諸外国の社会保障制度

福祉国家を中心に、諸外国の社会保障制度を見てみましょう。

諸外国の社会保障制度
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イギリス

医療制度

イギリスの医療保障は国民保健サービスNTSが中心です。
これは税方式(税財源方式)で原則無料の医療保障制度ですが一部薬剤費等の利用者負担があります。

福祉政策の変遷

イギリスの福祉政策の流れは、サッチャー政権「小さな政府」→ブレア政権「第三の道」→キャメロン政権「大きな社会」と変遷します。
サッチャー政権で福祉が縮小され、ブレア政権では福祉国家でもなく市場原理主義でもない「第三の道」、そして、キャメロン内閣の掲げた「大きな社会」とは、より多くの権限をボランティア団体、コミュニティ・グループ、地方政府などに与えて、貧困や失業などイギリスが抱える社会的課題に対応していく社会を指します。

アメリカ

医療制度

2010年 オバマ政権の医療制度改革法で、全国民に医療保険加入義務ができました。
アメリカには全国民を対象にした公的医療保険は存在しませんので民間医療保険に加入するのが一般的です。

公的医療保険は、高齢者、障害者、低所得者を対象にした以下の制度のみです。

公的医療保険対象保険者
メディケア高齢者と障害者連邦政府
メディケイド低所得者州政府と連邦政府

年金制度

年金は皆年金制度です。

福祉制度

TANF(貧困家族一時扶助):州政府が児童や妊婦のいる貧困家庭に対して現金給付を行う場合に、連邦政府が州政府へ定額補助を行うもので、1996年の福祉改革により創設されました。これは「福祉から就労へ」(ワークフェア)を促進することを目的とした政策です。

ドイツ

介護保険制度

ドイツの介護保険は医療保険と連動していて、生まれてから強制加入で被保険者要件に年齢規定がなく、若年者が障害等で要介護状態になった場合でも介護保険制度が適用されます。財源は全額保険料で、給付は現物か現金かを選択できます。

ドイツの介護保険制度は「補完性の原則」という政策思想を理念としています。
補完性の原則とは、決定や自治などをできるかぎり小さい単位で行い、できないことのみをより大きな単位の団体で補完していくという概念です。例えば介護であれば、まずは家族介護、それで不十分なら親戚や近隣住民の協力、それでも不十分なら公的なサービスで補完する、つまり、自助→共助→公助という順番ですね。

ドイツの介護保険制度には現金給付の仕組みが採用されていますが、これも補完性の原則に則った部分保証という意味合いです。

つまり金銭給付を受けて家族介護(自宅介護)を実現するということですね。

スウェーデン

医療福祉

1992年のエーデル改革で高齢者保健福祉における地方分権を推進しました。
この改革で保健医療は広域自治体のランスティング(日本の県に相当)が担い、高齢者や障害者などの福祉サービスは、基礎的自治体のコミューン(日本の市町村に相当)によって提供されることとなりました。

社会サービス法では社会福祉サービスは基礎的地方自治体のコミューン(日本の市町村に該当)に責任があるとされています。

費用はランスティングの税収と一部負担金で賄われています。
社会サービス法でサービス利用者の最低所持金を保障しています。
1997年に上級ソシオノーム(ソーシャルワーカー)認定制度が導入されました。

介護制度

スウェーデンの介護制度は税方式のため、介護「保険」制度ではありません。
保険料がなく全て税金で賄われています。

年金制度

老齢年金は所得比例年金、積立年金、最低保障年金の3つの給付から構成され、所得比例年金は賦課方式、積立年金は積立方式による確定拠出制度になっています。

フランス

医療制度

フランスの医療制度はドイツと同じく強制加入で、被用者保険(職域ごと)と非被用者保険(自営業者等)に分かれています。
現物給付ではなく償還払い制なので、患者が医療機関に支払い、その後一定割合が保険で払い戻される仕組みです。

社会保険の給付方法には2種類ありましたね。
事業者が利用者に変わって代理で受領する「代理受領」と利用者が全額支払って後から戻ってくる「償還払い」です。

介護制度

スウェーデンと同じく税方式の介護制度のため、介護保険制度がありません。

韓国

介護保険制度

韓国では日本以上に少子高齢化が進んでおり、日本と同じく介護保険制度が存在します。
日本で介護保険制度ができたのは2000年でしたが、韓国では日本やドイツの制度を参考に「老人長期療養保険制度」が2008年にできました。

このように税方式ではなく社会保険制度として介護保険制度があるのは日本、ドイツ、韓国だけです。その他の国の介護制度は、税方式などで介護「保険」制度ではありません。

過去問

第29回 問題55

諸外国における社会保障制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 アメリカには、国民保健サービス(NHS)と呼ばれる、原則無料の医療保障制度がある。
2 イギリスには、高齢者向けのメディケアという公的な医療保障制度がある。
3 ドイツの介護保険制度では、公的医療保険の加入者が年齢にかかわらず被保険者となる。
4 スウェーデンの老齢年金は、完全積立の財政方式に移行している。
5 フランスの医療保険では、外来診療に要した費用は保険者から直接医療機関に支払われるのが原則である。

1 アメリカには、国民保健サービス(NHS)と呼ばれる、原則無料の医療保障制度がある。
国民保健サービス(NHS)はイギリスの内容ですので間違いです。

2 イギリスには、高齢者向けのメディケアという公的な医療保障制度がある。
メディケアといえばアメリカですので間違いです。

3 ドイツの介護保険制度では、公的医療保険の加入者が年齢にかかわらず被保険者となる。
これが正解です。

4 スウェーデンの老齢年金は、完全積立の財政方式に移行している。
所得比例年金は賦課方式ですので間違いです。

5 フランスの医療保険では、外来診療に要した費用は保険者から直接医療機関に支払われるのが原則である。
間違いです。
フランスの医療保険は償還払い制です。

第30回 問題27

各国の福祉改革に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 スウェーデンのエーデル政策は、高齢者の保健医療は広域自治体、介護サービスはコミューンが実施責任を負うとする改革であった。
2 イギリスのブレア内閣の社会的排除対策は、財政の効率化、市場化、家族責任など「大きな社会」理念に基づくものであった。
3 日本の介護保険制度は、給付に要する費用の全額を保険料の負担として、財源の安定を目指した。
4 ドイツの介護保険制度は、障害者の介護サービスを除外して創設された。
5 アメリカのTANF(貧困家族一時扶助)は、「就労から福祉へ」の政策転換であった。

1 スウェーデンのエーデル政策は、高齢者の保健医療は広域自治体、介護サービスはコミューンが実施責任を負うとする改革であった。
正しいです。

2 イギリスのブレア内閣の社会的排除対策は、財政の効率化、市場化、家族責任など「大きな社会」理念に基づくものであった。
間違いです。

ブレア内閣の社会的排除対策は、政権の政策理念である福祉国家でもなく市場原理主義でもない「第三の道」です。「大きな社会」理念を掲げたのはブレア内閣の後に発足したキャメロン内閣です。

3 日本の介護保険制度は、給付に要する費用の全額を保険料の負担として、財源の安定を目指した。
間違いです。
日本の介護保険制度の財源は、公費、保険料、利用者負担の3つで構成されています。
利用者負担を除いた部分について、公費と保険料で半分ずつを負担します。

4 ドイツの介護保険制度は、障害者の介護サービスを除外して創設された。
間違いです。
ドイツの介護保険制度は障害者も対象です。

5 アメリカのTANF(貧困家族一時扶助)は、「就労から福祉へ」の政策転換であった。
アメリカのTANFは、州政府が児童や妊婦のいる貧困家庭に対して現金給付を行う場合に、連邦政府が州政府へ定額補助を行うもので、1996年の福祉改革により創設されました。
これは「福祉から就労へ」(ワークフェア)を促進することを目的とした政策です。

第31回 問題55

諸外国における医療や介護の制度に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 アメリカには、全国民を対象とする公的な医療保障制度が存在する。
2 イギリスには、医療サービスを税財源により提供する国民保健サービスの仕組みがある。
3 フランスの医療保険制度では、被用者、自営業者及び農業者が同一の制度に加入している。
4 ドイツの介護保険制度では、介護手当(現金給付)を選ぶことができる。
5 スウェーデンには、介護保険制度が存在する。

1 アメリカには、全国民を対象とする公的な医療保障制度が存在する。
アメリカには全国民を対象にした公的医療保険は存在しません。
民間医療保険に加入するのが一般的で、公的医療保険はメディケアとメディケイドのみです。

2 イギリスには、医療サービスを税財源により提供する国民保健サービスの仕組みがある。
イギリスの医療制度(NHSなど)は税方式(税財源方式)です。

3 フランスの医療保険制度では、被用者、自営業者及び農業者が同一の制度に加入している。
フランスの医療保険制度は、被用者保険(職域ごと)と非被用者保険(自営業者等)に分かれている為、同一の医療保険に加入しているのではありません。

4 ドイツの介護保険制度では、介護手当(現金給付)を選ぶことができる。
これが正解です。

5 スウェーデンには、介護保険制度が存在する。
スウェーデンの介護制度は税方式のため、介護「保険」制度ではありません。
保険料がなく全て税金で賄われています。
介護保険制度があるのは日本、ドイツ、韓国です。

第33回 問題27

各国の社会福祉や社会保障の現状に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 アメリカの公的医療保障制度には、低所得者向けのメディケアがある。
2 スウェーデンの社会サービス法では、住民が必要な援助を受けられるよう、コミューンが最終責任を負うこととなっている。
3 ドイツの社会福祉制度は、公的サービスが民間サービスに優先する補完性の原則に基づいている。
4 中国の計画出産政策は、一組の夫婦につき子は一人までとする原則が維持されている。
5 韓国の高齢者の介護保障(長期療養保障)制度は、原則として税方式で運用されている。

1 アメリカの公的医療保障制度には、低所得者向けのメディケアがある。
間違いです。メディケアは高齢者や障害者向け、メディケイドが低所得者向けです。

2 スウェーデンの社会サービス法では、住民が必要な援助を受けられるよう、コミューンが最終責任を負うこととなっている。
これが正解です。

3 ドイツの社会福祉制度は、公的サービスが民間サービスに優先する補完性の原則に基づいている。
間違いです。補完性の原則とは自助や民間サービスを優先させて、公的サービスでそれを補うものです。

4 中国の計画出産政策は、一組の夫婦につき子は一人までとする原則が維持されている。
間違いです。2014年までは一人っ子政策として夫婦1組で子供は1人まででしたが、2016年からは子供二人までとなりました。

5 韓国の高齢者の介護保障(長期療養保障)制度は、原則として税方式で運用されている。
間違いです。韓国も日本と同じく介護保険制度があります。つまり税方式ではなく社会保険方式です。

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