ソーシャルワークの効果測定

ソーシャルワークの評価はワーカーの主観的判断によるところが大きかったのですが、近年、援助の質を評価し報酬に反映させるなどの方向性が顕著になり、ソーシャルワークの効果測定によってサービスの有効性をエビデンスを持って知ることが重要になってきました。

また、ソーシャルワークの効果測定を行えば、クライエントへの説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことができます。

効果が実証されれば水平展開して他のクライエント等にも適用できます。

サービスの質を向上させるために、さまざまな効果測定の手法を見ていきましょう。

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単一事例実験計画法(シングル・システム・デザイン)

シングル・システム・デザインはシングル・ケース・デザインとも呼ばれ、1事例で介入(インターベンション)の効果を測定する方法です。

介入を行なう前(ベースライン期)と、介入を受けた後(インターベンション期)の状態を、時間の流れに沿って繰り返し観察することによって、問題の変化と援助との因果関係を捉えます。

シングル・システム・デザインには以下のような様々な形態があります。

・A-Bデザイン

「A」=ベースライン期、「B」=インターベンション期として、AとBの比較を行う最もシンプルな方法です。

・A-B-Aデザイン

ベースライン期から介入してインターベンション期に移行した後、再び介入を止めてベースライン期に戻る形態です。

元に戻ってしまうので実践的には意味がなく、倫理的にも問題が生じる場合もあります。

・A-B-A-Bデザイン

一度介入し、介入を止めてベースラインに戻した後、さらに介入して効果を確認します。

介入による効果の確認と、その効果の定着を図ります。

・B-A-Bデザイン

介入期から測定を開始し、介入中断後、介入を再開する形態です。

測定期間中に支援を一旦中止してベースラインに戻し、再び介入します。

・A-B-Cデザイン

ベースライン期から介入した後、別の「C」という介入を行う形態です。

集団比較実験計画法(集団比較実験デザイン)

集団比較実験計画法は、調査対象を、介入する「実験群」と、介入しない「統制群」に分けて、2つの群を比較することにより介入の効果を明らかにしようとする手法です。

シングル・システム・デザイン法に比べて介入と変化の因果関係を捉えて結果を一般化できます。

カリスマくん
カリスマくん

シングル・システム・デザイン法は個別ケースを扱うので一般化できないけど、クライエントへの説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことはできるね。

断面的事例研究法(クロスセクショナル事例研究法)

断面的事例研究法は、1回だけ(ある一時点)の調査を行う横断調査を用いる方法です。ある一時点での調査なので因果関係を検討するのには適さないので、効果測定には向きません。

グランプリ調査法

グランプリ調査法は、複数の援助方法により分けられたグループ間を比較して各援助方法の効果を比較検証する方法です。

メタ・アナリシス法

メタ・アナリシス法は、特定の援助方法に関する多くのデータから、その援助方法の効果を統合的に比較検証する方法です。

まとめ

 事例数調査対象援助方法形態など

単一事例実験計画法
(シングル・システム・デザイン)

個人or家族
(小集団)


(複数)

A-Bデザイン
A-B-Aデザイン
A-B-A-Bデザイン
B-A-Bデザイン等
集団比較実験計画法
(集団比較実験デザイン)
 実験群・統制群 
断面的事例研究法   ある一時点
グランプリ調査法複数 複数複数の援助方法を比較
メタ・アナリシス法複数複数
(複数)
過去に行われた複数の事例を統合化

ドナベディアン・モデル

支援の質を評価する指標としては、ドナベディアン・モデルで提唱されている3つの要素があります。

・ストラクチャー
・プロセス
・アウトカム
【ドナベディアン・モデル】「支援の質」を評価する3要素
ドナベディアン・モデルとは医療の質を「ストラクチャー(構造)」「プロセス(過程)」「アウトカム(結果)」という3つの要素から評価するモデルです。1980年にアメリカのドナベディアン(Avedis Donabedian)が提...

過去問

第32回 問題104

シングル・システム・デザイン法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 適用対象として、個人よりも家族など小集団に対する支援が適切である。
2 ベースライン期とは、支援を実施している期間を指す。
3 クライエントを、実験群と統制群に分けて測定する。
4 測定対象のクライエントに対する支援効果を明らかにできる。
5 ABデザインを用いる場合、測定期間中に支援を一旦中止する必要がある。

1 適用対象として、個人よりも家族など小集団に対する支援が適切である。
間違いです。シングル・システム・デザイン法は個人や家族が対象です。「個人よりも」というのはおかしいです。

2 ベースライン期とは、支援を実施している期間を指す。
間違いです。ベースライン期とは支援を実施する前の期間です。

3 クライエントを、実験群と統制群に分けて測定する。
間違いです。これは集団比較実験計画法の内容です。

4 測定対象のクライエントに対する支援効果を明らかにできる。
これが正解です。

5 ABデザインを用いる場合、測定期間中に支援を一旦中止する必要がある。
間違いです。BABデザインであれば支援を一旦中止する必要がありますが、ABデザインであればその必要はありません。

第28回 問題106

ソーシャルワークの評価方法の一つである単一事例実験計画法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 PIE (Person-In-Environment) を用いてクライエントの変化を測定する。
2 個人、家族、小集団に対する介入の評価に用いる。
3 介入後の段階から繰り返して観察・測定を行う。
4 ベースライン期に行った介入を評価する。
5 調査対象者を実験群と統制群に分けて観察・測定を行う。

1 PIE (Person-In-Environment) を用いてクライエントの変化を測定する。
間違いです。PIEはクライアントの社会機能に着目した個人に対するアセスメント法です。単一事例実験計画法の対象は個人とは限らず、家族や小集団も含みます。

2 個人、家族、小集団に対する介入の評価に用いる。
これが正解です。

3 介入後の段階から繰り返して観察・測定を行う。
間違いです。介入前から観察し、介入後と比較することで効果を測定します。

4 ベースライン期に行った介入を評価する。
間違いです。ベースライン期は介入を行わない期間です。

5 調査対象者を実験群と統制群に分けて観察・測定を行う。
間違いです。これは集団比較実験計画法(集団比較実験デザイン法)の内容です。

第22回 問題99

大企業の企業内ソーシャルワーカーであるG相談員(社会福祉士)のもとに、うつ状態となったHさんが来室した。
G相談員は、主治医と連携してHさんの生活状態の改善を目指した援助を始めることとなった。
そして、援助の効果を判断するために、標準化されたスケールを用いて、援助開始前と援助中の効果を定期的に測定することにした。次のうち、この場合の効果測定の方法を表すものとして、適切なものを一つ選びなさい。
1 断面的(cross-sectional)事例研究法
2 グランプリ調査法
3 メタ・アナリシス法
4 単一事例実験計画法
5 集団比較実験計画法

1 断面的(cross-sectional)事例研究法
間違いです。これは複数の事例を対象にします。

2 グランプリ調査法
間違いです。これは複数の援助方法を対象にします。

3 メタ・アナリシス法
間違いです。これは特定の援助方法に関する多くの事例を取扱います。

4 単一事例実験計画法
事例では単一の事例における支援の効果を測定しているのでこれが正解です。

5 集団比較実験計画法
間違いです。これは集団を援助するグループとしないグループに分ける手法です。

第25回 問題108

事例を読んで、Mソーシャルワーカー(社会福祉士)の効果測定に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕エイズ治療拠点病院に勤めるMソーシャルワーカーは、日常的にHIV感染者やエイズ患者にかかわることが多い。HIV感染を告知された人の多くは、ショックを受け、絶望惑を感じ、不安にさいなまれる。Mソーシャルワーカーは、これまで、そのようなクライエントヘの支援として危機介入を行ってきた。Mソーシャルワーカーは、自分の危機介入のあり方が本当に役立っているのか確認するために、病院の倫理審査委員会に諮った上で、効果測定を行うことにした。
1 これまで担当したクライエント全員に、Mソーシャルワーカーの対応に関するクライエントの考えを匿名で自由に記述して返送してもらう郵送調査を行う。
2 患者の不安に焦点を当てて、介入の前後でどのように変化したかをケースごとにモニターし、複数ケースの傾向をみる。
3 クライエントのエイズについての理解度が深まったか調べるために、現在、支援しているクライエントにアンケート調査を実施する。
4 主治医と家族に、クライエントの現在の様子についてインタビューする。
5 一般病院に協力を得て、そこでHIV感染を告知された患者グループとMソーシャルワーカーが支援した患者グループを比較し、その違いを検証する。

「自分の危機介入のあり方が本当に役立っているのか確認するために」という目的のためには選択肢2が正解です。

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