【行政不服審査法&行政事件訴訟法】審査請求せずに訴訟ができる?

不服申立と取消訴訟

税や社会保障に関する国や地方公共団体が行った処分等に対して不服がある場合、以下の2種類の対応方法があります。

①不服申立(行政不服審査法)
②取消訴訟(行政事件訴訟法)

不服申立は処分庁やその上級行政庁に対して行いますが、取消訴訟は行政権から独立した裁判所に申立てますので、審査の公正性の点では最高ですが手続きは複雑になります。

訴訟には以下のように主観訴訟と客観訴訟があり、主観訴訟のうち抗告訴訟に分類されるのが「取消訴訟」です。

主観訴訟抗告訴訟取消訴訟、無効等確認訴訟など
当事者訴訟当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟
客観訴訟民衆訴訟住民が国や地方公共団体に「法律違反を正せ!」
機関訴訟行政機関同士の争い

また、不服申立は、行政処分に対して不服があるときだけでなく、行政の不作為(法令に基づき申請をしたにもかかわらず、相当期間内に処分をしないこと)に対して不服があるときにも不服申立てができます。

行政不服審査法

行政不服審査法では、行政処分や不作為に対して「不服申立て」ができる旨が記載されています。
この法律は2016年(約50年ぶり)に法改正され、公正性や使いやすさの向上が図られました。
以下のような点が変更になっています。

<2016年の法改正>
・「審査請求」ができる期間を、「60日以内」から「3月以内」に延長
・不服申立ての手続について、「異議申立て」をなくし原則として「審査請求」に一本化
・審査請求の前に「再調査の請求」ができる場合も、直接審査請求が可能に
・行政不服審査会等の諮問機関(第三者機関)が設けられ、審査庁の裁決の判断をチェック
・審理員制度が導入され、原処分に関与した者は審査請求の審理を行うことができない

結局、以前の法体系ではまず「異議申立て」をしてそれでもダメなら「審査請求」の流れでしたが、現在は審査請求に一本化され、「不服申立」=「審査請求」のような形になっています。

行政事件訴訟法

行政事件訴訟法の第8条1項には以下の内容が記載されています。

自由選択主義

行政処分に不服があるときは、原則、審査請求か取消訴訟かを選ぶことができます。

審査請求を経ずに、いきなり取消訴訟を提起できるということです。

これを自由選択主義といいます。

訴訟をするには訴訟費用がかかりますが、審査請求は無料です。
訴訟をすると裁判が公開されますが、審査請求は非公開でプライバシーが守られます。
訴訟の手続きは複雑ですが、審査請求は訴訟ほど複雑ではありません。

 審査請求訴訟
費用無料必要
プライバシー非公開公開
手続き簡易複雑

不服申立前置主義

基本的には自由選択主義で自由に選べるのですが、個別の法律で「審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消の訴えを提起することができない」と定められているときには、審査請求を経ないと取消訴訟ができません。

これを不服申立前置主義といいます。

福祉関係では要介護認定や障害支援区分認定、生活保護の支給決定など、重要な処分の多くは不服申立前置主義をとっています。

その理由としては、処分が大量に行われるため裁判所の負担が大きくなること、処分に専門技術的な性質があること、審査請求による採決が第三者機関によって行われることなどが主なものです。

<不服申立前置主義を採用している法律>
・生活保護法69条(生活保護の決定及び実施に関する処分)
・介護保険法196条(要介護認定)
・障害者総合支援法105条(障害支援区分認定)
・健康保険法192条(被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分)
・国税通則法115条(国税に関する法律に基づく処分)
・労働者災害補償保険法40条(労災保険給付に関する決定)
・国家公務員法92条の2(職員に対する降給等の不利益処分又は懲戒処分)
・その他多数

まとめ

行政処分に不服がある時は、
①「不服申立」として審査請求を行う
②「取消訴訟」を行う
のいずれかを選ぶことができますが(自由選択主義)、法律によっては①不服申立を経ないと②取消訴訟ができないものがあります(不服申立前置主義)。

不服申立前置主義に基づく福祉関係の法律は以下のような行政処分が含まれます。

生活保護法(支給決定)
・介護保険法(要介護認定)
・障害者総合支援法(障害支援区分認定)
・その他
つまり、要介護認定や障害支援区分認定、生活保護の支給決定に不服がある場合は、まず審査請求による不服申立てをしてからでないと、訴訟はできないということです。

過去問

第30回 問題78

介護保険制度に関する次の記述のうち、行政事件訴訟法上の取消訴訟で争い得るものとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 制度に関する一般的な情報の提供
2 要介護認定の結果
3 サービス担当者会議の支援方針
4 居宅介護支援計画の内容
5 介護保険事業計画の内容

取消訴訟は「行政の処分」に対する訴えなので、行政が行う内容を選べばOKです。

1 制度に関する一般的な情報の提供
これは地域包括支援センターが行うので間違いです。

2 要介護認定の結果
これが正解です。

3 サービス担当者会議の支援方針
これはサービス提供事業者が行うので間違いです。

4 居宅介護支援計画の内容
これはサービス提供事業者が行うので間違いです。

5 介護保険事業計画の内容
これはサービス提供事業者が行うので間違いです。
そもそも、選択肢1,3,4,5は訴訟を行うようなものではありません。

第32回 問題79

行政処分に対する不服申立てに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 処分庁に上級行政庁がない場合は、処分庁に対する異議申立てをすることができる。
2 審査請求をすることのできる期間は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して10日以内である。
3 審査請求に係る処分に関与した者は、審査請求の審理手続きを主催する審理員になることができない。
4 行政事件訴訟法によれば、特別の定めがあるときを除き、審査請求に対する裁決を経た後でなければ、処分の取消しの訴えを提起することができない。
5 再調査の請求は、処分庁以外の行政庁が審査請求よりも厳格な手続きによって処分を見直す手続きである。

1 処分庁に上級行政庁がない場合は、処分庁に対する異議申立てをすることができる。
間違いです。
2016年の法改正によって「異議申立て」がなくなり「審査請求」に一本化されています。

2 審査請求をすることのできる期間は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して10日以内である。
間違いです。
2016年の法改正によって、審査請求できる期間は(処分があったことを知った日の翌日から起算して)、60日から3カ月に延長されています。

3 審査請求に係る処分に関与した者は、審査請求の審理手続きを主催する審理員になることができない。
これが正解です。

4 行政事件訴訟法によれば、特別の定めがあるときを除き、審査請求に対する裁決を経た後でなければ、処分の取消しの訴えを提起することができない。
間違いです。
行政事件訴訟法の第8条1項には以下の自由選択主義が規定されています。
「行政庁の処分について、審査請求ができる場合でも、いきなり取消訴訟を提起できる」
この自由選択主義が原則ですが、個別の法律で審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消の訴えを提起することができないと定められているときには、審査請求を経ないでいきなり取消訴訟を提起することはできない(審査請求前置主義)とされています。

5 再調査の請求は、処分庁以外の行政庁が審査請求よりも厳格な手続きによって処分を見直す手続きである。
間違いです。
行政不服審査法によると、再調査の請求は「処分庁」に対して行うものです。

次の記事

次は「救済三法と訴訟類型」です。

【救済三法】国家賠償法&行政事件訴訟法&行政不服審査法、そして訴訟類型
公権力から国民の権利や利益を守るための救済三法は、国家賠償法、行政事件訴訟法、行政不服審査法で成り立っています。ここでは国家賠償法によって国民および公務員がどのように守られているか見てみましょう。そして、訴訟類型についても...

コメント

タイトルとURLをコピーしました