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医療倫理4原則&ドルゴフらの倫理7原則

ここでは、医療福祉系の専門職が知っておくべき倫理原則を紹介します。

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医療倫理の4原則

1979年、ビーチャム(Beauchamp,T,L.)とチルドレス(Childress,J,F.)は「医療倫理の原則」を提唱しています。

<医療倫理の4原則>
自律尊重(respect for autonomy)
無危害(non-maleficence)
善行(beneficence)
正義(justice)

自律性の尊重

「自律性」は、インフォームドコンセントを初めとする個人の自律的選択を保護する原理で、自律的な患者の意思決定を尊重せよということです。

インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスです。

インフォームドアセントとは、子どもの患者に治療や検査の説明を行い、本人の同意を得ることです。

カリスマくん
カリスマくん

インフォームドコンセントの児童版がインフォームドアセントだね。

無危害

「無危害」は、患者に危害を及ぼすのを避けよということです。今ある危害や危険を取り除き、予防することも含まれます。

善行

「善行」は、他者に積極的利益を与えるべきであるとする原理で、患者のために最善を尽くすということです。

正義

「正義」は配分的正義を意味し、患者に平等に資源が配分されるべきであるとする原理で、利益と負担を公平に分配せよということです。例えば、大事故や災害で一度に多くの患者が発生した場合に、重症度によって優先順位を決める「トリアージ等も含まれます。

ドルゴフらの倫理7原則

ドルゴフ(Dolgoff, R.)とローウェンバーグ(Loewenberg, F.M.)は、ジレンマに陥った際の行動指針として倫理原則を示しました。社会福祉における倫理的ジレンマに直面した際の行動指針として、以下の7つの倫理原則から成ります。

①生命の保護:クライエントの生命を保護することが最優先
②平等と不平等:すべての人が平等に扱われ、不平等を是正していく
③自己決定と自由:クライエントの自己決定と自由を尊重
④最小限の害:クライエントへの害を最小限にする
⑤生活の質:クライエントの生活の質の向上
⑥個人情報と守秘義務:クライエントの個人情報を保護する
⑦誠実さと開示:専門職として誠実に行動し、情報開示を適切に行う

①が最も優先されるべき原則であり、上位の原則が下位の原則よりも優先されるという順位付けがされています。

カリスマくん
カリスマくん

例えば、①生命の保護と②自己決定のジレンマで揺れた時は、生命の保護が優先されるということだね。

過去問

第34回 問題74

患者の治療方針の決定に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 肝臓がんとの診断を受けたAさん(66歳)は、インフォームドコンセントとして、検査結果の内容と今後の治療方針について医師から説明を受け、治療に同意した。
2 終末期にあるBさん(52歳)の家族は、インフォームドチョイスとして、本人に気付かれないように主治医と治療方針を決定した。
3 小児がん患者のCちゃん(11歳)の保護者は、インフォームドアセントとして、本人の意思を確認せずに終末期医療における延命医療の拒否を医師に伝えた。
4 終末期にあるDさん(78歳)と家族と医療従事者は、パターナリズムモデルに従って、繰り返し治療選択について話し合い、意思決定を行った。
5 E医師は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行したFさん(48歳)の意思を推測し、心肺停止時に心肺蘇生(そせい)措置をしない旨をリビングウィルとしてカルテに記載した。

1 肝臓がんとの診断を受けたAさん(66歳)は、インフォームドコンセントとして、検査結果の内容と今後の治療方針について医師から説明を受け、治療に同意した。
正しいです。インフォームドコンセントは説明&同意です。

2 終末期にあるBさん(52歳)の家族は、インフォームドチョイスとして、本人に気付かれないように主治医と治療方針を決定した。
誤りです。インフォームドチョイスは医師から説明を受けて提示された選択肢から選ぶことです。本人に気づかれないように決定してはいけません。

3 小児がん患者のCちゃん(11歳)の保護者は、インフォームドアセントとして、本人の意思を確認せずに終末期医療における延命医療の拒否を医師に伝えた。
誤りです。インフォームドアセントは子どもなどの判断能力が十分でない者に対するインフォームドコンセントですので、本人の意思を確認せずではダメです。

4 終末期にあるDさん(78歳)と家族と医療従事者は、パターナリズムモデルに従って、繰り返し治療選択について話し合い、意思決定を行った。
誤りです。パターナリズムとは「本人の意思を無視して一方的に決定すること」ですので、お互い話し合って意思決定することではありません。

5 E医師は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行したFさん(48歳)の意思を推測し、心肺停止時に心肺蘇生(そせい)措置をしない旨をリビングウィルとしてカルテに記載した。
誤りです。リビングウィルは本人の生前の意思ですから、医師が本人の意思を推測したものではありません。

第37回 問題106

医療倫理の4つの原則に含まれるもののうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 人間の尊厳
2 多様性の尊重
3 必要即応
4 正義
5 自律尊重

選択肢4と5が正解です。

公認心理師 第4回 問39

T.L.BeauchampとB.F.Childress が提唱した医療倫理の四原則に該当しないものを1つ選べ。
① 正義
② 説明
③ 善行
④ 無危害
⑤ 自律尊重

選択肢②のインフォームドコンセント等は「自律尊重」に含まれます。

第37回 問題69

ドルゴフ(Dolgoff, R.)らによって提示された倫理原則に関する次の記述のうち、正しいものを 1 つ選びなさい。
1 平等と不平等に関する倫理原則では、同じ環境に置かれている人には誰に対しても同じように対応しなければならない。
2 プライバシーと守秘義務に関する倫理原則では、全ての人が自らのプライバシーと守秘義務を強化しなければならない。
3 自律と自由に関する倫理原則では、全ての人々の生活の質を高めるような選択肢を選ばなければならない。
4 最小限の害に関する倫理原則では、あらゆる人の生活や生命を守らなければならない。
5 誠実と情報の開示に関する倫理原則では、クライエントへの関連の有無に関係なく、全ての情報を伝えなければならない。
(注)「ドルゴフ(Dolgoff, R.)ら」とは、2009 年に Ethical Decisions for Social WorkPractice(8th ed.)を著したドルゴフ、ローウェンバーグ(Loewenberg, F.M.)とハリントン(Harrington, D.)のことである。

1 平等と不平等に関する倫理原則では、同じ環境に置かれている人には誰に対しても同じように対応しなければならない。
これが正解です。

2 プライバシーと守秘義務に関する倫理原則では、全ての人が自らのプライバシーと守秘義務を強化しなければならない。
誤りです。これはクライエントの個人情報保護に関する原則です。

3 自律と自由に関する倫理原則では、全ての人々の生活の質を高めるような選択肢を選ばなければならない。
誤りです。自律と自由に関する倫理原則は、クライエントの自己決定と自由を尊重するという原則です。

4 最小限の害に関する倫理原則では、あらゆる人の生活や生命を守らなければならない。
誤りです。最小限の害に関する倫理原則は、クライエントへの害を最小限にするという原則です。

5 誠実と情報の開示に関する倫理原則では、クライエントへの関連の有無に関係なく、全ての情報を伝えなければならない。
誤りです。誠実と情報の開示に関する倫理原則は、専門職として誠実に行動し、情報開示を適切に行うという原則です。

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コメント

  1. のの より:

    いつも楽しく勉強させていただいており感謝しています。
    さて、「過去問」の「第34回 問題74」の解答が記載されておりませんので、ご教授ください。

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