【日本国憲法】三原則、国民の三義務、労働三権、基本的人権5つのうち「社会権」が重要

戦後すぐ、福祉三法体制のきっかけとなった日本国憲法

日本国憲法は国の最高法規として法律や政令の最上位に位置しています。

つまり憲法が定める内容に反する法律等をつくることはできません。

なんと憲法は第98条で自らを「最高法規」と位置づけています。

カリスマくん
カリスマくん

カリスマ社会福祉士が自らをカリスマと呼んでいるようなもんだな。

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日本国憲法の三原則

日本国憲法の基本原則は3つ。

・国民主権
・平和主義
・基本的人権の尊重

特にこの中でも「基本的人権の尊重」が国家試験に出題されます。

日本国憲法では、「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利」と規定されており、国家によってさえも侵されることのない「不可侵」な権利とされています。

ただし基本的人権の尊重は「基本原理」ではなく「基本原則」なので、基本的人権は常に守られるものではなく制限を受けることもあります。

それはつまり「他人の権利を不当に侵害しない限りにおいて」という条件付きだということです。

例えば、「公共の福祉」に反するような場合はその人の基本的人権は制限されることがあります。

基本的人権と社会権

基本的人権は以下のような権利で構成されています。

<基本的人権>
・自由権
・平等権
・社会権
・参政権
・請求権

この中でも「社会権」は以下の4つの権利で構成されています。

<社会権>
・生存権(第25条)
・教育を受ける権利(第26条)
・勤労の権利(第27条)
・労働基本権(第28条)

特に、生存権は社会福祉士の仕事として直接関係してきます。

生存権(第25条)

社会権の1つである生存権は憲法第25条で規定されており、生活保護法ではこの第25条を引用して「理念」としています。

日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

生活保護法はこの第25条の理念に基づいており、以下のように書かれています。

生活保護法第1条 
この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

国民の3つの義務(第26、27、30条)

日本国憲法には以下の3つの義務が規定されています。

第26条 その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ
第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ

ということで、国民の3つの義務として「教育」「勤労」「納税」を覚えておきましょう。

労働に関する規定(第27、28条)

第27条
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3児童は、これを酷使してはならない。

第28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する

<労働三権>
・団結権
・団体交渉権
・団体行動権(争議権)

団結権は労働組合などの団体を組織する権利です。
個人では雇い主と対等になれないので、労働者が団結する権利が保証されています。
団体交渉権は労働者団体が雇い主と勤労条件について交渉する権利です。
団体行動権は労働者団体がストライキやサボタージュ、ボイコットなどを行う権利です。
このような正当な争議行為は民事上も刑事上も責任を問われません。

憲法改正

第96条 
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。
この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

憲法改正にはまず国会議員の3分の2以上の賛成が必要で、それをクリアすれば国民投票で過半数の賛成があれば憲法改正が実現します。
このように非常に高いハードルが課されており、法律よりも改正するのがはるかに難しくなっています。

外国人への適用

現在では外国人にも憲法で定める基本的人権の保障が及ぶと考えられています。

ただし、参政権や社会権はその限りではありません。

特に社会権は国家の存在が前提なので、例えば社会権の1つである生存権を根拠とする生活保護の対象は「国民」であることが前提で、外国人には適用されないことになっています。

ただ、現実は永住外国人等は人道上保護していますが。

このように生活保護に関しては国籍条項がありますが、国民年金法や国民健康保険法は国籍条項は撤廃されており、外国人であっても国民年金や国民健康保険に加入しなければなりません。

まとめ

日本国憲法まとめ

過去問

第30回 問題77

次のうち、日本国憲法に国民の義務として明記されているものとして、正しいものを2つ選びなさい。
1 憲法尊重
2 勤労
3 納税
4 投票
5 扶養

国民の義務は「教育」「勤労」「納税」です。
選択肢2と3が正解です。

第22回 問題70

日本国憲法が保障する基本的人権と権利に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 憲法の基本的人権の保障は、特別の定めがある場合を除き、外国人には及ばない。
2 憲法の基本的人権規定は、国又は地方公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人間にその効力が及ぶことはない。
3 抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けた者が、国に対してその補償を求めるのは、憲法が認める権利である。
4 基本的人権は、侵すことのできない永久の権利であり、憲法条文に制限の可能性が示されている場合に限り、制約を受ける。
5 最高裁判所の判例によれば、憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられており、著しい濫用や逸脱があっても司法審査の対象とはならない。

1 憲法の基本的人権の保障は、特別の定めがある場合を除き、外国人には及ばない。
間違いです。
基本的に外国人にも憲法で定める基本的人権の保障が及ぶと考えられており、参政権や社会権などの国民という構成員によって成り立っている権利については外国人に対して制限があります。

2 憲法の基本的人権規定は、国又は地方公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人間にその効力が及ぶことはない。
そんなわけありません。

3 抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けた者が、国に対してその補償を求めるのは、憲法が認める権利である。
これが正解です。
ただ、実際の試験では、「抑留」を「拘留」と出題されたので不適切問題となりました。

4 基本的人権は、侵すことのできない永久の権利であり、憲法条文に制限の可能性が示されている場合に限り、制約を受ける。
間違いです。
憲法第12条や13条では、「公共の福祉に反しない限り」認められると書かれていますが、21条には制限が書かれていないにも関わらず実際は一定の制限があります。
つまり、基本的人権の制限は憲法の条文でわざわざ書かれるのではなく、法律レベルで規定されます。
当然ですが憲法で細かな規定はされません。

5 最高裁判所の判例によれば、憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられており、著しい濫用や逸脱があっても司法審査の対象とはならない。
間違いです。
最高裁判所の判例というのは「朝日訴訟」のことです。
朝日訴訟というのは、1957年に生活保護を受けていた朝日茂さんが、生活保護の内容が憲法第25条の生存権に対して不十分であるとして国と争った訴訟です。
その中で「憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられているが、著しい濫用や逸脱があった場合は、司法審査の対象となる」とされました。

第24回 問題143

日本国憲法が規定する規定に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 憲法は、国民は勤労の義務を負うと規定しているが、勤労の権利を有するとする規定はない。
2 憲法は、賃金、就業時間に関する基準を明記している。
3 憲法が規定する勤労者の権利は、団体交渉権、団体行動権の2つである。
4 憲法は、児童はこれを酷使してはならないと規定している。
5 憲法は、男女同一賃金の原則を明記している。

1 憲法は、国民は勤労の義務を負うと規定しているが、勤労の権利を有するとする規定はない。
間違いです。
第27条「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」と規定されています。

2 憲法は、賃金、就業時間に関する基準を明記している。
第27条「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定されています。
憲法にそのような細かい内容まで規定してしまうと、改定するのが大変です。
以下で示しますが、憲法改正はとてもハードルが高いですから。
実際は「労働基準法」や「最低賃金法」などで規定されています。

3 憲法が規定する勤労者の権利は、団体交渉権、団体行動権の2つである。
第28条には労働三権として団結権、団体交渉権、団体行動権の3つが規定されています。

4 憲法は、児童はこれを酷使してはならないと規定している。
これが正解です。

5 憲法は、男女同一賃金の原則を明記している。
間違いです。
男女同一賃金の原則を定めているのは「労働基準法」です。

第23回 問題71

生活保護法における保護基準は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定めた日本国憲法第25条に由来する。
次の記述のうち、この保護基準に関する最高裁判所の判決内容として、適切なものを1つ選びなさい。
1 主務大臣による保護基準の設定は、日本国憲法第25条に由来する生活保護法の規定によって拘束される羈束(きそく)行為である。
2 生活保護法の保護基準に基づいて実施機関が行う保護の要否に関する決定は、自由裁量行為である。
3 保護基準の設定に関して、主務大臣が日本国憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることを免れない。
4 保護基準に関する生活保護法の規定は、一般的方針を規定しているにすぎない訓示規定であり、同規定に基づく保護基準の設定は司法審査の対象とならない。
5 日本国憲法第25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」は、人間としての生活の最低限度という一線を有する以上、理論的には特定の国における特定の時点において、客観的に決定すべきものである。

朝日訴訟のポイントは以下の3点です。
生活保護基準の設定は主務大臣の自由裁量で決められる。
主務大臣の裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となる。
生活保護基準に基づいて行う実施機関の支給決定には、裁量の余地はない。

1 主務大臣による保護基準の設定は、日本国憲法第25条に由来する生活保護法の規定によって拘束される羈束(きそく)行為である。
間違いです。
主務大臣による保護基準の設定は、自由裁量の余地があるので羈束行為ではありません。
羈束行為とは、自由裁量の余地がなく法律の定めをそのまま行わなければならない行為です。

2 生活保護法の保護基準に基づいて実施機関が行う保護の要否に関する決定は、自由裁量行為である。
間違いです。
保護基準の設定は主務大臣の自由裁量が認められますが現場レベルでは裁量の余地はありません。
生活保護の支給決定は、第一号法定受託事務だったことを思い出しましょう。

3 保護基準の設定に関して、主務大臣が日本国憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることを免れない。
これが正解です。
朝日訴訟で示されています。

4 保護基準に関する生活保護法の規定は、一般的方針を規定しているにすぎない訓示規定であり、同規定に基づく保護基準の設定は司法審査の対象とならない。
間違いです。
朝日訴訟では、問題文にあるように「生活保護法の規定は、一般的方針を規定しているにすぎない」ことを認めていますが、「裁量権の限界を超え又は裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることを免れない」という判断をしています。

5 日本国憲法第25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」は、人間としての生活の最低限度という一線を有する以上、理論的には特定の国における特定の時点において、客観的に決定すべきものである。
間違いです。
「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており・・・」とされているので、客観的に決定すべきものではありません。

第34回 問題143

日本国憲法の勤労などに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 障害者は、これを酷使してはならないと明記している。
2 何人も、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有すると明記している。
3 男女同一賃金の原則を明記している。
4 週40時間労働の原則を明記している。
5 勤労者は団体行動をしてはならないと明記している。

1 障害者は、これを酷使してはならないと明記している。
誤りです。憲法27条には「児童は、これを酷使してはならない」とされています。

2 何人も、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有すると明記している。
これが正解です。

3 男女同一賃金の原則を明記している。
誤りです。これは憲法ではなく労働基準法に規定されています。

4 週40時間労働の原則を明記している。
誤りです。これは憲法ではなく労働基準法に規定されています。

5 勤労者は団体行動をしてはならないと明記している。
誤りです。憲法28条には団体行動権が保証されています。

第35回 問題77

日本国憲法の基本的人権に関する最高裁判所の判断についての次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 公務員には争議権がある。
2 永住外国人には生活保護法に基づく受給権がある。
3 生活保護費を原資とした貯蓄等の保有が認められることはない。
4 嫡出子と嫡出でない子の法定相続分に差を設けてはならない。
5 夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は違憲である。

選択肢4が正解です。

【生活困窮者自立支援制度】生活保護の一歩手前で救う仕組み
戦後から福祉の主たる対象だった「高齢者」「障害者」「児童」。しかし現在ではこの3者だけではなく、ワーキングプア、ニート、ひきこもり、社会的孤立など様々な問題を抱えた人達が困窮しています。生活困窮者自立支援制度では、これまで福祉の対象ではなかったすべての人達を救う仕組みです。

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