日本では何万人もの人が、毎年自殺しています。
その数に驚くと同時に、その一人ひとりに人生があったことを改めて思います。
こんな異常な状態の日本が、未来に希望の持てる国になってほしいと願います。
近年の動向
下のグラフにあるように、1998年に年間自殺者が3万人を超え、高止まりを続けて2003年には3万4千人を超えてしまいました。
政府は2006年に「自殺対策基本法」を制定し、本格的に自殺対策に乗り出します。
その後、少しずつ自殺者は減り続け、2012年には3万人を割ります。
2006年に自殺対策基本法が制定されてから10年後の2016年、自殺対策基本法が改定され、都道府県と市町村に「自殺対策計画」の策定が義務づけられます。
自殺対策基本法
・自殺対策は、自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであることを踏まえ、単に精神保健的観点からのみならず、自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない
・自殺対策は、生きることの包括的な支援として、全ての人がかけがえのない個人として尊重されるとともに、生きる力を基礎として生きがいや希望をもって暮らすことができるよう、その妨げとなる諸要因の解消に資するための支援とそれを支えかつ促進するための環境の整備充実が幅広くかつ適切に図られることを旨として、実施されなければならない
・国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校、自殺対策に係る活動を行う民間の団体その他の関係者は、自殺対策の総合的かつ効果的な推進のため、相互に連携を図りながら協力するものとする
・国及び地方公共団体は、自殺未遂者が再び自殺を図ることのないよう、自殺未遂者等への適切な支援を行うために必要な施策を講ずるものとする
・都道府県と市町村は自殺対策計画を策定するものとする
自殺の予防
自殺の予防は以下の3段階で取り組まれます。
第1次予防(プリベンション)
プリベンションは自殺が起こる要因に対策する事前予防のことです。
啓発活動とか、子供たちに自殺予防教育を行ったりとか。
第2次予防(インターベンション)
インターベンションは、自殺の危機にある自殺未遂者などの当事者への介入のことです。
相談援助過程でインターベンションは「介入」だったね。
第3次予防(ポストベンション)
ポストベンションは、自殺した遺族等に対する心のケアなどのことです。
プリ=「事前の」、プリペイドカードは事前にカードに入金するやつだね。ポスト=「事後の」、ポストコロナはコロナ禍の後のことだね。
ゲートキーパー
ゲートキーパーは「門番」という意味です。
厚生労働省のHPには以下のように書かれています。
ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる「命の門番」、かかりつけの医師を始め、教職員、保健師、看護師、ケアマネージャー、民生委員、児童委員、各種相談窓口担当者など、関連するあらゆる分野の人材にゲートキーパーとなっていただけるよう研修等を行う
試験を受けて取得できるような資格ではなく、研修を受講する形です。
認知症サポーターとかもそうだったね。
過去問
第29回 問題28
自殺対策基本法に関するつぎの記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 精神保健的観点から自殺対策を強化することが、優先的課題とされている。
2 自殺対策を、生きることへの包括的な支援として捉えている。
3 国は地方公共団体の自殺対策に関与してはならないとされている。
4 自殺予防に関し、保健所が一元的に担うこととされている。
5 自殺未遂者への支援として、就労支援施策を実施することが義務づけられている。
1 精神保健的観点から自殺対策を強化することが、優先的課題とされている。
間違いです。精神保健的観点からのみではありません。
2 自殺対策を、生きることへの包括的な支援として捉えている。
これが正解です。
3 国は地方公共団体の自殺対策に関与してはならないとされている。
間違いです。国と地方公共団体は連携する必要があります。
4 自殺予防に関し、保健所が一元的に担うこととされている。
間違いです。保健所が一元的に担うのではなく、国や地方公共団体が連携・協力します。
5 自殺未遂者への支援として、就労支援施策を実施することが義務づけられている。
間違いです。義務ではありません。
精神保健福祉士 第21回 問題16
次のうち、2016年(平成28年)の自殺対策基本法改正によって新たに加えられた内容として、正しいものを2つ選びなさい。
1 精神科医の診療を受けやすい環境の整備
2 自殺未遂者の再企図防止のための施策
3 心理的負担を受けた場合の対処方法を身に付けるための児童生徒に対する教育
4 自殺者又は自殺未遂者の親族等への支援に必要な施策
5 都道府県及び市町村は、自殺対策計画を定めること
選択肢3と5が正解です。
精神保健福祉士 第23回 問題17
次のうち、自殺対策におけるポストベンションの活動として、適切なものを1つ選びなさい。
1 自殺で亡くなった中学生の同級生に対して実施される心のケア
2 自殺対策強化月間におけるインターネットを活用した支援窓口の広報
3 救命救急センターに搬送された自殺未遂者に対するフォローアップ支援
4 地域住民に対するうつ病予防のための講演会
5 希死念慮を有する者を対象とした電話による相談
1 自殺で亡くなった中学生の同級生に対して実施される心のケア
これが正解、ポストベンションです。
2 自殺対策強化月間におけるインターネットを活用した支援窓口の広報
これは、プリベンションです。
3 救命救急センターに搬送された自殺未遂者に対するフォローアップ支援
これは、インターベンションです。
4 地域住民に対するうつ病予防のための講演会
これは、プリベンションです。
5 希死念慮を有する者を対象とした電話による相談
これは、プリベンションです。
公認心理師 第1回 問題34
自殺対策におけるゲートキーパーの役割について、不適切なものを1つ選べ。
①専門家に紹介した後も地域で見守る。
②悩んでいる人に寄り添い、関わりを通して孤立や孤独を防ぐようにする。
③専門的な解釈を加えながら診断を行い、必要に応じて医療機関を受診させる。
④悩んでいる人のプライバシーに配慮しつつ、支援者同士はできるだけ協力する。
⑤悩んでいる人から「死にたい」という発言がなくても、自殺のリスクについて評価する。
選択肢③が不適切です。ゲートキーパーは診断はしません。
次の記事
次は、発達理論と成長過程です。
コメント