リハビリテーション
語源と定義
リハビリテーションという用語は、ラテン語の「habilis(ハビリス)」を語源としています。
ハビリスは「適した」という意味で、リハビリテーションとは「再び適したものにする」という意味になります。
「リハビリテーション」という語が、「障害者に対する機能回復、能力向上、社会復帰」という意味で使われるようになったのは戦争がきっかけです。
第1次世界大戦以降、戦争で負傷した兵士の機能回復や社会復帰という目的でリハビリテーションが行われ始めました。
その後、1968年にWHOでリハビリテーションが次のように定義されます。
「リハビリテーションとは能力低下の場合に機能的能力が可能な限り最高の水準に達するように個人を訓練あるいは再訓練するため、医学的・社会的・職業的手段を併せ、かつ調整して用いること」
現在では「リハビリテーション」は単に復帰の為の訓練を指す用語ではなく、再び適した状態に回復すること、そこには名誉の回復という意味も含まれます。
4分野のリハビリテーション
上の例でわかるように、リハビリテーションの意味は広く、以下の4分野のリハビリテーションがあります。
我々が一般的にリハビリというときは、医学的リハビリテーションを意味し、病気やケガから復帰するための機能回復訓練、理学療法や作業療法などを指しますが、職業的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、社会的リハビリテーションがあります。
医学的リハビリテーション | 病気やケガから復帰するための機能回復訓練、理学療法や作業療法など |
職業的リハビリテーション | 職業紹介、職業訓練、職業指導など |
教育的リハビリテーション | 障害児教育や特別支援教育、生涯教育など |
社会的リハビリテーション | 社会性を身につけ社会生活力を高めること |

医学的リハビリテーションは医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなどの医療専門職がチームを組んで行なわれるよ。
訪問リハビリ&通所リハビリ
医学的リハビリテーションを受けるサービスには、訪問リハビリと通所リハビリがあり、介護保険法に「居宅サービス」として規定されています。

通所リハビリは「デイケア」と言うね。
訪問リハビリは自宅に来てもらえるので便利ですが、専用の機器を使用する環境という点では通所リハビリの方が優れています。
予防医学
「予防医学」は病気の予防だけでなく、寿命の延長や身体的・精神的健康の増進を目的としています。
さらに、病気を未然に防ぐだけではなく、病気の進展を遅らせること、再発を防止することも予防であるとされています。
それに基づいて一次予防、二次予防、三次予防が定義されています。
一次予防 | 健康増進と疾病予防 |
二次予防 | 早期発見、早期治療 |
三次予防 | リハビリテーション |

以下の定義は頻出なので、必ず覚えてね。一次予防はまだ病気になっていない状態で予防すること、二次予防は病気の初期段階で早期発見・早期治療、三次予防はリハビリのこと。
過去問
第33回 問題7
リハビリテーションに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい
1 学校教育では行われない
2 急性期治療を終えてから開始される。
3 補装具の処方による代償的・適応的アプローチは含まれない。
4 介護保険制度によるサービスとしては提供されない。
5 将来的な筋力低下が予想される場合の予防的アプローチが含まれる。
1 学校教育では行われない。
間違いです。教育的リハビリテーションがあります。
2 急性期治療を終えてから開始される。
間違いです。急性期においても「医学的リハビリテーション」が実施されます。
3 補装具の処方による代償的・適応的アプローチは含まれない。
間違いです。これは医学的リハビリテーションに含まれます。
4 介護保険制度によるサービスとしては提供されない。
間違いです。介護保険制度には訪問リハビリテーションがあります。
5 将来的な筋力低下が予想される場合の予防的アプローチが含まれる。
正しいです。医学的リハビリテーションに含まれます。
第27回 問題7
リハビリテーション全般に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 健全な身体部位は、リハビリテーションの対象ではない。
2 医学的リハビリテーションには、作業療法士は関与しない。
3 包括的リハビリテーションには、薬物療法が含まれる。
4 精神科デイケアには、理学療法士の配置が必要である。
5 内部障害は、リハビリテーションの対象ではない。
1 健全な身体部位は、リハビリテーションの対象ではない。
間違いです。健全な部位でもリハビリテーションの対象となります。
2 医学的リハビリテーションには、作業療法士は関与しない。
間違いです。巧緻運動(手先を使う作業)の改善などに作業療法士が関与します。
3 包括的リハビリテーションには、薬物療法が含まれる。
正しいです。
4 精神科デイケアには、理学療法士の配置が必要である。
間違いです。精神科デイケアは精神科医、作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理技術者、看護師などが配置されますが、理学療法士は含まれません。
5 内部障害は、リハビリテーションの対象ではない。
間違いです。内部障害もリハビリテーションの対象です。
第32回 問題7
近年のリハビリテーションに関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 がんは、リハビリテーションの対象とはならない。
2 内部障害は、リハビリテーションの対象とはならない。
3 脳卒中のリハビリテーションは、急性期、回復期、生活期(維持期)に分けられる。
4 リハビリテーションは、機能回復訓練に限定される。
5 リハビリテーションを担う職種には、言語聴覚士は含まれない。
1 がんは、リハビリテーションの対象とはならない。
間違いです。がんもリハビリテーションの対象です。
2 内部障害は、リハビリテーションの対象とはならない。
間違いです。内部障害もリハビリテーションの対象です。
3 脳卒中のリハビリテーションは、急性期、回復期、生活期(維持期)に分けられる。
正しいです。
4 リハビリテーションは、機能回復訓練に限定される。
間違いです。機能回復訓練に代表される医学的リハビリテーションだけでなく、教育的リハビリテーション、職業的リハビリテーション、社会的リハビリテーションがあります。
5 リハビリテーションを担う職種には、言語聴覚士は含まれない。
間違いです。言語聴覚士は主として聴覚・言語障害のリハビリ対象者に支援します。
次の記事
次は、バーンアウト(燃え尽き症候群)についてです。

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