戦後すぐの福祉三法で最も早くに制定された旧生活保護法以降、生活保護制度の歴史は長く、社会保障制度の最後のセーフティーネットとして重要な位置を占めており、それだけに国家試験にも頻出ですのでしっかり押さえましょう。
この分野は過去問をひたすら解くことで実力がアップしていきます。
記事内容を飛ばして下の方にある過去問を解いていってもらっても良いかと思います。
生活保護制度の目的
目的は2つ、「健康で文化的な最低限度の生活の保障」と「自立の助長」です。
「自立の助長」が目的であることを忘れないで。
<基本原理>
生活保護制度は「原理」と「原則」があります。
原理と原則の違いは、原理には例外がありませんが、原則には例外があることです。
まずは原理から見ていきましょう。
・国家責任の原理
生活保護制度は憲法第25条の生存権の理念に基づいており、最後のセーフティーネットとして国が責任を持って実施します。
生活保護法に理念は規定されておらず憲法25条が理念となっているのです。
財源として国が3/4も負担するのは他の社会保障制度にはありません。
下の図は各社会保障制度の財源の負担割合を表していますが、一番左にある生活保護は国の負担割合(赤色部分)が最も大きいことがわかるでしょう。
最後のセーフティーネットとして国が責任を持って実施する意気込みが見えますね。
旧生活保護法ではなんと8/10も国が負担していたよ。
・無差別平等の原理
無差別平等の原理とは困窮に陥った理由は問わず、日本国民であれば誰でも「適用」するということです。
ただし国籍要件があり外国人は保護しないのですが、永住外国人には生活保護法を「準用」し、人道上保護しています。
国家試験の過去問(第29回 問題78)では、「生活保護法は、就労目的での在留資格で在留する外国人に適用されることはない」という選択肢を正解にして物議を醸したよ。本当にこれを正解にしていいの?ということで。
・最低生活保障の原理
「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しますよということです。
・保護の補足性の原理
生活保護は、資産や能力を最大限活用し、扶養義務者の援助を求め、それでも最低限度の生活を維持できない場合に受給できるということ、それが「補足性の原理」です。
生活保護法第四条第一項には、このことが書かれています。さらに第二項には「他方他施策優先の原理」が規定されています。
つまり、生活保護を受ける前に、児童扶養手当とか、特別児童扶養手当とか、自立支援医療とか、障害年金とか、生活保護以外の制度や施策を活用してねということだね。
<生活保護法 第四条>
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
生活保護行政を担う現役のケースワーカーさんと相談員さんに出演してもらったライブでは、二人ともこの「補足性の原理」を意識して対応していることをゆってた!
<基本原則>
原理と違って原則には例外があります。
例外を中心に覚えていきましょう。
・申請保護の原則
申請保護の原則では要保護者や扶養義務者又は同居の親族の申請に基づいて保護が開始されますが、例外として、急迫時には申請がなくても保護されます。
・基準及び程度の原則
生活扶助基準は5年毎の全国消費実態調査を参考に改定され、厚生労働大臣が定めます。
その改定内容に基づいて生活保護基準は毎年のように改定されます。
2013年(生活扶助、平均6.5%、最大10%引下げ)
2018年(生活扶助、平均1.8%、最大5%引下げ)
2023年(・・・
基準は最低限度の生活水準を満たしかつそれを越えないものとされています。
生活保護基準はどのように決められているのでしょう。
その方式は、マーケットバスケット方式→エンゲル方式→格差縮小方式→水準均衡方式と移り変わって来ました。
現在用いられている水準均衡方式では、生活保護基準は一般国民の生活水準との関連において相対的に捉えられ当該年度に想定される一般国民の消費動向等を踏まえ改定されます。
以下は2022年3月の福祉新聞記事です。水準均衡方式に加えてMIS手法を取り入れることが書かれています。
・必要即応の原則
必要即応の原則は、「保護では要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人または世帯の実際の必要の相違を考慮して有効かつ適切に行うものとする」とされており、つまり画一的な給付ではダメということです。
・世帯単位の原則
生活保護は世帯単位で支給されます。
ただし例外として、緊急の場合などは個人単位で支給される事もあります。
義務や禁止行為について
費用返還義務
急迫時に資力があるにもかかわらず保護を受けた時は受けた分の返還義務が発生します。
生活上の義務
勤労に励んだり支出の節約などが義務です。
届け出義務
収入支出や世帯異動に関して届け出の義務があります。
指示に従う義務
義務に従わなければ弁明の機会を与えられたあと、保護の停止や廃止もあり得ます。
不利益変更の禁止
正当な理由がなければ保護内容を変更されることはありません。
公課禁止
保護金品には課税されません。
差押禁止
保護金品は差し押さえされません(過去に税を滞納したことがあったとしても)。
譲渡禁止
保護を受ける権利を譲渡することはできません。
保護の実施機関
生活保護の行政は福祉事務所が担います。
福祉事務所を設置しなければならないのは、都道府県と市です。
町村は「福祉事務所を設置できる」とされていますので、福祉事務所がある場合もありますが基本的には町村部は都道府県の福祉事務所が担います。
ということで保護の実施機関は、都道府県知事や市長及び福祉事務所を管理する町村長ということになります。
福祉事務所は別記事で詳しく取り上げるのでご心配なく。
生活保護の担い手
戦前の救護施設では方面委員が、戦後すぐの旧生活保護法では民生委員が担っていましたが、現在では福祉事務所に配置されている社会福祉主事が担っています。
社会福祉主事は福祉事務所に配置される現業員(ケースワーカー)だね。
社会福祉主事は生活保護の「補助機関」とされています。
旧生活保護法では民生委員が補助機関で支給決定などをしていましたが、現在では民生委員は「協力機関」になりました。
民生委員は別記事で詳しく取り上げるのでご心配なく。
8種類の扶助
生活保護制度の歴史として、救護法→旧生活保護法→生活保護法の流れを「日本の戦前福祉の変遷」で見てきました。
戦前の救護法では4種類(生活扶助、医療扶助、助産扶助、生業扶助)で、旧生活保護法になり葬祭扶助が追加され5種類になり、現生活保護法が戦後に制定された時には、教育扶助と住宅扶助が加えられて7種類に。
そして2000年に介護保険法施行とともに介護扶助が加えられ、現在の8種類になっています。
扶助 | 1929 救護法 | 1946 旧生活保護法 | 1950 生活保護法 |
---|---|---|---|
生活扶助 | 〇 | 〇 | 〇 |
医療扶助 | 〇 | 〇 | 〇 |
助産扶助→出産扶助 | 〇 | 〇 | 〇 |
生業扶助 | 〇 | 〇 | 〇 |
葬祭扶助 | 葬祭費 | 〇 | 〇 |
住宅扶助 | 〇 | ||
教育扶助 | 〇 | ||
介護扶助 | 〇(2000年~) |
・生活扶助
生活扶助は日常生活に必要な費用の支給で、第一類と第二類があります。
第一類は個人の生活費で、第二類は光熱水費など世帯全体の生活費です。
さらに各種加算(母子加算、障害加算、介護保険料加算など)があります。
介護保険料加算は介護扶助でなく生活扶助で支給されます。
さらに生活扶助には入学準備金や出産する子供の服代など一時扶助というのがあります。
・住宅扶助
家賃や敷金礼金など住宅に関する扶助です。
・医療扶助
医療を受けた時の現物給付による扶助です。
現物給付というのは、現金ではなくサービスを無料で受けられる(サービスそのものが給付される)ということです。
・教育扶助
義務教育にかかる費用への扶助です。
高校就学費は義務教育を卒業していますので生業扶助になります。
・介護扶助
介護保険サービスを利用する時の自己負担に対する現物給付の扶助です。
・出産扶助
病院や助産施設で出産したときにかかる費用に対する扶助です。
・生業扶助
就職するために必要な費用や高等学校以上の就学費などです。
・葬祭扶助
葬祭した人に支払われます。葬祭扶助には、遺体の検案のほか、死体の運搬、火葬又は埋葬、納骨その他葬祭のための必要な費用が含まれます。
申請→支給決定→不服申立→取消訴訟
例えば住所不定のホームレスで公園に住んでいる人は、その公園のある自治体に申請します。
本籍地があるところではありません。
申請があるとミーンズテストという資産調査がなされ、扶養義務者や勤務先への確認もなされることがあります。
申請があった日から14日以内に通知されますが、資産調査に時間が掛かる場合は最長で30日まで延長されます。
生活保護が認められなかったり等の行政処分に不満がある時は3カ月以内に不服申立をしなければならず、都道府県知事に審査請求をします。
都道府県知事の裁決に不服があるときは、厚生労働大臣に再審査請求をすることができ、それでも納得できなければ訴訟ができます。
審査請求を飛び越えて訴訟はできません。
普通は不服申立(審査請求)か裁判(訴訟)か選べるのですが、生活保護は「不服申立前置主義」をとっていますから、まず審査請求による不服申立をしないと取消訴訟ができません。
この流れは以下の「朝日訴訟」を参考にすると覚えやすいです。
朝日訴訟
朝日訴訟というのは、朝日茂さんが起こした生活保護に関する行政訴訟のことです。
1957年当時、結核患者だった朝日茂さんは国立の岡山療養所に入所し、月々600円の生活保護で生活していました。しかし生活が苦しく、この金額では憲法25条の生存権が保証されないとして訴訟を起こしました。
ただし、不服申立前置主義をとる生活保護制度では審査請求を経ないと訴訟できませんので、朝日さんは以下の流れで訴訟を行います。
②厚生大臣に不服申立→却下
③行政不服審査法による訴訟
他の社会保障制度との関係
生活保護受給者は国民年金保険料が法定免除されています。
40~65歳の人は介護保険の第二号被保険者ですが、生活保護受給者は医療保険加入者が極めて少ないため介護保険2号被保険者にほとんど該当しません(介護保険は健康保険への加入が必須でしたね)。
そのような被保護者が介護が必要になった場合は介護扶助から全額賄われます。
第2号被保険者であれば介護保険から9割が支払われ、自己負担1割は介護扶助から支払われるわけです。
保護施設
生活保護法は居宅保護が原則ですが、補完的に保護施設が維持されています。
この保護施設には以下の5種類あって、運営できるのは都道府県、市町村、独立行政法人、社会福祉法人、日本赤十字社に限られます。
・救護施設
身体上精神上の著しい障害のある要保護者の生活扶助施設です。
・更生施設
身体上・精神上の理由による養護、補導を必要とする要保護者を入所させる生活扶助施設です。
・医療保護施設
医療扶助の給付を行う施設です。
・授産施設
就業能力の限られた要保護者に就労又は技能習得の機会を与える施設です(生業扶助の現物給付)。
・宿所提供施設
住居のない要保護者に住宅扶助を行う施設です。
救護施設以外の4つは障害者施策など他の法律の整備や拡充によって減少してきていますが、救護施設は他法の入所待機者や他法の施設で受け入れ困難とされる人が利用し5種のなかで最も多いのですが、それでも全国に200もありません。
市町村単位どころか都道府県に平均4~5施設くらいでしょうか。
生活保護制度の現状
受給者数(世帯別、扶助別)
全国で200万人、160万世帯を超えています。
生活保護受給世帯は「高齢者世帯」「障害・疾病世帯」「母子世帯」「その他世帯」と4つの世帯に分けられていますが、最も多いのは「高齢者世帯」で、約半分を占めています。
さらにそのほとんどが単身世帯です。
高齢化が急速に進む日本では当然で、高齢者であれば働かない事に合理性もありますので、生活保護を受ける数も多いのは納得できますね。
さらに「その他世帯」の中に含まれる働き盛りの30~50代の世帯も増えていることも問題視されています。
上のグラフにあるように、昭和のころは生活保護を受けている世帯は障害者や傷病者世帯が最も多かったのですが、平成に入るころに高齢者世帯が最も多くなり、近年急激に増加しています。
今後も高齢化でどんどんその割合は増えていきます。
扶助別には、生活扶助が最もたくさんの人が受給しています。
保護費
保護費で最も多額を占めるのは医療扶助です。
被保護者は医療保険未加入者が大半なのでそうなってしまいます。
人員ベースでは生活扶助が最も多く、金額ベースでは医療扶助が最も多額であることを覚えておいてください。
どれだけ病院にかかっても医療費が無料だから気軽に何度も通院してしまうよね。薬だけもらって転売する人もいるってニュースでやってた。
保護廃止理由
生活保護から抜け出す理由としては、もっとも期待したいのは「働き始めて収入が得られるようになったから」というものですが、そうはいきません。
下のグラフを見ると、死亡によって生活保護が廃止になる人が最も多いようです。
就労自立に向けて
生活保護制度の目的は、「生活に困っている方々に最低限度の生活を保障するとともに、その方々が自分の力で生活していけるよう援助すること」です。
つまり、目的は2つあって
・最低限度の生活を保障すること
・自力で生活していけるよう自立を支援する
ということです。
ただ、現在の制度設計では一度生活保護に陥ると手厚く保護され、最低賃金で週5日働くよりもたくさんのお金をもらえてしまうので、なかなか生活保護を抜け出そうというインセンティブが働かず自立を支援する仕組みに乏しいと言わざるを得ません。
例えば生活保護受給中に働いて収入を得た場合、その収入額が差し引かれて保護費が支給されます。
これだと働き損と思ってもしかたないよね。
そのため就労自立を促す制度として「就労自立給付金」という仕組みがあって、生活保護受給中に得た収入によって差し引かれた保護費を積み立てて、保護から抜け出したときに一括で受け取れるというものです。
これはなかなか良い制度だと思うのですが、働こうという意欲に繋がりますよね。
また、収入を得ても一定額は保護費から引かれない基礎控除という仕組みもあって、基礎控除額が引き上げられてきています。
こちらも生活保護を受けていても働こうとするインセンティブに繋がります。
過去問
第30回 問題65
現行の生活保護法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 保護は、個人を単位として行われるが、特別の場合には世帯を単位として行うこともできる。
2 補足性の原理により、素行不良な者は保護の受給資格を欠くとされている。
3 保護の基準は、国会の審議を経て、法律で定めることとなっている。
4 「要保護者」とは、現に保護を受けている者と定義される。
5 最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としている。
1 保護は、個人を単位として行われるが、特別の場合には世帯を単位として行うこともできる。
生活保護は世帯単位が原則ですので間違いです。
2 補足性の原理により、素行不良な者は保護の受給資格を欠くとされている。
補足性の原理とは、扶養義務者がいる場合はそちらを優先するということでしたので間違いです。素行不良な者は保護の受給資格を欠くとされていたのは「旧生活保護法」で、現在では素行不良な者でも、無差別平等に受給できます。
3 保護の基準は、国会の審議を経て、法律で定めることとなっている。
保護の基準はわざわざ法律で定めるわけではありません。厚生労働大臣が定めますので間違いです。
4 「要保護者」とは、現に保護を受けている者と定義される。
現に保護を受けている者ではなく、保護を受けることが必要な者です。
5 最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としている。
これが正解ですね。
第35回 問題64
現行の生活保護法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生活保護は、日本国憲法第21条が規定する理念に基づいて行われる。
2 生活保護が目的とする自立とは、経済的自立のみを指している。
3 能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、生活の維持及び向上に努めなければ、保護を申請できない。
4 補足性の原理によって、扶養義務者のいる者は保護の受給資格を欠くとされている。
5 保護の基準は、保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、これを超えないものでなければならない。
1 生活保護は、日本国憲法第21条が規定する理念に基づいて行われる。
誤りです。日本国憲法第25条の理念に基づいています。
2 生活保護が目的とする自立とは、経済的自立のみを指している。
誤りです。経済的自立のみが目的ではありません。
3 能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、生活の維持及び向上に努めなければ、保護を申請できない。
誤りです。そんなことはありません。
4 補足性の原理によって、扶養義務者のいる者は保護の受給資格を欠くとされている。
誤りです。扶養義務者による扶養を優先しますが、扶養義務者の存在によって受給資格がなくなるわけではありません。
5 保護の基準は、保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、これを超えないものでなければならない。
これが正解です。
第35回 問題65
生活保護の種類と内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生業扶助には、高等学校就学費が含まれる。
2 生活扶助は、衣食住その他日常生活の需要を満たすために必要なものを給付する。
3 教育扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
4 介護扶助は、原則として金銭給付によって行うものとする。
5 葬祭扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
1 生業扶助には、高等学校就学費が含まれる。
これが正解です。
2 生活扶助は、衣食住その他日常生活の需要を満たすために必要なものを給付する。
誤りです。住居に関しては住宅扶助があります。
3 教育扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
誤りです。教育扶助は現金給付です。
4 介護扶助は、原則として金銭給付によって行うものとする。
誤りです。介護扶助は現物給付です。
5 葬祭扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
誤りです。葬祭扶助は現金給付です。
第32回 問題64
生活保護法が規定する基本原理・原則に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 日本国憲法第26条に規定する理念に基づく。
2 保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。
3 保障される最低限度の生活とは、肉体的に生存を続けることが可能な程度のものである。
4 生活困窮に陥った年齢によって、保護するかしないかを定めている。
5 生活保護の基準は、厚生労働省の社会保障審議会が定める。
1 日本国憲法第26条に規定する理念に基づく。
間違いです。日本国憲法第25条の理念に基づいています。
2 保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。
これが正解です。
3 保障される最低限度の生活とは、肉体的に生存を続けることが可能な程度のものである。
間違いです。「健康で文化的な生活水準」で「最低限度の生活を満たしかつそれを超えないもの」とされています。
4 生活困窮に陥った年齢によって、保護するかしないかを定めている。
そんなことはありません。無差別平等で年齢や性別に関係なく保護されます。
5 生活保護の基準は、厚生労働省の社会保障審議会が定める。
間違いです。保護の基準は厚生労働大臣が定めます。
第31回 問題64
現在の生活保護の基準に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生活保護基準は、3年に1回改訂される。
2 生活保護基準は、財務大臣と厚生労働大臣の連名で改定される。
3 生活保護に係る施策との整合性に配慮して、地域別最低賃金が決定される。
4 生活扶助基準は、マーケット・バスケット方式によって設定される。
5 生活保護基準に連動して、障害基礎年金の水準が改定される。
1 生活保護基準は、3年に1回改訂される。
保護の基準は毎年改定されます。ただし、生活保護基準の1つである生活扶助基準は、5年毎に実施される全国消費実態調査の特別集計データなどを用いて、社会保障審議会の生活保護基準部会で「検証」が行われます。
2 生活保護基準は、財務大臣と厚生労働大臣の連名で改定される。
財務大臣は関係ありませんね。厚生労働大臣だけです。
3 生活保護に係る施策との整合性に配慮して、地域別最低賃金が決定される。
これが正解です。生活保護の基準はいろいろな制度で参照されるので重要なのです。
4 生活扶助基準は、マーケット・バスケット方式によって設定される。
これは違います。マーケット・バスケット方式は1960年まで用いられていましたが現在では水準均衡方式です。
水準均衡方式は、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との均衡状態を保つための調整を行い、これをもとに生活扶助基準の改定率を決めます。
5 生活保護基準に連動して、障害基礎年金の水準が改定される。
障害年金の額は、保険料水準固定方式と、マクロ経済スライド方式によって改定されるので、間違いです。
第31回 問題65
生活保護の扶助の種類とその内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 介護扶助には、介護保険の保険料は含まれない。
2 生業扶助には、就職のための就職支度費は含まれない。
3 葬祭扶助には、遺体の検案のための費用は含まれない。
4 生活扶助には、小学生の子どもの校外活動参加のための費用が含まれる。
5 教育扶助には小中学校への入学準備金が含まれる。
1 介護扶助には、介護保険の保険料は含まれない。
これが正解です。介護保険料は介護扶助ではなく生活扶助で支給されるので間違われやすいため頻出です。生活扶助の介護保険料加算で支給されます。
2 生業扶助には、就職のための就職支度費は含まれない。
生業扶助には就職支度費が含まれます。当然です。
3 葬祭扶助には、遺体の検案のための費用は含まれない。
これも間違いです。葬祭扶助には、遺体の検案のほか、死体の運搬、火葬又は埋葬、納骨その他葬祭のための必要な費用が含まれます。
4 生活扶助には、小学生の子どもの校外活動参加のための費用が含まれる。
義務教育の就学に必要な費用は教育扶助ですので間違いです。
5 教育扶助には小中学校への入学準備金が含まれる。
小中学校への入学準備金は生活扶助の中の一時扶助として支給されます。
第32回 問題65
生活保護の種類と内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生活扶助は、衣料品費、食料品費、葬祭費などを給付する。
2 教育扶助は、高等学校の就学に係る学用品費について給付する。
3 住宅扶助は、家賃等のほか、補修その他住宅の維持に必要なものを給付する。
4 医療扶助は、原則として金銭給付によって行うものとする。
5 出産扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
1 生活扶助は、衣料品費、食料品費、葬祭費などを給付する。
葬祭費は葬祭扶助ですので間違いです。
2 教育扶助は、高等学校の就学に係る学用品費について給付する。
これは間違いやすいので頻出です。
高校就学費は生業扶助でしたね。
3 住宅扶助は、家賃等のほか、補修その他住宅の維持に必要なものを給付する。
これが正解です。
4 医療扶助は、原則として金銭給付によって行うものとする。
間違いです。医療扶助は現物給付でした。
5 出産扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
間違いです。出産扶助は現金給付でした。
第29回 問題65
生活保護の実施に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 保護の実施機関は、厚生労働省の地方厚生局である。
2 保護の実施機関は、被保護者に対して生活の維持のための指導をしてはならない。
3 保護の実施機関は、被保護者であった者について、保護を受けていた当時の雇主から報告を求めることができない。
4 扶養義務者がいる要保護者は、生活保護を受給することができない。
5 生業扶助には、高等学校就学費が含まれる。
1 保護の実施機関は、厚生労働省の地方厚生局である。
保護の実施機関は、都道府県知事、市長および福祉事務所を管理する市町村長です。
2 保護の実施機関は、被保護者に対して生活の維持のための指導をしてはならない。
間違いです。指導や指示ができます。
3 保護の実施機関は、被保護者であった者について、保護を受けていた当時の雇主から報告を求めることができない。
間違いです。報告を求めることができます。
4 扶養義務者がいる要保護者は、生活保護を受給することができない。
扶養義務が優先されますが、扶養義務者がしっかりと扶養しようとしない場合もありますので、そのような場合は生活保護を受給することができます。
5 生業扶助には、高等学校就学費が含まれる。
その通り、高等学校就学費は教育扶助ではなく生業扶助でした。義務教育を卒業していますから。
第29回 問題66
現行の生活保護基準に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生活扶助基準第一類は、所在地域によらず設定されている。
2 生活扶助基準第一類は、男女の性別ごとに設定されている。
3 生活扶助基準第一類は、年齢によらず設定されている。
4 生活扶助基準第二類は、世帯人員別に設定されている。
5 生活扶助基準第二類は、生活保護の受給期間に応じて設定されている。
1 生活扶助基準第一類は、所在地域によらず設定されている。
地域によって3級地6区分で設定されているので間違いです。
2 生活扶助基準第一類は、男女の性別ごとに設定されている。
以前は男女で食べる量や活動量も違うので、男女別に設定されていましたが現在は区別していません。
3 生活扶助基準第一類は、年齢によらず設定されている。
年齢によって食べる量などが違うので当然年齢によって区分され、支給額が違います。
4 生活扶助基準第二類は、世帯人員別に設定されている。
第一類が個人需要、第二類は世帯需要に対するものでした。つまり第二類は世帯の人数等によって支給額が変わりますのでこれが正解です。
5 生活扶助基準第二類は、生活保護の受給期間に応じて設定されている。
受給期間に応じて設定されるものは一切ありません。
第33回 問題66
生活保護法に定める不服申立てに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 不服申立てが権利として認められたのは、旧生活保護法(1946 年(昭和 21 年))制定時においてである。
2 審査請求は、市町村長に対して行う。
3 審査請求に対する裁決が 50 日以内に行われないときは、請求は認容されたものとみなされる。
4 当該処分についての審査請求を行わなくても、処分の取消しを求める訴訟を提起することができる。
5 再審査請求は、厚生労働大臣に対して行う。
1 不服申立てが権利として認められたのは、旧生活保護法(1946 年(昭和 21 年))制定時においてである。
間違いです。不服申立ては現在の生活保護法になってからです。
2 審査請求は、市町村長に対して行う。
間違いです。審査請求は都道府県知事に対して行います。
3 審査請求に対する裁決が 50 日以内に行われないときは、請求は認容されたものとみなされる。
間違いです。50日経過すると審査請求が棄却されたとみなせるので、取消訴訟と提起することができます。
4 当該処分についての審査請求を行わなくても、処分の取消しを求める訴訟を提起することができる。
間違いです。生活保護制度では不服申立前置主義をとっていますから、審査請求を経ないと訴訟を提起することはできません。
5 再審査請求は、厚生労働大臣に対して行う。
これが正解です。
第29回 問題64
生活保護の動向に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 平成景気が終了した直後、生活保護受給世帯数が生活保護法施行後、最も多くなっている。
2 リーマンショック(2008年(平成20年))以降、受給者数は減少を続けている。
3 2014年(平成26年)の生活保護受給世帯人員別内訳では、単身世帯の占める割合が最も高くなっている。
4 2015年度(平成27年度)の生活保護費扶助別内訳では、生活扶助費の占める割合が最も高くなっている。
5 2015年度(平成27年度)の生活保護費扶助別内訳では、介護扶助費の占める割合が最も低くなっている。
1 平成景気が終了した直後、生活保護受給世帯数が生活保護法施行後、最も多くなっている。
生活保護はその後もどんどん増加していますので間違いです。
2 リーマンショック(2008年(平成20年))以降、受給者数は減少を続けている。
リーマンショックをきっかけに世界的な不景気に突入しましたから、その後受給者は増加しています。
3 2014年(平成26年)の生活保護受給世帯人員別内訳では、単身世帯の占める割合が最も高くなっている。
これが正解です。
4 2015年度(平成27年度)の生活保護費扶助別内訳では、生活扶助費の占める割合が最も高くなっている。
これは間違いですね。医療扶助が最も大きく、保護費の約半分を占めています。
5 2015年度(平成27年度)の生活保護費扶助別内訳では、介護扶助費の占める割合が最も低くなっている。
これも間違いです。介護扶助は少ないですが最下位ではありません。
第30回 問題64
「生活保護の被保護者調査(平成27年度(月次調査確定値))」(厚生労働省)による次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 保護率(人口百対)は、17.0%である。
2 被保護実人員数(保護停止中を含む)は、約80万人である。
3 保護の開始の主な理由のうち、「傷病」が最も多い。
4 保護の廃止の主な理由のうち、「死亡」が最も多い。
5 保護の種類別に扶助人員をみると、「医療扶助」が最も多い。
1 保護率(人口百対)は、17.0%である。
被保護者は約200万人ですから、日本の人口を1億人とすると2%です。17%も被保護者がいれば日本は潰れてしまいます。
2 被保護実人員数(保護停止中を含む)は、約80万人である。
200万人ですので間違いです。
3 保護の開始の主な理由のうち、「傷病」が最も多い。
最も多いのは「預貯金等の減少・喪失」で3割程度、次いで「傷病」が25%程度です。
4 保護の廃止の主な理由のうち、「死亡」が最も多い。
これが正解です。
「死亡」が3割強、「働きによる収入増加」によって保護を抜け出せる人は20%に満たないのです。生活保護は一度受けてしまうと抜け出しにくい制度なんです。
5 保護の種類別に扶助人員をみると、「医療扶助」が最も多い。
これは思わず正解にしてしまいそうですが間違いです。
医療扶助は金額的には最も多いのですが、人員数では生活扶助が最も多いです。生活保護を受けている人のほとんどは生活扶助を受けていますから当然です。
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過去問を見れば、生活保護制度は様々な内容が出題されていることが分かると思います。
生活保護制度はとにかく過去問を解きながら知識を整理していってください。
次に、生活保護制度に次ぐ第二のセーフティーネットである「生活困窮者自立支援制度」を見ていきましょう。
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