【逸脱行動論】アノミー理論、社会統制論、文化学習理論、ラベリング理論、コンフリクト理論

人はなぜ罪を犯すのか、なぜ反社会的行為を行うのか、このような逸脱行動の原因を考察する逸脱行動論は、その理由によってさまざまな理論があります。

「行動」と「行為」の違いは、「ウェーバーの4つの社会的行為」で説明しました。

今回は「行動」のなかでも「逸脱行動」について、さまざまな理論を見ていきます。

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緊張理論

緊張理論は、強い社会的圧力を受け、たまらず逸脱するという理論です。

例えば「大きくなったら立派な大人になりなさい」と言われ、学校でも成績優秀であることを求められ、このような圧力を受け続けて成長した子どもが、大人になって犯罪を犯してしまうということがあります。

アノミー理論 by マートン

緊張理論の代表はマートンの「アノミー理論」で、何らかの社会構造が特定の圧力を一部の人々に加えて逸脱行動を選択させていると考えます。

つまり、アノミーとは「社会的規範の弛緩や崩壊によって生じる混沌状態」のことで、そのような状態が圧力を生み、逸脱行動を起こさせていると考えます。

カリスマくん
カリスマくん

アノミーはもともと、フランスの社会学者であるデュルケームが「社会分業論(1893)」「自殺論(1897)」の中で提唱した概念だったんだ。

自殺するのも逸脱行動の1つだよ。

マートンの機能主義

マートンは機能主義の代表者で、順機能と逆機能、顕在的機能と潜在的機能という「機能」を捉えて、社会的行為や逸脱行動を説明しようとしました。

その結果が望ましいものである順機能 ⇔ 逆機能
その結果が知られている顕在的機能  ⇔ 潜在的機能
カリスマくん
カリスマくん

官僚制の逆機能を覚えてるかな。官僚制は規律がしっかりしているので統制は取りやすいけど、逆にルールで縛られ過ぎていて融通が利かないというのが逆機能だよ。

このような機能を分析して、意図している結果とは異なる「意図せざる結果」を明らかにしようとしています。

社会統制論

社会統制論は、統制が弱いから逸脱行動が起こると考える理論です。

つまり、例えば罪を犯せば法律で罰せられるし、逆に善い行いをすれば褒められるというようなアメと鞭の統制の仕組みが弱いことで犯罪などの逸脱行動が起こるとする理論です。

文化学習理論

文化学習理論は、犯罪などは下位集団文化の中で学習され次世代へと伝承されるとする理論です。

つまり、一部の下位集団の中で受け継がれてきた「文化」が、犯罪や反社会的行動などであるということです。

ラベリング理論

社会集団は「これを犯せば逸脱となるような規則」を設け、それを特定の人々に適用し、彼らにアウトサイダーのレッテルを張る事で逸脱を生み出します。

つまり、逸脱が先にあるのではなく、レッテル貼りが逸脱を生み出します。

ラベリング理論から派生した考え方に、「構築主義」があります。

構築主義とは、社会問題はそれを解決されるべき問題とみなす人々のクレイム申立とそれに対する反応を通じて作り出されると捉えます。

カリスマくん
カリスマくん

ラベリング理論も構築主義も、周囲の人々が社会問題を社会問題に仕立て上げるという感じかな。

コンフリクト理論

資本主義社会における生産関係の矛盾から派生してくるものが社会的逸脱であるとする理論です。

過去問

第29回 問題21

ラベリング理論の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 機能主義的な立場から順機能・逆機能、顕在的機能・潜在的機能といった概念を導入しつつ、逸脱や逸脱行動を説明する立場である。
2 地域社会にある文化摩擦に着目し、社会解体がその地域の犯罪などを生み出すとみる立場である。
3 資本主義社会における生産関係の矛盾から派生してくるものが社会的逸脱であるとみる立場である。
4 周囲の人々や社会統制機関などが、ある人々の行為やその人々に対してレッテルを貼ることによって、逸脱は作り出されるとみる立場である。
5 犯罪や非行などの社会問題は、下位集団文化の中で学習され、その文化を通じて世代から世代へと伝承されていくとみる立場である。

1 機能主義的な立場から順機能・逆機能、顕在的機能・潜在的機能といった概念を導入しつつ、逸脱や逸脱行動を説明する立場である。
これはマートンの機能主義の内容で、「緊張理論(アノミー理論)」の説明です。

2 地域社会にある文化摩擦に着目し、社会解体がその地域の犯罪などを生み出すとみる立場である。
これは「社会解体論」の説明です。

3 資本主義社会における生産関係の矛盾から派生してくるものが社会的逸脱であるとみる立場である。
これは「コンフリクト理論」の説明です。

4 周囲の人々や社会統制機関などが、ある人々の行為やその人々に対してレッテルを貼ることによって、逸脱は作り出されるとみる立場である。
これが正解です。

5 犯罪や非行などの社会問題は、下位集団文化の中で学習され、その文化を通じて世代から世代へと伝承されていくとみる立場である。
これは「文化学習理論」の説明です。

第33回 問題21

次のうち、マートン(Merton, R.K.)が指摘したアノミーに関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ある現象が解決されるべき問題とみなす人々の営みを通じて紡ぎ出される社会状態を指す。
2 下位文化集団における他者との相互行為を通じて逸脱文化が学習されていく社会状態を指す。
3 文化的目標とそれを達成するための制度的手段との不統合によって社会規範が弱まっている社会状態を指す。
4 他者あるいは自らなどによってある人々や行為に対してレッテルを貼ることで逸脱が生み出されている社会状態を指す。
5 人間の自由な行動を抑制する要因が弱められることによって逸脱が生じる社会状態を指す。

1 ある現象が解決されるべき問題とみなす人々の営みを通じて紡ぎ出される社会状態を指す。
この文章は意味不明っぽいですが、「構築主義」の説明のようでもあります。

2 下位文化集団における他者との相互行為を通じて逸脱文化が学習されていく社会状態を指す。
これは「文化学習理論」の説明です。

3 文化的目標とそれを達成するための制度的手段との不統合によって社会規範が弱まっている社会状態を指す。
これが正解です。

4 他者あるいは自らなどによってある人々や行為に対してレッテルを貼ることで逸脱が生み出されている社会状態を指す。
これは「ラベリング理論」の説明です。

5 人間の自由な行動を抑制する要因が弱められることによって逸脱が生じる社会状態を指す。
これは「社会統制論」の説明です。

第32回 問題21

社会問題は、ある状態を解決されるべき問題とみなす人々のクレイム申立とそれに対する反応を通じてつくり出されるという捉え方がある。このことを示す用語として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会統制論
2 緊張理論
3 文化学習理論
4 構築主義
5 ラベリング論

これは、選択肢4の構築主義が正解です。

第28回 問題21

社会問題の捉え方に関する次の記述のうち、構築主義的なアプローチとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会がどうあるべきかについては、多くの人々に共有されている規範が存在するので、これに反するものが社会問題と認識される。
2 社会は統一されたシステムを成しているので、その目標達成にとってマイナスに働く事象は、社会問題と認識される。
3 社会問題とは、客観的に実在し、誰の目にも明らかな現実として存在するものである。
4 社会問題とは、専門家でなければ可視化できないような、現代社会におけるリスクのことである。
5 社会問題とは、自明なものとして存在するのではなく、人々が主張することを通して認識される問題である。

選択肢5が正解です。

第35回 問題21

次の記述のうち、ラベリング論の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会がある行為を逸脱とみなし統制しようとすることによって、逸脱が生じると考える立場である。
2 非行少年が遵法的な世界と非行的な世界の間で揺れ動き漂っている中で、逸脱が生じると考える立場である。
3 地域社会の規範や共同体意識が弛緩することから、非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
4 下位集団における逸脱文化の学習によって、逸脱が生じると考える立場である。
5 個人の生得的な資質によって、非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。

1 社会がある行為を逸脱とみなし統制しようとすることによって、逸脱が生じると考える立場である。
これが正解です。

2 非行少年が遵法的な世界と非行的な世界の間で揺れ動き漂っている中で、逸脱が生じると考える立場である。
これは漂流理論です。

3 地域社会の規範や共同体意識が弛緩することから、非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
これは社会解体論だと思います。

4 下位集団における逸脱文化の学習によって、逸脱が生じると考える立場である。
これは文化学習理論です。

5 個人の生得的な資質によって、非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
これはなんでしょうか~?

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