医療福祉系のさまざまな国家資格について見ていきましょう。
医師
医師という国家資格は業務独占でもあり名称独占でもあることを覚えておきましょう。

業務独占というのは医師の業務は医師という国家資格を持った人でなければ行えないということです。名称独占というのはその名称を用いることができるのはその資格を持った人だけであるということです。
例えば社会福祉士の仕事は社会福祉士資格を持っていない人にも許されています。
しかし名称独占ですから社会福祉士という名称を用いることはできません。
医師の業務には「薬の処方」があります。
「薬の処方」は薬剤師の仕事ではありません。
「医薬分業」といいます。
覚えておきましょう。
薬剤師
上にも書きましたが、薬剤師の仕事は薬の処方ではなく調剤です。
薬剤師も業務独占かつ名称独占です。
理学療法士(PT:Physical Therapist)
治療の対象は身体障害者です。
歩くとか立ち上がるといった基本動作のリハビリを行うのが理学療法士です。
医療機関だけでなくスポーツ関連施設などにもいたりしますね。
理学療法士が業務を行うには、医師の指示が必要であることも覚えておいてください。
作業療法士(OT:Occupational Therapist)
治療の対象は身体障害者と精神障害者です。
理学療法士と異なるのは精神障害者が対象であることです。
業務内容は食事や料理など応用動作のリハビリで、理学療法で基本的動作ができるようになった人等が、さらなる応用動作のリハビリや、心の問題のリハビリにも取り組みます。
ですので福祉施設や児童養護施設などに配置されたりします。
言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)
言語聴覚士は言語、音声、嚥下に関するリハビリを行います。
名称からは「嚥下」が想像しにくいのでよく試験に出ます。
覚えておいてください。
社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士
全て名称独占の資格です。
社会福祉士の業務で医師の指示が必要な業務はありませんが、精神保健福祉士の業務には一部医師の指示が必要なものがあります。
まとめ
重要な国家資格をまとめてみます。
資格 | 業務独占 | 名称独占 | 根拠法 | 対象 | 特記すべき業務 |
---|---|---|---|---|---|
医師 | 〇 | 〇 | 医師法 | 薬の処方 | |
薬剤師 | 〇 | 〇 | 薬剤師法 | 薬の調剤 | |
(準)看護師 | 〇 | 保健師助産師看護師法 | |||
助産師 | 〇 | 保健師助産師看護師法 | |||
保健師 | 〇 | 保健師助産師看護師法 | |||
理学療法士 | 〇 | 理学療法士及び作業療法士法 | 身体障害者 | 基本動作※業務には医師の指示が必要 | |
作業療法士 | 〇 | 理学療法士及び作業療法士法 | 身体・精神障害者 | ||
言語聴覚士 | 〇 | 言語聴覚士法 | 言語機能や摂食・嚥下機能のリハビリ等 | ||
歯科衛生士 | 〇 | 歯科衛生士法 | |||
歯科技工士 | 〇 | 歯科技工士法 | |||
診療放射線技師 | 〇 | 〇 | 診療放射線技師法 | ||
衛生検査技師 | 〇 | 臨床検査技師等に関する法律 | |||
臨床検査技師 | 〇 | 臨床検査技師等に関する法律 | |||
視能訓練士 | 〇 | 視能訓練士法 | |||
技師装具士 | 〇 | 技師装具士法 | |||
救急救命士 | 〇 | 技師装具士法 | |||
社会福祉士 | 〇 | 社会福祉士及び介護福祉士法 | ※医師の指示が必要な業務はない | ||
介護福祉士 | 〇 | 社会福祉士及び介護福祉士法 | |||
精神保健福祉士 | 〇 | 精神保健福祉士法 | ※一部医師の指示で行う業務あり | ||
公認心理士 | 〇 | 公認心理士法 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は国家試験に頻出です。
3つとも名称独占の資格ですが、診療の補助として行う業務は業務独占でもあります。
これら3資格で覚えておくべきは、治療対象と業務内容です。
特に作業療法士の治療対象は精神障害者を含みますが、理学療法士は含まないことを覚えておきましょう。
運転免許などは更新が必要ですが、更新が必要な国家資格はありません。
社会福祉士も介護福祉士も国家資格で免許制ではないので更新の必要はありません。
医師や看護師は免許制ですが国家資格なので更新は必要ありません。
教員免許などもそうですが、免許制の資格は業務独占であって更新は必要ありません。
過去問
第31回 問題75
医療関係職種の業務に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 理学療法士の業務の範囲に、電気刺激、マッサージなどの物理的手段は含まれない。
2 作業療法士の業務の範囲に、両眼視機能の回復のための矯正訓練は含まれない。
3 言語聴覚士の業務の範囲に、人工内耳の調整は含まれない。
4 臨床工学技士の業務の範囲に、生命維持管理装置の操作は含まれない。
5 義肢装具士の業務の範囲に、手術直後の患部の採型は含まれない。
1 理学療法士の業務の範囲に、電気刺激、マッサージなどの物理的手段は含まれない。
間違いです。
理学療法士の業務はマッサージなどの物理的手段を加えることです。
2 作業療法士の業務の範囲に、両眼視機能の回復のための矯正訓練は含まれない。
両眼視機能の回復のための矯正訓練は視能訓練士の業務で、作業療法士の業務の範囲ではないので正しいです。
3 言語聴覚士の業務の範囲に、人工内耳の調整は含まれない。
言語聴覚士の業務には人工内耳の調整が含まれます。
4 臨床工学技士の業務の範囲に、生命維持管理装置の操作は含まれない。
臨床工学義肢の業務の範囲には生命維持管理装置の操作が含まれます。
新型コロナウイルスで人工呼吸器を操作する臨床工学技士が足りませんでした。
5 義肢装具士の業務の範囲に、手術直後の患部の採型は含まれない。
間違いです。
含まれます。
第29回 問題73
医療・福祉の専門職に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 理学療法士は、在宅患者への訪問リハビリテーションについても、医師の指示の下に実施しなければならない。
2 社会福祉士は、要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合、医師からの助言の下で実施しなければならない。
3 医師は、患者に対し治療上、薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合、薬剤師に処方箋を交付させなければならない。
4 言語聴覚士は、摂食機能に障害のある者への療法については、歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。
5 看護師は、臨時応急の手当てを行う際にも、医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。
1 理学療法士は、在宅患者への訪問リハビリテーションについても、医師の指示の下に実施しなければならない。
その通りです。
理学療法士が業務を行うには医師の指示が必要です。
2 社会福祉士は、要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合、医師からの助言の下で実施しなければならない。
社会福祉士の業務で、医師の指示が必要なものはありません。
3 医師は、患者に対し治療上、薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合、薬剤師に処方箋を交付させなければならない。
処方箋を交付するのは薬剤師ではなく医師ですので間違いです。
4 言語聴覚士は、摂食機能に障害のある者への療法については、歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。
そんな規定はありません。
5 看護師は、臨時応急の手当てを行う際にも、医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。
看護師は臨時応急の手当の時は、医師の指示なく業務を行えます。
第30回 問題75
医師法に規定された医師の業務に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 時間外の診療治療の求めに対しては、診療を断る権利がある。
2 医師の名称は独占ではないが、医師の業務は独占である。
3 処方箋の交付は薬剤師に委任できない。
4 診療録の記載は義務となるが、その保存は義務とならない。
5 患者の保健指導は義務とはならない。
1 時間外の診療治療の求めに対しては、診療を断る権利がある。
医師は時間外の診療であっても、その求めに応じる義務があります。
2 医師の名称は独占ではないが、医師の業務は独占である。
医師の名称は業務独占かつ名称独占です。
3 処方箋の交付は薬剤師に委任できない。
その通りです。
4 診療録の記載は義務となるが、その保存は義務とならない。
診療録の保存は義務です。
5 患者の保健指導は義務とはならない。
患者の保健指導は義務です。
第30回 問題91
社会福祉士及び介護福祉士法で定められている社会福祉士の業務と義務に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 社会福祉士でなければ社会福祉士の名称を用いて業務を行ってはならない。
2 業務を行う上で主治医の指示を受けなければならない。
3 5年ごとに更新のための研修を受けなければならない。
4 秘密保持の義務は、社会福祉士でなくなった後においては適用されない。
5 業務を行うに当たり、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。
1 社会福祉士でなければ社会福祉士の名称を用いて業務を行ってはならない。
その通りです。
社会福祉士は名称独占資格ですので、社会福祉士でなければその名称を使用することはできません。
2 業務を行う上で主治医の指示を受けなければならない。
社会福祉士の業務で医師の指示が必要なものはありません。
3 5年ごとに更新のための研修を受けなければならない。
更新が必要な国家資格はありません。
4 秘密保持の義務は、社会福祉士でなくなった後においては適用されない。
そんなことはありません。
5 業務を行うに当たり、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。
正しいです。
ということで正解は選択肢1と選択肢5です。
第29回 問題91
社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会福祉士の名称使用は、登録後でなければならない。
2 業務を行うに当たっては、クライエントの主治医の指導を受けなければならない。
3 専門性の維持・向上を目的として、資格更新研修を受けなければならない。
4 所属する勤務先の立場を優先して業務を行わなければならない。
5 資質向上の責務として、相談援助に関わる後継者の教育指導に努めなければならない。
1 社会福祉士の名称使用は、登録後でなければならない。
正しいです。
私は介護福祉士の資格を取得したときに驚きましたが、試験に合格するだけでは介護福祉士になれず、なんと登録が必要なのです。
しかも登録料や印紙代、送料などなど、登録するために2万円くらいかかったように記憶しています。
このへんのことはとても嫌な「利権」のニオイがしますが、しかたなく登録したことを覚えています。
2 業務を行うに当たっては、クライエントの主治医の指導を受けなければならない。
医師の指導に関してはしつこい程出てきますが、主治医の指導は必要ありませんので間違いです。
3 専門性の維持・向上を目的として、資格更新研修を受けなければならない。
国家資格の更新は必要ありません。
4 所属する勤務先の立場を優先して業務を行わなければならない。
そんなわけありません。
5 資質向上の責務として、相談援助に関わる後継者の教育指導に努めなければならない。
これは少し迷いますが、間違いです。
後継者の教育指導に努める責務はありません。

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