【社会保障の財源】国の負担割合から整理せよ

社会保障制度の財源は、国の負担割合が大きい順番に、「生活保護」「生活困窮者自立支援制度」「特別児童扶養手当」「児童手当」「児童・障害福祉」・・・と覚えていきましょう。

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社会保障財源の概要

社会保障制度は社会保険制度と社会福祉制度、そして生活保護制度で構成されています。

その中でも社会保険制度は保険料を支払っていないとその恩恵を受ける事はできません。

年金制度であれば毎月年金保険料を納めて、一定期間納めた実績がないと将来年金はもらえませんし、医療保険も保険料を払っていなければ保険証をもらえないので全額自己負担になってしまいます。

一方で社会福祉制度はすべて税金で運用されています。

この大きな違いをまず押さえてください。

社会保険制度は主に保険料で運用されており、公費(税金)負担もありますが、保険料より大きくなることはありません。

一方で社会福祉制度の財源はすべて公費(税金)です。

下の図をみていただくと、社会保険制度には黄色部分(保険料)が多くを占めていることがわかるでしょう。

これは社会保険制度が保険料を主な財源としていることを意味しています。

社会保障の財源

生活保護制度と社会福祉制度の財源

左から赤色部分(国の負担)が大きい順番に並んでいます。

逆に黄色い部分(保険料)が小さい順番に並んでいます。

左から「生活保護」「児童手当」「児童福祉」「障害福祉」となっていますが、これらは社会保険制度のように黄色い部分(保険料)がないため国が財源の大半を捻出しなければなりません。

国、都道府県、市町村それぞれが負担し合い、全て公費で賄われているのがこれら生活保護制度や社会福祉制度です。

生活保護制度と社会福祉制度をまとめて「社会扶助制度」というんだよ。
つまり、社会扶助制度は税金で賄われているのに対して、社会保険制度は主に保険料で運営されているんだ。

社会保障の財源

表を見てわかるように、左側の「生活保護」「児童福祉」「障害福祉」の三分野は、国と地方で全て財源を賄っており、保険料はありません。

全て税金で運営しています。

社会保険制度は国民全員が加入するのに対して、社会福祉制度は一部の社会的弱者のための制度だからですね。

この「生活保護」「児童福祉」「障害福祉」とくれば、何か思いつきませんか?

そうです。

福祉三法ですね。

戦後すぐに、まず「生活保護法」ができ、「児童福祉法」ができ、そして「身体障害者福祉法」ができました。

これらは社会的弱者として国が責任を持って支援してきたわけで、国の負担率が高くなっています。

生活保護

生活保護法は戦後最も早くできた社会保障関係の法律で、国民全ての最後のセーフティーネットとして国が責任を持って実施しています。

なので国の負担割合が3/4と最も多くなっています。

生活保護は市町村などの福祉事務所が担当していて、国が市町村に委託している「第一号法定受託事務」だったよね。

残り1/4は福祉事務所設置自治体が負担しますが、住所不定の人は市町村が支弁した保護費の1/4を都道府県が負担します。

また生活保護の一歩手前の生活困窮者を支援する「生活困窮者自立支援制度」、この制度の中で必須事業となっている「自立相談支援事業」と「住居確保給付金」も国の負担割合は3/4となっていますので、合わせて覚えておきましょう。

さらに、障害児を扶養する者に支給される「特別児童扶養手当」も国の負担割合3/4になっています。

社会保障の財源

これらは国が最も負担割合の大きい3制度なので覚えておいてください。

<国の負担割合4分の3>
・生活保護法
・生活困窮者自立支援法の必須事業
・特別児童扶養手当法

児童手当

左から2番目の児童手当については、上に「事業主拠出金」という黄色い部分があることを覚えておいてください。

被雇用者についての児童手当にはこの事業主拠出金が当てられます。

厚生年金保険が適用されている事業主が拠出して児童手当の財源の一部に当てているのです。

国は約2/3を負担します。

ちなみに児童扶養手当については国が1/3、都道府県2/3ですので児童手当と比べて国の負担割合が逆転します。

社会保障の財源

さきほども書きましたが、特別児童扶養手当は国が3/4、地方1/4と生活保護と同じレベルになっています。

障害児は障害のある児童という二重の社会的弱者ですから国が手厚く支援するんですね。

法律対象国の負担根拠法
児童手当15歳未満を扶養する家庭2/3児童手当法
児童扶養手当18歳未満の児童または20歳未満の障害児を扶養するひとり親家庭1/3児童扶養手当法
特別児童扶養手当20歳未満の障害児を扶養する家庭3/4特別児童扶養手当法

児童・障害福祉

この分野では国が1/2、都道府県が1/4、市町村が1/4を負担します。

分かりやすいです。

老人福祉は全て市町村が負担します。

老人福祉施設は2005年以降、三位一体改革による一般財源化によって、養護老人ホームや特養の入所措置に要する費用など措置費(運営費、給付費)全て市町村(指定都市、中核市含む)の負担となりました。

一方で介護保険制度は図の右の方にありますが、保険料で半分賄い、残りの半分を国が1/2、都道府県が1/4、市町村が1/4を負担します。

児童福祉、障害福祉、介護保険について負担割合が同じであることを覚えておけば記憶に残りやすいです(ただし、介護保険の施設等給付は国20%、都道府県17.5%です)。

社会保険制度の財源

社会福祉制度より右側は社会保険制度になっています。

日本の社会保障制度は年金、健康保険、雇用保険、労災保険、介護保険の5種類でしたね。

これらは保険ですから全ての国民を対象に保険料が徴収され、その保険料が財源に充てられます。

黄色の部分を見ればわかるように、全ての制度で半分以上が保険料で賄われています。

この点は重要ですので理解しておきましょう。

社会保障の財源

社会保険制度は保険料が主な財源で黄色の部分が多いのが特徴ですが、上の図にあるように、社会保険制度の中でも保険料と公費が半々になっている4つの制度があります。

<保険料:公費=1:1>
・基礎年金
・国民健康保険
・後期高齢者医療制度
・介護保険

そして、その公費の内訳が、それぞれ国、都道府県、市町村で異なってきますので見ていきましょう。

年金制度

国が責任をもって支える「基礎年金」は半分を国が負担します(2014年から基礎年金国庫負担割合を恒久的に1/2へ)

一方で、同じ年金でも保険料が労使折半の「厚生年金」や「共済年金」は全額保険料で賄われています。

国民年金は唯一、日本国民全員が加入する社会保険制度ですので国の負担割合は社会保険制度の中で最も大きい1/2となっています。

医療保険

「国民健康保険」も基礎年金と同じく保険料と公費が半々の内訳となっています。

一方で、保険料が労使折半の「健康保険」はほぼ全て保険料で賄われています。

協会けんぽのみ国の負担が16.4%だけありますね。

つまり被用者保険の「厚生年金」「共済年金」「労災保険」「雇用保険」などは保険料が事業主と被用者で折半したり全額事業主負担だったりするので保険料で財源を賄う率が高くなっているのです。

国民健康保険については、市町村の負担がなく国と都道府県の負担があります。もともと市町村が保険者でしたが、平成30年度から都道府県も加わりました。都道府県は「国保の安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保等において中心的な役割を担う」ことになっており、市町村は「地域住民と身近な関係の中、資格管理、保険給付、保険料率の決定、賦課・徴収、保健事業等、地域におけるきめ細かい事業を引き続き担う」こととなっています。
この変更に伴って、市町村にも都道府県にも国民健康保険の特別会計ができています。この辺りの背景を覚えておけば国民健康保険に市町村の負担がないことも関連付けられて覚えやすいかもしれません。

後期高齢者医療制度

2008年から老人保健制度の廃止に伴い、後期高齢者医療制度が施行されました。

図を見ると、保険料5割、公費(国、都道府県、市町村)5割となっていますが、実は保険料の内訳は「国民健康保険・被用者保険からの支援金4割、高齢者の保険料1割」となっており、後期高齢者からの保険料は1割のみで、その他は国民健康保険の保険料などから流用されているのです。

後期高齢者医療制度ができる以前の老人保健法では、保険料5割、公費5割でしたが、その保険料の内訳は国民健康保険・被用者保険からの支援金が全てでした。つまり75歳以上の後期高齢者にも保険料を負担してもらう仕組みにしたのが後期高齢者医療制度だったのです。

また、前期高齢者の場合はほとんどが国民健康保険に加入しているという現状から、協会けんぽや健康組合等の被用者保険から前期高齢者納付金を徴収し、これを国民健康保険に前期高齢者納付金として交付するという財政調整が行われています。

前期高齢者は、各医療保険制度間で財政調整があるということを頭に入れておきましょう。

介護保険

介護保険も保険料と公費で半分ずつ負担します。

公費の内訳は、半分が国、残り半分を都道府県と市町村で折半します。

ただし、介護保険のサービスによってはこの限りではないものもあります。

カリスマ社会福祉士
カリスマ社会福祉士

詳しくは介護保険の財源で取り上げます。

雇用保険

雇用保険については失業給付部分のみ労使折半であることを覚えておきましょう。

雇用保険二事業にかかる部分は全額事業主負担です。

労災保険

全額事業主負担の保険料で賄われています。

サラリーマンならわかると思いますが、労災保険料って給与から天引きされていませんよね。

事業主が全額負担しています。

高齢者への社会福祉制度と社会保障制度

このように左3つは社会福祉制度、右側は社会保険制度で、この両者の大きな違いは、社会福祉制度は社会的弱者を対象にしているのに対して社会保険制度は全国民を対象にしています。

そして両方の対象となっているのが高齢者です。

戦前~戦後は高齢者が福祉の対象になるとは思っていなかったようで、救護法による救貧制度にはじまり、老人福祉法による低所得者対策、そしてその後の高齢化に伴って高齢者福祉は介護保険という保険料を徴収して財源に充てる「社会保険」の形で一般人向けになったわけです。

介護保険の保険者は市町村ですから市町村の負担割合も一定程度ありますね。

介護保険の国の負担割合25%のうち5%は後期高齢者の割合や第1号被保険者の所得の状況に応じて変わります(施設給付は国の負担割合20%、都道府県17.5%)。

過去問

第30回 問題44

市町村が支弁した次の費用のうち、国の費用負担に関する記述として、正しいものを1つ選びなさい。
1 生活保護費の4分の3
2 生活困窮者住居確保給付金の支給に要する費用の全額
3 児童福祉法に規定される保育に要する費用の3分の1
4 「障害者総合支援法」に規定する障害福祉サービス費等負担対象額の3分の1
5 養護老人ホームへの入所措置に要する費用の4分の3
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

1 生活保護費の4分の3
これがズバリ正解ですね。生活保護費は国の負担割合として最も高い4分の3となっているのです。最後のセーフティーネットですから国が責任をもって運営しなければなりません。

2 生活困窮者住居確保給付金の支給に要する費用の全額
生活困窮者自立支援制度の必須事業である「自立相談支援事業」と「住居確保給付金」は、生活保護と同じく4分の3を国が負担します。生活保護に準じて重要な制度ですから。

3 児童福祉法に規定される保育に要する費用の3分の1
児童福祉は国が2分の1を負担するのでしたね。

4 「障害者総合支援法」に規定する障害福祉サービス費等負担対象額の3分の1
児童福祉と同じく障害福祉も国が2分の1を負担しますので間違いです。

5 養護老人ホームへの入所措置に要する費用の4分の3
老人福祉に関する費用は全て市町村でした。そもそも国が4分の3を負担するのは生活保護と生活困窮者自立支援制度と特別児童扶養手当だけでしたね。

第31回 問題49

社会保険制度の財源に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。
2 介護保険の給付財源は、利用者負担を除き、都道府県が4分の1を負担している。
3 老齢基礎年金は、給付に要する費用の3分の2が国庫負担で賄われている。
4 労働者災害補償保険に要する費用は、事業主と労働者の保険料で賄われている。
5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金に対する国庫補助がある。

1 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。
この選択肢は難しいですが、国庫補助がありますので間違いです。

2 介護保険の給付財源は、利用者負担を除き、都道府県が4分の1を負担している。
介護保険は、保険料50%、公費50%が基本です。
公費50%のうち居宅給付費の場合は、国が半分、都道府県と市町村で残りを半分ずつ負担します。つまり都道府県も市町村も8分の1を負担することになります。

3 老齢基礎年金は、給付に要する費用の3分の2が国庫負担で賄われている。
老齢基礎年金は国が半分を負担します。社会保険制度のなかで基礎年金制度は国が責任を持って実施しますから、社会保険制度のなかでは最も負担率の多い「1/2」となっています。

4 労働者災害補償保険に要する費用は、事業主と労働者の保険料で賄われている。
労働者災害補償保険=労災保険は全額事業主の保険料で賄われています。

5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金に対する国庫補助がある。
これも難しいですが、これが正解です。

次の記事

次は5種類の社会保険制度のうち、年金制度を見ていきます。

社会保障給付費と社会保障関係費の違いについては、ずっと後で取り上げます。

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