公権力から国民の権利や利益を守るための救済三法は、国家賠償法、行政事件訴訟法、行政不服審査法で成り立っています。
ここでは国家賠償法によって国民および公務員がどのように守られているか見てみましょう。
国家賠償法
1947年に国家賠償法が制定されます。戦後すぐに制定された国家賠償法の第一条は以下のような条文になっています。
第一条第一項「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」
第一条第二項「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」
上記のように、公務員が職務中に犯した過失は、公務員自身に賠償の責任はなく国家が代わりに賠償します。
このように、公務員は守られているのです。
過去問
第29回 問題80
国家賠償法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 公立の福祉施設の職員の過失により加えられた利用者への損害に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。
2 公務員の違法な公権力行使により損害を被った者は、国家賠償法に加えて、公務員個人の民法上の不法行為も問うことができる。
3 公務員が適切に公権力を行使しなかったことによる損害に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。
4 公務員が家族旅行に行った先で、誤って器物を損壊したことに対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。
5 非番の警察官が制服を着用して行った行為による損害に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。
1 公立の福祉施設の職員の過失により加えられた利用者への損害に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。
間違いです。
公立の福祉施設職員は公務員です。
公務員が「過失によって」利用者に損害が発生したので、国家賠償法に基づく損害賠償請求ができます。
2 公務員の違法な公権力行使により損害を被った者は、国家賠償法に加えて、公務員個人の民法上の不法行為も問うことができる。
間違いです。
公務員の違法な公権力による損害は、国または公共団体が賠償する責任を負い、公務員個人の民法上の不法行為責任は問われません。
問われることになると公務員の活動が消極的になり国民に不利益が生じることが考えられるからです。
3 公務員が適切に公権力を行使しなかったことによる損害に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。
間違いです。
公務員が適切に公権力を行使しなかったことによる損害に対しても、損害賠償請求ができます。
4 公務員が家族旅行に行った先で、誤って器物を損壊したことに対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。
これが正解です。
公務員が休日に起こしたことは個人の責任なので、国家賠償法による国の責任にはならないので損害賠償請求はできません。
5 非番の警察官が制服を着用して行った行為による損害に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求はできない。
間違いです。
警察官は非番であっても制服を着用している場合は職務中と見なされるので国家賠償法による損害賠償請求ができます。
その行為を客観的に外から見た様子で勤務中か非番かを判断されます(外形標準説といいます)。
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次は、行政行為と行政訴訟について
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