法定受託事務と自治事務の覚え方、生活保護はどっちだ?

1999年に地方分権一括法が施行されてから、地方自治体の事務は「法定受託事務」と「自治事務」の2種類に再編されました。

以前は機関委任事務、団体委任事務、固有事務などありましたが、全て忘れていただいて大丈夫です。

法定受託事務と自治事務だけ、しっかり覚えましょう。

法定受託事務

法定受託事務は国や都道府県が本来行う事務を、都道府県や市町村が実施している事務です。

法定受託事務には第一号と第二号の2種類あります。

第一号法定受託事務

第一号法定受託事務は、国が本来行うべき事務を都道府県または市町村が実施する事務のことです。

生活保護の支給決定

生活保護の支給決定などの事務は、国が責任を持って担うべき業務なので第一号法定受託事務です。

生活保護の財源は国の費用負担3/4という最も国の負担割合が多い項目でしたね。それほど国に責任があるということです。

これが自治事務ではない理由は、生活保護の支給基準が国の基準で一律に決められているので自治体に裁量の余地がないからです。

ただし、生活保護関連でも「相談や助言」は市町村が主体となって行う事務ですので自治事務です。

ややこしいですが、この違いを覚えてください。

福祉手当の給付事務

児童手当や児童扶養手当の給付など、福祉手当の給付も、国が責任を持って担うべき事務なので第一号法定受託事務です。

例えば児童手当などは国の費用負担2/3程度と高い割合でしたね。国が責任を感じている証拠です。

社会福祉法人の認可

社会福祉法人の認可については、本来国が行う事務を都道府県が行っていますので、第一号法定受託事務です。

生活保護も福祉手当も社会福祉法人の認可も、全て国が一律に基準等を決めていて、自治体に裁量の余地がありません。

つまり、これらの事務が自治事務ではなく法定受託事務である理由は、自治体に裁量の余地がないからなのです。

第二号法定受託事務

第二号法定受託事務は、都道府県が本来行うべき事務を市町村が実施する事務のことです。

第一号法定受託事務の例はいろいろありましたが、第二号法定受託事務の例は選挙くらいしかありません。

知事選挙

都道府県知事を決める選挙ですから当然都道府県が本来行うべき事務なのですが、実際は市町村が行わなければ成り立ちません。

都道府県議会議員選挙

都道府県議会議員選挙も当然都道府県が行うべき事務ですが、市町村が実施する部分が多いです。

第二号法定受託事務の例は選挙くらいしかないので、〇〇は第二号法定受託事務であるという選択肢があれば、間違いである可能性が高いでしょう。

自治事務

自治事務とは、市町村が行うべき事務であり、基本的に福祉に関する事務は自治事務です。

介護報酬や障害福祉サービス費の支給

介護保険や障害福祉に関する事務は自治事務で、これらは市町村の裁量に委ねられているところが大きいからです。

要介護認定や障害支援区分認定

介護保険の要介護認定や障害福祉の障害支援区分認定などの重要な判定が市町村に委ねられているほど、市町村に強い権限が与えられています。

1990年の福祉八法改正で、福祉の第一線は市町村が担うようになりましたね。養護老人ホームの入所措置権限も市町村になったので自治事務なのです。

生活保護に関する助言や相談

生活保護の支給決定は法定受託事務ですが、生活保護の助言や相談は自治事務になります。

支給決定の基準は全国一律で決められていて市町村に裁量の余地がありませんが、相談や助言は現場のケースワーカーなどが自身の判断で行いますよね。

養護老人ホームなどの入所措置

1990年の福祉八法改正で、高齢者や身体障害者の入所措置権限は都道府県から町村に移譲されました。

ということで、養護老人ホームなどの入所措置も自治事務です。

制度の変遷

ここはさらっと流して読んでいただければOKです。

1986年「地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の調整及び合理化に関する法律」

生活保護法を除く福祉各法による措置は機関委任事務から団体委任事務となり、措置権限は都道府県・市及び福祉事務所を設置する町村に移譲されました。

1999年「地方分権一括法」

機関委任事務、団体委任事務、固有事務の区分も廃止され、法定受託事務と自治事務の2種類になりました。

1999年以降も機関委任事務として残っていた生活保護の事務は法定受託事務に、団体委任事務となっていた養護老人ホーム等への入所措置は自治事務となりました。

まとめ

第一号法定受託事務第二号法定受託事務自治事務
生活保護の支給決定と実施都道府県議会議員の選挙生活保護の相談や助言
精神障害者の同意無し入院措置知事選挙要介護認定、障害支援区分認定
児童手当、児童扶養手当等の支給 介護報酬、障害福祉サービス費の支給
社会福祉法人の認可等 養護老人ホームに関わる入所措置

生活保護の支給決定に関する事務は法定受託事務ですが、生活保護の助言となると自治事務になります。

また、第二号法定受託事務は選挙以外ほとんど例がないことも覚えておきましょう。

過去問

第30回 問題42

現行の地方公共団体の事務に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 地方公共団体の事務は、機関委任事務、法定受託事務、自治事務の3つに分類される。
2 社会福祉法人の認可事務は、自治事務である。
3 生活保護の決定事務は、法定受託事務である。
4 児童扶養手当の給付事務は、自治事務である。
5 養護老人ホームへの入所措置は、機関委任事務である。

1 地方公共団体の事務は、機関委任事務、法定受託事務、自治事務の3つに分類される。
現在、地方公共団体の事務は、法定受託事務と自治事務の2種類です。
1999年以前は機関委任事務と団体委任事務、固有事務に区分されていました。

2 社会福祉法人の認可事務は、自治事務である。
社会福祉法人に認可事務は法定受託事務です。

3 生活保護の決定事務は、法定受託事務である。
正しいです。
生活保護の決定事務は第1号法定受託事務です。
つまり生活保護は最後のセーフティネットとして重要なため国が本来行うべき事務なのですが、実際の支給決定などの事務は地域の第一線である福祉事務所が実施しているのです。

4 児童扶養手当の給付事務は、自治事務である。
児童扶養手当の給付事務は法定受託事務です。
こちらも生活保護の決定事務と同様、国が本来実施すべき事務なので第1号法定受託事務になります。

5 養護老人ホームへの入所措置は、機関委任事務である。
養護老人ホームへの入所措置は自治事務です。
養護老人ホームへの措置権者は市町村ですので、自治事務になります。

第29回 問題46

1990年(平成2年)以降の行財政等の動向に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 いわゆる福祉八法改正によって、自治体に地域福祉計画の策定が義務づけられた。
2 介護保険法の施行によって、新ゴールドプランが策定された。
3 「地方分権一括法」の施行によって、養護老人ホームへの入所措置は市町村の法定受託事務となった。
4 平成の大合併によって、市の数は減少した。
5 「三位一体改革」によって、国庫補助金及び地方交付税が削減された。
(注)1「地方分権一括法」とは、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」のことである。
(注)2「三位一体改革」とは、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(いわゆる「骨太の方針2003」、平成15年6月27日閣議決定)などに基づいて行われた一連の地方財政改革をいう。

1 いわゆる福祉八法改正によって、自治体に地域福祉計画の策定が義務づけられた。
福祉八法改正によって自治体に義務付けられたのは「老人保健福祉計画」ですので間違いです。
地域福祉計画は2000年に制定された社会福祉法で規定されています。

2 介護保険法の施行によって、新ゴールドプランが策定された。
新ゴールドプランが策定されたのは1994年で、介護保険法の施行は2000年なので間違いです。
介護保険法と新ゴールドプランは関係ありません。

3 「地方分権一括法」の施行によって、養護老人ホームへの入所措置は市町村の法定受託事務となった。
間違いです。
1999年の地方分権一括法の施行によって、地方自治体の事務は法定受託事務と自治事務の2種類になり、養護老人ホームへの入所措置は市町村の自治事務になりました。
福祉関係の事務は介護保険も障害福祉も自治事務です。

4 平成の大合併によって、市の数は減少した。
平成の大合併で町村が合併して市になりましたので、町村の数は減少し、市の数は増えました。
なので間違いです。

5 「三位一体改革」によって、国庫補助金及び地方交付税が削減された。
三位一体改革は「国庫補助負担金の廃止縮減」「税財源の移譲」「地方交付税の一体的な見直し」の3点です。
国庫補助金も地方交付税も削減されていますので、正しいです。

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