福祉を必要としているのは高齢者、障害者、児童だけではありません。この3者の縦割りの法体系によって、制度の狭間で福祉の恩恵を受けられない人たちが社会的に孤立し、困窮しているのが現代の社会です。
ひきこもり
<ひきこもりの定義>
様々な要因の結果として、社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職員を含む就労、家庭外での交遊)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を示す現象概念。
※ ひきこもりは、原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神症性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くない。
「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」より
ひきこもりの定義として、「概ね6か月以上」という期間が示されている点は覚えておいてね。
ニート
ニートは Not in Education, Employment or Training の略で、15歳~34歳までの、家事・通学・就業をせず職業訓練も受けていない者とされています。
労働力調査(総務省)には「若年無業者」とされていますが、ニートとほぼ同義です。
2022年の若年無業者の割合は2.3%となっています。
8050問題
長期のひきこもり等によって50代になった子どもの生活を、80代の親が支えるという問題を8050問題といいます。
ひきこもりという言葉が社会にではじめるようになった1980年代~90年代は若者の問題とされていましたが、その後ひきこもりが長期化し、気がつけば当時の若者が50代、その親が80代となり社会的に孤立、生活が立ち行かなくなる深刻なケースが目立ちはじめています。
8050問題の名付け親は、大阪府豊中市社会福祉協議会のコミュニティ・ソーシャルワーカーの勝部麗子さんだね。
ヤングケアラー
ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものことです。
本来なら享受できたはずの、勉強に励む時間、部活に打ち込む時間、友人と遊ぶ時間などと引換えに、家事や家族の世話をしていて、自分でもヤングケアラーであるという認識がないことが多いです。
自治体でも実態調査が始まったばかりです。
ダブルケア
育児と介護の両方を担うことをダブルケアと言います。
晩婚化や高齢出産化などにより、育児と親の介護のタイミングが重なる人が増えています。
ホームレス
第二条 この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。
ホームレス自立支援法に規定されているホームレスの定義は上記の通りです。
過去問
第34回 問題27
新しい社会的リスクやそれへの対処に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 ニートとは、35~59歳の未婚者のうち、仕事をしておらず、ふだんずっと一人でいるか、家族しか一緒にいる人がいない者のことを指す。2 ダブルケアとは、老老介護の増加を踏まえ、ケアを受ける人と、その人をケアする家族の双方を同時に支援することを指す。3 保活とは、子どもを認可保育所等に入れるために保護者が行う活動であり、保育所の待機児童が多い地域で活発に行われる傾向がある。4 8050問題とは、一般的には、80代の高齢の親と、50代の無職やひきこもり状態などにある独身の子が同居し、貧困や社会的孤立などの生活課題を抱えている状況を指す。5 ワーキングプアとは、福祉給付の打切りを恐れ、就労を見合わせる人々のことを指す。
1 ニートとは、35~59歳の未婚者のうち、仕事をしておらず、ふだんずっと一人でいるか、家族しか一緒にいる人がいない者のことを指す。
誤りです。ニートの年齢は15~34歳とするのが一般的です。日本では「若年無業者」とほぼ同義です。
2 ダブルケアとは、老老介護の増加を踏まえ、ケアを受ける人と、その人をケアする家族の双方を同時に支援することを指す。
誤りです。ダブルケアとは、育児と介護を同時に行う状態です。
3 保活とは、子どもを認可保育所等に入れるために保護者が行う活動であり、保育所の待機児童が多い地域で活発に行われる傾向がある。
正しいです。
4 8050問題とは、一般的には、80代の高齢の親と、50代の無職やひきこもり状態などにある独身の子が同居し、貧困や社会的孤立などの生活課題を抱えている状況を指す。
正しいです。
5 ワーキングプアとは、福祉給付の打切りを恐れ、就労を見合わせる人々のことを指す。
誤りです。ワーキングプアとは、フルタイムかそれに近い状態で働いているのに困窮している人のことです。
第32回 問題34
事例を読んで、B福祉活動専門員がC民生委員に提案することとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔 事例 〕社会福祉協議会のB福祉活動専門員に、C民生委員から、担当地域で80代の父親と、ひきこもりがちと思われる50代の息子が暮らす世帯があるが、どのように関わってよいか分からないという相談があった。雨戸が閉まっていることが多く、息子は就労しているかどうか分からない状態であり、訪問した際には息子から、「困っていることはない」というドア越しの対応のみで、父親にも会うことができなかったという。
1 親子どちらも支援を求めていないため、C民生委員は世帯への関わりを控える。
2 世帯の状況を把握するために、C民生委員と一緒に自宅を訪問する。
3 C民生委員は父親の問題に焦点を当て、息子には関わらない。
4 C民生委員が中心となって、ひきこもりの人とその家族の集いの場を設ける。
5 複合的な課題を抱えた世帯の問題は、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業の窓口に対応を任せる。
8050問題を取り上げています。選択肢2が正解です。
第31回 問題36
地域福祉の対象に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。1 災害対策基本法における避難行動要支援者とは、本人が同意し、提供した情報に基づいて避難行動要支援者名簿に登載された者をいう。2 「ホームレス自立支援法」におけるホームレスとは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。3 生活困窮者自立支援法における生活困窮者とは、最低限度の生活を維持できていない者をいう。4 ひきこもり対策推進事業におけるひきこもりとは、様々な要因の結果として社会的参加を回避し、原則的には1年以上家庭にとどまり続けていることをいう。5 「障害者虐待防止法」における、養護者による障害者虐待とは、身体的虐待、心理的虐待、放棄・放置、経済的虐待の四つのことをいう。(注)1 「ホームレス自立支援法」とは、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」のことである。
(注)2 「障害者虐待防止法」とは、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
1 災害対策基本法における避難行動要支援者とは、本人が同意し、提供した情報に基づいて避難行動要支援者名簿に登載された者をいう。
誤りです。避難行動要支援者とは「要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの」とされています。
2 「ホームレス自立支援法」におけるホームレスとは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。
正しいです。
3 生活困窮者自立支援法における生活困窮者とは、最低限度の生活を維持できていない者をいう。
誤りです。「最低限度の生活を維持できなくなるおそれのある者」とされています。
4 ひきこもり対策推進事業におけるひきこもりとは、様々な要因の結果として社会的参加を回避し、原則的には1年以上家庭にとどまり続けていることをいう。
誤りです。1年以上ではなく「6か月以上」です。
5 「障害者虐待防止法」における、養護者による障害者虐待とは、身体的虐待、心理的虐待、放棄・放置、経済的虐待の四つのことをいう。
誤りです。性的虐待を加えた5つの類型があります。
介護福祉士 第34回 問題21
Hさん(75歳、女性、要介護2)は、孫(17歳、男性、高校生)と自宅で二人暮らしをしている。Hさんは関節疾患があり、通所リハビリテーションの利用を開始した。介護福祉職が送迎時に孫から、「祖母は、日常生活が難しくなり、自分が食事を作るなどの機会が増え、家事や勉強への不安がある」と相談された。
介護福祉職の孫への対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1「今までお世話になったのですから、今度はHさんを支えてください」
2「家事が大変なら、Hさんに介護老人福祉施設の入所を勧めましょう」
3「高校の先生や介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談していきましょう」
4「家でもリハビリテーションを一緒にしてください」
5「近所の人に家事を手伝ってもらってください」
この問題はヤングケアラーの事例であることに気づきましたか?
ヤングケアラーなので選択肢1のようなケアを助長するような発言はNGです。選択肢3が正解です。
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次からは、「権利擁護と意思決定支援」として認知症高齢者や障害者の意思決定を支援する仕組みを見ていきます。
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