【福祉国家】脱商品化?脱家族化?エスピン・アンデルセンの3種レジーム

イギリスの福祉の歴史では、ベヴァリッジ報告が出されたころの社会民主主義、サッチャー政権の新自由主義など、様々な福祉国家の形態が出てきました。

ここでは福祉国家についてさらに詳しく掘り下げて学びます。

エスピン-アンデルセンは福祉国家を3つに分類しました。

エスピン-アンデルセンの3レジーム
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エスピン・アンデルセンの福祉国家3形態

自由主義レジーム

自由主義レジームは市場の役割が大きく、社会保障は最低限、貧富の差は拡大します。選別主義で人々はスティグマを感じます。現在のアメリカやイギリスなどは自由主義レジームです。 

保守主義レジーム

保守主義レジームはリスクの共同負担や家族主義によって、家族や職域の役割が大きいタイプです。現在のドイツやフランスは保守主義レジームです。 

社会民主主義レジーム

社会民主主義レジームは国家の役割が大きく、社会保障が手厚いので貧富の差は小さくなります。現在のスウェーデンやデンマークは社会民主主義レジームです。 

日本は自由主義レジームと保守主義レジームの中間と言われています。

3つの指標

上で示した福祉国家の3類型は何を基準に決まるのでしょう。それは以下の3つ指標です。

脱商品化

脱商品化は、個人や家族が働いていても働かなくても、一定水準の生活を維持することができることです。

つまり自分を商品にする必要がないかどうかの指標です。

社会保障が手厚ければ自分を商品にして働く必要はありませんね。

階層化

階層化は、職種や社会的階層に応じて給付やサービスに差があることです。

脱家族化

脱家族化は、家族間の経済的依存を断ちきる政策です。

つまり家族に頼らず生きられるかの指標です。

まとめ

レジーム脱商品化脱家族化階層化
自由主義レジームアメリカ、イギリス
保守主義レジームドイツ、フランス
社会民主主義レジームスウェーデン、デンマーク

過去問

第28回 問題22

エスピン−アンデルセン(Esping-Andersen,G.)の「レジーム」理論に関する記述として、正しいものを1つ選びなさい。
1 福祉国家は、社会的階層化のパターン形成に重要な役割を演じる。
2 脱商品化とは、労働者が労働能力を喪失することである。
3 脱家族化とは、単身世帯の増加のことである。
4 福祉レジーム概念は、福祉国家の否定から生まれた。
5 雇用・労働市場は、福祉レジームの在り方に影響しない。

1 福祉国家は、社会的階層化のパターン形成に重要な役割を演じる。
これが正解です。エスピン-アンデルセンは脱商品化と階層化、脱家族化の3つの指標を用いて自由主義、保守主義、社会民主主義の3つのレジームに類型化しました。つまり福祉国家は社会的階層化の形成に影響を与えるということです。

2 脱商品化とは、労働者が労働能力を喪失することである。
間違いです。脱商品化とは仮に労働しなくても生活を維持できるかどうかの指標です。

3 脱家族化とは、単身世帯の増加のことである。
間違いです。脱家族化とは家族に頼らず生活できるかどうかの指標です。

4 福祉レジーム概念は、福祉国家の否定から生まれた。
間違いです。福祉レジームの概念は福祉国家を分類したもので、福祉国家を否定したものではありません。

5 雇用・労働市場は、福祉レジームの在り方に影響しない。
間違いです。福祉レジームによって給与や雇用などの考え方が異なるため、雇用・労働市場は影響を受けます。

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