ストレスを受けたときのストレス反応、そのストレスが過剰であったときのASDやPTSD、そしてバーンアウト。
社会福祉士や精神保健福祉士などの対人援助職ではバーンアウトが多いと聞きます。だからこそ国家試験でもよく出題されているのでしょう。見ていきましょう。
ストレッサー
日常はストレスに溢れていますが、心身にストレス反応を引き起こす刺激や原因をストレッサーと呼びます。ストレッサーには物理的、化学的、生物学的、心理的、社会的なものがあります。
| ストレッサー | 例 |
|---|---|
| 物理的ストレッサー | 温度、光、音など |
| 化学的ストレッサー | タバコ、アルコール、大気汚染など |
| 生物学的ストレッサー | 細菌、ウイルス、カビなど |
| 心理的ストレッサー | 不安、怒り、悲しみなど |
| 社会的ストレッサー | 家庭環境、職場環境など |
ストレスに直面しても健康を損なうことが少ない性格特性をハーディネスといい、ストレスに対処する力のことを首尾一貫感覚SOC(Sense of Coherence)といいます。
ストレス反応
ストレス反応は、長時間ストレッサーの刺激を受けた場合や、強いストレッサーを受けた時に生じる生体反応であり、ストレッサーに対する生体の自然な適応反応と考えられています。ストレッサーの種類に関係なく心身に同じ反応が起きること、その症状が全身に及ぶことから、カナダの生理学者セリエ(Selye,H.)は汎適応症候群(一般適応症候群、全身適応症候群)と呼びました。
汎適応症候群では、警告反応期→抵抗期→疲弊期と3段階に推移します。
警告反応期
警告反応期は、ストレッサーが加えられた直後の時期で、ストレッサーに対する警告を発してストレスに耐えるために内部環境を急速に準備する緊急反応の時期です。
抵抗期
抵抗期は、ストレッサーに対し活動性を高めてバランスを保っている時期です。症状が治まり抵抗力が増して、一見正常な機能を取り戻したように見えますが、ストレスに抵抗し続けるためのエネルギーを消費し過ぎると疲弊期に移行します。
疲弊期
疲弊期は、長時間継続するストレッサーに心身が対抗できなくなり、抵抗力が衰え、うつ病などの病気になる時期です。
ストレス関連障害
明確なストレス因子によって引き起こされる障害は大きく分けて以下の3種類あります。
・急性ストレス障害
・心的外傷後ストレス障害
・適応障害
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心的外傷後ストレス障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)には以下のような特徴があります。
・外傷的出来事を直接または間接的に体験したことがある
・症状が1カ月以上続いている
・症状が重大な苦痛を引き起こしているか、日常生活に大きな支障をきたしている
| PTSDの症状 | 内容 |
|---|---|
| 再体験症状(侵入症状) | トラウマとなった出来事の記憶が蘇る。悪夢を見ることも多い。 |
| 回避症状 | トラウマとなった出来事を想起させるようなことを避ける。 |
| 認知と感情の否定的変化 | 物事を悪い方に認知して否定的になってしまう。 |
| 慢性過覚醒症状 | 少しの刺激で驚愕反応、集中困難になる。 |

再体験症状は悪夢などのフラッシュバックだね。回避症状はトラウマ体験を想起させるような場所や行動を避けようとする症状だよ。
急性ストレス障害(ASD)
急性ストレス障害(ASD:Acute Stress Disorder)は、大きなストレスを経験して間もなく始まり、1か月未満で消失するものです。

1か月未満で消失するのがASD、1か月以上続くのがPTSDだね。
適応障害
適応障害では、特定可能なストレス因子によって引き起こされる、著しい苦痛を伴い日常生活に支障をきたす感情面、行動面の症状があります。
ストレス因子は、失業や死別など独立した出来事、家族問題など持続的問題など様々で、PTSDでみられるような圧倒的な外傷的出来事である必要はありません。
バーンアウト
バーンアウトは別名「燃え尽き症候群」と呼ばれるように、仕事に対して過度のエネルギーを費やした結果、疲弊的に抑うつ状態に至り、仕事への興味・関心や自信を低下させた状態のことです。
1970年代、アメリカの精神科医ハーバート・フロイデンバーガー(Freudenberger,H.)が論文で「バーンアウト」という造語を発表したのが初でした。
症状
1980年代、アメリカの社会心理学者クリスティーナ・マスラック(Maslach,C.)が、バーンアウトの3尺度から重症度を判定するMBI(Maslach Burnout Inventory)を提唱しています。
・情緒的な消耗感
・個人的達成感の低下
・脱人格化
情緒的な消耗感
バーンアウトすると、消耗感や疲労感が半端ないです。
ものすごい脱力感で仕事を辞めたいと思ったり・・・。
個人的達成感の低下
バーンアウトする人はもともと一生懸命仕事に取り組んできた人が多いです。
なのでバーンアウトすると仕事への達成感が著しく低下してしまいます。
脱人格化
脱人格化というのは他人に対して無情にふるまう非人間的な対応をとることです。
これにより「人を人と思わなくなる気持ち」が生じます。
これは自己防衛反応の一種で、それ以上消耗しないように人に対して思いやりのない対応をしたりするようになるのです。

シニシズム(冷笑主義)ともいうよ。
まとめ
バーンアウトの症状として、「脱人格化」を覚えておいてください。
そして、心理的・精神的な症状はあっても、身体的な症状がないことも併せて覚えておきましょう。
つまり、体の痛みや身体機能の低下、失語症状などは起こりません。
バーンアウトしないために、まずはストレスコーピングです。
過去問
第33回 問題12
心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、自然災害によっても引き起こされる。
2 フラッシュバックとは、心的外傷体験に関する出来事を昇華することである。
3 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、心的外傷体験後1か月程度で自然に回復することもある。
4 過覚醒とは、心的外傷体験に関する刺激を持続的に避けようとすることである。
5 回避症状とは、心的外傷体験の後、過剰な驚愕反応を示すことである。
1 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、自然災害によっても引き起こされる。
これが正解です。
2 フラッシュバックとは、心的外傷体験に関する出来事を昇華することである。
誤りです。フラッシュバックは心的外傷体験を再体験する症状です。
3 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、心的外傷体験後1か月程度で自然に回復することもある。
誤りです。1か月程度で回復する場合はPTSDではなく急性ストレス障害(ASD)になります。
4 過覚醒とは、心的外傷体験に関する刺激を持続的に避けようとすることである。
誤りです。これは回避症状です。
5 回避症状とは、心的外傷体験の後、過剰な驚愕反応を示すことである。
誤りです。これは過覚醒症状です。
第36回 問題12
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状に関する次の記述のうち、回避症状の事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ささいな事でもひどく驚いてしまうようになった。
2 事故が起きたのは全て自分のせいだと考えてしまう。
3 つらかった出来事を急に思い出すことがある。
4 交通事故にあった場所を通らないようにして通勤している。
5 大声を聞くと虐待されていたことを思い出し苦しくなる。
1 ささいな事でもひどく驚いてしまうようになった。
誤りです。これは過覚醒症状です。
2 事故が起きたのは全て自分のせいだと考えてしまう。
誤りです。これは認知と感情の否定的変化です。
3 つらかった出来事を急に思い出すことがある。
誤りです。これは再体験症状(侵入症状)です。
4 交通事故にあった場所を通らないようにして通勤している。
これが正解、回避症状です。
5 大声を聞くと虐待されていたことを思い出し苦しくなる。
誤りです。これは過覚醒症状です。
第32回 問題13
ストレス反応の1つであるバーンアウトの症状に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 理解と発話の両面での失語症状が生じる。
2 人を人と思わなくなる気持ちが生じる。
3 近時記憶の著しい低下が生じる。
4 視覚的な幻覚が頻繁に生じる。
5 他者との関係を強めようとする傾向が生じる。
1 理解と発話の両面での失語症状が生じる。
失語症状は生じません。
2 人を人と思わなくなる気持ちが生じる。
これが正解です。脱人格化が起こります。
3 近時記憶の著しい低下が生じる。
記憶の著しい低下は起こりません。
4 視覚的な幻覚が頻繁に生じる。
幻覚が頻繁に生じることはありません。
5 他者との関係を強めようとする傾向が生じる。
燃え尽きた人にこのようなことは起こりません。
第30回 問題13
バーンアウト(燃え尽き症候群)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 対人援助職に生じることは少ない。
2 援助対象一人ひとりの感情に配慮した行動をとりやすくなる。
3 極度の身体的疲労は示すが、情緒的問題では少ない。
4 個人の能力やスキル不足が主な原因であり、職場環境の影響は小さい。
5 仕事に対する個人的達成感の低下が生じる。
1 対人援助職に生じることは少ない。
間違いです。対人援助職に多く生じます。
2 援助対象一人ひとりの感情に配慮した行動をとりやすくなる。
間違いです。脱人格化により感情に配慮した行動がとれなくなります。
3 極度の身体的疲労は示すが、情緒的問題では少ない。
間違いです。情緒的問題が生じます。
4 個人の能力やスキル不足が主な原因であり、職場環境の影響は小さい。
間違いです。職場環境の影響も大きいです。
5 仕事に対する個人的達成感の低下が生じる。
これが正解です。マスラックの3尺度の1つが「仕事への達成感の低下」でした。
公認心理師 第1回 問17(追試)
バーンアウトについて、正しいものを1つ選べ。
① バーンアウトの中核的な特徴は不安である。
② バーンアウトが最も多い職種は生産技術職である。
③ バーンアウトを初めて提唱したのは C. Maslach である。
④ バーンアウトした人は他者に対して無関心になりやすい。
⑤ バーンアウトにおける情緒的消耗感とは自分への不信や疑惑が生じる状態を指す。
① バーンアウトの中核的な特徴は不安である。
間違いです。中核的な特徴は、情緒的消耗感、個人的達成感の低下、脱人格化の3つです。
② バーンアウトが最も多い職種は生産技術職である。
間違いです。医師や教師のような対人援助職に多いです。
③ バーンアウトを初めて提唱したのは C. Maslach である。
間違いです。初めて提唱したのはマスラック(C. Maslach)ではなく、フロイデンバーガー(H. J. Freudenberger)です。
④ バーンアウトした人は他者に対して無関心になりやすい。
これが正解です。
⑤ バーンアウトにおける情緒的消耗感とは自分への不信や疑惑が生じる状態を指す。
間違いです。不信や疑惑ではなく消耗してしまった状態です。
次の記事
次は、ストレス対処法であるコーピングと適応機制について。



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