の部分は、母子保健法が制定されて児童福祉法から独立しました。

母子保健法には以下の内容が規定されています。

母子保健の向上に関する措置

・保健指導
・新生児の訪問指導
・健康診査(1歳6か月健診&3歳児健診) 
・妊娠の届出
・母子健康手帳
・妊産婦の訪問指導等
・低体重児の届出
・未熟児の訪問指導
・養育医療 
・医療施設の整備 などなど

保健指導、新生児の訪問指導、健康診査、母子健康手帳の交付、妊産婦の訪問指導、未熟児の訪問指導、養育医療、医療施設の整備など、これら全ては「市町村」の責務です。養育医療というのは入院の必要な未熟児に対して医療の給付を行うものです。

障害者総合支援法の自立支援医療で規定される「育成医療」は、「障害児」への医療給付です。養育医療は「未熟児」が対象ですので混同しないよう。

妊娠の届出や低体重児の届出も、「市町村」に対して行います。

母子健康包括支援センター

2016年に母子保健法が改正され、母子健康包括支援センターが規定されました。以下の役割を担います。設置については市町村に努力義務を課しています。

・母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進に関する支援に必要な実情の把握
・母子保健に関する各種の相談に応ずる
・母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導を行う
・母性及び児童の保健医療又は福祉に関する機関との連絡調整その他母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進に関し、厚生労働省令で定める支援を行う
・健康診査、助産その他の母子保健に関する事業を行う

結局、センターの役割は、妊産婦や乳幼児の状況を継続的・包括的に把握し、妊産婦や保護者の相談に対応しながら切れ目のない支援を提供するということです。

母子健康包括支援センターは法律名ですが、一般的には「子育て世代包括支援センター」と呼ばれます。

過去問

第27回 問題140

ひとり親家庭への支援施策に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 母子生活支援施設は、父子家庭も利用できる。
2 母子・父子自立支援員は、社会福祉士の資格が要件となっている。
3 母子及び寡婦福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法)は、1980年代に父子家庭を対象に含めた。
4 児童扶養手当は、父子家庭も対象にしている。
5 母子及び寡婦福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法)が定める自立促進計画は事業主がつくる計画である。

1 母子生活支援施設は、父子家庭も利用できる。
間違いです。父子家庭は利用できません。母子福祉法や児童扶養手当法では夫子家庭も対象になりましたが、手当や貸付が対象になるのと、入所施設が対象になるのとでは訳が違います。施設という暮らしの場に男性が入るのは運用面でもハードルが高いです。

2 母子・父子自立支援員は、社会福祉士の資格が要件となっている。
間違いです。社会福祉士の資格が要件にはなっていません。社会福祉士資格が要件になっている職業はありません。例えば社会福祉主事は社会福祉士であればなれますが、社会福祉士でなければなれないことはありません。

3 母子及び寡婦福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法)は、1980年代に父子家庭を対象に含めた。
間違いです。2002年の法改正時に父子家庭が対象になりました。

4 児童扶養手当は、父子家庭も対象にしている。
これが正解です。2010年からです。

5 母子及び寡婦福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法)が定める自立促進計画は事業主がつくる計画である。
間違いです。自立促進計画は都道府県の努力義務です。

第31回 問題138

母子及び父子並びに寡婦福祉法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 地方公共団体は、母子家庭・父子家庭が民間の住宅に入居するに際して、家賃の補助等の特別の配慮をしなければならない。
2 この法律にいう児童とは、18歳に満たない者をいう。
3 この法律にいう寡婦とは、配偶者と死別した女子であって、児童を扶養した経験のないものをいう。
4 都道府県は、児童を監護しない親の扶養義務を履行させるために、養育費の徴収を代行することができる。
5 都道府県は、母子家庭の母親が事業を開始・継続するのに必要な資金を貸し付けることができる。

1 地方公共団体は、母子家庭・父子家庭が民間の住宅に入居するに際して、家賃の補助等の特別の配慮をしなければならない。
間違いです。民間の住宅ではなく公営住宅です。民間の住宅の家賃補助などは自治体ごとにあったりなかったりです。

2 この法律にいう児童とは、18歳に満たない者をいう。
母子福祉法では児童を20歳未満と定義している例外的法律でしたね。

3 この法律にいう寡婦とは、配偶者と死別した女子であって、児童を扶養した経験のないものをいう。
この法律の寡婦とは、配偶者と死別や離婚などをした後、配偶者のない女子としてこれまでに20歳未満の児童を扶養していたことがある人です。
配偶者と死別した女子でも20歳未満の児童を扶養した経験のない人は寡婦とは言いません。

4 都道府県は、児童を監護しない親の扶養義務を履行させるために、養育費の徴収を代行することができる。
養育費徴収代行ができれば母子家庭のお母さんは助かるでしょうが、今のところそこまでの権限はありません。

5 都道府県は、母子家庭の母親が事業を開始・継続するのに必要な資金を貸し付けることができる。
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度という制度で実施されていますので正解です。
詳細は厚生労働省ホームページで

第29回 問題140

母子及び父子並びに寡婦福祉法に規定されていることとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 母子生活支援施設
2 母子福祉資金
3 養育支援訪問事業
4 児童扶養手当
5 婦人相談所

1 母子生活支援施設
これは間違いやすいから頻出です。
母子生活支援施設は児童福祉法に規定されています。児童福祉法か母子福祉法かでは大違いです。母子福祉法の児童は20歳未満、児童福祉法の児童は18歳未満なので、児童福祉法に規定されている母子生活支援施設は18歳を超えると出ていかなければなりません。でも行くところが無い子たちが過齢児として施設に残っているのです。

2 母子福祉資金
これが正解です。母子家庭等に資金を貸し出す制度です。

3 養育支援訪問事業
児童福祉法に規定されているので間違いです。

4 児童扶養手当
児童扶養手当は児童扶養手当法に規定されています。

5 婦人相談所
婦人相談所は売春防止法に規定されています。

第28回 問題140

次の記述のうち、母子保健法に規定されていることとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 母子保健の向上に関する措置は、妊産婦のみを対象として規定している。
2 低体重児の届出について規定している。
3 予防接種の実施について規定している。
4 乳児家庭全戸訪問事業について規定している。
5 母子生活支援施設について規定している。

1 母子保健の向上に関する措置は、妊産婦のみを対象として規定している。
間違いです。母子保健の措置は、妊産婦、乳児、幼児、保護者も対象です。

2 低体重児の届出について規定している。
これが正解です。低体重児とは2,500g未満の乳児のことです。

3 予防接種の実施について規定している。
間違いです。予防接種が規定されているのは「予防接種法」です。

4 乳児家庭全戸訪問事業について規定している。
間違いです。乳児家庭全戸訪問事業が規定されているのは「児童福祉法」です。
「児童福祉法」と「子ども・子育て支援法」には児童福祉サービスが規定されています。

5 母子生活支援施設について規定している。
間違いです。これは間違えやすいために頻出の内容です。母子生活支援施設は「母子福祉法」に規定されているように見せかけて、実は「児童福祉法」に規定されています。児童福祉法での児童は18歳未満、母子福祉法での児童は20歳未満、ということで児童福祉法で規定されている母子生活支援施設は18歳未満で原則出て行かなければなりません。

第32回 問題139

母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)の業務に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 配偶者からの暴力がある家庭で乳幼児を養育している母につき、子とともに一時保護する。
2 妊娠・出産・子育てに関する妊産婦等からの相談に応ずるとともに、必要に応じ、支援プランを策定する。
3 乳幼児がいる世帯の経済的な問題に関する保護者からの相談に応ずるとともに、必要に応じ、現金給付を行う。
4 保育所利用の申請に関する相談に応じるとともに、保育所利用の申請を受け付け、入所の可否の判断を行う。
5 病院又は診療所の付置が義務づけられており、必要に応じて出産や病気の診断、治療等の医療行為を行う。

1 配偶者からの暴力がある家庭で乳幼児を養育している母につき、子とともに一時保護する。
間違いです。これは「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」に規定されている「配偶者暴力相談支援センター」の仕事です。

2 妊娠・出産・子育てに関する妊産婦等からの相談に応ずるとともに、必要に応じ、支援プランを策定する。
これが正解です。2016年に母子保健法が改正され、「母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)」が規定されました。

3 乳幼児がいる世帯の経済的な問題に関する保護者からの相談に応ずるとともに、必要に応じ、現金給付を行う。
間違いです。現金給付は行いません。

4 保育所利用の申請に関する相談に応じるとともに、保育所利用の申請を受け付け、入所の可否の判断を行う。
間違いです。これは市町村の役割です。

5 病院又は診療所の付置が義務づけられており、必要に応じて出産や病気の診断、治療等の医療行為を行う。
間違いです。出産については経済的理由で入院助産ができない妊婦に対して、児童福祉法で規定される助産施設があります。

次の記事

ここまでで、「高齢者」、「障害者」、「児童」という福祉の主たる対象を学んできました。

次はこの3者に共通する「虐待防止法」について学びます。

【虐待防止法】対象は高齢者と障害者と児童のみ
日本の福祉は「高齢者」「障害者」「児童」の3者を中心に発展してきました。この3者は社会的弱者として認知されているからです。ですので虐待の概念もこの3者にしかありません。例えば親が児童を殴れば児童虐待、施設職員が高齢...

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