【愛着理論】虐待を受けた子供たちの反応性愛着障害とは?

イギリスの精神科医であるジョン・ボウルビィ(Bowlby,J.)が提唱した「愛着理論」を学びましょう。

子どもが母親などの養育者に抱く「愛着」に関する理論です。

そして、虐待を受けた子供たちの愛着障害という悲しい現実も。

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愛着とは

愛着」は英語で「アタッチメント(attachment)」といいます。

心理学では乳幼児と親との関係を中心とした情緒的な結びつきのことを愛着といいます。

子どもが養育者を「安心できる人」と認識すると、後追い行動などで愛着形成が進んでいきます。

アタッチメント(愛着)

内的ワーキングモデル

例えば子供が母親に愛着を覚えると、子供の内側に養育者のモデルが形成されます。

このモデルを「内的ワーキングモデル」と呼びます。

つまり、内的ワーキングモデルとは、子どもと養育者の関係から生まれる認識のことです。

この認識は成長してからも対人関係に影響を与える重要なものです。

愛着行動の発達4段階

エリクソンの発達理論では8段階、ピアジェの発達理論では4段階の発達段階がありましたね。

ボウルビィの愛着理論では、愛着行動の発達段階は4段階あります。

段階 名称 時期 特徴
第1段階 非弁別的な前愛着段階 生後3ヵ月頃まで 特定の人物を識別せず、人の顔や声に反応するのみ
第2段階 弁別的な愛着形成段階 生後6ヶ月頃まで 特定の人物に微笑みかける等、応答的な反応
第3段階 接近と接触の愛着段階 生後6ヶ月から3歳頃まで 特定の人物に接近する、人見知り不安により養育者を心の安全基地として利用
第4段階 パートナーシップの段階 3歳以降 身体的接触がなくても特定の人物と絆ができる

愛着障害(アタッチメント障害)

小さいころに虐待やマルトリートメントを受けて愛着形成がうまくいかないと、愛着障害を引き起こします。

カリスマくん
カリスマくん

マル(悪い)トリートメント(扱い)とは、不適切な養育(接し方)のことだよ。虐待なども含めた広い概念だね。

ICD-10には「小児期の反応性愛着障害」、DSM-5でも「反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)」として規定されています。

反応性愛着障害

反応性愛着障害は、虐待などを受けた子どもが素直に親に甘えたり頼ったりできないことが特徴です。

この反応性愛着障害には言葉の遅れや低栄養による身体的な成長の遅れがみられる場合もあります。

養育者が微笑みかける、撫でるなど、それまで欠けていた情動体験を補うような関わりが心理療法として有効です。

カリスマくん
カリスマくん

愛着障害を持つ虐待などで愛に飢えた子供たち。だから里親制度ファミリーホームなどの特定のスタッフが母親代わりに寄り添って支援する形が必要なんだね。

脱抑制性愛着障害(脱抑制性型対人交流障害)

脱抑制性愛着障害は、初対面の人にも人見知りせずにべったり抱きつくなど、状況にそぐわないなれなれしい言動があり、ADHDに間違われやすい障害です。

カリスマくん
カリスマくん

反応性愛着障害は甘えられない、脱抑制性愛着障害は甘えすぎるのが特徴だね。

マルトリートメント

ストレンジ・シチュエーション法

ストレンジ・シチュエーション法は、アメリカの発達心理学者であるメアリー・エインスワース(Mary Dinsmore Salter Ainsworth)が開発した愛着の測定法です。

以下のように、部屋に子どもが入室し、母親と赤の他人が出たり入ったりして、子どもの反応を見ます。

カリスマくん
カリスマくん

ストレンジは「奇妙な」という意味だね。奇妙なシチュエーションを作って子どもの反応を見るわけ。

①子どもと母親が入室
②他人が入室
③母親が退出、他人が子どもに話しかける
④母親が戻り、他人が退出
⑤母親が退出、子どもが一人で残る
⑥他人が入室、子どもをあやす
⑦母親が入室、他人が退出
ストレンジシチュエーション法

安定型:親がいれば安心して遊び、他人が入ってきて親が退出した時には不安を示すが、親が戻ってくるとまた安心して遊ぶ

回避型:母親や見知らぬ人に目もくれず一人遊びを続ける、

葛藤型:親と一緒にいるときは安心して遊び、親が出て行くと不安や恐怖を示し、戻ってきた親に対して接触を求めるだけではなく敵意や攻撃も示す

無秩序型:母親に対しての反応に一貫性がない(怒ったり泣いたり・・・)

カリスマくん
カリスマくん

「安定型」が最も愛着形成が正常であると見ることができるんだね。

過去問

第32回 問題10

愛着理論に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 乳幼児期の愛着の形成により獲得される内的ワーキングモデルが、後の対人関係パターンに影響することは稀(まれ)である。
2 ストレンジ・シチュエーション法では、虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見いだすことは難しい。
3 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には、養育者の子どもに対する養育態度だけでなく、子ども自身の気質もある。
4 子どもの後追い行動は、愛着の形成を妨げる要因になる。
5 乳幼児期の子どもの愛着対象は、母親に限定されている。

1 乳幼児期の愛着の形成により獲得される内的ワーキングモデルが、後の対人関係パターンに影響することは稀(まれ)である。
そんなわけありません。当然、対人関係に影響します。

2 ストレンジ・シチュエーション法では、虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見いだすことは難しい。
間違いです。 ストレンジ・シチュエーション法は、虐待など不適切な養育と関係のある愛着のタイプを見いだすものです。

3 愛着のタイプに影響を及ぼす要因には、養育者の子どもに対する養育態度だけでなく、子ども自身の気質もある。
正しいです。

4 子どもの後追い行動は、愛着の形成を妨げる要因になる。
間違いです。子どもの後追い行動は、その対象を安心できる存在と認識している証拠です。

5 乳幼児期の子どもの愛着対象は、母親に限定されている。
間違いです。母親に限定されません。その対象は父親や祖父母などにも及びます。

公認心理師 第1回 問110

反応性アタッチメント障害について、誤っているものを1つ選べ。
①認知と言語の発達は正常である。
②乳幼児期のマルトリートメントと関係が深い。
③自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害<ASD>と症状が一部類似する。
④常に自分で自分を守る態勢をとらざるを得ないため、ささいなことで興奮しやすい。
⑤養育者が微笑みかける、撫でるなど、それまで欠けていた情動体験を補うような関わりが心理療法として有効である。

①認知と言語の発達は正常である。
間違いです。DSM−5の診断基準には「認知及び言語の遅れとともに現れる」とあります。

②乳幼児期のマルトリートメントと関係が深い。
正しいです。マルトリートメントとは「不適切な関わりや教育」です。

③自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害<ASD>と症状が一部類似する。
正しいです。

④常に自分で自分を守る態勢をとらざるを得ないため、ささいなことで興奮しやすい。
正しいです。

⑤養育者が微笑みかける、撫でるなど、それまで欠けていた情動体験を補うような関わりが心理療法として有効である。
正しいです。

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