統計学における「尺度」について学びましょう。
量的調査の質問紙やアンケートなどを作成するときは選択肢を作る必要がありますが、その時の選択肢の性質は4種類に分けられます。
回答法
2件法
「はい」「いいえ」で回答します。
単一回答法
選択肢から1つを選びます。
複数回答法
選択肢から複数を選びます。
数量回答法
数値で回答します。
リッカート法
提示された文に回答者がどの程度合意できるかを回答します。
順位回答法
選択肢に順位をつけます。
自由記述法
自由に記述します。
4種類の尺度
名義尺度
「1.男性」「2.女性」
「1.京都」「2.大阪」「3.奈良」
「1.はい」「2.いいえ」「3.どちらでもない」
名義尺度は、このような数的意味のない名義としての性質のみを持つ尺度のことです。
足し算や引き算は意味がありません。
統計量としては度数や最頻値を求める事ができます。
順序尺度
「1.高い」「2.普通」「3.低い」
「1.非常に満足」「2.やや満足」「3.普通」「4.やや不満」「5.とても不満」
順序尺度は、このように順序に意味のある尺度です。
順序に意味があるだけで、足し算や引き算には意味がありません。
リッカート尺度
順序尺度の1つとしてリッカート尺度があります。
リッカート尺度は、提示された文に回答者がどの程度合意できるかを回答するもので、リッカートという人が提唱しました。
例えば、「健康のためには毎日の運動が重要だ」という質問について
2.ある程度同意できる
3.どちらともいえない
4.あまり同意できない
5.全く同意できない
など、5段階や7段階で設定されていることが多いです。
間隔尺度
間隔尺度は、例えば温度や西暦など、その間隔に意味がある尺度です。
足し算や引き算には意味がありますが、掛け算や割り算には意味がありません。
ゼロ点が意味を持たないからです。
0℃や西暦0年は、「なにもない」というゼロを意味しません。
統計量としては、平均や標準偏差を求めることができます。
比例尺度
比例尺度は、体重や速度など、その比に意味がある尺度です。
例えば、体重が40kgのAさんと60kgのBさんでは、BさんはAさんの1.5倍の体重ということが言えますよね。
先ほどの間隔尺度である温度などは、その比に意味がありませんので、20℃は10℃の2倍の温度とはいいません。
なぜならゼロ点に「なにもない」という意味がないからです。
身長や体重はゼロが意味を持ち、体重ゼロは「体重がない」という意味になりますよね。
比例尺度はあらゆる統計量を求めることができる、最上位の尺度です。
代表値と4つの尺度
代表値には平均値、中央値、最頻値などがありますが、その中でも、「最頻値」は4つの尺度全てに意味があります。最頻値というのは度数の最も大きな選択肢のことですから、選択肢が数値であろうが「はい」「いいえ」であろうが、存在します。
しかし中央値となると、名義尺度には存在しません。名義尺度には順番がないので中央を選べません。順序尺度は数値ではありませんが順番に並んでいるので中央値が求められます。
平均値はそもそも数値でなければ平均がとれませんので間隔尺度と比例尺度でのみ算出できます。
尺度 | 平均値 | 中央値 | 最頻値 |
---|---|---|---|
名義尺度 | × | × | 〇 |
順序尺度 | × | 〇 | 〇 |
間隔尺度 | 〇 | 〇 | 〇 |
比例尺度 | 〇 | 〇 | 〇 |
過去問
第25回 問題86
測定の尺度水準に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 名義尺度は、単に対象を分類することだけに意味があるものなので、代表値を求めることはできない。
2 順序尺度は、名義尺度のようにただ分類するだけではなくて測定値の大小にも意味があるので、算術平均を計算することにも意味がある。
3 間隔尺度は、測定値の順序だけでなくその間隔(=差)にも意味があるが、測定値の比には意味がないので、「3と1の差」は「2と1の差」の2倍であるとは言えない。
4 比例尺度(比率尺度、比尺度)では測定値がゼロとなる点が決まっているが、間隔尺度では尺度上のどこをゼロ点とするかが自由に定められる。
5 名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比例尺度のうち、中央値・算術平均・標準偏差の3つの統計量すべてを有意味に計算することができるのは、比例尺度のみである。
1 名義尺度は、単に対象を分類することだけに意味があるものなので、代表値を求めることはできない。
名義尺度でも代表値を求めることができます。
代表値というのは平均とか最頻値とかなので、名義尺度でも最頻値は定められますね。
2 順序尺度は、名義尺度のようにただ分類するだけではなくて測定値の大小にも意味があるので、算術平均を計算することにも意味がある。
順序尺度は順番には意味がありますが、算術平均に意味はありません。
3 間隔尺度は、測定値の順序だけでなくその間隔(=差)にも意味があるが、測定値の比には意味がないので、「3と1の差」は「2と1の差」の2倍であるとは言えない。
間違いです。
間隔尺度は、その差に意味があるので、その差同士の比較にも意味があります。
4 比例尺度(比率尺度、比尺度)では測定値がゼロとなる点が決まっているが、間隔尺度では尺度上のどこをゼロ点とするかが自由に定められる。
これが正解です。
たとえば間隔尺度である温度は、現在では水が氷る温度をゼロ℃としていますが、別の温度をゼロにしても良いわけです。
間隔だけに意味があってゼロという基準はどこでもよいわけですから。
5 名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比例尺度のうち、中央値・算術平均・標準偏差の3つの統計量すべてを有意味に計算することができるのは、比例尺度のみである。
間違いです。
比例尺度だけでなく、間隔尺度も計算することに意味があります。
第32回 問題87
量的調査の測定尺度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 名義尺度は、代表値を求めることはできない。
2 順序尺度は、測定値の大小や優劣を意味しない。
3 間隔尺度は、測定値の間隔を数量的に表現できない。
4 比例尺度は、数値の間隔が等しいだけでなく数値の比も意味を持つ。
5 名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比例尺度は、いずれも標準偏差を計算することに数量的な意味がある。
1 名義尺度は、代表値を求めることはできない。
名義尺度でも代表値を求めることができます。
2 順序尺度は、測定値の大小や優劣を意味しない。
順序尺度は順序に意味がありますので、大小などを意味します。
3 間隔尺度は、測定値の間隔を数量的に表現できない。
間隔尺度は測定値の間隔を数量的に表現できます。
4 比例尺度は、数値の間隔が等しいだけでなく数値の比も意味を持つ。
これが正解です。
5 名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比例尺度は、いずれも標準偏差を計算することに数量的な意味がある。
名義尺度と順序尺度には標準偏差に意味がありません。
第35回 問題87
社会調査における測定と尺度に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 信頼性とは、測定しようとする概念をどのくらい正確に把握できているかを意味する。
2 妥当性とは、同じ調査を再度行ったときに、どのくらい類似した結果を得ているかを意味する。
3 順序尺度では、大小や優劣を測定できる。
4 間隔尺度の例として、身長や体重がある。
5 比例尺度の方が、間隔尺度よりも情報量が多い。
1 信頼性とは、測定しようとする概念をどのくらい正確に把握できているかを意味する。
誤りです。これは信頼性ではなく妥当性です。
2 妥当性とは、同じ調査を再度行ったときに、どのくらい類似した結果を得ているかを意味する。
誤りです。これは妥当性ではなく信頼性です。信頼性と妥当性についてはこちらから。
3 順序尺度では、大小や優劣を測定できる。
正しいです。
4 間隔尺度の例として、身長や体重がある。
誤りです。身長や体重は比例尺度です。
5 比例尺度の方が、間隔尺度よりも情報量が多い。
正しいです。
次の記事
量的調査はこれで終了、次は質的調査です。
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