社会的養護とは
社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。
社会的養護には、児童養護施設などで保護する「施設養護」と、里親などの「家庭養護」があります。
施設養護の中でも、より家庭的な小規模グループケアなどは「家庭的養護」と呼ばれることもあります。
施設養護
施設養護は、児童養護施設や乳児院などの児童福祉施設で養護されるものですが、その中でも、児童養護施設内での小規模クループケアや地域小規模児童養護施設(グループホーム)などは「家庭的養護」と言われます。
つまり家庭的養護は、施設であってもできるだけ小規模の家庭に近い環境で支援する形です。
家庭養護
里親や小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)、養子縁組などは「家庭養護」と呼ばれます。
グループホームもファミリーホームも6人定員だけど、グループホームは施設養護、ファミリーホームは家庭養護に分類されるよ。グループホームは職員が施設そのものを生活の拠点にするわけではないのに対して、ファミリーホームは子どもを養育する場所が養育者の生活の拠点であるという違いがあるからだね。
パーマネンシー保障
パーマネンシーは「永続性、恒久性」を意味します。要保護児童や要支援児童にとっては心理的な親との永続的な養育環境が必要で、児童養護施設や乳児院での施設養護ではパーマネンシー保障にはなりません。
パーマネンシー保障としては特別養子縁組などがありますが、未来を共有する親との安全で妨げられない情緒的な結びつきによって安心感や所属感が促され、安定したアタッチメント形成やアイデンティティの獲得につながります。
まとめ
1909年、アメリカのセオドアルーズベルト大統領は、ホワイトハウス会議を招集し、「児童は、家庭から引き離されてはならない」と宣言しました。
児童養護施設や乳児院などの施設養護から、より小規模なグループホームやグループケア、さらに家庭的なファミリーホームや里親、養子縁組へと、子どもにとってより望ましい家庭的養護が望まれています。
しかし、里親やファミリホームへの委託率は、令和3年3月末時点で22.8%に留まっています。
過去問
第27回 問題138
社会的養護に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。1 小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)は、児童を養育者の家庭に迎え入れて養育を行う事業である。2 民法上の扶養義務を有する親族は、里親になることはできない。3 市町村に設置される要保護児童対策地域協議会は、主として児童及びその家族について必要な調査及び指導を行う。4 児童発達支援センターは、虐待を受けた児童などを入所させる施設である。5 児童養護施設は、保護者のいる児童を入所させることはできない。
1 小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)は、児童を養育者の家庭に迎え入れて養育を行う事業である。
正しいです。
2 民法上の扶養義務を有する親族は、里親になることはできない。
誤りです。里親には3親等以内の親族(祖父母や叔父叔母など)が行う親族里親があります。
3 市町村に設置される要保護児童対策地域協議会は、主として児童及びその家族について必要な調査及び指導を行う。
誤りです。要保護児童対策地域協議会は、要保護児童や要支援児童の早期発見や適切な保護を図るための協議会です。
4 児童発達支援センターは、虐待を受けた児童などを入所させる施設である。
誤りです。児童発達支援センターは虐待を受けた児童ではなく、障害のある児童を対象とした施設です。
5 児童養護施設は、保護者のいる児童を入所させることはできない。
誤りです。そんなことはありません。
保育士 令和5年(前期)問8
次の文のうち、社会的養護に関わる相談援助の知識・技術に関する記述として、最も適切なものを一つ選びなさい。
1 入所児童の言動や家族の状況について情報を収集し、その全体像を把握し、現状を評価する取り組みをエンパワメントという。
2 入所児童数人で一つの目標に取り組み、その際に生じる相互関係を通して問題解決を図る取り組みを生活場面面接という。
3 子どもが本来持つ力に着目し、それを発揮しやすい環境を整えることをアセスメントという。
4 ティータイムなど、施設生活の中で職員が意図的に面接場面を設けることをインテークという。
5 子どもが永続的かつ恒久的に生活できる家庭環境で、心身の健康が保障された生活を実現するための援助計画をパーマネンシー・プランニングという。
1 入所児童の言動や家族の状況について情報を収集し、その全体像を把握し、現状を評価する取り組みをエンパワメントという。
誤りです。エンパワメントではなくアセスメントです。
2 入所児童数人で一つの目標に取り組み、その際に生じる相互関係を通して問題解決を図る取り組みを生活場面面接という。
誤りです。これは生活場面面接ではなくグループワーク?
3 子どもが本来持つ力に着目し、それを発揮しやすい環境を整えることをアセスメントという。
誤りです。アセスメントではなくエンパワメントです。
4 ティータイムなど、施設生活の中で職員が意図的に面接場面を設けることをインテークという。
誤りです。インテークではなく生活場面面接です。
5 子どもが永続的かつ恒久的に生活できる家庭環境で、心身の健康が保障された生活を実現するための援助計画をパーマネンシー・プランニングという。
これが正解です。パーマネンシーの意味を知っていれば解けますね。
保育士令和5年(前期)問20
次の文は、「新しい社会的養育ビジョン」(2017(平成29)年厚生労働省)に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 代替養育は施設での養育を原則とする。
B 代替養育の目的の一つは、子どもが成人になった際に社会において自立的生活を形成、維持しうる能力を形成し、また、そのための社会的基盤を整備することにある。
C 実親による養育が困難であれば、特別養子縁組による永続的解決(パーマネンシー保障)や里親による養育を推進する。
D 代替養育の場における自律・自立のための養育、進路保障、地域生活における継続的な支援を推進する際に当事者の参画と協働は必要としない。
A 代替養育は施設での養育を原則とする。
誤りです。「家庭での養育を原則とする」とされています。
B 代替養育の目的の一つは、子どもが成人になった際に社会において自立的生活を形成、維持しうる能力を形成し、また、そのための社会的基盤を整備することにある。
正しいです。
C 実親による養育が困難であれば、特別養子縁組による永続的解決(パーマネンシー保障)や里親による養育を推進する。
正しいです。特別養子縁組がパーマネンシー保障の1形態であることを押さえておいてください。
D 代替養育の場における自律・自立のための養育、進路保障、地域生活における継続的な支援を推進する際に当事者の参画と協働は必要としない。
誤りです。「当事者の参画と協働を原則とする」とされています。
第25回 問題137
社会的養護に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 保護者のない児童、被虐待児童など家庭環境上養護を必要とする者であって、社会的養護関係施設への入所児童、里親、ファミリーホームへの委託児童数の2012 (平成24) 年3月末時点の在籍、委託児童数は、合計10万人に達する。
2 情緒障害児短期治療施設は、軽度の情緒障害を有する児童を短期間入所させる施設であることから、入所期間は1年以内と児童福祉法で規定されている。
3 児童福祉法に基づく里親のうち、親族里親については児童相談所長の判断で里親認定を行う。
4 社会的養護をできる限り家庭的な環境で行うために、児童の措置を行う場合については、里親委託を優先して検討するべきであるとの原則が厚生労働省より通知されている。
5 児童養護施設について、児童福祉施設の施設及び運営に関する基準の一部を改正する省令 (平成24年5月31日厚生労働省令第88号) における児童指導員及び保育士の配置は、少年おおむね6人につき1人以上から、3人につき1人以上に改正された。
1 保護者のない児童、被虐待児童など家庭環境上養護を必要とする者であって、社会的養護関係施設への入所児童、里親、ファミリーホームへの委託児童数の2012 (平成24) 年3月末時点の在籍、委託児童数は、合計10万人に達する。
誤りです。里親やファミリーホームへの委託児童は右肩上がりで増加していますが、それでも10万人はいません。数万人レベルです。
2 情緒障害児短期治療施設は、軽度の情緒障害を有する児童を短期間入所させる施設であることから、入所期間は1年以内と児童福祉法で規定されている。
誤りです。情緒障害児短期治療施設は児童心理治療施設と名称変更されています。入所期間は特に定められていません。
3 児童福祉法に基づく里親のうち、親族里親については児童相談所長の判断で里親認定を行う。
誤りです。児童相談所長ではなく都道府県知事が認定します。
4 社会的養護をできる限り家庭的な環境で行うために、児童の措置を行う場合については、里親委託を優先して検討するべきであるとの原則が厚生労働省より通知されている。
正しいです。
5 児童養護施設について、児童福祉施設の施設及び運営に関する基準の一部を改正する省令 (平成24年5月31日厚生労働省令第88号) における児童指導員及び保育士の配置は、少年おおむね6人につき1人以上から、3人につき1人以上に改正された。
誤りです。「児童指導員及び保育士の総数は、通じて、満二歳に満たない幼児おおむね一・六人につき一人以上、満二歳以上満三歳に満たない幼児おおむね二人につき一人以上、満三歳以上の幼児おおむね四人につき一人以上、少年おおむね五・五人につき一人以上とする。ただし、児童四十五人以下を入所させる施設にあつては、更に一人以上を加えるものとする。」とされています。
公認心理師 第4回 問134
社会的養護における永続性(パーマネンシー)について、正しいものを2つ選べ。
① 里親委託によって最も有効に保障される。
② 選択最適化補償理論に含まれる概念である。
③ 対象がたとえ見えなくなっても、存在し続けるという認識である。
④ 国際連合の「児童の代替的養護に関する指針」における目標である。
⑤ 子どもの出自を知る権利を保障できる記録の永年保存が求められる。
① 里親委託によって最も有効に保障される。
誤りです。パーマネンシーは永続的な保障のことですから、里親ではなく特別養子縁組が望ましいでしょう。
② 選択最適化補償理論に含まれる概念である。
誤りです。選択最適化補償理論はSOC理論と呼ばれ、バルテスが提唱した高齢期の自己制御方略に関する理論です。関係ありません。
③ 対象がたとえ見えなくなっても、存在し続けるという認識である。
誤りです。これはピアジェの対象の永続性のことでしょう。
④ 国際連合の「児童の代替的養護に関する指針」における目標である。
正しいです。
⑤ 子どもの出自を知る権利を保障できる記録の永年保存が求められる。
正しいです。
次の記事
次は、これまで学んできた社会福祉の様々な制度について、都道府県と市町村の役割という観点から整理します。
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