社会福祉士及び介護福祉士法

社会福祉士の倫理綱領は社会福祉士が守るべき倫理を規定していますが、それ以前に社会福祉士が守るべき法的義務・責務があります。それらは社会福祉士及び介護福祉士法に規定されています。

社会福祉士及び介護福祉士法
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社会福祉士及び介護福祉士の義務等

社会福祉士及び介護福祉士法の第四章には以下のように「社会福祉士及び介護福祉士の義務等」が規定されています。

・誠実義務

第四十四条の二 社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない。

・信用失墜行為の禁止

第四十五条 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

・秘密保持義務

第四十六条 社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。

・連携

第四十七条 社会福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービス(次項において「福祉サービス等」という。)が総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。

・資質向上の責務

第四十七条の二 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助又は介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

・名称の使用制限

第四十八条 社会福祉士でない者は、社会福祉士という名称を使用してはならない。

社会福祉士及び介護福祉士法の変遷

1987年「社会福祉士及び介護福祉士法」成立

当時は、増大する介護需要に対応するために、老人、身体障害者等に関する福祉に対する相談や介護を依頼することができる専門的能力を有する人材が求められていました。

2007年「社会福祉士及び介護福祉士法」改正

2007年に大幅改正が行われ、この改正時に「誠実義務」と「資質向上の責務」が規定されています。

2012年の改正では、喀痰吸引や経管栄養といった一部の医療的ケアを介護職員も行えるようになりました。

社会福祉士及び介護福祉士法改正

まとめ

社会福祉士には、倫理綱領や行動規範の前に、「社会福祉士及び介護福祉士法」に規定される法的義務・責務があります。

社会福祉士の5つの責務「誠実義務」「信用失墜行為の禁止」「秘密保持義務」「連携」「資質向上の責務」を覚えておきましょう。

社会福祉士の責務

このうち、違反すると登録取り消しとなりうるのは、「信用失墜行為の禁止」と「秘密保持義務」で、その中でも罰則規定があるのは「秘密保持義務」違反で「一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」とされています。

5つの責務には含まれませんが「名称使用の制限」違反にも「三十万円以下の罰金」が科されます。名称使用の制限は、国家試験に合格するだけでは名称使用ができず、資格登録後でなければならないことを押さえておきましょう。

過去問

第34回 問題91

社会福祉士及び介護福祉士法における社会福祉士と、精神保健福祉士法における精神保健福祉士に関する次の記述のうち、これらの法律に明記されている共通する責務として、正しいものを1つ選びなさい。
1 集団的責任の保持
2 権利擁護の促進
3 多様性の尊重
4 資質向上
5 倫理綱領の遵守

1 集団的責任の保持
誤りです。これはソーシャルワークのグローバル定義や社会福祉士の倫理綱領の「原理」です。

2 権利擁護の促進
誤りです。これは社会福祉士の倫理綱領の倫理基準「クライエントに対する倫理責任」に規定されています。

3 多様性の尊重
誤りです。これはソーシャルワークのグローバル定義や社会福祉士の倫理綱領の「原理」です。

4 資質向上
これが正解です。これは法的な責務です。

5 倫理綱領の遵守
誤りです。これは社会福祉士の倫理綱領(前文)に規定されています。

第29回 問題91

社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会福祉士の名称使用は、登録後でなければならない。
2 業務を行うに当たっては、クライエントの主治医の指導を受けなければならない。
3 専門性の維持・向上を目的として、資格更新研修を受けなければならない。
4 所属する勤務先の立場を優先して業務を行わなければならない。
5 資質向上の責務として、相談援助に関わる後継者の教育指導に努めなければならない。

1 社会福祉士の名称使用は、登録後でなければならない。
これが正解です。

2 業務を行うに当たっては、クライエントの主治医の指導を受けなければならない。
誤りです。精神保健福祉士にはこのような規定がありますが、社会福祉士にはありません。

3 専門性の維持・向上を目的として、資格更新研修を受けなければならない。
誤りです。資格更新研修はありません。

4 所属する勤務先の立場を優先して業務を行わなければならない。
誤りです。誠実義務としてクライエントの立場に立って業務を行わなければなりません。

5 資質向上の責務として、相談援助に関わる後継者の教育指導に努めなければならない。
誤りです。資質向上の責務として教育指導は規定されていません。

第33回 問題91 

社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会福祉士は資格更新のため、7年ごとに所定の講習を受講しなければならない。
2 社会福祉士は相談業務を行う上で、クライエントの主治医の指示を受けなければならない。
3 社会福祉士の「信用失墜行為の禁止」は、2007 年(平成 19 年)の法律改正によって加えられた。
4 社会福祉士の「秘密保持義務」は、社会福祉士の業務を離れた後においては適用されない。
5 社会福祉士はその業務を行うに当たって、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。

1 社会福祉士は資格更新のため、7年ごとに所定の講習を受講しなければならない。
間違いです。社会福祉士資格の更新は必要ありません。

2 社会福祉士は相談業務を行う上で、クライエントの主治医の指示を受けなければならない。
間違いです。社会福祉士の業務で主治医の指示を受けなければならないものはありません。

3 社会福祉士の「信用失墜行為の禁止」は、2007 年(平成 19 年)の法律改正によって加えられた。
間違いです。「信用失墜行為の禁止」は2007年の法律改正以前より義務付けられており、この法改正により追加されたものは、「誠実義務」と「資質向上の責務」です。

4 社会福祉士の「秘密保持義務」は、社会福祉士の業務を離れた後においては適用されない。
間違いです。業務を離れてからも秘密保持義務は継続します。

5 社会福祉士はその業務を行うに当たって、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。
これが正解です。

第35回 問題91

次の記述のうち、社会福社士に関する説明として、適切なものを2つ選びなさい。
1 虐待に関わる相談は、社会福祉士が独占している業務である。
2 社会福祉士は、特定の職種の任用資格になっている。
3 社会福祉士の名称は、国家試験の合格をもって使用することができる。
4 社会福祉士でない者が社会福祉士の名称を使用した場合に罰則がある。
5 介護老人保健施設に社会福祉士を置かなければならない。

1 虐待に関わる相談は、社会福祉士が独占している業務である。
誤りです。社会福祉士は業務独占ではありません。

2 社会福祉士は、特定の職種の任用資格になっている。
正しいです。社会福祉主事や児童福祉司の任用資格です。

3 社会福祉士の名称は、国家試験の合格をもって使用することができる。
誤りです。国家試験に合格した後、登録されてから名称を使用することができます。

4 社会福祉士でない者が社会福祉士の名称を使用した場合に罰則がある。
正しいです。名称使用制限違反には30万円以下の罰金があります。

5 介護老人保健施設に社会福祉士を置かなければならない。
誤りです社会福祉士が必置になっているのは地域定着支援センターだけです。

第30回 問題91

社会福祉士及び介護福祉士法で定められている社会福祉士の業務と義務に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 社会福祉士でなければ社会福祉士の名称を用いて業務を行ってはならない。
2 業務を行う上で主治医の指示を受けなければならない。
3 5年ごとに更新のための研修を受けなければならない。
4 秘密保持の義務は、社会福祉士でなくなった後においては適用されない。
5 業務を行うに当たり、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。

1 社会福祉士でなければ社会福祉士の名称を用いて業務を行ってはならない。
正しいです。社会福祉士は名称独占資格ですので社会福祉士でなければその名称を使用することはできません。

2 業務を行う上で主治医の指示を受けなければならない。
社会福祉士の業務で医師の指示が必要なものはありません。

3 5年ごとに更新のための研修を受けなければならない。
更新が必要な国家資格はありません。

4 秘密保持の義務は、社会福祉士でなくなった後においては適用されない。
そんなことはありません。

5 業務を行うに当たり、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。
正しいです。

第27回 問題91

2007年(平成19年)の社会福祉士及び介護福祉士法の改正における社会福祉士の役割などに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 業務を行うに当たり地域格差が生じないよう配慮し、公平かつ公正な福祉サービスの提供に努めなければならないことが明記された。
2 社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務内容の変化に適応するため、知識及び技能の向上に努めなければならないことが明記された。
3 判断能力の低下した個人であってもその尊厳が保持され、自立した日常生活を営むことができるよう後見人登録の規定が明記された。
4 地域における総合的かつ包括的な援助を行うために、福祉サービスを提供する事業者やボランティアへの助言、指導が社会福祉士の定義に明記された。
5 認定社会福祉士の規定が設けられ、高度な福祉ニーズに的確に応えることのできるより専門性の高い人材を確保することが明記された。

1 業務を行うに当たり地域格差が生じないよう配慮し、公平かつ公正な福祉サービスの提供に努めなければならないことが明記された。
間違いです。このような内容は法には書かれていません。

2 社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務内容の変化に適応するため、知識及び技能の向上に努めなければならないことが明記された。
これが正解です。

3 判断能力の低下した個人であってもその尊厳が保持され、自立した日常生活を営むことができるよう後見人登録の規定が明記された。
間違いです。このような規定はありません。

4 地域における総合的かつ包括的な援助を行うために、福祉サービスを提供する事業者やボランティアへの助言、指導が社会福祉士の定義に明記された。
間違いです。このような規定はありません。

5 認定社会福祉士の規定が設けられ、高度な福祉ニーズに的確に応えることのできるより専門性の高い人材を確保することが明記された。
間違いです。認定社会福祉士は法的には規定されていません。

精神保健福祉士 第25回 問題22

次の記述のうち、社会福祉士及び介護福祉士法制定の背景として、適切なものを1つ選びなさい。
1 社会福祉基礎構造改革の議論が行われ、個人の多様な需要に対し、地域での総合的な支援のための人材が求められた。
2 障害福祉サービスにおいて、ケアマネジメントを用いた生活支援を展開するための人材が求められた。
3 増大する介護需要に対応するために、老人、身体障害者等に関する福祉に対する相談 や介護を依頼することができる専門的能力を有する人材が求められた。
4 福祉三法が整備される中、各都道府県等に社会福祉行政を担当する人材を配置することが求められた。
5 高齢者が住み慣れた地域で目立した生活を営めるよう、地域包括ケアシステムの構築を推進する人材が求められた。

選択肢3が正解です。
社会福祉士及び介護福祉士法が制定されたのは1987年です。
この頃は、高齢化社会(1970年)から高齢社会(1994年)に向かう中で、増大する介護需要への対応が求められていました。

カリスマくん
カリスマくん

実はこの問題はカリスマが精神保健福祉士を受験した時の問題。
精神保健福祉士の専門科目に「社会福祉士及び介護福祉士法」の内容が問われてる!?とびっくりしたことを覚えているよ。

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次は、認定社会福祉士と認定上級社会福祉士について。

認定社会福祉士&認定上級社会福祉士
2012年~社会福祉士の実践力を担保する民間認定の仕組みとして認定社会福祉士制度が制定され、関係団体が参画する任意団体「認定社会福祉士認証・認定機構」が認定します。つまり、社会福祉士は国家資格ですが、認定社会福祉士は国家資格ではあ...

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