カリスマ社会福祉士は、障害福祉の分野で働いています。
障害者総合支援法に規定されているサービスはほぼ全て経験しました。
その経験も含めてご紹介します。
障害福祉サービスの概要
介護保険サービスでは「介護給付」「予防給付」「地域支援事業」と分かれているように、障害福祉サービスでも「自立支援給付(介護給付、訓練等給付など)」「地域生活支援事業」というふうに、似たような分類になっています。
介護保険では地域支援事業ですが、障害福祉サービスでは地域「生活」支援事業といいます。
<自立支援給付>
■介護給付
・介護給付
・居宅介護
・重度訪問介護
・同行援護
・行動援護
・重度障害者等包括支援
・短期入所(宿泊のみ)
・療養介護
・生活介護
・施設入所支援
■訓練等給付
・自立訓練(機能訓練・生活訓練・宿泊型)
・就労移行支援
・就労継続支援(A型・B型)
・共同生活援助(グループホーム)
■地域相談支援給付
・地域移行支援
・地域定着支援
■計画相談支援給付
■自立支援医療
・育成医療
・更生医療
・精神通院医療
<地域生活支援事業>
■市町村地域生活支援事業
必須事業
・理解促進研修・啓発事業
・自発的活動支援事業
・相談支援事業
・成年後見制度利用支援事業
・成年後見制度法人後見支援事業
・意思疎通支援事業
・日常生活用具給付等事業
・手話奉仕員養成研修事業
・移動支援事業
・地域活動支援センター機能強化事業
任意事業
・福祉ホームの運営
・訪問入浴サービス
・生活訓練等
・日中一時支援
・地域移行のための安心生活支援
・巡回支援専門員整備
・相談支援事業者等における退院支援体制確保
・協議会における地域資源の開発・利用促進等の支援
・その他
■都道府県地域生活支援事業
必須事業
・専門性の高い相談支援事業(発達障害者支援センター運営事業等)
・専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成研修事業
・その他
任意事業
・福祉ホームの運営
・その他
介護保険サービスとの比較
介護給付のサービスを受けるためには障害程度区分認定が必要になります。
介護保険の要介護認定のようなもので、区分1~6までで判定されます。
区分6が最も重度で、区分が高くないと受けられないサービスがあったり事業所の報酬も区分が高いほど高くなっています。
これらは給付としての立て付けですが、以下では利用者目線でサービスを分類し、「入所系」「通所系」「相談系」と分けて紹介します。
だれもがそうですが、人が生きる上では「暮らし」と「仕事」の両輪が必要です。
毎日の「自宅での生活」と「職場での生活」の両方が重要で、両方が満たされてこそ充実した人生になると思います。
それを支えるのが「入所系サービス」と「通所系サービス」です。
入所系サービスでは暮らしを支えるため、施設入所支援やグループホーム、短期入所事業などがあります。
通所系サービスでは生活介護や就労継続支援など、自宅から事業所に通ってサービスを受け、活動や仕事が終わればまた自宅に帰ります。
介護保険サービスは社会保険なので半分が保険料で賄われるのに対して、障害福祉サービスは社会福祉なので全て公費(税金)で賄われます。国、都道府県、市町村それぞれの負担割合は同じですが、保険料があるかないかは大きな違いです。
介護保険優先原則
65歳以上の障害者は、介護保険か障害福祉サービスかどちらを利用するのでしょう。どちらか選べるわけではありません。
原則、介護保険サービスが優先されます。
これを介護保険優先原則といいます。
ただし、65歳になるまで障害福祉サービスを利用してきた人には、同じ事業所で介護保険サービスを利用できるように、共生型サービスというものがあります。
詳しくは下記の記事で。
入所系サービス
介護保険と違って障害福祉では日中と夜間のサービスが明確に分けられています。
職住分離の原則で、たとえ入所施設に入っていても日中活動はサービスを選択できます。
入所系サービスは大きく分けると施設入所支援と共同生活援助(グループホーム)に分けられます。
施設入所支援を行う入所施設を「障害者支援施設」といい、重度障害者等が暮らす施設です。
障害者支援施設は、障害福祉サービスで唯一、第一種社会福祉事業に規定されています。
一方で共同生活援助(グループホーム)という形がありますが、これは施設入所支援とは異なり、地域で生活するために暮らしの場を提供する軽度障害者向けのサービスです。
障害者の地域移行が叫ばれてるけど、グループホームに入居している利用者は地域移行を成し遂げたことになるんだね。
この共同生活援助に加えて「自立生活援助」というサービスが2018年に新設されています。
グループホームから出て一人暮らしを定期訪問等で支援するサービスです。
それぞれのサービスで、一時的に宿泊できる短期入所(ショートステイ)というサービスがあります。
通所系サービス
障害者に日中活動を提供するサービスで以下の4種類が主なものです。
・就労継続支援(B型)
・就労継続支援(A型)
・就労移行支援
この4種類を覚えてください。
上から順番に障害の重い利用者向けのサービスと考えてください。
この4種類のうち「生活介護」だけが介護給付なので障害支援区分の認定が必要で、区分3以上でないとサービスは受けられません。
生活介護では重度障害者に日中活動(軽作業、レクレーション等)を提供します。
就労継続支援というのは、「一般企業などに就職することは難しいけど福祉的就労であれば可能」というレベルの障害者を対象としており、A型は雇用契約を結んで仕事をしてもらうサービス、B型は雇用契約を結ばずに仕事をしてもらうサービスです。
雇用契約を結ぶA型は最低賃金を保証しなければなりませんので月々の給料は10万円近い利用者も多いですが、B型は時給100円程度で働く利用者も多いです。
例えば、パン屋さんを経営するとして、パン作りに就労継続支援A型サービスの利用者を雇用して経営する場合、パンを売った売上から利用者の給料を支払い、利用者の支援をするスタッフの給料は自立支援給付として国から支給されるという仕組みです。
本来利用者の給料は自立支援給付から拠出してはいけないんだけど、一時期問題になっていたね。
最後に就労移行支援というのは、一般企業などに就職することが可能と見込まれる障害者に対して仕事を提供し、一般就労への移行を支援する訓練的サービスです。
このサービスだけが最長2年という期限付きになります。
移動系サービス
障害者の移動に係るサービスは以下の5種類あります。
・居宅介護
・重度訪問介護
・行動援護
・同行援護
この中で移動支援は市町村地域生活支援事業で、それ以外は介護給付になります。
居宅介護は居宅での入浴や食事の介助ですが、通院時の付き添いなど移動に関する支援も含まれます。
重度訪問介護は居宅介護の重度者版で、区分4以上でないとサービスを受けられません。
行動援護は重度障害者向けの移動の介護サービスです。
同行援護は行動援護と似た名称でややこしいですが、視覚障害者に対する移動の支援です。
これらを区別して覚えておいてください。
相談系サービス
相談支援には一般相談支援と特定相談支援の二種類があります。
一般相談支援は「地域移行支援」と「地域定着支援」というサービスがあり、入所施設を利用している障害者が地域移行するための住居の確保に関する相談や、一人暮らしの障害者が地域で継続して暮らしていくための相談などを受けます。
特定相談支援は、「基本相談支援」と「計画相談支援」で構成され、計画相談支援では利用者のサービス等利用計画を作成します。
特定相談支援:基本相談支援、計画相談支援
サービス等利用計画というのは障害者が福祉サービスを受けるに当たって、どのようなサービスをどの程度、どのように組み合わせて受けるのか等を示した計画書です。
現在はサービス等利用計画が作成されていないと福祉サービスを受ける事ができないけど、以前は必要なかったので、そのころは「特定相談支援」という相談支援自体がなかったよ。つまり後からできた相談支援で、もともとあった相談支援と区別するため「一般」と「特定」という名称になったみたい。
障害福祉サービス事業所の指定は基本的に都道府県が行いますが、この特定相談支援事業者だけは市町村が行います。
市町村が地域性を考えて事業者を選定できるようになっています。
児童福祉法で規定されるサービス
障害児に関するサービスは障害者総合支援法ではなく児童福祉法で規定されています。
・児童発達支援
・医療型児童発達支援
・保育所等訪問支援
まとめ
以下は、厚生労働省作成の図です。
上の図にあるように、いわゆる障害福祉サービスと呼ばれるのは「介護給付」と「予防給付」です。それ以外にも「自立支援医療」「相談支援」「地域生活支援事業」は重要です。
そして障害児に関するサービスは児童福祉法に規定されているオレンジ色の部分です。
その多くが市町村の管轄ですが、都道府県が管轄するサービスもあることがわかります。
「精神通院医療」「障害児入所支援」「人材育成」などが都道府県の管轄であることは覚えておきましょう。
都道府県と市町村の役割については、以下の記事で。
最後に、総まとめ。
過去問
第31回 問題58
「障害者総合支援法」の障害福祉サービスに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生活介護とは、医療を必要とし、常時介護を要する障害者に、機能訓練、看護、医学的管理の下における介護等を行うサービスである。
2 行動援護とは、外出時の移動中の介護を除き、重度障害者の居宅において、入浴、排せつ、食事等の介護等を行うサービスである。
3 自立生活援助とは、一人暮らし等の障害者が居宅で自立した生活を送れるよう、定期的な巡回訪問や随時通報による相談に応じ、助言等を行うサービスである。
4 就労移行支援とは、通常の事業所の雇用が困難な障害者に、就労の機会を提供し、必要な訓練などを行うサービスである。
5 就労継続支援とは、就労を希望し、通常の事業所の雇用が可能な障害者に、就労のために必要な訓練などを行うサービスである。
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
1 生活介護とは、医療を必要とし、常時介護を要する障害者に、機能訓練、看護、医学的管理の下における介護等を行うサービスである。
生活介護は日中活動サービスです。
医療系サービスではないので間違いです。
2 行動援護とは、外出時の移動中の介護を除き、重度障害者の居宅において、入浴、排せつ、食事等の介護等を行うサービスである。
行動援護は外出時の移動中の介護を行いますので間違いです。
3 自立生活援助とは、一人暮らし等の障害者が居宅で自立した生活を送れるよう、定期的な巡回訪問や随時通報による相談に応じ、助言等を行うサービスである。
正しいです。
自立生活援助は2018年に新設されたサービスで、共同生活援助(グループホーム)を利用していた障害者が居宅で自立した日常生活を送れるように巡回訪問などで支援するサービスです。
4 就労移行支援とは、通常の事業所の雇用が困難な障害者に、就労の機会を提供し、必要な訓練などを行うサービスである。
説明内容は就労継続支援の内容です。
就労移行支援は、一般企業への就職が可能と見込まれる障害者に就労の機会を提供するサービスです。
5 就労継続支援とは、就労を希望し、通常の事業所の雇用が可能な障害者に、就労のために必要な訓練などを行うサービスである。
説明内容は就労移行支援の内容です。
第34回 問題144
「障害者総合支援法」の障害者の就労支援などに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
1 就労移行支援事業では、利用者が就職できるまで支援を提供するため、利用期間に関する定めはない。
2 就労継続支援A型事業では、雇用契約を締結した利用者については最低賃金法が適用される。
3 就労継続支援A型事業の利用者が一般就労に移行することはできない。
4 就労継続支援B型事業の利用者が一般就労に移行する場合には、就労移行支援事業の利用を経なければならない。
5 就労継続支援B型事業は、利用者に支払える平均工賃が月額20,000円を上回ることが事業認可の条件となっている。
1 就労移行支援事業では、利用者が就職できるまで支援を提供するため、利用期間に関する定めはない。
誤りです。就労移行支援事業では原則2年という期間の定めがあります。
2 就労継続支援A型事業では、雇用契約を締結した利用者については最低賃金法が適用される。
これが正解、正しいです。
3 就労継続支援A型事業の利用者が一般就労に移行することはできない。
誤りです。できます。
4 就労継続支援B型事業の利用者が一般就労に移行する場合には、就労移行支援事業の利用を経なければならない。
誤りです。A型もB型も一般就労に移行することができます。
5 就労継続支援B型事業は、利用者に支払える平均工賃が月額20,000円を上回ることが事業認可の条件となっている。
誤りです。B型事業の平均工賃が20,000円は高すぎます。
20,000円を超えている事業所は多くありません。
第29回 問題59
「障害者総合支援法」に規定されている特定相談支援事業として行うこととされているものを2つ選びなさい。
1 基本相談支援
2 障害児相談支援
3 地域移行支援
4 地域定着支援
5 計画相談支援
特定相談支援には基本相談支援と計画相談支援が含まれています。
基本相談支援は一般的な内容の相談に応じ、計画相談支援はサービス等利用計画を作成します。
正解は選択肢1と5です。
第29回 問題56
事例を読んで、E相談支援専門員(社会福祉士)がFさんに提案するサービスとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
[事例]Fさん(30歳、男性)は大学在学中に統合失調症を発症し、精神科病院に入院していたが、投薬治療やピアサポーターの励まし、E相談支援専門員の相談支援により、退院後は一人暮らしの希望を持つようになり、この度、アパートの契約もでき退院の運びとなった。Fさんは就労経験や福祉サービスの利用経験がないので、一人暮らしの際に必要なことを身につけるために自分にふさわしいサービスを紹介してもらいたいと、E相談支援専門員に相談した。
1 自立訓練(生活訓練)
2 就労継続支援(B型)
3 重度訪問介護
4 生活介護
5 同行援護
これは自立訓練が正解です。
第31回 問題127
事例を読んで、在宅サービスを利用して一人暮らしをしているAさんのケアプランに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
[事例]弱視であるAさん(64歳、男性)は20年前に事故で頸椎損傷を受傷し、四肢麻痺の状態になった。現在、障害支援区分6で居宅介護と同行援護を利用し、障害基礎年金を受けて生活している。間もなく65歳となり介護保険を利用することになると訪問介護の時間数が減少してしまうため、地域包括支援センターに行った。そこで、B介護支援専門員(社会福祉士)に今後も同等のサービスを利用できるかを相談した。
1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は、「障害者総合支援法」で補完することを考える。
2 「障害者総合支援法」のサービスのまま、ケアプランを作成する。
3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。
4 同行援護は、「障害者総合支援法」で引き続き対応する。
5 介護保険の上限でサービスを組み、他は全額自己負担で対応する。
基本的に障害者でも65歳を迎えると障害福祉サービスから介護保険サービスに移行しなければなりませんが、介護保険サービスのみで必要な支給量が確保できない場合や、障害福祉サービスに固有のサービス(同行援護、行動援護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援など)は受ける事が可能です。
選択肢1と選択肢4が正解です。
精神保健福祉士 第25回 問題75
次のうち、「障害者総合支援法」に規定される自立生活援助として、正しいものを1つ選びなさい。
1 医療機関における機能訓練及び日常生活上の世話
2 主として夜間において、相談、入浴、排せつ人は食事の介護その他の日常生活上の援助
3 身体機能又は生活能力の向上のための訓練
4 一定期間にわたる、定期的な巡回訪問等による相談、助言等の援助
5 障害者が行動する際の危険回避のために必要な援護
自立生活援助は共同生活援助(グループホーム)のような共同生活に対して、一人暮らしを希望する方に向けて、一人暮らし中に一定期間定期的な巡回訪問等による相談や助言等の援助を行います。
ということで正解は、選択肢4です。
次の記事
次は障害者の就労支援を取り上げます。
コメント
発達障害者支援センターの設置は都道府県の必須ではなく任意ではないですか?
発達障害者支援センターについて、「発達障害者支援法」では都道府県&指定都市の任意設置となっていますが、「障害者総合支援法」では都道府県地域生活支援事業の必須事業として「専門性の高い相談支援事業」が規定されており、この事業には以下の4種類があります。
・発達障害者支援センター運営事業
・高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業
・障害児等療育支援事業
・障害者就業・生活支援センター事業
ということで発達障害者支援センターの設置は任意なんですが、障害者総合支援法には発達障害者支援センター運営事業を含む「専門性の高い相談支援事業」というのが必須事業に規定されています。
いつも楽しく学習させていただいております。ありがとうございます。
さて、「介護保険サービスとの比較」の赤いラインが引いてある「介護給付のサービスを受けるためには障害程度区分認定が必要になります。」の箇所ですが、『障害程度区分』ではなく『障害支援区分』ではないのでしょうか。少し気になりましたのでコメントさせていただきました。
そのとおり!
ありがとうございますm(_ _)m
訂正させていただきます