援助関係いろいろ
ラポール
ラポールは、フランス語の「橋をかける」という意味から、「心と心が繋がっている状態」「相手と親密な関係」「信頼関係」を意味します
パートナーシップ
パートナーシップとは、援助者と被援助者がお互いを重要なパートナーとして捉え、共に課題に取り組む関係性を表します。
アタッチメント
アタッチメントは、「愛着」「くっつく」という意味で、愛着障害のことをアタッチメント障害といったりします。親子間の愛着や、クライエントが支援者に依存している状態を表す用語です。
転移、逆転移
クライエントが支援者に対して向ける感情や考えを精神分析では転移と言います。
逆に支援者がクライエントに向ける感情を逆転移と言います
パターナリズム
パターナリズムは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することです。
父権主義や温情主義などとも言われますが、父親が子どもに対して良かれと思って子供の意見を聞かずに物事を決めること、医者が患者の意見を聞かずに治療方法を決めたり、というのもパターナリズムの一例です。


パターナリズムの対義語はマターナリズムで、相手の同意を得て寄り添いつつ決めていくことだね。パターナリズムは英語のパターンとは何の関係もないからね。
バウンダリー
バウンダリー(boundary)とは、自分と他者を区別する境界線を意味する言葉です。心理学や精神医療の分野では、自分と他者を区別する心の境界線として用いられます。
バウンダリーが曖昧になると、みんなも自分と同じ感じ方をするという思い込みや、NOと言わなければならない場面でNOと言えない等の状況が生じます。
対人援助職にとってクライエントとのバウンダリーが曖昧になることは致命的です。
バウンダリーを保つには、自分と他者を区別する境界線を意識し、信頼と尊重に基づく関係性を築くことが大切です。
過去問
第32回 問題107
ソーシャルワークにおける援助関係に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ラポールとは、被援助者に代わって援助者が意思決定することを表す。
2 パートナーシップとは、援助者と被援助者が共に課題に取り組む関係性を表す。
3 逆転移とは、被援助者が自己の感情を援助者に向けることを表す。
4 パターナリズムとは、援助者と被援助者間の情動的な絆を表す。
5 アタッチメントとは、被援助者が援助者から自立している状態を表す。
1 ラポールとは、被援助者に代わって援助者が意思決定することを表す。
間違いです。
ラポールとは、信頼関係を構築することです。
2 パートナーシップとは、援助者と被援助者が共に課題に取り組む関係性を表す。
これが正解です。
3 逆転移とは、被援助者が自己の感情を援助者に向けることを表す。
逆転移は援助者が被援助者に自己の感情を向けることです。
普通は被援助者が援助者に自己の感情を向けるのが自然なので、その「逆」です。
4 パターナリズムとは、援助者と被援助者間の情動的な絆を表す。
パターナリズムとは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することです。
5 アタッチメントとは、被援助者が援助者から自立している状態を表す。
アタッチメントはくっついている状態のことなので、自立している状態とは真逆です。
第35回 問題104
ソーシャルワークにおける援助関係に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 転移とは、ソーシャルワーカーが、クライエントに対して抱く情緒的反応全般をいう。
2 統制された情緒的関与とは、ソーシャルワーカーが、自らの感情を自覚し、適切にコントロールしてクライエントに関わることをいう。
3 同一化とは、ソーシャルワーカーが、クライエントの言動や態度などに対して、 自らの価値観に基づく判断を避けることをいう。
4 エゴグラムとは、ソーシャルワーカーが、地域住民同士の関係について、その相互作用 を図式化して示すツールをいう。
5 パターナリズムとは、ソーシャルワーカーが、クライエントの意思に関わりなく、本人の利益のために、本人に代わって判断することをいう。
1 転移とは、ソーシャルワーカーが、クライエントに対して抱く情緒的反応全般をいう。
誤りです。これは逆転移です。
2 統制された情緒的関与とは、ソーシャルワーカーが、自らの感情を自覚し、適切にコントロールしてクライエントに関わることをいう。
正しいです。統制された情緒的関与は、バイステック7原則の1つです。
3 同一化とは、ソーシャルワーカーが、クライエントの言動や態度などに対して、 自らの価値観に基づく判断を避けることをいう。
誤りです。同一化とは、自分にない優れた能力や名声を持つ他者を真似て自分を近づけることで自分自身の価値を高めたり、劣等感やコンプレックスから逃れようとするものです。
4 エゴグラムとは、ソーシャルワーカーが、地域住民同士の関係について、その相互作用 を図式化して示すツールをいう。
誤りです。これはエコマップです。エゴグラムはアメリカの心理学者エリック・バーン博士が創始した交流分析という人間関係の心理学理論に基づいて作られた性格診断テストです。
5 パターナリズムとは、ソーシャルワーカーが、クライエントの意思に関わりなく、本人の利益のために、本人に代わって判断することをいう。
正しいです。
精神保健福祉士 第27回 問題28
地域活動支援センターで精神保健福祉士の実習を行っている学生Aさんは、利用者Bさんとの関係形成を進めている。Bさんから「友人ができなくて寂しい」と聞き、自分もそのような経験があって悩んだことを自己開示した。その日の実習を終え、帰り支度をしていると、Bさんから声を掛けられ「私と似たような経験をしているAさんなら、私のことを分かってくれる。友達になってほしい」と言われた。
AさんはBさんから信頼されているのだと思い「実習中ならいいですよ」と答えた。次の日、Bさんから「今日から友達ね」と声を掛けられた。Aさんは昨日の対応で良かったのか心配になり、実習指導者のC精神保健福祉士に相談すると「専門的援助関係について、改めて考えていきましょう」と指導を受けた。
次のうち、C精神保健福祉士がAさんに指導した内容として、適切なものを1つ選びなさい。
1 バターナリズム
2 非審判的態度
3 バウンダリー
4 ナチュラルサポート
5 役割拘束
選択肢3が正解です。
精神保健福祉士 第19回 問題21
精神科病院を退院したAさんは、次第に昼夜逆転した生活となり、バランスの取れた食事もできていない状況にあった。精神科病院のB精神保健福祉士は、受診時にAさんと相談室で面接を行い、生活のリズムを整えることがAさんのために必要だと考え、デイケアの利用を勧めた。しかし、Aさんは、「デイケアには行きたくない。自分は退院しているし、やりたいことがある」と語った。B精神保健福祉士はAさんの思いを聞きつつも、Aさんの生活に不安を感じ、これからどのように関わっていけばよいか悩んだ。次のうち、B精神保健福祉士が抱く倫理的ジレンマとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントの利益と所属機関の利益2 秘密保持とプライバシー3 自己決定とパターナリズム4 バウンダリーとクライエントの利益5 専門職的価値と個人的価値
選択肢3が正解です。「デイケアには行きたくない」という自己決定と、「デイケアで生活のリズムを整えることがAさんのために必要」というパターナリズムの間での倫理的ジレンマです。
次の記事
次は、バイステック7原則について見てみましょう。
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