これまで「児童」の定義については勉強してきました。
ここでは「少年」の定義と非行少年について見ていきます。
「少年」の定義
少年法第二条には「少年」とは、20歳に満たない者と定義されています。
非行少年3種
少年法第三条には非行少年について以下の3種類が規定されています。
・触法少年
・虞犯少年
犯罪少年
犯罪少年は14歳以上で罪を犯した少年です。
14歳以上になると罪を犯せば刑事罰が科されます。
16歳以上で殺人をすれば原則検察官送致になります。

僕は中学2年の時、学校の先生から「14歳からは罪を犯せば犯罪者になる」って言われたよ。
触法少年
触法少年は14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年です。
14歳未満では罪を犯しても刑事罰には問われないので、検察官送致もありません。
基本的には児童相談所への通告や送致がなされ、都道府県知事又は児童相談所長が保護処分が必要だと考えた場合に限り家庭裁判所に送致されます。
14歳が犯罪者になるかどうかの境です。
・保護観察処分
・少年院送致
・児童自立支援等施設への送致
虞犯少年
虞犯少年は将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞(おそれ)のある少年です。
・保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
・正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと
・犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること
・自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること
罪を犯していないのに上記に当てはまる虞犯少年となれば、家庭裁判所への送致もあります。
「児童」の年齢
児童の年齢については、「児童の定義」の記事をごらんください。
児童は基本的には18歳未満で、以下の3法が例外的に20歳未満で定義されていました。
・児童扶養手当法(障害児)
・特別児童扶養手当法(障害児)
まとめ
少年は20歳未満ですが、14歳以上か14歳未満かで司法の取扱いは大きく変化します。
14歳未満の触法少年は刑事罰に問われないので基本的には児童相談所への通告や送致になりますが、14歳以上の犯罪少年は家庭裁判所や検察官への送致もあります。
虞犯少年は罪を犯す虞のある「少年」なので14歳未満でも14歳以上でも虞犯少年になりえます。
虞犯少年と触法少年は児童福祉法が優先されるので、犯罪少年とは違って家庭裁判所に送致されることはほとんどなく、都道府県知事又は児童相談所長が保護処分が必要だと考えた場合に限り家庭裁判所に送致されます。
犯罪少年の場合は、軽犯罪なら警察→家庭裁判所送致、重大犯罪なら警察→検察官送致→家庭裁判所送致となります。

14歳未満か14歳以上かで、司法の扱いが大きく変わることを覚えておいてください。

過去問
第29回 問題150
非行少年の取扱いに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 触法少年に対して、家庭裁判所は少年院送致の保護処分をすることができる。
2 触法少年に対して、検察官は起訴猶予処分を行うことができる。
3 犯罪少年に対して、警察は児童相談所に送致することができる。
4 少年院在院者に対して、少年院長は仮退院の許可決定を行うことができる。
5 虞犯少年に対して、児童相談所長は検察官に送致することができる。
1 触法少年に対して、家庭裁判所は少年院送致の保護処分をすることができる。
正しいです。触法少年は14歳以下で刑罰を科すことはできませんが、少年法による保護処分の対象となります。
12~14歳未満の少年については少年院送致の保護処分が行われることが多いです。
2 触法少年に対して、検察官は起訴猶予処分を行うことができる。
触法少年は14歳以下なので刑罰を科すことができないため、そもそも起訴することができません。
なので起訴猶予処分もありえません。
3 犯罪少年に対して、警察は児童相談所に送致することができる。
犯罪少年は14歳以上で刑罰が科されるので、児童相談所ではなく家庭裁判所に送致されます。
罰金より重い刑に当たる犯罪を犯した場合は、検察官に送致されます。
4 少年院在院者に対して、少年院長は仮退院の許可決定を行うことができる。
少年院の仮退院の許可決定を行うのは、地方更生保護委員会です。
5 虞犯少年に対して、児童相談所長は検察官に送致することができる。
虞犯少年は将来的に罪を犯すおそれのある少年です。
罪を犯していないのだから、検察官に送致されません。
第30回 問題149
触法少年に対する関係機関の対応に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 警察は、触法少年を検察官に送致することができる。
2 警察は、触法少年を地方裁判所に送致することができる。
3 児童相談所長は、触法少年を児童自立支援施設に入所させることができる。
4 児童相談所長は、触法少年を検察官に送致することができる。
5 家庭裁判所は、触法少年を検察官に送致することができる。
1 警察は、触法少年を検察官に送致することができる。
触法少年は14歳未満で刑法に触れる行為をした少年です。
14歳未満なので刑事責任を問えないので検察官に送致することはできません。
2 警察は、触法少年を地方裁判所に送致することができる。
触法少年は14歳未満で刑事責任を問えないので地方裁判所に送致することはできません。
児童相談所に送致します。
3 児童相談所長は、触法少年を児童自立支援施設に入所させることができる。
これが正解です。
都道府県知事に措置権限がありますが、児童相談所長に措置権限を委任することができます。
4 児童相談所長は、触法少年を検察官に送致することができる。
触法少年は14歳未満で刑事責任を問えないので検察官に送致することはできません。
5 家庭裁判所は、触法少年を検察官に送致することができる。
触法少年は14歳未満で刑事責任を問えないので検察官に送致することはできません。
第28回 問題150
少年保護審判を担当する家庭裁判所と他の機関との連携に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 家庭裁判所は、犯罪少年については、警察官から送致を受けた場合に限り審判に付することができる。
2 家庭裁判所は、触法少年については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた場合に限り審判に付することができる。
3 家庭裁判所は、審判を開始する前に、少年鑑別所に命じて,審判に付すべき少年の取調その他の必要な調査を行わせることができる。
4 家庭裁判所は、犯行時14歳以上の少年が犯した犯罪については原則的に検察官に送致しなければならない。
5 家庭裁判所は、保護処分を決定するため必要があると認めるときは、保護観察官の観察に付することができる。
1 家庭裁判所は、犯罪少年については、警察官から送致を受けた場合に限り審判に付することができる。
間違いです。軽犯罪なら警察→家庭裁判所送致、重大犯罪なら警察→検察官送致→家庭裁判所送致です。
2 家庭裁判所は、触法少年については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた場合に限り審判に付することができる。
これが正解です。
3 家庭裁判所は、審判を開始する前に、少年鑑別所に命じて、審判に付すべき少年の取調その他の必要な調査を行わせることができる。
間違いです。必要な調査を行うのは家庭裁判所調査官です。
4 家庭裁判所は、犯行時14歳以上の少年が犯した犯罪については原則的に検察官に送致しなければならない。
間違いです。家庭裁判所が刑事処分が妥当だと判断した場合に、家庭裁判所から検察官に「逆送致」されます。
5 家庭裁判所は、保護処分を決定するため必要があると認めるときは、保護観察官の観察に付することができる。
間違いです。家庭裁判所は保護処分を決定するため必要があると認めるときは家庭裁判所調査官による「試験観察」が行われます。
公認心理師 第2回 問55
ここからは公認心理師国家試験の問題を取り上げます。
虞犯について、正しいものを2つ選べ。
①虞犯少年とは14歳以上の者をいう。
②虞犯少年は少年院送致の処分を受けることがある。
③虞犯という概念は少年に限らず、成人にも適用される。
④虞犯少年とは、将来罪を犯すおそれのある少年のことをいう。
⑤虞犯少年は児童相談所における措置は受けるが、家庭裁判所には送致されない。
①虞犯少年とは14歳以上の者をいう。
間違いです。虞犯少年とは「20歳未満で将来罪を犯すおそれのある少年」です。
②虞犯少年は少年院送致の処分を受けることがある。
正しいです。
③虞犯という概念は少年に限らず、成人にも適用される。
間違いです。20歳未満なので成人には適用されません。
④虞犯少年とは、将来罪を犯すおそれのある少年のことをいう。
正しいです。
⑤虞犯少年は児童相談所における措置は受けるが、家庭裁判所には送致されない。
間違いです。家庭裁判所にも送致されます。
公認心理師 第1回 問99
少年事件の処理手続として、正しいものを1つ選べ。
①14歳未満の触法少年であっても重大事件である場合は検察官送致となることがある。
②14歳以上で16歳未満の犯罪少年は検察官送致とならない。
③16歳以上で故意に人を死亡させた事件の場合は、原則的に検察官送致となる。
④18歳未満の犯罪少年であっても重大事件を犯せば死刑になることがある。
⑤事案が軽微で少年法の適用が望ましい事件の場合は、20歳を超えても家庭裁判所で不処分を決定することができる。
①14歳未満の触法少年であっても重大事件である場合は検察官送致となることがある。
間違いです。検察官送致はされず児童相談所です。
②14歳以上で16歳未満の犯罪少年は検察官送致とならない。
間違いです。検察官送致になります。
③16歳以上で故意に人を死亡させた事件の場合は、原則的に検察官送致となる。
これが正解です。
④18歳未満の犯罪少年であっても重大事件を犯せば死刑になることがある。
間違いです。18歳未満では死刑になりません。子どもの権利条約にも関係しています。
⑤事案が軽微で少年法の適用が望ましい事件の場合は、20歳を超えても家庭裁判所で不処分を決定することができる。
間違いです。20歳以上では少年法は適用されません。
次の記事
次は、更生保護制度から派生した医療観察制度について。

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