多文化ソーシャルワークのキーワード「文化的コンピテンス」「マイクロアグレッション」「バイカルチュラリズム」を押さえましょう。
多文化ソーシャルワーク
多文化ソーシャルワークについて著したスー(Sue, D.W.)は、文化を「歴史の中で、人々が、行い、信じ、大切にし、そして享受するために学んだすべてのこと」と捉えました。
文化的コンピテンス
日本に移住する外国人が増え続け、その福祉的対応がますます見込まれる中で、日本の福祉専門職には、異なる文化や多様性を理解し対応する能力「文化的コンピテンス」が求められています。
コンピテンスとは、知識や技術なども含めたその人の「能力」です。
文化的コンピテンス(カルチュラル・コンピテンス)は「多文化対応力」と訳され、それぞれの文化を尊重し、異なる文化の衝突や対立に対処する能力のことです。

例えば、文化によっては豚肉を食べない、入れ墨を入れる、毎日お祈りをするとかいろいろあるよね。
マイクロアグレッション
マイクロアグレッションとは、悪意なく(無意識の偏見に基づき)日常的になされる、マイノリティや特定の属性に対する微細な差別的言動のことです。

外国人に対して「日本語上手ですね」とか「〇〇人だから〇〇でしょ」みたいなステレオタイプに基づく発言がマイクロアグレッションだね。
バイカルチュラリズム
バイカルチュラリズムは、個人が異なる2つの文化(言語、習慣、道徳など)を同レベルで身につけ、適応している状態やその能力を指します。

バイリンガルが2つの言語を操るのに対して、バイカルチュラリズムは2つの文化を使い分けたり融合させたりする能力だね。
人種/民族の曖昧さ
「人種/民族の曖昧さ」とは、肌の色や骨格といった身体的特徴(人種)や、文化・言語・歴史的背景(民族)の境界が曖昧であるということです。
現代のグローバル化で混血や移民が進み、多様な背景を持つアイデンティティの狭間に立つ人々が増加しています。
過去問
第38回 問題67
次の記述のうち、多文化ソーシャルワーク(Multicultural Social Work)について著したスー(Sue, D.W.)による言説として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 文化的コンピテンス(Cultural Competence)を「ソーシャルワーカーの最適な発達を最大限に促したり、そのための環境を創出する教育的能力」と捉えた。
2 マイクロアグレッション(Microaggression)を「不特定多数の者に対して突発的に行う、根拠なき侮蔑行為」と捉えた。
3 文化(Culture)を「歴史の中で、人々が、行い、信じ、大切にし、そして享受するために学んだすべてのこと」と捉えた。
4 バイカルチュラリズム(Biculturalism)を「二つの異なる文化圏で誕生したアメリカ社会が人々の生活を拘束していること」と捉えた。
5 人種/民族の曖昧さ(Racial/Ethnic Ambiguity)を「多文化社会での暮らしや雑婚により、自身の人種・民族的なアイデンティティが曖昧さの中で失われること」と捉えた。
1 文化的コンピテンス(Cultural Competence)を「ソーシャルワーカーの最適な発達を最大限に促したり、そのための環境を創出する教育的能力」と捉えた。
誤りです。文化的コンピテンスはソーシャルワーカーの発達を促すものとしては捉えません。
2 マイクロアグレッション(Microaggression)を「不特定多数の者に対して突発的に行う、根拠なき侮蔑行為」と捉えた。
誤りです。マイクロアグレッションは、日常の些細でありふれた言動などの中で、侮蔑や否定的含意を伝えるものです。
3 文化(Culture)を「歴史の中で、人々が、行い、信じ、大切にし、そして享受するために学んだすべてのこと」と捉えた。
これが正解です。
4 バイカルチュラリズム(Biculturalism)を「二つの異なる文化圏で誕生したアメリカ社会が人々の生活を拘束していること」と捉えた。
誤りです。バイカルチュラリズムは、2つの異なる文化(言語、習慣、価値観など)を同等に理解・尊重することです。
5 人種/民族の曖昧さ(Racial/Ethnic Ambiguity)を「多文化社会での暮らしや雑婚により、自身の人種・民族的なアイデンティティが曖昧さの中で失われること」と捉えた。
誤りです。人種や民族の曖昧さとは、肌の色や骨格といった身体的特徴(人種)や、文化・言語・歴史的背景(民族)の境界が曖昧であることですが、それが失われるとは捉えません。
精神保健福祉士 第21回 問題30、31、32
次の事例を読んで、問題30 から問題32 までについて答えなさい。
〔事 例〕
来日した留学生Bさん(24歳、男性)は、日本語学校に入学し、生活習慣の違いに不安を抱えながらも新生活を始めた。居住している留学生会館があるN地区は、外国籍の労働者や留学生が多く、国際結婚をした家族も多数居住している。Bさんは、同じ日本語学校の留学生Cさんたちともすぐに仲良くなり、当初あった不安も減り孤独を感じることなく、慌ただしいながらも暮らしに馴染んでいった。(問題 30)
来日して3か月が過ぎた頃から、Bさんは気分が落ち込み、仲間たちとも次第に距離をとるようになっていった。その様子を心配したCさんが、Bさんに付き添い日本語学校の保健室を訪れると、留学生支援で実績があるN地区のUクリニックを紹介された。Uクリニックの医師は、Bさんに薬物療法の必要性を伝え、定期的な通院を勧めた。インテークを担当したD精神保健福祉士は、言語や生活習慣の違いを特に注意しながら、Bさんと面接を行った。(問題 31)
Bさんは、D精神保健福祉士との面接を通じて、二人にサッカーという共通の趣味があることも分かり、徐々に打ち解けていった。その後、Bさんは、自分の不調をうまく言葉に表すことができず苦しかったことや、日本での手続が複雑で困ったこと、日常生活で困惑したことなどを話すようになり、元気を取り戻していった。ところがある日、BさんはD精神保健福祉士に、「留学生同士でも違う」、「みんな一緒にするな」と語気を荒げた。そして、普段はあまり使わない母国語も交え、「この地区では同じ国の出身者と集まることが多い」、「留学生同士でも仲間に入れない人や、孤立している人がいる」と続け、これまで感じていた違和感や疎外感について訴え、肩を落とし、やがて沈黙し涙を浮かべた。(問題 32)
Bさんは通院を継続し、半年後には落ち着いて仲間たちとも付き合えるようになった。
最近の面接では、「趣味のサッカーをいかし、地域で交流を深められないか」と前向きな発言が聞けるようになってきている。
第21回 問題30
次のうち、このときBさんがCさんたちから受けていたソーシャルサポートとして、最も適切なものを 1つ選びなさい。
1 所属的サポート
2 情緒的サポート
3 情報的サポート
4 道具的サポート
5 評価的サポート
選択肢2が正解です。
第21回 問題31
次のうち、D精神保健福祉士がBさんとの面接に当たり、念頭に置く内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コミュニティオーガニゼーション
2 エビデンス・ベースド・プラクティス
3 ソーシャルアクション
4 ソーシャルエクスクルージョン
5 カルチュラル・コンピテンス
選択肢5が正解です。
第21回 問題32
次の記述のうち、この場面におけるD精神保健福祉士の発言として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「留学生同士のまとまりをより深めてみましょう」
2 「他地域の様子を参考にしてみてはどうでしょう」
3 「私も疎外感を覚えたときがありましたよ」
4 「地域の人々と交流したいのですね」
5 「今、孤独を感じているのですね」
選択肢5が正解です。面接技法「感情の反映」です。
次の記事
次は、必ず毎年出題されるソーシャルワークのアプローチについて。



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