児童って何歳から何歳までなのでしょうか。
日本の法律では「18歳未満」が基本です。
児童福祉法、児童虐待防止法、児童手当法などなど、ほとんどの法律で18歳未満と定義されています。
ただし例外がありますので、覚えなければなりません。
見ていきましょう。
「18歳未満」の法律
児童福祉法
児童福祉法では18歳未満を児童と定義し、さらに児童の中には以下のように乳児、幼児、少年が定義されています。
児童 | 乳児 | 1歳未満 |
幼児 | 1歳~小学校入学前 | |
少年 | 小学校入学~18歳未満 |
児童養護施設は「児童」でないと利用できないので、18歳以上になると施設を出ていかなければならないよ。20歳までの特例はあるけど、それでも20歳まで。普通なら大学に通うような年齢だね。
児童手当法
児童手当は全ての児童に対して月額5,000~15,000円程度の手当を支給する法律ですが、この法律でも児童は18歳未満とされています。
児童の定義が18歳未満なのに、児童手当が支給されるのは15歳までなので注意だよ。正確には「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者」を児童と定義してるよ。
以前は小学校入学前までしかもらえませんでした。
それから徐々に延長されて、15歳までもらえるようになっています。
児童虐待防止法
この法律でも児童の定義は18歳未満です。
実は児童虐待防止法は1933年にできた法律で、意外にも戦前に制定されているのです。
しかしこのときの児童は14歳未満とされていました。
1937年に制定された母子保護法においても児童は14歳未満となっています。
昔は14歳で大人だったんだね。家計を助けるために働きに出る子供たちが多かったんだ。
このように日本の法律では基本的に児童は18歳未満と定義されています。
世界的にはどうでしょう。
1989年 国連児童権利条約
この条約は、児童の「能動的権利」を規定したことで有名ですが、児童は18歳未満と定義されています。
つまり世界的にも児童は18歳未満なのです。
日本はこの条約を5年後の1994年に批准し、2000年の児童虐待防止法へと続いていきます。
高齢者、障害者、児童の中で最も早かったのは「児童虐待防止法」、それはこの児童権利条約批准の流れを受けているからだね。
「20歳未満」の例外的な法律
児童を18歳未満と定義していない3つの例外的法律を見てみましょう。
母子家庭や障害児などを対象とする法律が該当します。
母子及び父子並びに寡婦福祉法
「母子及び父子並びに寡婦福祉法」では児童を20歳未満と定義しています。
「母子生活支援施設」という母子専用の入所施設は「母子及び父子並びに寡婦福祉法」ではなく「児童福祉法」で規定されているから注意。児童福祉法での児童は18歳未満なので母子生活支援施設は原則18歳までしか入れないよ。ただし例外的に20歳まで延長できるよ。よく理解してね。
児童扶養手当法
ひとり親家庭に支給される手当ですが、18歳未満の児童と20歳未満の障害のある児童を扶養する家庭に支給されます。
つまり児童は18歳未満または障害のある20歳未満の者と定義されています。
特別児童扶養手当法
いわゆる「トクジ」と呼ばれる障害のある児童を扶養する家庭に支給される手当です。
この法律でも児童は20歳未満と定義されています。
ただし障害者の定義は障害者総合支援法などで18歳以上となっていますので注意してください。
この特別児童扶養手当は、「障害基礎年金」の児童版。
障害基礎年金は20歳から支給されるけど、それまではこの特別児童扶養手当が支給されるよ。つまり、18~20歳まで空白期間ができないように20歳未満と定義されているんだね。
少年法
少年の定義も確認しておきましょう。
少年法では少年の定義を20歳未満としています。
19歳の少年が犯罪を犯しても少年法で守られるのはそのためです。
触法少年:14歳未満、刑罰法令に触れる行為をした少年
犯罪少年:14歳以上で罪を犯した少年
昔の児童
戦前の児童虐待防止法や母子保護法では児童は「14歳未満」でしたが、その他の法制度では対象年齢が様々です。
でも基本的には、昔の児童は「14歳未満(13歳以下)」で覚えておけばいいからね。現代でも刑事責任が問われるのは14歳からだったね(犯罪少年は14歳以上)。
施行年 | 法律、制度 | 対象 | 内容 |
---|---|---|---|
1874年 | 恤救規則 | 13歳以下の孤児など | 日本初の救貧法 |
1900年 | 感化法 | 8歳以上16歳未満 | 感化院は現在の児童自立支援施設 |
1916年 | 工場法 | 12歳未満 | 日本初の労働者保護法、児童労働の禁止 |
1929年 | 救護法 | 13歳以下の児童など | 恤救規則→救護法 |
工場法では12歳未満の児童労働を禁止していたよ。小学校を卒業するのが12歳だね。
まとめ
世界的にも日本でも18歳未満が児童であるという基本をまず押さえた上で例外を覚えましょう。
・児童扶養手当法:障害のある児童は20歳未満
・特別児童扶養手当法:障害のある児童は20歳未満
ただし、障害児と障害者が20歳で区切られているのかと思えばそうでもなくて、障害者総合支援法の障害者は18歳以上の者とされています。
昔の児童は14歳未満であったことも併せて覚えておきましょう。
過去問
第27回 問題137
次の各法令などが対象とする「児童」として、正しいものを1つ選びなさい。
1 児童扶養手当法では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
2 母子及び寡婦福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法)では、「児童」を18歳未満の者と定めている。
3 児童手当法では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
4 児童の権利に関する条約では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
5 児童虐待の防止等に関する法律では、「児童」を18歳未満の者と定めている。
1 児童扶養手当法では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
間違いです。児童扶養手当法では18歳未満が児童です。
2 母子及び寡婦福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法)では、「児童」を18歳未満の者と定めている。
間違いです。母子福祉法では20歳未満が児童です。
3 児童手当法では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
間違いです。児童手当法では18歳未満が児童です。
4 児童の権利に関する条約では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
間違いです。児童権利条約では18歳未満が児童です。
5 児童虐待の防止等に関する法律では、「児童」を18歳未満の者と定めている。
これが正解です。
基本的に児童は18歳未満であり、例外となる3つの法律を覚えておきましょう。
第35回 問題140
児童手当に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 児童手当の支給には、所得制限が設けられていない。
2 児童手当は、子どもの年齢が高い方が支給額は高くなる。
3 児童扶養手当を受給している者には児童手当は支給されない。
4 児童手当の受給を希望する者が申請の手続を行う必要はない。
5 15歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童は、支給要件児童に該当する。
1 児童手当の支給には、所得制限が設けられていない。
誤りです。所得制限があります。
2 児童手当は、子どもの年齢が高い方が支給額は高くなる。
誤りです。子どもの年齢が高くなると支給額は下がります。
3 児童扶養手当を受給している者には児童手当は支給されない。
誤りです。併給できます。
4 児童手当の受給を希望する者が申請の手続を行う必要はない。
誤りです。申請の手続をしないともらえません。
5 15歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童は、支給要件児童に該当する。
これが正解です。
第29回 問題141
事例を読んで、児童扶養手当に関する担当者の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
[事例]T市に居住するBさんは、障害基礎年金を受給している。最近、夫と離婚して小学生(11歳)の子どもを引き取った。今後の生活のため、児童扶養手当のことについて市役所の担当部署に相談に行った。
1 児童扶養手当の支給によって子どもに対する父親の扶養義務はなくなる。
2 障害基礎年金と児童扶養手当は併給できないため、Bさんはどちらかを選択する必要がある。
3 Bさんに障害があるため、児童扶養手当は子どもが20歳になるまで支給される。
4 母子生活支援施設に入所する場合であっても、支給要件を満たす限り、児童扶養手当は支給される。
5 児童扶養手当の支給は、子どもが13歳に達した日の翌月から減額される。
1 児童扶養手当の支給によって子どもに対する父親の扶養義務はなくなる。
そんなことはまったくありません。
2 障害基礎年金と児童扶養手当は併給できないため、Bさんはどちらかを選択する必要がある。
2014年以降、年金額が児童扶養手当より低い場合は差額を受け取れるようになりました。なので間違いです。
3 Bさんに障害があるため、児童扶養手当は子どもが20歳になるまで支給される。
子どもに障害がある場合は20歳まで受け取れますが、親に障害があっても関係ありません。
4 母子生活支援施設に入所する場合であっても、支給要件を満たす限り、児童扶養手当は支給される。
基本的に児童が入所していれば手当関係は支給されませんが、母子生活支援施設に関しては例外的に支給されます。ですので正解です。
5 児童扶養手当の支給は、子どもが13歳に達した日の翌月から減額される。
そんな規定はありません。
第31回 問題138
母子及び父子並びに寡婦福祉法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 地方公共団体は、母子家庭・父子家庭が民間の住宅に入居するに際して、家賃の補助等の特別の配慮をしなければならない。
2 この法律にいう児童とは、18歳に満たない者をいう。
3 この法律にいう寡婦とは、配偶者と死別した女子であって、児童を扶養した経験のないものをいう。
4 都道府県は、児童を監護しない親の扶養義務を履行させるために、養育費の徴収を代行することができる。
5 都道府県は、母子家庭の母親が事業を開始・継続するのに必要な資金を貸し付けることができる。
1 地方公共団体は、母子家庭・父子家庭が民間の住宅に入居するに際して、家賃の補助等の特別の配慮をしなければならない。
全ての自治体で実施しているわけではありませんので間違いです。
2 この法律にいう児童とは、18歳に満たない者をいう。
母子福祉法では児童を20歳未満と定義している例外的法律でしたね。
3 この法律にいう寡婦とは、配偶者と死別した女子であって、児童を扶養した経験のないものをいう。
この法律の寡婦とは、配偶者と死別や離婚などをした後、配偶者のない女子としてこれまでに20歳未満の児童を扶養していたことがある人です。
配偶者と死別した女子でも20歳未満の児童を扶養した経験のない人は寡婦とは言いません。
4 都道府県は、児童を監護しない親の扶養義務を履行させるために、養育費の徴収を代行することができる。
養育費徴収代行ができれば母子家庭のお母さんは助かるでしょうが、今のところそこまでの権限はありません。
5 都道府県は、母子家庭の母親が事業を開始・継続するのに必要な資金を貸し付けることができる。
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度という制度で実施されていますので正解です。
詳細は厚生労働省ホームページで。
第25回 問題139
我が国の第二次世界大戦前の各法における児童の対象年齢に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 恤救規則は、無告の窮民であって、かつ13歳以下の孤児を救済することを規定していた。
2 感化法に規定されていた感化院の入院対象年齢は18歳未満であった。
3 工場法では、18歳未満の児童労働を禁止していた。
4 救護法で、貧困であって15歳以下の幼者を救済の対象としていた。
5 第二次世界大戦前の児童虐待防止法の対象年齢は16歳未満であった。
1 恤救規則は、無告の窮民であって、かつ13歳以下の孤児を救済することを規定していた。
これが正解です。恤救規則の対象は「無告の窮民(身寄りのなく貧しい人)」で、13歳以下の孤児や70歳以上の老衰者でした。
2 感化法に規定されていた感化院の入院対象年齢は18歳未満であった。
誤りです。感化院の入院対象年齢は、8歳以上16歳未満でした。
3 工場法では、18歳未満の児童労働を禁止していた。
誤りです。工場法では12歳未満の児童労働を禁止していました。
4 救護法で、貧困であって15歳以下の幼者を救済の対象としていた。
誤りです。救護法では13歳以下の幼者を救済の対象としていました。
5 第二次世界大戦前の児童虐待防止法の対象年齢は16歳未満であった。
誤りです。戦前の児童虐待防止法の対象年齢は14歳未満です。
次の記事
次は児童福祉の歴史です。
コメント
こんにちは
こちら記事の内容について修正をお願いします。
児童手当法含め児童の定義の説明は注意が必要です。児童手当法では
「第三条 この法律において「児童」とは、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある者であつて、日本国内に住所を有するもの又は留学その他の内閣府令で定める理由により日本国内に住所を有しないものをいう。」
18未満ではないことがわかります。
記事内の児童手当法「、この法律でも児童は18歳未満とされています。」
は未満ではありません。
これだと試験では間違いになるのではないでしょうか。
おおー!なんと。
確かにそうですね。
ご指摘ありがとうございますm(__)m
記事に追記させていただきます。