レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)
パブロフの犬って知ってますか?
犬に餌をやる前にベルをならすことを繰り返すと、そのうち餌を与えなくてもベルを鳴らすだけで犬はよだれを垂らすといったパブロフによる実験のことです。
これは「条件反射」と呼ばれ、無意識に起こる不随意反応です。
人間でも例えば交通事故に遭った人が車のエンジン音を聞くだけでビクッとするとか、このような無意識的な不随意の反応がレスポンデント条件づけです。
いわゆる「反射反応」で、不随意のレスポンス(反応)があるわけです。
不随意というのは自分の意思に基づかないということだよ。
オペラント条件づけ
先ほどのレスポンデント条件づけは無意識的な反応でした。
では、例えば犬にベルを鳴らさせると餌がもらえるというルールを作ったら、おそらく犬はベルをならすことを学習するでしょう。
犬は学習することによりそのような行動をするので、先ほどのレスポンデント条件づけとは違います。
これをレスポンデント条件づけに対して、オペラント条件づけとスキナーは命名しました。
これをスキナーの学習理論と呼んでいます。
オペラントとは「オペレート(operate)」が元になっている、スキナーの造語だよ。
「オペラント条件づけ」はアメとムチの考え方に近いです。
例えば、犬にお座りができたら餌を与える、これを繰り返すと犬が自発的にお座りをするようになります。
逆に、犬がうるさく吠えると叱ることを繰り返すと、犬は吠えるのを自発的に辞めます。
「お座りができたら餌を与える」というのは、餌というアメがあるからお座りをしようという意志が働き、逆に「うるさく吠えると叱られる」については、叱られるというムチを受けないように吠えないようにしようと意志が働くわけです。
このようにレスポンデント条件付けとは違って、自分の意志(随意)で行動することがポイントです。
その行動を促すのに、アメ(報酬刺激)とムチ(嫌悪刺激)があるのです。
オペラント条件付けには「強化」という概念があり、刺激が与えられて行動が増大することを「正の強化」、刺激が取り除かれて行動が増大することを「負の強化」といいます。
例えば、
褒めることで宿題をする→「正の強化」
叱らないことで宿題をする→「負の強化」
また「強化」に対して「罰」という概念もあって、刺激が与えられて行動が減少することを「正の罰」、刺激が取り除かれることで行動が減少することを「負の罰」といいます。
例えば、
私語をしている生徒を叱ると私語がなくなる→「正の罰」
私語をしている生徒から遊び道具を取り上げることで私語がなくなる→「負の罰」
行動の増大 | 行動の減少・消失 | |
刺激を提示 | 正の強化 | 正の罰 |
刺激を除去 | 負の強化 | 負の罰 |
オペラント条件づけを利用した行動療法
トークンエコノミー
オペラント条件づけの「正の強化」を用いた行動療法の1つです。
トークンとは代用貨幣のことで、目標となる行動ができたときに「トークン」を与えて、動機づけにするというものです。
ただし、あまりこのトークンを多用すると、本来の「内発的動機づけ」が弱まってしまうことがあります。
例えば、興味を持って勉強していたのに、勉強すればお小遣いがもらえるようになると、勉強の意欲が薄れてしまうといった現象です。
この内容は、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の別記事で学びます。
シェイピング
目標とする行動を獲得するために、その行動を小さなステップに分けて段階的に獲得へ導いていく方法です。
幼児や発達障害児などに用いられます。
例えば、トイレでうまく用を足せない発達障害児がいたとして、トイレに行く行動を①トイレのドアを開ける、②トイレのドアを閉める、③便座に座る、④用を足す、⑤水を流す、などなど行動を細分化し、それぞれの段階をクリアできれば報酬を与えます(褒めるとか)。
イルカショーもシェイピングだね。
過去問
第26回 問題9
レスポンデント(古典的)条件づけとオペラント(道具的)条件づけに関する次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。
1 レモンを心の中でイメージしていると、次第に唾液が出てきた。これはオペラント条件づけである。
2 池のコイにエサを毎日与えていたら、池に近づいていくとコイが素早く寄ってくるようになった。これはレスポンデント条件づけである。
3 イヌが前足を出そうとしたときに、その行動をほめていたら、「お手」をするようになった。これはオペラント条件づけである。
4 プラナリアという原始的生物に、光を当てた後に電気ショックを与えていた。すると光を当てるだけで収縮するようになった。これはオペラント条件づけである。
5 ボタンをつつくとエサの出る装置にハトを入れたら、ボタンを盛んにつつくようになった。これはレスポンデント条件づけである。
1 レモンを心の中でイメージしていると、次第に唾液が出てきた。これはオペラント条件づけである。
これはレスポンデント条件づけです。
2 池のコイにエサを毎日与えていたら、池に近づいていくとコイが素早く寄ってくるようになった。これはレスポンデント条件づけである。
これはオペラント条件づけです。
3 イヌが前足を出そうとしたときに、その行動をほめていたら、「お手」をするようになった。これはオペラント条件づけである。
正しいです。
4 プラナリアという原始的生物に、光を当てた後に電気ショックを与えていた。すると光を当てるだけで収縮するようになった。これはオペラント条件づけである。
これはレスポンデント条件づけです。
5 ボタンをつつくとエサの出る装置にハトを入れたら、ボタンを盛んにつつくようになった。これはレスポンデント条件づけである。
これはオペラント条件づけです。
第30回 問題9
次の記述のうち、オペラント条件づけにおける正の強化の事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 いたずらをしている子どものゲーム機を取り上げたら、いたずらをやめた。
2 宿題をやってくるたびに褒めていたら、宿題を忘れずやってくるようになった。
3 授業中、勝手に話をしていた生徒を叱ったら、私語がなくなった。
4 好きな曲が流れているテレビCMの商品に好感を持つようになった。
5 デイサービスで嫌な思いをした高齢者が、デイサービスを休むようになった。
1 いたずらをしている子どものゲーム機を取り上げたら、いたずらをやめた。
これは「負の罰」です。
つまりゲーム機を取り上げる(刺激を除去=負)→いたずらをやめる(行動が減少=罰)
2 宿題をやってくるたびに褒めていたら、宿題を忘れずやってくるようになった。
これが正解です。
3 授業中、勝手に話をしていた生徒を叱ったら、私語がなくなった。
これは「正の罰」です。
つまり生徒を叱る(刺激を与える=正)→私語が無くなる(行動が減少=罰)
4 好きな曲が流れているテレビCMの商品に好感を持つようになった。
これは自発的な行動ではなく無意識のものなのでレスポンデント条件付けです。
5 デイサービスで嫌な思いをした高齢者が、デイサービスを休むようになった。
これは「正の罰」です。
嫌な思いをする(刺激を与える=正)→デイサービスを休む(行動が減少=罰)
次の記事
次は、「マズローの欲求階層説」です。
オペラント条件づけと同じく、動機づけ理論の基本です。
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