組織経営理論&リスクマネジメント

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組織経営理論

組織経営に関する様々な理論を見ていきましょう。

「組織の3要素」 by バーナード

アメリカの経営学者チェスター・バーナード(Barnard,C.)は組織の3要素を提唱しました。

公式組織の3要素
・コミュニケーション
・貢献意欲
・共通目標

コミュニケーション

コミュニケーションは、従業員同士の意思疎通のことです。

貢献意欲

貢献意欲は、モチベーションのことです。

共通目標

組織が目標を達成するうえで重要なのが組織と従業員共通の目的であり、目的には協働的側面と主観的側面を想定しています。

協働的側面は、企業理念や個人が持っている情報を共有し達成に向けて協働すること、主観的側面は、家族のためとか社会とつながりたいといった個人的な目的のことです。

これら組織の3要素をまとめると、
組織成立の要件は「相互に意思を伝達できる人々がおり、それらの人々が行為を貢献しようとする意欲をもって、共通目的の達成を目指す」ことと言えます。

「科学的管理法」 by テイラー

20世紀初頭、アメリカの技術者であり経営学者でもあるフレデリック・テイラー(Taylor,F.W.)は「科学的管理法」を提唱しています。

科学的管理法は「課業管理」により課業を設定し、成功報酬や不成功減収の仕組みが中核となります。

これは標準的な作業量を定めてそれ以上の作業を行った人は高い賃金それ以下の人は低い賃金を支給するものです。

その他、作業の標準化や作業管理のための最適な組織形態など、作業効率を重視した仕組みであることが特徴です。

このようにテイラーは従業員のモチベーションよりも作業効率を重視しました。

「ホーソンの実験」 by メイヨー

アメリカの電機機器製造企業のウェスタンエリクトリック社でジョージ・エルトン・メイヨー教授(Mayo,G.E.)は「ホーソン実験」を行いました。

この実験は、照明、室温、休憩時間、賃金などの条件がどの程度作業効率や労働意欲に影響を与えるのかを調べた実験です。

結果的には、照明や室温などの物理的条件や賃金などの待遇よりも、職場の人間関係が労働意欲や作業効率に大きな影響を与えるという結果でした。

「同調実験」 by アッシュ

1951年、ポーランド出身のアメリカの心理学者、ソロモン・アッシュ(Asch,S.)が行った実験があります。

その実験とは、明らかに不正解な答えでも周囲の人々が不正解を選択すると、それに同調して自身も不正解の答えを選んでしまうという「同調圧力」の存在を示した実験です。

まず、実験室に8人の人間を集め、このうち7人は「サクラ」であり、アッシュの指示通りに行動します。

ここで以下のような図を見せて、モデルと同じ長さの線をA~Cから選ばせる問題ですが、明らかに答えはCです。

アッシュの実験

このときサクラのうち何人かは意図的に誤った答えを選択します。

このような問いを18種類用意し、そのうち12の問いでサクラに不正解を答えさせ、それによって被験者の答えがどう変化するのかを調査しました。

その結果は、サクラ全員が正解を答えると被験者も堂々と正解の選択肢を選び、サクラが不正解を答えると被験者も不正解の選択肢を選ぶ傾向が確認されました。

全ての質問に正解を答え続けた被験者は全体のたった25%でした。

これによって同調圧力というものが存在し、その圧力によって人はミスリードされてしまうことがわかったのです。

「圧ッシュ」と覚えましょう。

「限定合理性」 by サイモン

ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・A・サイモン(Simon,H.A.)の著書「経営行動」では、以下のような「限定合理性」を謳っています。

・人間は合理性を有する意思決定主体であり、できる限り合理的に意思決定する
・合理性には限界があり、完全に合理的な意思決定はできない
・一人ひとりの意思決定が関連しあって組織として合理的な意思決定ができる

「官僚制」 by ウェーバー

官僚制とは、規模の大きい組織や集団における管理・支配のシステムで、合理的・合法的権威を基礎として安定性を確立した組織のことです。

官僚制は、官庁組織に限定する制度ではなく、大規模組織や集団における管理システムです。

マックス・ウェーバー(Weber,M.)の唱えた官僚制は以下のようなものでした。

①標準化:形式的で恒常的な明文化されたルール     
②階層性:権限のヒエラルキーが明確で指揮命令系統を持つ    
③没人格性:公平無私な組織構成員がルールに従って行動

リスクマネジメント

組織の運営には、リスクマネジメントが必須です。

3種類のリスクモデルを知って、リスクへの対応方法を学びましょう。

ハインリッヒの法則

アメリカの保険会社の社員だったハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ(H.W.Heinrich)はハインリッヒの法則を見出します。

この法則は、1件の重大事故の背後には重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背景には事故に至らなかった300件のヒヤリハットが隠れているというものです。

ハインリッヒの法則

スイスチーズモデル

スイスチーズモデルは、イギリスの心理学者ジェームズリーズン(J.Reason)が提唱したモデルです。

スイスチーズは以下のような穴が開いたチーズです。

スイスチーズ

スライスしたスイスチーズにはたくさんの穴が開いていますが、2枚重ねると穴がいくつか塞がります。

さらに重ねると、さらに穴は塞がっていきます。

このように、組織のリスク管理において、様々な種類の安全対策を重ねることでリスクは限りなく小さくできるというモデルがスイスチーズモデルです。

スノーボールモデル

スノーボールモデルは、山内らによって提唱された医療現場で生じる事故のモデルです。

医療現場では、1つのエラーが別のエラーを誘発し、そのエラーがさらに別のエラーにつながって患者のところまで到達し、雪だるま式に事故が増大することがあります。

例えば、ある医師が患者を間違えて別の患者にすべきでない治療をし、看護師もよく確認せずに間違った治療をし、さらに別の医師も間違った薬を処方し、薬剤師もよく確認せず薬を渡し、・・・というように、どんどん事故が雪だるま式に増大するモデルです。

重要なことは、雪だるまが大きくなる前に潰しておくことですね。

過去問

第33回 問題121

経営の基礎理論に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 バーナード(Barnard, C.)によれば、公式組織の3要素とは、コミュニケーション、貢献意欲、共通目的である。
2 アッシュ(Asch, S.)の実験によれば、集団の中で孤立無援の状態で異議を唱えるのと、一人でも同じ考えの仲間がいるのとでは、集団力学的に違いはない。
3 テイラー(Taylor, F.)は、労働者の感情を重視し人間関係に重きを置く経営管理を提唱した。
4 メイヨー(Mayo, G.)らによって行われたホーソン実験では、生産性に影響を与える要因が、人間関係よりも労働条件や作業環境であることが確認された。
5 ハインリッヒの法則とは、集団力学における集団規範に関するものである。

1 バーナード(Barnard, C.)によれば、公式組織の3要素とは、コミュニケーション、貢献意欲、共通目的である。
これがズバリ正解です。

2 アッシュ(Asch, S.)の実験によれば、集団の中で孤立無援の状態で異議を唱えるのと、一人でも同じ考えの仲間がいるのとでは、集団力学的に違いはない。
間違いです。アッシュの実験では、集団による同調圧力を証明した実験なので、孤立無援の状態と仲間がいる状態とでは集団力学的に違いがあります。

3 テイラー(Taylor, F.)は、労働者の感情を重視し人間関係に重きを置く経営管理を提唱した。
間違いです。テイラーは、労働者の感情ではなく経営効率を重視しました。

4 メイヨー(Mayo, G.)らによって行われたホーソン実験では、生産性に影響を与える要因が、人間関係よりも労働条件や作業環境であることが確認された。
間違いです。ホーソンの実験では、労働条件や作業環境よりも人間関係が生産性に影響を与えることがわかりました。

5 ハインリッヒの法則とは、集団力学における集団規範に関するものである。
間違いです。ハインリッヒの法則は「1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故がある」という労働災害における法則です。

第22回 問題113

組織理論に関する次の記述のうち、適切なものを一つ選びなさい。
1 ウェーバー(Weber,M.)が挙げた官僚制に特有な機能様式は、官庁組織に関するものである。
2 テイラー(Taylor,F.W.)が挙げた管理の第一の目標は、従業員一人一人の賃金を一律に低く抑えることである。
3 メイヨー(Mayo,G.E.)やレスリスバーガー(Roethlisberger,F.J.)は、各作業者の態度は賃金などの作業条件に依存していると主張した。
4 バーナード(Bamard,C.)は、組織成立の要件を、相互に意思を伝達できる人々がおり、それらの人々が行為を貢献しようとする意欲をもって、共通目的の達成を目指すとき、としている。
5 サイモン(Simon,H.A.)は、一人の孤立した個人は、極めて合理性の程度の高い行動をとることが可能であると主張した。

1 ウェーバー(Weber,M.)が挙げた官僚制に特有な機能様式は、官庁組織に関するものである。
間違いです。ウェーバーの官僚制は官庁組織に限定されません。

2 テイラー(Taylor,F.W.)が挙げた管理の第一の目標は、従業員一人一人の賃金を一律に低く抑えることである。
間違いです。テイラーの科学的管理法は成功報酬や不成功減収の仕組みを採用しているので、賃金の一律に低く抑えるのではなく、標準的な作業量以上の作業を行った人は高い賃金を支払います。

3 メイヨー(Mayo,G.E.)やレスリスバーガー(Roethlisberger,F.J.)は、各作業者の態度は賃金などの作業条件に依存していると主張した。
間違いです。メイヨーらの行ったホーソンの実験では、作業者の態度は賃金などの作業条件より人間関係に依存していることを主張しました。

4 バーナード(Bamard,C.)は、組織成立の要件を、相互に意思を伝達できる人々がおり、それらの人々が行為を貢献しようとする意欲をもって、共通目的の達成を目指すとき、としている。
これが正解です。バーナードによる組織の3要素です。

5 サイモン(Simon,H.A.)は、一人の孤立した個人は、極めて合理性の程度の高い行動をとることが可能であると主張した。
間違いです。サイモンは「限定合理性」を謳っており、合理性には限界があり、完全に合理的な意思決定はできないとしています。

介護福祉士 第33回 問題26

ハインリッヒ(Heinrich, H.)の法則に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 機能障害、能力障害、社会的不利という障害をとらえるための分類である。
2 人間の自己実現に向けた欲求を5つの階層で示したものである。
3 一つの重大事故の背景には、多くの軽微な事故とヒヤリハットが存在する。
4 患者が余命を知らされてから死を受容するまでの心理的プロセスである。
5 生活課題を抱えた人の支援をする上で必要な7つの原則である。

選択肢3が正解です。

公認心理師 第2回 問29

ある人物の起こした1件の大きな事故の背後には、同一人物による軽度、重度の同様の事故が 29 件発生しており、さらにその背後には、事故にはならなかったが危ない状況が 300 件あることを示した事故発生モデルは何か、正しいものを1つ選べ。
① インシデント
② 危険予知モデル
③ スイスチーズモデル
④ スノーボールモデル
⑤ ハインリッヒの法則

選択肢⑤が正解です。

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