公的年金制度では以下の3種類の恩恵を受けられます。
・老齢年金
・遺族年金
・障害年金
3つとも基礎年金と厚生年金があります。
・老齢基礎年金
・老齢厚生年金
・遺族基礎年金
・遺族厚生年金
・障害基礎年金
・障害厚生年金
それぞれの内容と、併給が可能かどうか、しっかり押さえてください。
老齢年金
老齢年金というのは高齢になってから受け取れる、いわゆる年金です。
老齢年金は、国民年金、厚生年金、共済年金と3種類ありますが、2015年から共済年金が厚生年金に統一され、両制度で異なっていた部分は厚生年金に一元化されました。
国民年金(基礎年金)
国民年金は全ての国民に加入義務がある「基礎年金」で、必ず以下の1~3号のどれかに該当します。基礎年金と言われるだけあって、年金制度の土台になっています。
第2号 70歳未満の厚生年金被保険者
第3号 第2号被保険者の被扶養配偶者のうち20~60歳未満の者(年収130万円未満、妻でも夫でも可)
第1号は20歳以上の学生も含みますので学生でも保険料の納付が必要です。
ただし学生納付特例という制度があるので納付を猶予してもらえるね。でも毎年申請が必要で、もし追納しないと将来貰える年金額が減ってしまうよ。
追納しなくても年金を受け取るのに必要な加入期間には算定されるけどね。
注意すべきはサラリーマンで厚生年金に加入している人も、国民年金の被保険者になっているということです。
第1号と第3号は20~60歳までの加入ですが、第2号はサラリーマンが厚生年金に加入しているときの同時加入なので、60歳以上でも第2号被保険者です。
第3号は第2号の配偶者で、基本的に保険料は支払いません。
第3号の保険料は第2号の保険料から拠出されます。
日本に住む外国人も国民年金に加入しなければならないよ。
厚生年金
厚生年金はサラリーマンなどの被用者が加入する年金制度です。
2015年以前は公務員等が加入する共済年金というものがありましたが、現在は被用者年金が統合されて、厚生年金に一元化されています。
厚生年金に加入していると自動的に国民年金に加入していることになるので、別途国民年金保険料を納める必要はありません。
遺族年金
遺族年金は本人が死亡したときに、その遺族が受け取れる年金です。
受け取れる家族の範囲は以下の通りです。
遺族基礎年金:「子のある配偶者」または「子」(18歳未満、障害児は20歳未満)
遺族厚生年金:配偶者、父母、孫など(ただし子のない妻が30歳未満なら5年で消滅)
このように遺族基礎年金を受け取れる家族はとても狭く、基本的に「子」と考えてください。
配偶者がいても「子」がいないと受け取れませんから。
それに対して遺族厚生年金は「子のない配偶者」や「祖父母」でも受け取れます。
遺族厚生年金は、30歳以上なら一生もらえるのに、30歳未満なら5年間しか受けられないんだ。しかも、これは妻のみで、夫が妻に先立たれた場合は、55歳未満だと受給できないんだ。専業主婦が一般的だったころの名残だね。この男女差の是正が進められる予定だよ。
障害年金
障害年金は一定の障害状態になったときに支給される年金です。
障害の程度によって、等級があります。
障害厚生年金:1級、2級、3級
障害基礎年金2級は老齢基礎年金の満額と同じ額です。
障害基礎年金1級は2級の1.25倍です。
障害基礎年金受給者(と生活保護受給者)は国民年金保険料が法定免除されます。
障害基礎年金という制度は特別な制度で、何が特別かと言うと、普通は保険制度というのは保険に加入している期間中に損害等を被った場合に支給されるものですが、障害基礎年金に限っては例外になっています。
つまり年金制度に加入できるのは20歳以上ですが、例えば先天的に障害を持っている人もいるので、そのような人は20歳になれば障害基礎年金を受給することができます。
保険料を一切払ってないのに。
障害基礎年金はこのように未拠出で受けられる年金ですが、この場合所得制限が設けられており、本人に一定の収入がある場合は全額又は半額が支給停止されます。
障害厚生年金は厚生年金に加入中に負った障害でないと支給されません。
併給について
これら3種類の年金は重複して受け取ることができません。
例えば障害を負って障害年金を受給していた人が、65歳になって老齢年金を受給するようになると障害年金はなくなります(選択できます)。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は併給可ですが、老齢基礎年金と障害基礎年金は併給出来ないということです。
を思い出してください。
障害基礎年金2級を受給していた人が老齢基礎年金をもらい始める時に、金額に差がでないようになっています。
まとめ
以下に老齢年金、遺族年金、障害年金を1つ図にまとめました。
図を見れば、老齢基礎年金、遺族基礎年金、障害基礎年金は併給できないことがなんとなくわかるでしょう。
老齢基礎年金、遺族基礎年金、障害基礎年金(2級)は同じ額に揃えられていて、併給出来ない感を醸し出してるね。
過去問
第29回 問題53
公的年金の給付内容に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 障害等級2級の受給者に支給される障害基礎年金の額は、老齢基礎年金の満額の1.25倍である。
2 老齢基礎年金の年金額の算定には、保険料免除を受けた期間の月数が反映される。
3 老齢基礎年金の年金額は、マクロ経済スライドによる給付水準の調整対象から除外されている。
4 遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等が死亡した場合に、その者の子を有しない配偶者にも支給される。
5 遺族基礎年金の受給権を有する妻の遺族厚生年金の受給権は、受給権を取得した日から5年を経過したときに消滅する。
1 障害等級2級の受給者に支給される障害基礎年金の額は、老齢基礎年金の満額の1.25倍である。
老齢基礎年金満額の1.25倍なのは障害基礎年金1級です。2級ではありません。
2 老齢基礎年金の年金額の算定には、保険料免除を受けた期間の月数が反映される。
そのとおりです。保険料免除を受けた月は、満額納付に比べて将来貰える年金額が1/2に減らされますが。
3 老齢基礎年金の年金額は、マクロ経済スライドによる給付水準の調整対象から除外されている。
老齢基礎年金はマクロ経済スライドの調整対象です。
4 遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等が死亡した場合に、その者の子を有しない配偶者にも支給される。
遺族基礎年金は、配偶者でも「子」がいないと支給されません。遺族厚生年金は「子」がいない配偶者でも支給されます。
5 遺族基礎年金の受給権を有する妻の遺族厚生年金の受給権は、受給権を取得した日から5年を経過したときに消滅する。
遺族厚生年金の受給権が、受給権を取得した日から5年間を経過したときに消滅するのは、受給権を取得した段階で30歳未満かつ子のない妻です。
第31回 問題52
年金保険に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 離婚した場合、当事者の合意又は裁判所の決定があれば、婚姻期間についての老齢基礎年金の分割を受けることができる。
2 老齢基礎年金は、25年間保険料を納付して満額の支給が受けられる。
3 老齢基礎年金は、65歳以降75歳まで支給開始を遅らせることができ、この場合、年金額の増額がある。
4 障害基礎年金は、障害認定日に1級、2級又は3級の障害の状態にあるときに支給される。
5 国民年金の第一号被保険者を対象とする独自の給付として、付加年金がある。
1 離婚した場合、当事者の合意又は裁判所の決定があれば、婚姻期間についての老齢基礎年金の分割を受けることができる。
離婚時の年金分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割する制度であって、老齢基礎年金には適用されません。
2 老齢基礎年金は、25年間保険料を納付して満額の支給が受けられる。
満額は40年間納付しないともらえません。また10年以上納付期間がないと1円ももらえません。
3 老齢基礎年金は、65歳以降75歳まで支給開始を遅らせることができ、この場合、年金額の増額がある。
この問題が出題された当時は65歳から70歳まで繰り下げ受給できて、その場合年金額の増額があります。2022年4月からは75歳まで繰り下げ受給できるようになります。
4 障害基礎年金は、障害認定日に1級、2級又は3級の障害の状態にあるときに支給される。
障害基礎年金に3級はありません。3級があるのは障害厚生年金です。
5 国民年金の第一号被保険者を対象とする独自の給付として、付加年金がある。
これが正解です。
国民年金の第一号被保険者及び任意加入被保険者に対する付加年金は、定額保険料に付加保険料を上乗せして納める事で受給できるものです。
第29回 問題52
事例を読んで、Cさんの年金の取扱いに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
[事例]先天性の視覚障害で、全盲のCさん(25歳、子どもなし)は、20歳になった翌月から1級の障害基礎年金を受給している。これまでは、仕事に就かず、年金以外にほとんど収入はなかったが、今年からU社に就職し、厚生年金に加入した。Cさんの視覚障害は、今後も回復が見込めないものとする。
1 Cさんは、障害基礎年金を受給しているので、厚生年金の保険料を免除される。
2 Cさんは、先天性の視覚障害により、障害厚生年金を受給できる。
3 Cさんは、先天性の視覚障害により、労災保険の障害補償年金を受給できる。
4 Cさんの障害基礎年金は、就職後の所得の額によっては、その全部又は一部の支給が停止される可能性がある。
5 今後、Cさんに子どもが生まれても、Cさんの障害基礎年金の額が加算される可能性はない。
1 Cさんは、障害基礎年金を受給しているので、厚生年金の保険料を免除される。
そんな規定はありません。
2 Cさんは、先天性の視覚障害により、障害厚生年金を受給できる。
先天性の障害の場合は、年金制度加入前の障害ということで障害厚生年金は支給されません。障害基礎年金なら20歳になれば支給されます。
3 Cさんは、先天性の視覚障害により、労災保険の障害補償年金を受給できる。
労災保険は勤務中の事故が対象ですので関係ありません。
4 Cさんの障害基礎年金は、就職後の所得の額によっては、その全部又は一部の支給が停止される可能性がある。
これが正解です。
先天性の障害なので一切保険料を支払わず障害年金を受けているので、所得制限が課せられます。
5 今後、Cさんに子どもが生まれても、Cさんの障害基礎年金の額が加算される可能性はない。
間違いです。
子どもがいると加算があります。
第33回 問題55
国民年金に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 国民年金の第一号被保険者の保険料は、前年の所得に比例して決定される。
2 障害基礎年金を受給していると、国民年金の保険料納付は免除される。
3 学生納付特例制度の適用を受けた期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されない。
4 自営業者の配偶者であって無業の者は、国民年金の第三号被保険者となる。
5 障害基礎年金には、配偶者の加算がある。
1 国民年金の第一号被保険者の保険料は、前年の所得に比例して決定される。
間違いです。国民年金の保険料は一律です。
2 障害基礎年金を受給していると、国民年金の保険料納付は免除される。
正しいです。国民年金保険料の法定免除制度は以下の3パターンあります。
・生活保護の生活扶助を受けている方
・障害基礎年金ならびに被用者年金の障害年金(2級以上)を受けている方
・国立ハンセン病療養所などで療養している方
3 学生納付特例制度の適用を受けた期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されない。
間違いです。算定されます。受給金額には反映されませんが。
4 自営業者の配偶者であって無業の者は、国民年金の第三号被保険者となる。
間違いです。自営業者の配偶者で無業であれば第一号被保険者です。
5 障害基礎年金には、配偶者の加算がある。
間違いです。障害厚生年金には配偶者加算がありますが、障害基礎年金にはありません。
次の記事
次は医療保険制度を見ていきます。
コメント
子供を持っている夫婦は多いと思いますが、遺族基礎年金を受け取れる家族はとても狭く、基本的に「子」であるとは、どのような意味ですか。「子のある配偶者」とはなんですか。
例えば父親が亡くなった時に母親が遺族基礎年金をもらうためには、子がいることが条件ということです。
または、母親がいない場合は、子がもらうことになりますので、結局、「子」がいないと貰えないのが遺族基礎年金です(細かいことは置いといてザックリとした理解で)。
ありがとうございます。ざっくりと理解しました。