ソーシャルワークのグループワークでは、グループの効果を生かした自助グループやSSTなど、集団によるメリットを利用した技法を学んできました。
ここでは集団の種類、集団に関する理論とそれを提唱した人、そして、人間が集団になるとどのような現象が起こるのか、押さえていきましょう。
集団の種類
基礎集団
基礎集団とは、血縁や地縁によって形成される自生的な生活共同体(家族や村など)のことです。
機能集団
機能集団とは、特定の目的を果たすための人為的な集団(企業や政党など)のことです。
準拠集団
マートンらによって理論化された準拠集団は、個人が同調及び比較の基準として自分自身を関連づける集団のことで、所属したいと願う集団であったり、他人の評価する際の基準になるような集団が該当します。
なので、その集団に所属していなくても準拠集団になりえます。

例えば、たくさんの人(集団)がもっているからほしいという思いがあれば、その集団も準拠集団だよ。みんなスマホを持っているから僕も欲しかったんだ。つまりスマホを持っているその集団は僕にとっての準拠集団だね。
基礎集団と機能集団という分類は、多くの学者が似たような分類をしていますので見てみましょう。
基礎集団と機能集団
テンニース(Tonnies,F.)
ゲゼルシャフト:大都市や国など、利害や打算などの「選択意思」に基づいて形成される、企業や大都市、国家などの人為的な集団
社会は歴史的にゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ移行すると主張しました。

テンニースは基礎集団のことをゲマインシャフト、機能集団のことをゲゼルシャフトと呼んだんだね。
クーリ―(Cooley,C.)
第二次集団:学校、組合、政党のように特定の目的を実現するために人為的に組織される集団

クーリーは基礎集団のことを第一次集団、機能集団のことを第二次集団と呼んだんだね。
マッキーバー(Maclver,R.)
アソシエーション:特定の関心の充足や目標達成のために人為的に組織された集団

マッキーバーは基礎集団のことをコミュニティ、機能集団のことをアソシエーションと呼んだんだね。
ただし、テンニースは家族をゲマインシャフト、クーリーは家族を第一次集団に含めてるけど、マッキーバーは家族をアソシエーションとしている点に注意だよ。
ギディングス(Giddings,F.H.)
組成社会:人為的な教会、労組
サムナー(Sumner,W.)
外集団:自分が所属していない競争関係や対立関係にある集団
まとめ
人物 | 基礎集団 | 機能集団 |
---|---|---|
テンニース | ゲマインシャフト(家族、村、都市) | ゲゼルシャフト(大都市、国、世界) |
マッキーバー | コミュニティ(村、町、都市、国、地球) | アソシエーション(家族、学校、社会) |
クーリ― | 第一次集団(親密な家族、仲間) | 第二次集団(利益や関心、意図的な会社) |
ギディングス | 生成社会(自生的に生じる家族、村) | 組成社会(人為的な教会、労組) |
サムナー | 内集団(個人が帰属意識、愛着を持っている集団) | 外集団(自分が所属していない競争関係や対立関係にある集団) |
大衆&公衆&群衆
大衆
大衆とは、異質な属性をもつ匿名性の高い多数者からなる未組織の集合体のことです。
公衆
フランスの社会心理学者であるタルド(Tarde,G.)は、公衆とは「マスコミからの情報について共通の関心をもっていて、その共通関心に基づいて合理的思考で他者と結びついて非組織的な集団行動を形成する人々」としています。
群衆
フランスの社会心理学者ル・ボン(Le Bon,G.)は、群衆とは「何らかの事象への共通した関心を持ち、非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まり」「感情が沸き立っていて、暗示されやすくて、模倣にかられ、偏狭で感覚的な思い込みに陥るといった非合理的な群衆心理にとらわれている。」としています。
フォーマルグループ&インフォーマルグループ
1924~1932年にかけてアメリカのウエスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われたホーソンの実験を紹介します。
企業や大学、財団らが企画した大規模なプロジェクトでした。
ホーソン実験では、工場作業員の作業効率を上げるために照明などの環境を調整しました。
しかし、意外なことにそれでは生産効率は明確に上がりませんでした。
実験結果からわかったことは、生産効率に影響したのは「人間関係」。
作業員は仕事を通じて独自の人間関係を自然発生させ、インフォーマルグループを形成していることが分かりました。
これは会社などのフォーマルな規律よりも、職場の人間関係など、インフォーマルグループの統制力に従う傾向があるということです。
インフォーマルグループ:趣味や性格によって非公式に組織、または自然発生的に生まれた非公式の団体
過去問
第28回 問題19
社会集団に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 ゲマインシャフトとは、本質意思に基づく結合が解体した、近代以降の社会集団である。
2 インフォーマルグループとは、メンバーの親密な相互関係を通じて形成される集団である。
3 第一次集団とは、家族や親族などの第二次集団とは異なる、会社や学校などの社会集団である。
4 コミュニティとは、特定の関心を共同して追求するために設立された、人為的な機能集団である。
5 アソシエーションとは、地理的・文化的な地域性を結合要素とした社会集団である。
1 ゲマインシャフトとは、本質意思に基づく結合が解体した、近代以降の社会集団である。
誤りです。ゲマインシャフトは家族や村など、愛情や相互理解など人間の本質意思によって結びついた自然発生的な集団のことです。
2 インフォーマルグループとは、メンバーの親密な相互関係を通じて形成される集団である。
これが正解です。
3 第一次集団とは、家族や親族などの第二次集団とは異なる、会社や学校などの社会集団である。
誤りです。第一次集団と第二次集団が逆になっています。
第一次集団とは、家族、子どもの遊び仲間、近隣集団など直接的つながりと親密な関係が存在する集団です。
4 コミュニティとは、特定の関心を共同して追求するために設立された、人為的な機能集団である。
誤りです。コミュニティとは、地域に根差して自然発生した共同生活体です。
人為的な集団ではありません。
5 アソシエーションとは、地理的・文化的な地域性を結合要素とした社会集団である。
誤りです。アソシエーションとは、特定の関心の充足や目標達成のために人為的に組織された集団です。
第31回 問題19
社会集団に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 第一次集団とは、ある特定の目的のために人為的に作り出された組織である。
2 フォーマルグループとは、企業や官庁のような一定の目的のために成文化された規則と命令系統を持つ組織である。
3 ゲゼルシャフトとは、相互の感情や了解に基づく緊密な結び付きによる共同社会である。
4 準拠集団とは、共同生活の領域を意味し、典型的な例は地域社会である。
5 コミュニティとは、特定の共通関心を追求するために明確に設立された社会集団である。
1 第一次集団とは、ある特定の目的のために人為的に作り出された組織である。
誤りです。第一次集団とは、家族、子どもの遊び仲間、近隣集団など直接的つながりと親密な関係が存在する集団です。
2 フォーマルグループとは、企業や官庁のような一定の目的のために成文化された規則と命令系統を持つ組織である。
これが正解です。
3 ゲゼルシャフトとは、相互の感情や了解に基づく緊密な結び付きによる共同社会である。
誤りです。ゲゼルシャフトは、利害や打算などの選択意志に基づいて形成される、企業や大都市、国家などの人為的な集団です。
4 準拠集団とは、共同生活の領域を意味し、典型的な例は地域社会である。
誤りです。準拠集団は、個人が同調及び比較の基準として自分自身を関連づける集団のことで、所属したいと願う集団であったり、他人の評価する際の基準になるような集団が該当します。
5 コミュニティとは、特定の共通関心を追求するために明確に設立された社会集団である。
誤りです。コミュニティとは、地域に根差して自然発生した共同生活体です。
第33回 問題17
社会集団などに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 準拠集団とは、共同生活の領域を意味し、地域社会を典型とする集団を指す。
2 第二次集団とは、親密で対面的な結び付きと協同によって特徴づけられる集団を指す。
3 内集団とは、個人にとって嫌悪や軽蔑、敵意の対象となる集団を指す。
4 ゲマインシャフトとは、人間が生まれつき持っている本質意志に基づいて成立する集団を指す。
5 公衆とは、何らかの事象への共通した関心を持ち、非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まりを指す。
1 準拠集団とは、共同生活の領域を意味し、地域社会を典型とする集団を指す。
これは前問とほぼ同じ選択肢になっています。準拠集団の説明になっていませんね。これはマッキーバーのコミュニティの説明です。
2 第二次集団とは、親密で対面的な結び付きと協同によって特徴づけられる集団を指す。
これは「第一次集団」の説明です。
3 内集団とは、個人にとって嫌悪や軽蔑、敵意の対象となる集団を指す。
これは「外集団」の説明です。
4 ゲマインシャフトとは、人間が生まれつき持っている本質意志に基づいて成立する集団を指す。
これが正解です。
5 公衆とは、何らかの事象への共通した関心を持ち、非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まりを指す。
これは「大衆」の説明です。
第37回 問題13
社会集団などに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 大衆とは、利害関心に基づき意図的に選択された集団のことである。
2 外集団とは、そこに属していながら、帰属感や愛着心をもてない集団のことである。
3 アソシエーションとは、特定の目的を達成するための集団のことである。
4 ゲゼルシャフトとは、伝統的な地縁、血縁、友愛などによって形成された集団のことである。
5 準拠集団とは、敵意を持ち憎悪や軽蔑の対象となる集団のことである。
選択肢3が正解です。選択肢4はゲゼルシャフトではなくゲマインシャフトですが、これは本当によく出題されています。
次の記事
次は、福祉国家について。

コメント
カリスマ社会福祉士さん
来年受験の者です。
最近こちらのサイトに出会い参考にさせていただいています。
サイト内ですが
①科目でみつけられますか
②社会福祉士受験者の方はこれをというような分類はされていますか。どれを見たらいいのかがわかりません。
よろしくお願いいたします。
ありがとうございますm(_ _)m
科目ごとの分類はしておりませんで、社会福祉士受験生はブログ150記事&動画150本を順番に見ていくと合格できるようになっています。
こちらの記事からスタートです。
https://sw.self-sufficiency.jp/japanese-postwar-welfare/
頑張って〰️!o(`・ω・´)○