地域の民生委員や児童委員はどのように選ばれるのでしょう。
任期は?給料は?職務内容は?このような疑問にお答えします。
民生委員制度の歴史
民生委員は1917年に岡山県で始まった済世顧問制度、1918年に大阪府で始まった方面委員制度を起源としています。
1929年に制定された救護法では「方面委員」と呼ばれ、重要な任務を担っていました。
その後、方面委員令で全国に普及し、民生委員令で「民生委員」となりました。
1946年の旧生活保護法では民生委員が「補助機関」として生活保護支給に関わっていました。
1950年の現生活保護法では民生委員は「協力機関」となり現在に至ります。
このような流れは国家試験に頻出ですので、下の「日本の戦前福祉の変遷」を参照してください。
ここでは現在の民生委員の姿を見ていきます。
民生委員
任期:3年(任期途中で入れ替わると残りの任期まで)、全国一斉に改選
定数:厚生労働大臣の定める基準を参酌して、都道府県知事が都道府県条例で定める
任命:民生委員推薦会(市町村に設置)から推薦された候補者から都道府県知事が推薦し、厚生労働大臣が委嘱
職務:住民の生活状態の把握、相談助言、福祉サービス情報提供、社会福祉事業者との連携、福祉事務所など関係行政機関への協力(社会調査、相談、情報提供、連絡通報、調整、生活支援、意見具申)
民生委員の根拠法は民生委員法です。
社会福祉法ではないよ!民生委員法だよ!
この法律は1948年に制定され、2000年に改正されたときに民生委員が名誉職から「地域福祉推進の担い手」となっており、無給のボランティアです。
民生委員は都道府県知事の推薦により選ばれますので都道府県知事の指揮監督を受けます。
全国で20万人以上いるよ。
民生委員は旧生活保護法では市町村の「補助機関」として現在より強い権限があり、生活保護受給認定にも民生委員の裁量が大きく関わりました。
1950年~現生活保護法では「協力機関」と改められ、市町村長、福祉事務所長、社会福祉主事に協力し、給付や措置の決定を直接行ってはならないとされました。
民生委員は都道府県知事が市町村長の意見を聞いて定める区域ごとに、民生委員協議会を組織しなければなりません(市は数区域、町村はその区域を一区域としなければなりません)。
民生委員協議会は関係各庁に意見することができます。
児童委員
任命:児童委員は民生委員に選ばれた人が自動的に兼務します。
一部の児童委員は児童に関することを専門的に担当する「主任児童委員」の指名受けます。主任児童委員を指名するのは厚生労働大臣です。
職務:地域の子どもたちを見守り、子育ての不安や妊娠中の心配ごとなどの相談や支援等
さいごに
厚生労働省HPには、民生委員&児童委員のマークが掲載されています。
幸せのめばえを示す四つ葉のクローバーをバックに、民生委員の「み」の文字と児童委員を示す双葉を組み合わせ、平和のシンボルの鳩をかたどって、愛情と奉仕を表しています。
過去問
第30回 問題34
民生委員・児童委員に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 民生委員の任期は5年である。
2 民生委員の職務に関する規定では、その職務に関して必要と認める意見を直接関係各庁に具申することができる。
3 民生委員の推薦は、各市町村に設置された民生委員推薦会が厚生労働大臣に対して行う。
4 主任児童委員は児童委員の職務とともに、児童福祉の機関と児童委員との連絡調整を行う。
5 児童委員は、児童福祉法に基づく推薦委員会により選任され、それに基づき厚生労働大臣が委嘱する。
1 民生委員の任期は5年である。
民生委員の任期は3年です。
2 民生委員の職務に関する規定では、その職務に関して必要と認める意見を直接関係各庁に具申することができる。
「直接」というのが間違い選択肢をつくるために敢えて付けた感が否めません。
定例会などを通して意見を提起するとされていますので間違いです。
3 民生委員の推薦は、各市町村に設置された民生委員推薦会が厚生労働大臣に対して行う。
間違いです。
民生委員は都道府県知事の推薦によって厚生労働大臣が委嘱します。
都道府県知事は民生委員推薦会から推薦された候補者を推薦します。
4 主任児童委員は児童委員の職務とともに、児童福祉の機関と児童委員との連絡調整を行う。
正しいです。
5 児童委員は、児童福祉法に基づく推薦委員会により選任され、それに基づき厚生労働大臣が委嘱する。
児童委員は民生委員が充てられますので間違いです。
ですので民生委員を推薦する時は、児童委員としても適任である者について行わなければならないとされています。
第30回 問題96
民生委員法で規定されている民生委員に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 民生委員は、その職務に関して、市町村長の指揮監督を受ける。
2 民生委員には、給与が支給される。
3 民生委員には、定年がある。
4 民生委員の指導訓練は、都道府県知事が実施する。
5 民生委員は、都道府県知事が定める区域ごとに、地域ケア会議を組織する。
1 民生委員は、その職務に関して、市町村長の指揮監督を受ける。
民生委員法では、市町村長ではなく都道府県知事の指揮監督を受けるとされています。
2 民生委員には、給与が支給される。
民生委員には給与は支給されません。
ただし、交通費や通信費、研修参加費等の費用は自治体から支給されます。
3 民生委員には、定年がある。
任期は3年ですが定年はありません。
4 民生委員の指導訓練は、都道府県知事が実施する。
正しいです。
民生委員の指導訓練の責任があるのは都道府県知事です。
5 民生委員は、都道府県知事が定める区域ごとに、地域ケア会議を組織する。
地域ケア会議ではなく「民生委員協議会」です。
地域ケア会議は地域包括支援センターや市町村が主催しする「行政職員をはじめ、地域の関係者から構成される会議」のことです。
第30回 問題141
児童委員の職務として、正しいものを1つ選びなさい。
1 児童及び妊産婦について、生活や取り巻く環境の状況を把握する。
2 養育医療の給付を行う。
3 乳児院に入所させる。
4 一時保護を決定する。
5 里親への委託を行う。
1 児童及び妊産婦について、生活や取り巻く環境の状況を把握する。
正しいです。
2 養育医療の給付を行う。
養育医療の給付は市町村の業務です。
児童委員は所詮ボランティアですからこんな権限はありません。
3 乳児院に入所させる。
児童の入所は都道府県が措置権限を持っています。
児童委員は所詮ボランティアですからこんな権限はありません。
4 一時保護を決定する。
一時保護は児童相談所(都道府県)の業務です。
児童委員は所詮ボランティアですからこんな権限はありません。
5 里親への委託を行う。
里親への委託も児童相談所(都道府県)の業務です。
児童委員は所詮ボランティアですからこんな権限はありません。
第29回 問題38
民生委員・児童委員に関する法の規定についての次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 児童福祉法に定める児童委員は、本人の申出によって、民生委員との兼務を辞退することができる。
2 民生委員は、市町村長の推薦によって、都道府県知事から委嘱される。
3 補欠で着任した民生委員・児童委員は、着任日から起算して3年を任期とすると定められている。
4 民生委員・児童委員の定数は、厚生労働大臣の定める基準を参酌して、市町村の区域ごとに都道府県の条例で定められている。
5 都道府県は民生委員協議会を組織しなければならない。
1 児童福祉法に定める児童委員は、本人の申出によって、民生委員との兼務を辞退することができる。
そんなことはできません。
2 民生委員は、市町村長の推薦によって、都道府県知事から委嘱される。
民生委員は都道府県知事の推薦によって厚生労働大臣から委嘱されます。
3 補欠で着任した民生委員・児童委員は、着任日から起算して3年を任期とすると定められている。
補欠で着任した民生委員・児童委員の任期は前任者の残任任期です。
4 民生委員・児童委員の定数は、厚生労働大臣の定める基準を参酌して、市町村の区域ごとに都道府県の条例で定められている。
正しいです。
5 都道府県は民生委員協議会を組織しなければならない。
民生委員協議会は民生委員が組織しますので間違いです。
第32回 問題38
民生委員・児童委員についての法律上の規定に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 民生委員は、市町村内の小学校区ごとに1名配置する。
2 主任児童委員は、児童虐待の早期発見と介入のため児童相談所に配属される。
3 民生委員協議会は、民生委員の職務上必要があるときに関係各庁に意見することができる。
4 民生委員は、職務上知り得た特定の要援護者個人の情報を広く地域住民と共有してもよい。
5 民生委員は、その職務に関して市町村長の指揮監督を受ける。
1 民生委員は、市町村内の小学校区ごとに1名配置する。
民生委員の定数は都道府県条例でそれぞれ定められていますので、全国一律にこのような規定はありません。
2 主任児童委員は、児童虐待の早期発見と介入のため児童相談所に配属される。
児童相談所に配置されていません。
3 民生委員協議会は、民生委員の職務上必要があるときに関係各庁に意見することができる。
これが正解です。
4 民生委員は、職務上知り得た特定の要援護者個人の情報を広く地域住民と共有してもよい。
そんなことはありません。
5 民生委員は、その職務に関して市町村長の指揮監督を受ける。
市町村長ではなく都道府県知事です。
第34回 問題36
民生委員に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 給与は支給しないものとされ、任期は定められていない。
2 定数は厚生労働大臣の定める基準を参酌して、市町村の条例で定められる。
3 市町村長は、民生委員協議会を組織しなければならない。
4 児童委員を兼務するが、本人から辞退の申出があれば、その兼務を解かなければならない。
5 非常勤特別職の地方公務員とみなされ、守秘義務が課せられる。
1 給与は支給しないものとされ、任期は定められていない。
誤りです。民生委員の任期は3年と定められています。
2 定数は厚生労働大臣の定める基準を参酌して、市町村の条例で定められる。
誤りです。民生委員の定数は厚生労働大臣の定める基準を参酌して、都道府県の条例で定められます。
3 市町村長は、民生委員協議会を組織しなければならない。
誤りです。民生委員が市町村の一定区域ごとに設置される民生委員協議会を組織しなければならないとされています。
4 児童委員を兼務するが、本人から辞退の申出があれば、その兼務を解かなければならない。
誤りです。兼務を辞退する旨の規定は、民生委員法にも児童福祉法にもありません。
5 非常勤特別職の地方公務員とみなされ、守秘義務が課せられる。
正しいです。民生委員法第15条に守秘義務が課せられています。
次の記事
次は、地域福祉です。
受験生を苦しめる岡村重夫が出てきます。
これまで見てきた社会福祉法に規定される社会福祉協議会や共同募金、そして今回の民生委員も含めて地域福祉の担い手でもあります。
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